ツイストペアが不平衡なときの「ジッタ発生」 - Maxim

Application Note:
HFAN-4.5.4
Rev. 1; 04/08
ツイストペアが不平衡なときの「ジッタ発生」
Functional Diagrams
Pin Configurations appear at end of data sheet.
Functional Diagrams continued at end of data sheet.
UCSP is a trademark of Maxim Integrated Products, Inc.
LE
AVAILAB
ツイストペアが不平衡なときの「ジッタ発生」
確定的ジッタ(DJ)は、ツイストペア(STP または UTP)内での、差動モードからコモンモードへの変換(またはその逆の
変換)によって生じる可能性があり、これは通常、ツイストの不平衡や誘電体の不平衡の結果として生じるものです。
ケーブル固有の特性(コモンモードの損失が大きいな
ど)によって、他に非対称があってもペア内スキューを
軽減できるという望ましい報告がなされています。
1 目的
タイトルには「ペアの不平衡」とありますが、本書はカッ
プルの精神病理学について記載した文書ではありませ
ん。
2
本書では、データレート > 500Mb/s の場合の、高品質
のツイストペアケーブルと低品質のツイストペアケーブ
ルとを区別するためのテスト方法について説明します。
測定例は、ツイストペアケーブルによって生じるペア内
の重大な遅延スキューが、イコライザを使用しても、あ
るいはスキューを補償しても回復できない問題となる可
能性があることを示しています。
テストケース:ディジタルビデオ
DVI と HDMI の デ ィ ジ タ ル ビ デ オ 規 格 は 、 最 大
1.65Gb/s の シ リ ア ル レ ー ト で 長 い STP (Shielded
Twisted Pair:シールド付きツイストペア)ケーブルを用
いたデータ伝送について規定しています。極めて長い
ケーブル(たとえば 15~30 メートル)は、表皮効果によ
る高周波損失とペア内スキューの両方の影響を累積
的に受けます。
S-PARAMETERS: 15 meters, 30 AWG STP
0
3950
3800
3650
3500
3350
3200
3050
2900
2750
2600
2450
2300
2150
2000
1850
1700
SDD21 dB
SDC21 dB
SCD21 dB
SCC21 dB
-10
-20
LOSS [dB]
1550
1400
1250
1100
950
800
650
500
350
200
50
MAXIM CONFIDENTIAL
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
FREQUENCY [MHz]
図1
Application Note HFAN-4.5.4 (Rev. 1, 04/08)
1.65Gb/s Data,
MAX3800 EQ Output,
Scope @ 300ps/div
Maxim Integrated
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S -P A R A M E T E R S : 1 5 m e te rs , 2 6 A W G S T P
3830
3650
3470
3290
3110
2930
2750
2570
2390
2210
2030
1850
1670
1490
1310
1130
950
770
590
410
230
50
MAXIM C O N FID E N TIAL
0
S DD21 dB
LOSS [dB]
-1 0
S DC21 dB
-2 0
S CD21 dB
-3 0
S CC21 dB
-4 0
-5 0
-6 0
-7 0
-8 0
F R E Q U E N C Y [M H z ]
1.65Gb/s Data,
図2
MAX3800 EQ Output,
Scope @ 200ps/div
図 1 と図 2 は、15m (50 フィート)の経済的な STP ケ
ーブルを用いた 1.65Gb/s の DVI 信号のサンプルを示
しています。最初の図(図 1)は優れた性能を示し、次の
図(図 2)は貧弱な性能を示しています。図 1 は、差動モ
ードからコモンモードへの変換が小さい(SDC21)、典型
的な表皮効果の損失(SDD21)を示しています。
図 1 と図 2 のスコープ写真は、最新の MAX3800 イコ
