nalysis - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

Analysis
JOGMEC石油開発技術センター IOR/EOR専攻
[email protected]
大野 健二
アナリシス
石油生産ピークを遠のかせる
埋蔵量成長
これからのエネルギーを支えるIOR/EOR技術
中東大産油地帯の政情不安をきっかけに、原油価格がそれまでの1バレル2ドルから30ドル超に急騰し、
世界経済を震撼させた二度にわたるオイルショック。その第一次からちょうど30年(1ジェネレーション)
を経た2004年、今度は中国、インド経済の台頭と折からの石油生産ピーク論議を背景とする供給不安に一
因をなす原油価格の高騰が起こり、過去最高のバレル56ドルを記録しました。
一・二次のオイルショック後、OECDに加盟する先進消費国は脱中東原油を目指し、省エネルギー、新
エネルギー開発、石油備蓄に力を注ぐとともに、台頭するOPECに対抗するため中東以外の大油田地帯で
ある北米や北海などでの石油埋蔵量の確保、生産量の増加に力を入れました。新たな投資により北海、ア
ラスカ、コロンビアなどの新規油田の開発を進めるとともに、既開発油田の埋蔵量を成長させる増進回収
(IOR/EOR)*1技術などの研究開発が官民あげて盛んに行われました。その結果、例えば英領北海油田群
では開発初期に予想された最大生産量をはるかに超え、かつ80年代後半に予想された生産減退を覆して現
在もなお重要な石油生産拠点の地位を維持しています(図1)。
石油生産のピーク論議は本誌2004年11月号や本号の他の記事に詳しいので、ここでは触れませんが、
そこに書かれていた通り、石油開発企業は絶え間ない創意工夫で可採埋蔵量の増加を目指し、継続的
な技術革新とそれを支える投資活動を行ってきています。本稿では埋蔵量の成長を支える技術、とくに
IOR/EOR技術についてできるだけ平易に解説していきたいと思います。最後にこれらの技術に関する
JOGMEC TRC*2の実績について簡単に触れることにします。
1. はじめに
うにどっぷんどっぷんと石油が溜まっ
溜まったプランクトンや植物の遺骸が
ているというイメージがわきます。し
土砂の堆積とともに地中深く沈んでい
本論に入る前に、石油の埋蔵量や
かしながら実際はこの緑の部分は図3
く過程で次第に高まる地温と圧力の影
可採量、回収率といった言葉に具体的
右上の写真のような地層岩石なので
響を受け、その一部が石油・天然ガス
なイメージを持っていただくために、
す。多くの場合、石油や天然ガスが溜
ちょっと遠回りでも石油や天然ガスが
まるような岩石は図3の下の写真のよ
どのように存在するか、どのように探
うな砂岩や石灰岩の種類で、中に連
査・開発されるのかというところから
続する非常に小さな孔が空いていて、
始めます。
孔を全部集めれば岩石全体の体積の
20 ∼ 30%を占めています。そこに油、
⑴ 油田・ガス田とはいったいどのよ
うなものでしょうか?
図3の左上に示したような絵をご覧
ガス、水が入っていて、その岩石の広
がりが油田・ガス田と呼ばれるもので
す。
になることがあると思います。よくこ
の緑色のところが油層であるという説
明がなされます。この図からすると、
地下に空洞があってそこにプールのよ
⑵ 石油の生まれ育ちは今あるところ
とは別
石油や天然ガスは、海や湖沼の底に
図1
英領北海油田群の生産量予測と実際
出典:引用文献3の図面から数値を読み込み作図
*1:IOR(Improved Oil Recovery),EOR( Enhanced Oil Recovery)ともに増進回収法を意味するが、EORが従来の三次回収法技術を指すことに対して、IOR
は坑井刺激技術なども含むより広い意味での増進回収技術を指す(後述)。
*2:TRC:Technology Research Center=石油開発技術センター、
旧石油公団の石油の探鉱・開発に関する研究機関。JOGMECの幕張に所在する技術センター
がその機能を引き継いでおり、現在も略称でTRCと呼ばれる。
25 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
(炭化水素)となってできていきます
まります。地下数千メートル、海上で
マイトやエアーガンによって発生させ
(図2)
。プランクトンや植物の遺骸が
はさらにその上に水深数百メートルと
た振動が地下に伝わり、地層の境界面
土砂とともに堆積してできた岩石(泥
いった遠隔の場所に石油が溜まりそう
から反射してくる振動を受信してその
岩が多い)を根源岩(ソースロック)
な形の地層があるのかどうかは主とし
経過時間や位相、振幅などのデータに
といいます。ここでできた石油・ガス
て地震の波を使って探ります。ダイナ
より地下の構造を解析します(図5)
。
は図4のように周りの水との比重の差
から数百万年、数千万年かけて岩石中
(地層中)
を移動し現在の位置に溜まっ
て油田・ガス田となったのです。
⑶ 油田・ガス田を探す方法
Analyysis
Ana
nalysis
石油や天然ガスは一般に周りにある
水より比重が軽いことから、上部に流
体を流しにくい密な地層(図3の濃い
色の地層)が蓋となっている、上に凸
になった形の地層や、断層で行き止ま
りになった地層、岩塩で盛り上げられ
行き止まりになった地層などのところ
に溜まる可能性が高いのです。石油を
探すことはまず、地下深くにあるその
ような地層(岩石)を探すことから始
図2
石油天然ガスの生成
出典:絵図は石油鉱業連盟編「石油開発技術のしおり」
An
ys
na
l
y
sis
図3
油ガス田を形成する地層岩石
出典:絵図およびコア写真は石油鉱業連盟編「石油開発技術のしおり」
2005.5. Vol.39 No.3 26
