認知機能リハビリテーション

研究課題: 精神障害者の認知機能障害を向上させるための「認知機能リハビリテーショ
ン」に用いるコンピュータソフト「Cogpack」の開発とこれを用いた「認知機能リハビリテ
ーション」効果検討に関する研究
課題番号: H 20−こころ−一般−002
主任研究者: 帝京大学医学部
教授
池淵恵美
1、目的:統合失調症の認知機能改善可能性と、その就労支援への貢献について検討する。
① Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation (NEAR 、
Medalia ら(1998))を行い、認知機能リハの介入効果を検討する。
②「Cogpack」日本語版を用いた認知機能リハの無作為割り付け統制試験を行う。
③認知機能リハと就労支援の統合的実施による就労支援効果を検証する。
④統合失調症の認知機能リハ専用のコンピューターソフトを作成する。
2、研究方法
①∼③の対象は統合失調症又は統合失調感情障害をもつ患者である。
① 20-60 歳のものに Waiting List 法を用いた無作為割り付け RCT を実施した。介入群 16
名(平均年齢 33.4±8.2 歳、罹病期間 10.6±6.1 年)、対照群 16 名(平均年齢 33.6±7.2 歳、
罹病期間 12.5±6.2 年)に、群と時期を独立変数とした二元配置分散分析を行った。
②20-45 歳のものに Waiting List 法を用いた RCT を実施した。評価は PANSS、BACS、
LASMI の下位項目である「対人関係」と「労働」を用いた。現在介入を開始している途中
であるが、収集できているベースラインデータは、介入群が 22 名(平均年齢 34.2±7.4 歳、
罹病期間 11.9±8.3 年、PANSS 合計得点 52.3±23.8)、対照群が 23 名(平均年齢 34.3±7.3
歳、罹病期間 13.3±7.3 年、PANSS 合計得点 61.3±16.4)である。
③20-45 歳で就労経験があり就労意欲のあるものに、参加者にはブラインドで、募集の時期
によって就労支援のみ群(SE 群)、および認知機能リハ+就労支援群(CR+SE 群)に割り
付ける準実験法を実施した。評価は PANSS、BACS、LASMI、就労関連諸指標を用いた。
現在 SE 群が 62 名(平均年齢 35.5±6.4 歳、罹病期間 11.7±6.1 年、PANSS 合計得点 56.1
±24.3)で介入を開始しており、CR+SE 群は 2009 年 12 月以降、研究協力施設にて順次募
集の予定である。
④、上記の成果を踏まえ、リハビリテーション、コンピューター工学、神経心理学の専門
家による作成作業を行う。
3、研究結果・考察
①認知機能評価尺度である BACS の総合得点 Composite Score の相互作用が有意であり、
精神運動速度は有意な傾向を示した。いずれの下位尺度においても介入群の改善度が大き
かった。社会機能測定尺度 LASMI の「対人関係」因子は介入群のみ有意な改善が見られた。
②∼④は現在進行中である。
4、結論
認知機能リハにより認知機能の改善効果が示され、社会機能の一部も改善した。