The 12th Pacific Polymer Conference に参加して

特集
学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 16
The 12th Pacific Polymer Conference に参加して
山 岸 理 沙
Risa YAMAGISHI
物質化学専攻修士課程
2011 年度修了
スを加えて培養時間を変化させ培養を行った.この
1.はじめに
時ペンタン酸からグルコースに炭素源を変える際に
私は,2011 年 11 月 13 日から 17 日まで韓国の済
ペンタン酸の基質が残らないように遠心分離を行い
州島,Shilla Hotel 開催された The 12th Pacific Poly-
完全ペンタン酸の基質を取り除いた.収率は乾燥菌
mer Conference に参加し,「Biosynthesis and Physical
体中に含まれている PHA の重量分率とした.GPC
Properties of P(3HBV-b-3HB)Block Copolymer by
測定は東ソー株式会社の HLC-8020 を用いて測定し
W. eutropha. 」という題目でポスター発表を行いま
た.基準物質としてポリスチレンを使用した.13C
した.
NMR 測定は Bruker DPX 400 を用いて測定を行い
積算回数は 15000 で行った.
2.研究概要
2. 1.緒言
2. 3.結果
微生物 Watersia eutropha (W. eutropha )による
Fig. 1 にはペンタン酸で 72 h 培養した後,グルコ
poly(3-hydroxyalkanoate)
(PHA)の生合成では様々
ースで培養を行い得られたポリマー重量,乾燥菌体
な炭素源を用いた研究が行われ,これまで Doi ら
重量を示している.乾燥菌体重量,ポリマー重量と
は脂肪酸を炭素源としたとき偶数炭素脂肪酸では
もにグルコースの培養時間が長くなるにしたがって
poly(3-hydroxybutyrate)(P3HB)が,奇数炭素脂
増加していくことが分かった.また,培養時間が 96
肪 酸 で は バ リ レ ー ト と の 共 重 合 体 poly ( 3-
h がともに高い値をとることが分かった.
hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate )( P3HBV ) が
次に,Fig. 2 は C=O 基の13C NMR スペクトルを
菌体内で蓄積されることを報告した.これまで我々
示している.高磁場側から順に,PHB の B*B に由
は炭素源としてグルコースで培養を行った後ペンタ
ン酸を加えて生合成したブロック共重合体を報告し
た.本研究では HV 分率をあげるために炭素源と
してペンタン酸を加えた後グルコースを用いて P
(3HB-b-3HBV)ブロック共重合体の生合成を行な
った.
2. 2.実験方法
W. eutropha (NCIMB 11599)を有機培地で 24 h
培養した後,窒素フリー状態の無機培地へ炭素源と
してペンタン酸で 72 h 培養を行いその後グルコー
Fig. 1 Weight of PHA biosynthesized from pentanoic acid and glucose.
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次に,GPC の測定結果と13C NMR の測定結果か
ら 3HB と 3HBV のブロックの割合について求め
た.その結果,グルコースの培養時間が増加するに
したがって 3HB の割合が増加していくことが分か
った.これは,グルコースから 3HB だけが生合成
されるためである.3HBV はペンタン酸の培養時間
が一定であるためほとんど変化はしなかった.しか
し,グルコースの培養時間が 96 h のものに関して
は他のものに比べると大きく 3HBV が減少してい
た.この原因として,先に蓄積された 3HBV はエ
ネルギー消費として利用されたことが考えられる.
Fig. 2 13C NMR spectra and D value of PHA
biosyntheszed from pentanoic acid(72 h)and glucose.
2. 4.結論
炭素源にペンタ ン 酸 と グ ル コ ー ス を 用 い て 3
来するピークが観測され,次に PHB と PHBV に由
HBV-b-3HB のブロック共重合体の生合成をおこな
来する B*V のピークが,低磁場側には,PHBV に
うことができた.また,培養時間を変化させること
由来する V*V のピークが観測された.また,得ら
で,ブロック分率が制御できることが確認できた.
れたポリマーがどれぐらいランダムであるかを(1)
グルコースも培養時間が 96 h を超えると分子量も
式から求めた.(1)式には,13 NMR から得られた
減少することが確認でき,このことから得られたポ
ピーク強度比を用いて計算を行った.その結果,グ
リマーの一部がエネルギー消費として利用されたこ
ルコースの培養時間が長くなるにしたがって D 値
とが考えられる.
は増加していくことが分かった.ペンタン酸の培養
時間が 72 h,グルコースの培養時間が 24 h の時 D
3.発表について
値は 3.7 であったが,グルコースの培養時間が 96 h
今回の学会は,国内の学会と異なり,国際学会で
の時 D 値は 6.4 にまで増加しブロックになったこ
あったためセッションはすべて英語だったこともあ
とがこの結果から確認できた.
りとても緊張しました.国際学会は 2 回目でした
次に,GPC の測定を行い得られたポリマーの数
が,自分の伝えたいことが上手く伝えることができ
平均分子量を求めた.その結果,グルコースの培養
ませんでした.簡単な英単語も話しているとなかな
時間が 24 h のものは数平均分子量は 56 万となり,
か出てこず大変苦労しました.
グルコースの培養時間が 72 h の時最大となり 63 万
と高い値を示した.
4.まとめ
国際学会なので英語でのセッションはとても大変
でしたがとても充実したものとなりました.今回の
Calculation of D value
FBB FVV
FBV FVB
┌ D=1 random ┐
│
│
└ D>1 block ┘
D=
(1)
学会では多くのことを学ぶことができ参加して良か
ったと思います.
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