石油生産ピークを遠のかせる埋蔵量成長
原理的には図6のような人間ドックで
仕切られ石油・天然ガスの分布が複雑
広がりを、また井戸から得られた岩石
使われる超音波エコーに似ています。
になっています。しかしこのような複
サンプル、井戸の孔の周り1m程度の
しかし、何センチか下の皮下脂肪の厚
雑な地層の状態は、開発井がたくさん
岩石の電気的性質、音響的性質から得
さを探ることと数千メートル下の岩石
掘られ石油の生産が進んだ結果、情報
られる空隙比率、油・水の比率、さら
の石油が入っているかもしれない岩石
量が増えた時点で初めて推定できるこ
にテスト生産や圧力データから得られ
を探ることの間には不確実性に大きな
とで、開発投資を決定する段階では十
る平均的な流れやすさのデータなどか
違いがあります。ほんのわずかな誤差
分には把握できないのが普通です。
ら、油層モデル(図9)を構築し、数
で解釈される地下構造の形が大幅に変
石油の開発では初期に巨額な投資を
値シミュレーションによっていろいろ
わってしまうことも多々あります。
行い、20年にも及ぶ生産期間を通じて
な開発条件における将来の石油・天然
資金の回収を図ることになります。地
ガス生産プロファイル(推移)を予測
震探査で得られる油層の大まかな形、
し、油田開発の経済性算出に必要な基
⑷ 石油や天然ガスを直接探査する方法
油ガス田となりうる地層が見つかっ
ても、現在の技術では数千メートル下
の地層岩石中に石油や天然ガスが入っ
ているか、それとも水しかないかを直
シール
接確実に知ることのできる方法はあり
ません。石油が溜まっている可能性の
貯留岩
ある地層岩石に井戸を掘って、そこに
到達して初めて石油・天然ガスの有り
無しを知ることになります(図7)
。1
油田
本の試掘用の井戸を掘削するには10
4
∼ 20億円以上、期間にして3 ∼ 6 ヵ月
2
以上かかることがあります。
根源岩
⑸ 油ガス田開発に伴う不確実性リスク
た情報から、地下の油層の大きさ、広
1
基盤岩
数坑の井戸により、石油・天然ガス
が発見されるとそこで得られる限られ
3
①根源岩で生成した石油は微細な割れ目を通って根源岩から排出(一次移動)される。
②空隙の多い貯留岩に入った油は、浮力によって地質構造の高まりに移動する(二次移動)。
がり、性質を推定し、埋蔵量を算定
③地質構造(シール)によって行くてをはばまれた油は貯留岩に貯まる(集積)。
し、開発投資を決定します。図8のよ
④集油地質構造(トラップ)を満たした油は、こぼれ出して別のトラップに移動することもある。
うなケースでは、油層は断層によって
図5
地震探査による地下構造のイメージング
出典:TRC
27 石油・天然ガスレビュー
図4
石油天然ガスの移動と油ガス田の成立
出典:絵図およびコア写真は石油鉱業編「石油開発技術のしおり」
図6 超音波エコー診断(一般)
地質構造図
出典:TRC
配置された圧入井から、海水などを圧
坑井(井戸)の掘削
図7 出典:絵図は石油鉱業編
「石油開発技術のしおり」
す。ここに井戸を掘りこんで出口を作
入して油層内の圧力を高く保つことで
ると、この圧力により石油が井戸底
石油の生産を維持する水攻法が開発の
礎データを得ます。限られた情報から
に押し流されて生産されます(図10)。
早い時期から採用され、条件のよい油
如何に精度の高い生産予測を行うかに
必要に応じてポンプを用いてくみ出し
田では50%程度まで回収できるように
技術力・ノウハウが示されます。
ますが、油層の中の圧力が下がれば井
なってきています。水攻法による生産
戸まで流れ出なくなります。自然な生
が進み、油層空隙内の水の割合が増え
⑹ 石油の生産
産では一般に油層の中にある石油の5
るにつれ石油と水の両方が流れるよう
油層は、連続する小さな空隙内に、
∼ 25%しか回収できません。現在は
になり、最後には水の流れが主になっ
油層周辺の圧入井からやパターン で
An
例えば石油70%、塩水30%の割合で、
*4
ys
水頭圧*3より高い圧力で詰まっていま
て石油は流れ出なくなります。取り残
生産井戸
一次生産の終了
生産
圧力
p 油ガス層内の圧力
na
l
y
sis
図8
Analyysis
Ana
nalysis
アナリシス
pwf 井戸底の圧力
油ガス層の断面
図9
3次元油層モデル
出典:TRC
図10
石油の一次生産に寄与する油ガス層内の圧力
出典:TRC
*3:その深さまで水などの溶液によって満たされることによって生ずる圧力。この場合は、岩石の過重が加わることで、空隙に封じ込められた石油などの
圧力はさらに高くなる。
*4:採油井の周りに圧入井を格子状に配列(パターン)し、採油井からの石油の生産量を増加させる。採油井を中心に三角形に圧入井を配置する4点法、同
様に四角形に配置する5点法などがある。
2005.5. Vol.39 No.3 28
石油生産ピークを遠のかせる埋蔵量成長
された石油を回収するためには
石油と水と岩石の内部界面に働
く毛細管圧を変化させる、高価
な界面活性剤などの化学品やガ
スを地上から送りこむ手法;増
進 回 収 法(EOR) の 適 用 が 必
要 に な り ま す。EORを 実 施 す
るためには、実験室でのデー
タ取得から数値シミュレーショ
ン、現場パイロット操業、モニ
タリング、油層評価に至るまで
幅広いノウハウが必要です。 なお、天然ガスは石油に比べ
てガス層内を流れやすいこと、
ガスの膨張率が高くガス層の圧
力減退が小さいことなどから一
図11
般に回収率が80%以上と高いた
め、通常は増進回収法の対象と
は考えられていません。
図12
油層周囲からの水攻法
出典:引用文献1から転用
圧入井を油層内に配置した水攻法
出典:引用文献1から転用
2. IOR/EOR技術
ギーと呼ぶ)により井戸に流れ出る石
