全地連「技術 e-フォーラム 2004」福岡 【67】 火山灰質粘性土を対象とした新たな配合試験方法の提案 基礎地盤コンサルタンツ㈱ 1. ○白井 康夫 同 上 田上 裕 同 上 長谷川慎一 と極めて不安定な状況にある材料など,特異なものも はじめに あるが,全般には自然含水比は大きく,液性指数も 1.0 九州中央地区には,図-11)のように広く火山灰土が分 前後と不安定な材料であることがいえる。 布している。このような地域で土工事を行う際,問題 となるのが火山灰質粘性土であり,盛土材として流用 図-2 に締固め試験結果を示した。試験は JIS A 1210 する際には,トラフィカビリティーの確保が容易でな の A-c 法による。B 材,A4n(c)材については最大乾燥 く,転圧効果も期待できないなどの問題がある。しか 密度が得られているが,A,C,D 材については,明瞭な し,大規模土工になると,土量バランス,環境コスト ピークがみられず,かつ,含水比が低下するにしたが 等の面から盛土材として転用せざるを得ず,石灰等に い最大乾燥密度が増大する,火山灰質粘性土特有の傾 より安定処理を行って用いられているのが現状である。 向が認められる。表-1 に自然含水状態における室内コ 安定処理を行う際には,事前に配合設計が行われる ーン指数試験結果(突固めは 2.5kg ランマー,10cm モールド,25 が,当地域の火山灰質粘性土を対象に従来の方法で配 回/層×3 層による)を示した。ここで,湿地ブルが走 合設計を行うと,試験条件が材料特性や施工条件と異 行可能なコーン指数の目安 4) は 300kN/m2 であり,こ なるなど,不経済となることが考えられた。そこで, れを満たすのは A 材のみで,他の材料については石灰 本論では材料の物理・工学的特性や使用する施工機械 等による安定処理が必要なことが分かる。 1.5 などに応じた試験法を採用することが合理的,経済的 A B C D A4n(c) 1.4 乾燥密度 ρd(g/cm3) であると判断し,新たな配合試験法を試みた。ここで は,九州中央地区に分布する火山灰質粘性土を対象と し,湿地ブルドーザでの作業性を確保するための生石 灰を用いた配合試験方法について報告する。 火山灰土 1.3 1.2 1.1 va=0% (ρs=2.8g/cm3) 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 10 30 50 70 90 110 含水比 w (%) 130 図-2 締固め試験結果 3. 火砕流堆積物 締め固め易さを把握するための試験 上記締固め試験,室内コーン指数試験のみでは,最 図-1 九州中央地区の火山灰土の分布 適含水比,最大乾燥密度,自然含水状態のコーン指数 2. 火山灰質粘性土の物理特性・締固め特性 が分かっても,その材料がどのような締固め特性を有 当地域に分布する火山灰質粘性土の代表的な物理特 するか,例えば,突き固めエネルギーが増大するにし 性を表-1 に示す。土粒子密度ρs は若干大きめである たがい,密度もコーン指数も増大するような締め固め が,これは湿潤法 2),3)で得たものである。 A 易い材料なのか,または,オーバーコンパクションを 材のように, 含水比 Wn が 110%と高いものの液性指数 IL は 0.58 生じるような締固め難い材料なのかは分からない。 と安定しているような材料,その逆に,A4n(c)材のよ そこで,このような特性を把握するための試験とし うに含水比は小さく,低塑性であるものの IL が 1.15 て,JIS A 1228 の締固めた土のコーン指数試験があり, 突き固め回数とコーン指数の関係より, 表-1 火山灰質粘性土の物理特性および締固め特性 物理特性(地山状態) 粒度組成(%) 材料名 粗粒分 新期火山灰層 Lo3c シルト ρs WL 3 粘土 (g/cm ) (%) Wp (%) Ip IL 図-3 のように締固め易さを判断している。 締固め特性 Wn ρt (%) (g/cm3) e Sr ρdmax Wopt qc(Wn) (%) (g/cm3) (%) (kN/m2) ただし,この試験法では,突き固め回数 が 10,25,55,90 回と設定されており,当 A 19 50 31 2.80 135 76 59 0.58 110 1.28 3.59 86 0.687 98.0 461 B 42 29 29 2.81 68 36 32 0.88 64 1.37 2.37 76 1.123 49.0 30 C 9 55 36 2.81 106 53 53 0.96 104 1.33 3.31 88 0.785 74.0 52 D 11 54 35 2.81 101 52 49 0.90 96 1.30 3.24 83 0.775 81.5 114 36 24 40 2.80 35 24 12 1.15 37 1.84 1.08 96 1.405 30.8 9 阿蘇4火砕流堆積物 A4n(c) 該地の火山灰質粘性土の湿地ブルを想定 した走行性,転圧効果を判定するには, 突き固め回数が多すぎる問題がある。 