ライザが、累積した表皮効果の損失について、
1.65Gb/s のデータを補償している様子を示しています。
図 1 は優れた結果を示していますが、図 2 は、差動モ
ードからコモンモードへの変換、すなわちペア内のスキ
ューが大きいため、等化後に確定的ジッタ(DJ)が残留
していることを明確に示しています。
3
「単純な」テストケースとして、ツイン同軸ケーブル(個別
に並列の 2 本の同軸ケーブル)がそのケーブル間で差
動信号を伝達するケースを考えてみましょう。信号ペア
間に本質的に結合は存在しません。この場合、ペア内
の遅延スキューは、「純粋な遅延差」として出力端に現
れます。スペクトル的に周波数応答でヌルが生じ、最初
の差動モードのヌルは、周波数 = 1/(2 x 遅延差)で発
生します。つまり、2 本の同軸ケーブル間の電気的な
遅延の差が 2 分の 1 波長となるような周波数において
最初のヌルが発生することになります。この同じ周波数
でコモンモードが最大となります(ペア内の両方の信号
が同相になります)。
100ohm Differential Pair: Dual Coax
「単純な」ペア内スキュー
差動の掃引正弦波が差動ケーブル上で励振されてい
る場合、差動モードからコモンモードへの変換およびそ
の逆の変換の結果として、ケーブルペアの内部にいく
らかのペア内スキューが発生します。コモンモードへの
変換は周波数によって変化するため、一定量のペア内
スキューがあると、ディジタル差動信号の忠実度が損
なわれ、回復不能になる可能性があります。
Application Note HFAN-4.5.4 (Rev. 1, 04/08)
Z = 50ohms
Z = 50ohms
Maxim Integrated
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当然ですが、この単純なケースの「純粋な遅延差」は、
2 本のケーブルのうちの短いケーブルの信号経路に相
応の「純粋な遅延」を挿入することによって調整すること
ができます。これは概念的には簡単に実現できそうで
すが、一般的なケースでのソリューションとはなりませ
ん。
4
結合型の差動ペア(STP、UTP、Twinax)
ここからは、実際的な結合型の差動ペア(シールドのあ
る場合、またはない場合)について考えてみましょう。こ
のケーブルは、グランド(たとえばシールド)との結合に
加えてペア間の結合によって特性差動インピーダンス
の一部を生み出します。
インチの非対称があるだけで、0.25 ユニットインターバ
ル(UI)の誤差が生じます。
幸いなことに、経済的なケーブルの構造において、固
有のペア内スキューを低減するための方策があります。
1 つの方法は、差動モードの損失に比べてコモンモード
の損失を増やすことです(ただし EMI シールドの性能を
維持)。図 1 でわかるように、コモンモードの損失は差
動モードの損失よりも少しだけ大きくなっています。他
の低コストのケーブルでは、さらにコモンモードの損失
が大きく、差動モードで予想どおりの優れた動作を示し
ています。この動作の基礎となるのが、ホイルシールド
と誘電体の構築です。
5
100ohmDifferential
Differential Pair:
Pair: Twisted
oror
Twinax
100ohm
TwistedPair
Pair
Twinax
ZZ ==
Z=
Z=
+
150ohms
150ohms
150ohms
150ohms
-
Z=
ケーブルの測定:高品質のケーブルと
低品質のケーブルとの区別
ペア内スキューの測定には、いくつかの方法が使用さ
れています。ここでは、標準的なステップ遅延の方法よ
りはむしろ周波数領域の方法を推奨しています。
Z=
150ohms
150ohms
差動ペアにおける不平衡(長さ、ツイスト、または誘電
体環境が非対称など)によって、若干のペア内スキュー
が発生します。
ただし、結合型の差動ペアの場合、ペア内スキューは
通常、前項で説明したデュアル同軸ケーブルの「理想
的な」予測可能スキューの場合のように、単純なスキュ
ーとして動作しません。「理想的な」デュアル同軸ケーブ
ルのケースとは異なり、結合型の差動ペアは、差動モ
ードとコモンモードについて異なる損失と速度の影響を
受けます。たとえば図 1 で、差動モード(SDD21)とコモ
ンモード(SCC21)では、損失特性が異なることがわかり
ます。ペア内スキューは、累進的にこの 2 つのモード間
の信号エネルギーを変換するため、最終的にケーブル
の端では、「理想的な」遅延差(スキュー)ではなくなりま
す!