す。ここで一次回収はほぼ終了です。
油の生産。井戸の底にポンプなどを設
一般に一次回収率は20%程度であり、
⑴ 石油の回収率
置してくみ上げるものも含まれます。
油層の周囲にある水層が大きく、圧力
さて、石油の回収率が小さいこと、
石油が流れ出ていくと油層内の圧力は
の補給が十分長く保たれる場合には
油層内に取り残す割合の大きさに驚か
下がり始めます。油層と石油の性質に
50%近いケースがある一方、石油が重
れた方も多いことでしょう。ここから
よってはごく短期間に圧力が下がるこ
質であったり、流れにくい油層であれ
本論である石油の埋蔵量成長を支える
ともあります。石油は膨潤して減った
ば10%に達しないことも少なくありま
IOR/EOR技術について少し詳しく述
油層空間を補い、さらに圧力が下がる
せん。
べることにしましょう。石油の生産に
と軽質な部分をガスとして分離しま
二次回収とは、油層の周辺やパター
ついて一次回収、二次回収、三次回収
す。圧力が下がり続ければ油層に連
ン 化した坑井配置で海水などを圧入
という開発のステージに分けた呼称が
続するガス層のガスが膨張したり、油
したり、油層の頂部からガスを圧入
使われてきました。一次回収は油層
層の周囲や下部の水層から水が浸入し
して油層内の排油エネルギーを補助
の持つ自然のエネルギー(排油エネル
てきて油層圧力を補充する場合もあり
し、かつ圧入された水、ガスによって
ます。しかし、最後は油層の圧力が下
石油を生産井に向けて押し流す(置換
がりすぎて井戸に流れ込まなくなりま
する)ことです。今日では油層の圧力
石油と
地層水
深度方向の流れやすさに違いがある油層での水攻効率
OIL
k2
WATER
k3
圧入水
水攻法
図13
k1
水攻法における石油の水平置換効率
出典:引用文献1から転用
29 石油・天然ガスレビュー
k 2> k 3 > k 1
浸透性
図14 水攻法における石油の垂直置換効率
アナリシス
が下がらないように開発の初期から水
不均質性がありますと、図14のように
ミクロ的にも不均質なのが普通ですか
を圧入するのが一般的です(水攻法)
。
圧入した水が一部の流れやすい地層を
ら、各々のパラメータはたいてい小さ
水圧入を施した場合の平均的な回収率
通って生産井に到着し、流れにくい部
くなりますので、水攻法による平均的
は35%といわれています。これも条件
分にある石油は取り残され、Erは1よ
な回収率が35%程度になってしまうの
の良い(軽い油質、浸透性のよい均質
りずっと小さくなります。
です。
な油層)油田では50%以上、悪ければ
微視的置換効率EDというのは、岩
15 ∼ 20%ということになります。せっ
石空隙内の石油に接触した圧入水がど
かく油層に排油エネルギーを供給して
のくらいの効率で石油を押し流すかと
いるのになぜ、こんなに取り残してし
いうことです。小さな空隙内では石
IORとEOR技術の定義は実はかなり
まうのか不思議に思われるかもしれま
油、水、岩石の互いの表面に界面張力
あいまいに使われています。EORと
せん。それでは、回収率について少し
が働きます。例えば岩石の表面が石油
は旧来は熱攻法、ケミカル攻法、ガス
考えてみることにしましょう。
に濡れやすい性質(親油性)を持って
ミシブル攻法などの三次回収技術と訳
水攻法を想定した油田の回収率Eは
いると、図15のように圧入された水が
され、油層へ何らかの流体を圧入し、
以下の式で表すことができます。
一部の石油を押し流した後、水の比率
石油を生産井に向けて押し流すことに
E=容積置換効率Ev×微視的置換効率E D
が高くなると水だけが流れて、石油は
加えて、圧入された流体が油層内の岩
容積置換効率というのは水攻法の場
岩石の表面に囲まれた孔の奥に取り残
石・石油の片方ないし双方と何らかの
合、圧入した水が油層のどのくらいの
されます。こうしてEDは1よりも小さ
反応をして石油の回収に良い影響与え
部分までうまく入っていったかという
い値、水攻法の場合0.6 ∼ 0.7程度にな
る条件を作り出すようなプロセスと定
ことです。Ev=(水平置換効率E A×
ります。ここに第3の存在としてガス
義されています(引用文献2, 4)
。回収
垂直置換効率Er) とも表現されます。
があればもっと小さな値になることも
に良い条件とはすなわち微視的置換効
岩石が仮に水平方向に均質な流れやす
あります。
率EDを高めることで、例えば圧入し
さをもっていても、水より石油の粘性
仮に貯留岩の性状がよく、油田の
た流体が石油・水・岩石の間の界面張
が高い場合などは図13のように周囲に
開発当初から水攻法を施したと仮定し
力を下げたり、石油を膨潤させたり、
石油を残したまま水が先走りをして
て、水平置換効率が9割、垂直置換効
石油の粘性を下げたり、岩石表面の親
圧入井から生産井に到着してしまい、
率が8割、微視的置換効率が7割であっ
油性/親水性を変化させることなどで
EAは1より小さくなります。また油層
た と し ま す と、 回 収 率E=0.9×0.8 す。よくTVの洗剤の宣伝で、油汚れ
を形成する岩石は堆積して岩石になる
×0.7=0.50、50%にしかなりません。
が絡まった繊維の間からポロッととれ
ときの状況で、例えば粒の細い泥が多
通常、貯留岩は図16のように岩質が異
る感じのイメージがありますが、界面
かったりして流れやすさが均質ではあ
なっていて流れやすさが違ったり、と
張力を下げて石油が流れやすくすると
りません。深度の方向にこのような
ころどころ断層で区切られていたり、
いう説明には、それが最も分かりやす
Analyysis
Ana
nalysis
技術
An
ys
na
l
y
sis
図15
⑵ 回収率を改善するIOR技術とEOR
水攻法における微視的置換効率