全地連「技術 e-フォーラム 2004」福岡 件と一致させた。この方法により行った配合試験結果 qc を図-5 に示す。なお,図中の添加量は地山湿潤密度 1m3 締め固め易 い材料 ー コ 良い ン 指 数 に対する石灰添加量である。ここで,Nc=25 回に着目 悪い 3 5 10 オーバーコンパクション 締め固め難 い材料 すると,室内と現場の割り増しを考慮した現場目標強 15 Nc=10 回に着目してみると,30 kg/m3 でも目標強度を 20 度 4)qc=400kN/m2 を満たすのは,45kg/m3 時となるが, 25 突固め回数 (回) 図-3 突き固め回数とコーン指数の関係 そのため,本論では締固め試験時の A 法,すなわち 確保できている。空気間隙率をみても,Nc=10 回を越 えると,概ね Va は一定値となっており,これ以上の突 き固めは無意味であることを示唆している。 突き固め回数 25 回に着目し,25 回以下の突き固め回 空気間隙率 va(%) 数とコーン指数の関係より締固め易さの判定を行うこ ととした。その結果を図-4 に示す。当該地の火山灰質 粘性土は,目標 qc を満足している A 材も含めてオーバ ーコンパクションを生じる,あるいは,B,A4n(c)材の コーン指数 qc(kN/m2) コーン指数 qc(kN/m2) 安定処理 30kg/m3 12 安定処理 40kg/m3 安定処理 45kg/m2 10 8 6 4 0 800 回 分かる。 A B C D A4n(c) 600 自然含水比 14 2 ような最初から低強度の締固め難い材料であることが 900 16 300 5回 10回 15回 20回 25回 30回 25回 30回 突き固め回数 Nc 700 600 500 400 300 200 100 0 回 5回 10回 15回 20回 突き固め回数 Nc 0 回 5回 10回 15回 20回 25回 図-5 配合試験結果(C 材) 30回 突き固め回数 Nc 図-4 自然含水状態における Nc-qc,Va 関係 4. 新たな配合試験方法の提案 上記自然含水状態における各種試験結果より,安定 処理が必要と判断された材料に対し,室内配合設計を 行うが,一般に盛土の大半を占める下部路体の配合試 このとき,どの突き固め回数で添加量を決定するか がこの試験法の最大の課題であるが,現時点では上記 のような Nc と qc および Va の関係が把握されている ものの,室内突き固め回数と現場での転圧回数の関係 を詳細に把握できていないため,若干余裕をみて Nc= 15~20 回程度の突き固め回数で添加量を決定している。 験に関する公的機関の規定は日本道路公団 5)(以降 JH と略す)くらいしかなく,その他に突き固め回数や養 5. おわりに 生日数,試験法など定められたものは少ない。そこで, 新たな配合設計法とは言っても,従来行われている 本論では,3.で述べた室内コーン指数試験と同様の方 試験法の一部,突き固め回数や養生日数等を変化させ 法で表-2 のように配合設計を行うことを提案する。 たのみの試験であるが,現在,この配合設計法で決定 表-2 配合設計方法 供 試 体 測 定 項 目 試料 モールド ランマー 突き固め 石灰添加量 養 生 コーンペネトロメータ 貫入速度 方 法 許容最大粒径4.75mm,自然含水比 10cmモールド(内径10cm,高さ12.7cm) 質量2.5kg,落下高さ30cm,自由落下 3層×3,5,10,15,20,25回/層 3ケース程度 0日(前日混合,翌日突き固め直後にコーン試験実施) 先端角30°,底面積3.24cm2 1cm/s 方 法 5cm,7.5cmおよび10cm貫入時の貫入抵抗力を測定し、その 平均値をコーン底面積で除した値をコーン指数とする。 した添加量で幾つかの土工事が問題なく行われている。 今後は,室内突き固め回数と現場転圧回数の関係を詳 細に把握し,添加量を決定する際の突き固め回数を詰 めていきたいと考える。 なお,当方法による配合設計により,従来法に比べ 地山 1m3(湿潤密度)当たり約 10kg の石灰添加量が 低減でき,100 万 m3 単位の土工では数億円のコスト縮 減が可能となっている。 ここで,供試体作成方法については,安定処理の必 要性を 3.で示したように同様の方法で行った試験結果 《引用・参考文献》 から判定するためであり,添加量を決める際も同方法 1)九州・沖縄の特殊土:地盤工学会九州支部,1983 で行うのが合理的と考えたからである。また,養生日 2)土質試験の方法と解説:地盤工学会,1999 数については,JH5)では 3 日空気中養生とされている 3)土試料の乾燥状態が土粒子の密度に及ぼす影響: が,実現場作業では前日地山で混合した材料を翌日積 全地連「技術 e-フォーラム」発表講演集,2004 込み・運搬・敷均し・転圧の一連作業を行っている状 4)設計要領第一集:日本道路公団,1998 況を考慮し,石灰の反応時間を合わせるために現場条 5)日本道路公団試験法:日本道路公団,1992
© Copyright 2024 ExpyDoc