当然ですが、「長さを等しくする」、「ツイストを対称にす
る」、さらに「誘電体環境とシールド環境での平衡性を
考慮する」ことによってペア内スキューを最小限に抑え
ることができます。これは、経済的な市販のケーブルに
は難しい要求となる場合があります。たとえば、データ
レートが 1.65Gb/s で 100 フィート(30m)の DVI ディジ
タルビデオケーブルの場合、電気的な長さにわずか 1
Application Note HFAN-4.5.4 (Rev. 1, 04/08)
2 つのシングルエンドのステップ遅延測定値の差を測
定することによってペア内スキューを判断すると、間違
いが生じる可能性があります。シングルエンドのステッ
プ励振(一度に差動ペアの片側だけを励振する)は、差
動モードとコモンモードの両方のエネルギーを励起しま
す。伝播速度と損失はモード間で異なるため、得られる
遅延の数値は差動モードだけの場合には当てはまりま
せん。さらに、長いケーブルの性能は、このような短い
ケーブルの測定値から予測することはできません。
5.1
周波数領域の方法:DVI の例
DVI アプリケーションの場合、特定の「長い」ケーブルア
センブリのテストは、選択した 2 つまたは 3 つの周波数
(たとえば最大ビットレートの 1/2 (800MHz 正弦)、およ
び最大ビットレートの 1/4 (400MHz 正弦))で行うことが
でき、差動モードからコモンモードへの変換(SCD21)か
コモンモードから差動モードへの変換(SDC21)かを検
知します。経験上、「低品質の」SCD21 または SDC21
は広範囲の周波数にわたって生じるため、いくつかの
スポット周波数で測定するだけで十分です(つまり、見
逃すことがありません)。SCD21 または SDC21 のいず
れの応答も同一の結果を示すため、装置の入手性に
よっていずれかを選択することができます(表 1 を参照)。
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目標は、SCD21(また同様に SDC21)が、ビットレート
以下の全周波数において差動-差動への一次応答
(SDD21)より少なくとも 12dB 下回ることです。これは、
30AWG ケーブルでは達成されていますが(図 1)、
26AWG ケーブルでは目標から完全に外れています
(図 2)。特定のケーブル AWG については、この周波
数での SDD21 の量(表皮効果による損失)が既知であ
るため、SDD21 を測定する必要はありません。
6
今後の展開
マキシムは、このようなケーブル関連の問題に対応す
る数多くのソリューションを紹介しています。このテーマ
は今後、記事やアプリケーションノートの形で展開して
いく予定です。
表1
RECOMMENDED CABLE QUALIFICATION FOR LONG DVI CABLES:
1) Measure common-mode-to-differential conversion of a DVI cable assembly:
a. Apply Single-Ended sine-wave generator for frequencies 800MHz and 400MHz,
and a 50ohm-Power-Splitter, so that the (+) and (-) of the differential STP cable
can be driven together (in common-mode).
b. View Differential Scope or Power Meter to measure cable conversion output at these two
frequencies, where the (+) and (-) of the differential STP cable are sensed differentially.
c. “PASS” a cable demonstrating it has output conversion measurement (SDC21) at least
12dB below the expected differential skin-effect loss (SDD21) at both 800MHz and 400MHz,
respectively. (i.e., note Figure 1 passes easily, and Figure 2 fails)
OR
2) Measure differential-to-common-mode conversion of a DVI cable assembly:
a. Apply Differential sine-wave generator for frequencies 800MHz and 400MHz,
where the (+) and (-) of the differential STP cable are driven differentially.
b. View Single-ended Scope or Power Meter to measure cable conversion output at these two
frequencies, and a 50ohm-Power-Splitter, so that the (+) and (-) of the differential STP cable
can be sensed for the common-mode signal.
c. “PASS” a cable demonstrating it has output conversion measurement (SCD21) at least
12dB below the expected differential skin-effect loss (SDD21) at both 800MHz and 400MHz,
respectively. (i.e., note Figure 1 passes easily, and Figure 2 fails)
Application Note HFAN-4.5.4 (Rev. 1, 04/08)
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