出典:引用文献1から転用
2005.5. Vol.39 No.3 30
石油生産ピークを遠のかせる埋蔵量成長
図16
油層の不均質な性状を表す油層モデル
出典:TRC
いかもしれません。
として最も目覚しいのは井戸を掘り増
井掘削・仕上げ技術が最大の功労者で
一方、IORは石油の増産、可採埋蔵
すことです。例えば、1km間隔で設置
しょう。90年代から技術が格段に進歩
量の増加に寄与するあらゆる手段を指
されている井戸の間に1本ずつ間掘し
し、かつコストも通常の坑井の1.5倍
し、EORも含んでいます。狭義には、
ていけば水攻水の到達や生産井への流
程度に低減されたことから、多くの坑
主として水攻法と圧力維持のためのガ
れはずっと密になり、取り残しの石油
井がこの方式で掘削されるようになり
ス圧入などのいわゆる二次回収法と水
を相当に減らすことが期待できます。
ました。水平坑井は坑井が油層に接し
平坑井や間掘り、置換効率を改善する
ただし、井戸を掘削することは最もコ
ている区間が長く取れることから、縦
ポリマー圧入、生産性や圧入性を改善
ス ト の か か る 操 業 で あ り、 例 え ば
井戸の数倍高い生産性や圧入性が期待
する坑井刺激法や人工採油法など、少
4,000mの坑井を1本作るには陸上であ
でき、また一本の井戸から数本の脚を
し乱暴な言い方ですが水平置換効率
れば5億円から10億円ぐらいかかるわ
別々の方向や層に出すこともでき、こ
EA×垂直置換効率EVを高める技術全
けで、これに見合う
般を指しています。近年重要視されて
だけの増産が一定
いる地震探査技術と地質学、
油層工学、
期間内に得られる
統計学を統合した油層の詳細なモデル
かどうかが問題と
化技術
(油層キャラクタリゼーション)
なります。また海洋
は増進回収技術をどのように適用する
油田の場合には、既
かを考える上で不可欠の技術になって
存の海上構造物か
いて、これをもIOR技術と位置づける
らでは追加坑井を
専門家もいますが、通常はIORの補助
掘削する余地がな
技術として別にされています(引用文
い場合が多いため、
献4)。一方、EORとは微視的置換効
追加掘削を行うた
率EDを高める技術と考えればわかり
めに要するコスト
やすいのではないかと思います。
が追加増産に見合
わないケースが少
⑶ IORの現状
なくありません。こ
水攻法の容積置換効率を高める方法
の分野では水平坑
31 石油・天然ガスレビュー
図17 いろいろなタイプの水平坑井
アナリシス
ないコールド生産量は含まれていませ
き残りました。西テキサスの炭酸ガス
法などの置換効率を高めるのに効果的
ん。
攻法は、炭酸ガスの供給インフラと生
です。近年では石油の取り残された場
図19、 図20は 米 国 のEORプ ロ ジ ェ
産インフラの充実を図り、20ドル/バ
所に水平坑井を伸ばして回収すること
クト数とEOR生産量の推移を表して
レルという長期的な原油価格の設定で
も盛んに行われています(図17)
。
います。オイルショック後の80年代
商業的に成立しています(引用文献8,
に 種 々 様 々 なEOR技 術 が 研 究 さ れ、
9)。ケミカル攻法は高い回収効率が期
⑷ EORプロジェクトの現状
フィールドのプロジェクト数も非常に
待されていましたが、原油価格40ドル
(OGJ EORレポート2004)
増えました。しかしながら、後ほど触
/バレルという採算限界の壁を越えら
米国の著名な業界誌であるオイルア
れますがEORは高価な流体を油層に
れず、ほとんど姿を消しています。お
ンドガスジャーナル(OGJ)は、隔年
送り込むために初期コスト、操業コス
そらく今後も重質油に対するスチーム
で全世界のEOR統計を報告していま
トが大きい上に、圧入流体の置換効率
攻法と中軽質油に対するガス攻法が
す(直近では2004年4月12日号)
。これ
などの不確実性も高く、リスクの残る
EORの2大潮流であることは変わらな
によれば全世界のEORによる石油の
プロセスです。このため原油価格の低
いと思われます。
生産量(増産相当分のみ)は200万バ
下に脆弱で、全体としてはインフラが
総じて、1980年代後半から続いた原
レル/日で、米国の70万バレル/日、
整備され、歴史のあるプロジェクトが
油価格低迷期には埋蔵量成長の効果
インドネシアの22万バレル/日の他、
生き延び、他は淘汰されています。例
が早く出てリスクも少ない、規模の大
中国やベネズエラが盛んです(図21)
。
えば、技術的に成熟した米国カリフォ
きい油田における坑井の追加や水平坑
EORの種類ではスチーム圧入による
ルニアの重質油に対するスチーム圧入
井、水攻法の強化などのIORに優先的
重質油の生産とガス圧入がほぼ5割ず
EORの操業コストは過去に10ドル/
に投資が行われ、新規のEORは必ずし
つとなっています。なお、この数値に
バレルを超えていましたが、原油価
も優先順位は高くなかったというのが
カナダのオイルサンドの露天掘り、ベ
格の低落時に懸命のコスト削減を行
EOR生産量、プロジェクト数が増え
ネズエラ・オリノコタールの熱を使わ
い、8ドル/バレル程度まで下げて生
ていない理由であろうと思われます。
Analyysis
Ana
nalysis
れらの適切な坑井の配置によって水攻
An
ys
na
l
y
sis
図18 水平坑井の活用による取り残し石油の回収 北海油田の事例
2005.5. Vol.39 No.3 32
石油生産ピークを遠のかせる埋蔵量成長
⑸ 変わるEOR技術への期待
これまでと違うのは中東などの大産
油国がEORに強い関心を持ち始めて
性をエンジニアリング成果をもとに示
400
500
熱攻法EOR
ケミカル攻法EOR
ガス攻法EOR
300
400
熱攻法EOR
200
300
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
1994
1996
1998
2000
2002
2004
1982
社は既生産油田の再開発はもちろんの
図19
1992
ています。イランでは、国営石油会
1990
0
1990
転を求める声が上がるようになってき
1988
0
100
1982
EOR部門が組織され積極的な技術移
1988
100
200
していく中で、国営石油会社の中に
1986
究チームが炭酸ガス攻法の効果、経済
ケミカル攻法EOR
ガス攻法EOR
1986
の重要性が伝わり、また、TRCの研
500
600
1984
でしかありませんでした。その後、そ
600
700
1984
EOR適用など、まったく低い認識度
x1000バーレル/日
x1000バーレル/日
索していた頃は、中東の巨大油田での
米国におけるEOR生産量の推移
700
800
いる点ではないでしょうか。筆者が
1995年にクウェートとの共同研究を模
米国におけるEOR生産量の推移
800
600
こと、新たな開発油田でも比較的早期
米国におけるEOR生産量の推移
出典:引用文献5の数表から作図
原油価格と米国のEORプロジェクト数の推移
60
原油価格と米国のEORプロジェクト数の推移
600
500
60
50
500
400
50
40
件数
400
300
40
30
件数
のEOR導入を想定しています。メキ
300
200
30
20
200
100
20
10
100
0
10
0
シコは同国最大のカンタレル油田に90
年代半ばから窒素ガスの圧入を成功さ
EORや空気圧入EORへの外資導入を
模索しています。リビアでもEORを
適用する油田再開発への外資導入が検
討されています。石油生産のピーク論
ビジネスの形態としてEORが身近な
ものになってきていると感じられま
0
ガス攻法
図20
60
米国以外でのEORプロジェクト数
原油価格の変動と米国におけるEORプロジェクト数の推移
出典:引用文献5の数表から作図
米国以外でのEORプロジェクト数
50
60
プロジ�
プク
ロト
ジ数
�クト数
ガス圧入EORのうち石油随伴ガス
0
19
78
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
す。
⑹ 最も高い回収率が期待される炭酸
ケミカル攻法
ガス攻法
熱攻法
ケミカル攻法
原油価格
ガス攻法
熱攻法
原油価格
19
78
19
80
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82
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94
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96
19
98
20
00
20
02
20
04
とEORの貢献という視点というより、
$/BBL $/BBL
せていますが、今後、炭酸ガス圧入
や天然ガスを圧入する方法はガスソー
似ています。天然ガスに比べて比較的
40
が整備され、運ばれたCO2は0.7ドル/
スが油田の身近にある点で有利です
低い圧力で石油と相互に溶け合う(ミ
1,000立方フィート程度の価格でEOR
ケミカル攻法EOR
が、近年の天然ガスに対する需要は大
シブルな)状態になるため徴視的置換
ガス攻法EOR
用に取引されています。このCO
2によ
その他
きく、EORに使えるのは天然ガスの
20
30Dが1に近くなり、高い回収率を
効率E
販売が困難なガス消費地から遠く離れ
達成します。これに加えて、地球環境
10
20
商業的に経済性が成立しています(い
熱攻法EOR
た地域の場合や腐食性の高いガスで販
保護への役割という面で、今後インセ
く度かの原油価格の低迷にも耐え、1
売にコストがかかる場合などに限定さ
ベネズエラ
カナダ
中国 トリニダード・トバゴ インド
インドネシア
ンティブが期待され得るからでもあり
バレル20ドル程度の長期油価予測に基
れる傾向が強くなってきました。
0
ます。
炭酸ガスの圧入は、究極的に最も
現在炭酸ガスEORが商業ベースで
回収ポテンシャルの高いEOR手法と
大規模に成功している米国西テキサス
な 圧 入CO2の 量 は5,000 ∼ 15,000立 方
なってきました。炭酸ガスは油層圧
では、近隣の州にある天然の炭酸ガス
フィートとなっています(引用文献9)
。
力・温度の下では石油にとても性質が
田から油田地帯までパイプライン網
これは、炭酸ガスコストだけで3 ∼ 10
33 石油・天然ガスレビュー
50
30
40
0
10
ベネズエラ
カナダ
中国
トリニダード・トバゴ
その他
熱攻法EOR
ケミカル攻法EOR
る三次回収的EORは、約20年前から
ガス攻法EOR
づいています)。統計によるとEORで
インド インドネシア
増産される原油1バレル当たりに必要
0
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02
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0
19
アナリシス
性があるという結果を得ています。
米国以外でのEORプロジェクト数
炭 酸 ガ ス の 排 出 権1ト ン 当 た り10
60
ユーロというのは、為替レートにも
50
プロジ�クト数
よりますがおよそ1,000立方フィート
40
その他
ケミカル攻法EOR
ガス攻法EOR
熱攻法EOR
30
20
10
当たり0.45ドルに相当します。先ほど
の、中東油田で試算した排ガスからの
炭酸ガス回収コスト試算値の下限1.20
ドル/ 1,000立方フィートに対して0.45
ドルのインセンティブが得られれば、
北米の商業的炭酸ガスEORでの炭酸
0
ベネズエラ
カナダ
中国
トリニダード・トバゴ
インド インドネシア
ガス売買価格と同等程度になることが
Analyysis
Ana
nalysis
分かります。もちろんプロジェクトの
経済性は油田の条件、権益の条件など
様々な経済要因に影響されることは確
米国以外におけるEORプロジェクト数
図21
出典:引用文献5の数表から作図
かですが、排ガスからの炭酸ガス回
収のEORへの転用が荒唐無稽なアイ
ディアでないことがお分かりいただけ
ドルになる計算です。中東巨大油田の
的採算性が成り立つ程度の炭酸ガス価
ると思います。原油価格が現在(2004
生産コストが現在2 ∼ 5ドル/バレル
格が設定されていると考えてよさそう
∼ 2005年冬)のようにバレル50ドル
といわれるだけに、EORプロジェク
です。一方、火力発電所などの燃焼排
を上回ればもちろんのこと、長期的に
トの持つ厳しさは理解できると思いま
ガスからCO2を回収してEORに利用す
30ドル後半から40ドルを維持する、技
す。生産井に帰ってくるCO2のリサイ
るプロセスも実用化の域にあり、近年
術革新により炭酸ガス分離コストが現
クルコストを下げるなどの努力が続け
の温暖化ガス対策に関連した技術開発
在より2 ∼ 3割安くなる、あるいは先
られているのはもちろんのことです。
の進展で大幅に低コスト化が図られて
進国の地球温暖化防止シナリオの達成
炭酸ガスEORのネックはそのソー
います。とくに日本にはこの分野に高
が困難になり排出権価格が高騰する。
スがどこにでもあるわけではないとい
い技術があります。
これらのどれか一つ以上が現実のもの
うことです。天然の炭酸ガスソースで
当機構TRCが産油国との共同研究
となれば、産油国(大多数が発展途上
ない例としては、カナダのサスカチェ
の一環として実施したスタディでは、
国で排出抑制義務を負わない)で炭酸
ワン州ウエイバーン油田があります。
アラビア湾の巨大油田を対象に周辺の
ガスを火力発電所の排ガスから分離回
ここでは、近隣の米国内にあるアンモ
火力発電所の排ガスから炭酸ガスを
収し、油田に圧入してEORと地中隔
ニア製造プラントで分離される炭酸ガ
分離してEOR用に供給するケースを、
離を両立させること(図22)が経済的
スをパイプラインでカナダに運び、油
異なる2 ヵ国で試算しています。火力
に成立し得るものと考えられます(引
田のEOR用に圧入を開始しています。
発電プラントはもとより、電気・水
用文献4)。
筆者が現地監督から聞き出した炭酸ガ
などの各種ユーティリティの供給コス
ス購入価格はおよそ0.7USドル/ 1,000
ト、人件費、建設コストなども現地調
立方フィートに近いものでした。この
査に基づく現実的な数値を用いて詳細
プロジェクトは炭酸ガス地中隔離と
にスタディしたところ、かなりの幅は
炭酸ガスEORが回収率向上に最も
EOR両立の好例として喧伝されてい
あるものの1,000立方フィートの炭酸
有望と言いましたが、実際、火力発電
ますが、インセンティブ無しでも商業
ガスを1.5ドル前後で供給できる可能
所に炭酸ガス分離プラントを建設す
An
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sis
⑺ ガス源がどこにでもあって、初期コ
ストも安価な空気圧入EORの出番
炭酸ガス排出権ビジネス
2005年2月16日に地球温暖化防止を目指す京都議定書が発効し、3月9日炭酸ガスの排出権ビジネス(スポット取引)
が欧州エネルギー取引所で開始された。この日の取引では排出権CO21トン当たり10.40ユーロ(13.89USドル)の値が
つき、出来高は2万トンであった。EUでは2005年から域内1万2000箇所の工場や発電所に約22億トンの排出枠を配分。
排出量が枠を超過した企業にはトン当たり40ユーロ(約50ドル)の罰金が科せられる一方、余裕のある企業から割
安な排出権を購入し目標を達成することも出来ると報道されている。(ビジネスアイ、旧日本工業新聞05.03.11)
2005.5. Vol.39 No.3 34
石油生産ピークを遠のかせる埋蔵量成長
るには巨額の初期コストがかかりま
す。残存埋蔵量の大きな巨大油田を対
象にしたり、近隣にたくさんの対象油
田が想定されるような場合は、大規模
な投資が可能となるでしょう。一方、
規模の小さい油田の場合はどうでしょ
うか。随伴ガスは利用できず、炭酸ガ
ス分離装置への巨額の投資はできませ
ん。そこで、地球上如何なるところで
も利用可能な空気をガス源とすれば、
圧入用コンプレッサーを中心とする初
期投資、操業コストも大きくないこと
から、小規模な油田をも対象にできる
可能性があります。このように空気圧
入法も今後の有望なEOR手法と考え
られ始めています(引用文献10)
。空
気を油層へ圧入することは、古くから
重質な原油を対象に、その重質成分を
酸化して発生する熱を利用する火攻法
が試行されてきましたが、反応メカニ
ズムが複雑で制御が難しいことから必
ずしも大きな成功は得られませんでし
た。近年、
軽質な原油の油層に圧入し、
図22
燃焼排ガスからのCO2の回収・隔離とEORを両立させるプロジェクト
出典:TRC
その軽質成分の一部を比較的低温で酸
化しながら生成させる熱を利用しつ
る例があります。ガス圧入といえば石
空気圧入が注目され始めたわけです。
つ、炭酸ガスと窒素で残存する原油を
油の生産に伴って出てくる随伴ガスや
そこで例えば、北海のエコフィスク油
生産井に押し流すEORプロセスが別
天然ガスの圧入がまず始めに採用され
田やインドネシアのハンディル油田な
のジャンルとして実用化されてきまし
たために、これまで空気圧入は必ずし
どの成熟した大規模な油田で空気圧入
た。これがここでいう空気圧入法です。
も広く普及はしていませんでしたが、
の適用が検討されています。TRCで
回収効率は炭酸ガスEORに比べれば
天然ガスの需要が増大し、随伴ガスや
も基礎研究に目処をつけ、フィールド
高くはありませんが、水攻法適用後の
天然ガスは極力販売に回され、圧入用
実証へ向けた検討を開始しています。
油田からもさらなる回収に成功してい
ガスの不足が課題になってきたため、
3. TRCにおけるEOR
研究の実績、今後の計画
た。以来、重質油を対象とする火攻法
スト)までを多くの場合民間企業と共
を皮切りに、ケミカル攻法、スチーム
同で実施しています。TRCは、各種
攻法、炭酸ガス攻法・炭化水素ガス
EOR技術に実績がありますが、特に
TRCは石油公団時代の1972年に設
攻法、そして近年では空気圧入法の研
ガス攻法の中の炭酸ガス圧入、高圧天
立されて以来、探査や油層工学関係に
究開発を鋭意推進してきています(図
然ガス圧入に実績があります。関連す
加え、EOR技術の研究を業務の大き
23)
。
る 実 験 室( 相 挙 動 試 験、MMP試 験、
な柱としてきました。1978年には国際
これらの研究開発はいずれも実験
油層条件下コア掃攻実験、X線CT透
エネルギー機構IEAの活動として先進
室レベルから始まり、数値シミュレー
視下掃攻実験など)は日々の稼動によ
消費国10 ヵ国間でEORに関する研究
ション評価(油層シミュレータの開発
り高度なオペレーションレベルを維持
協力を行う協定が締結され、日本の代
も時には進めながら)を経て、最終的
しています(図24、25)
。TRCを視察
表研究機関としてTRCが参加しまし
には油田での実証試験(パイロットテ
したイラン、クウェート、メキシコな
35 石油・天然ガスレビュー
ys
TRCにおけるIOR/EORの技術開発
出典:TRC
Analyysis
Ana
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An
図23
アナリシス
2005.5. Vol.39 No.3 36
na
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石油生産ピークを遠のかせる埋蔵量成長
どの産油国国営石油会社幹部からも技
失敗すれば10億円もする坑井をだめに
タディや研究を、業際型プロジェクト
術レベルの高さに対する賞賛を得てお
したり、とくにEORの場合は悪くす
チームを組成して複数同時に進めてい
り、この分野で国際的な技術競争力を
ると財産の入っている油層そのものの
ます。現地での共同作業、産油国から
有することが認められています。
一部を破壊してしまう可能性があると
の技術者来所、双方で開催する報告会、
また、複数種類の油層シミュレータ
みなされ、オペレータは極度に慎重に
英文による報告書作成など人材の育成
も日々使用されています。炭酸ガス攻
なります。このため、技術を開発して
によい環境が整っています。今後、共
法ではトルコおよび国内2油田で実施
も実証する場(適切な油田)を得るこ
同研究や共同スタディ、出向などいろ
したパイロットテストにおける地上施
とが非常に難しいのです。
いろな形でTRCを利用いただくこと
設設計、実オペレーションデータ、モ
一方、産油国は自国の資源のさらな
で、産業界としての技術の開発・検証・
ニタリングと評価手法に関するノウハ
る発見、効率的な開発、最大限の採取
蓄積や人材育成に役立つ場を提供でき
ウが活用できるでしょう(図26)
。最近
を追求し、オペレータである外国企業
るものと考えています。
でもクウェート、アブダビの油田を対
に対し、高い目標と厳しい技術力を要
象に実験研究、シミュレーションによ
求する傾向がますます強まっていま
る適用性評価を行っていますが、炭酸
す。これらに応えられる技術力を示さ
ガス源として油田近隣の火力発電所の
ないとオペレータとしての事業への参
排ガスからの回収プロセス・設備設計
入はもとより、パートナーとしての資
を実施し、コスト分析も行っています。
格も与えられない情勢になりつつあり
TRCはその中期目標に掲げられたとこ
ます。産油国に提示する計画書に新規
ろに従い、実験室の充実をベースとす
技術(例えばEOR)
る基盤的技術開発、操業現場の課題を
を載せるためには、
解決する技術サポートを推進し、文字
石油開発会社は何ら
通り「我が国開発企業の技術センター」
かの形で、技術の適
として本邦開発企業の技術力増強に役
用実績を持っている
立てるよう日々努力しています。
必要があるのです。
石油開発現場の特徴は、実際の油ガ
TRCは 産 油 国 と
ス田で検証された技術で無ければ採用
の 技 術 協 力・ 共 同
されないというところにあります。ど
研究を推進していま
のようにポテンシャルのある技術で
す。 こ れ ら を 通 じ
あっても地下に存在する特定の油層条
て、データの豊富な
件に起因する不確実性が避けられず、
油ガス田に関わるス
図24
図25
37 石油・天然ガスレビュー
ガスEOR実験装置
出典:TRC
図26
TRC所有のX線CTを用いたEORコア実験
出典:TRC
海外の油田で実施したCO2EORパイロットテストの圧入ガス処理プラント
出典:TRC
.M からメイルが入ってきた。向こうはサ
Analyysis
Ana
nalysis
プロローグ
―
―
P
na
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sis
G
・
ys
プロジェクトEOR
マータイム・オンだから、今、日曜夜の7 時。ファミリーサービスを終えてからのこの時間帯が一番
月曜日の朝一番にPC を立ち上げると、シカゴの相棒
4.OGJ Special Report, Future Energy Supply-4: Potential from IOR, Aug.4, 2003
社 と の 次 回 技 術 協 力 会 議 に 提 案 す るE O R の ス タ デ ィ・ ス コ ー プ を 固 め る こ と で あ る。
industry, society, OGJ Jul.14, 2003
集中できると言っていたが、早速ジョブの打ち合わせである。目下の課題は1ヵ月後に開催される国
件がヒットしている。炭酸ガスEOR で国際学会に投稿した5 件をリ
2.Green D.W., Enhanced Oil Recovery, SPE Textbook Series Volume 6, 1998
営石油会社
相棒は提案の中にラボワークを入れることが重要だと言う。油層シミュレーションは彼のようなフリー
のコンサルタントでもできる空鉄砲だが、ラボの蓄積は実弾だから説得力が違うと言う。わかったと
とめを依頼する。あとで基盤研究チームにラボワークのドラフトを持ち込んでラボの専門家にコンサ
ルテーションを受けることにしよう。
EOR で検索して、やっぱり
2
それから、TRCのホームページに行って、TRC論文・学会発表のチェックをしておこう。CO 、
それから、まだ、先の話だが、パイロットテストを計画するならプラントの概略設計と設備費用を試
算する必要が出てくる。確かソフトウエアツールがあったはずだ。検索〝EOR 〟AND〝コスト〟、
﹂のマニュアルがあるが、
件あった。そうそうEOR プラント建設コスト推算ツール﹁ SuperIOR
プロセス屋はチームメンバーにいないからきついな。えーと、
精通者は誰だったかな。検索結果ではK.
で
時半か。シカゴの相棒はまだ起きてるな。金曜日までにラ
8.Griggs Reid B., State of the Industry in CO2Floods、SPE38849, 1997
マイル向こうの相棒に返事をして、頬をたたく。こっちはまだ週明けのウォームアップ中だ。
をAND検索にして入れてみる。 件のレポートが登録されている。
〝コアフラッド〟を追加してみる。
検索キーにまず〝炭酸ガス〟と〝EOR〟
イントラのブックマークから﹁TRC成果検索﹂を選択して、
ジェクトの事前スタディのものだから今回のケースに近い。役に立ちそうだ。ダブルクリックして詳
細情報を見ることにする。報告書の詳細目次がある。
﹁炭酸ガスコアフラッド実験およびシミュレーショ
ン﹂の章が使えそうである。プリントアウトする。もう一件、他の国内フィールドパイロットの報告
書目次も出力しておく。
ディ結果で、去年国営石油会社に報告したものだ。当事者間での守秘義務があるから、図面などの取
同じように英語で検索してチェックしておく。9 件がヒット。英文のは中東油田を対象としたスタ
り扱いは注意が必要だが、プロセスを説明する英文は大いに活用できて助かる。これでコアフラッド
実験の仕様書のドラフトができるから、成果普及チームに成果登録番号の一覧をつけた借出フォーム
を送って必要なレポートを取り寄せることにする。チームメイトの にメイルで指示を出してとりま
S
M.氏だが、あぁ、今技術調査Gにいる彼か。一度コンサルテーションを受けることにしよう。
・
ボワークを含めたワークスコープのアウトラインを送る旨メイルしておこう。向こうでもオースチン
10
からアドバイスをもらってくれるはずだ。おっと、別件の会議
1.Willhite G. Paul, Waterflooding, SPE Textbook Series Vol.3, 1986
Dr
件のヒットがある。3 つ目のは少し古いが、フィールドパイロットテストまで行った研究開発プロ
36
ストアップしておこう。いずれ提案書のリファレンスに入れておくことになるだろう。
27
ようし、だいたいめどが立ったぞ。今
の超大物スペシャリストDr
引用文献
P
が始まるな。
2004
8
0
0
0
7
10
An
アナリシス
3.OGJ Special Report, Future Energy Supply-1: Debate over peak-oil issue boiling over, with major implications for
5.Moritis Guntis, EOR continues to unlock oil resources, Special Report EOR Survey, OGJ April 12, 2004
6.Tippee Bob, Oil & Gas Journal's 2004 EOR Survey, SPE/DOE 14th Symposium on Improved Oil Recovery, April 19,
7.Jarrell Perry M. et al, Practical Aspects of CO2 Flooding, SPE Monograph Series Volume 22, 2002
9.Flanders W.A., CO2 EOR Economics for Small-to-Medium-Size Fields, SPE26391, 1993
10.Fassihi M.R., Economics of Light Oil Air Injection Project, SPE/DOE35393, 1996
著者紹介
JOGMEC TRCチーフエンジニア/コーディネーター、IOR/EOR専攻。80年代後半、中東のマルチナショ
ナル操業会社出向時に、技術力と企業発言力の相関を強烈に体験。帰国後、TRCの充実と普及に傾注。
自ら数件の国際EORプロジェクトを実施。現在、技術企画とメキシコプロジェクトリーダー兼務。
2005.5. Vol.39 No.3 38