Title Author(s) 数種の動物の側線器管の微細横道について 山田, 安正 Citation Issue Date Text Version none URL http://hdl.handle.net/11094/29980 DOI Rights Osaka University < 52 > だ まさ や安 す 氏名・(本籍) 山 回 学位の種類 医 山寸荘一. 学位記番号 第 学位授与の日付 昭和 45 年 学位授与の要件 学位規則第 5 条第 2 項該当 学位論文題目 数種の動物の側線器官の微細構造について 論文審査委員 正 ↑専 士 1879 (主査) 教授浜 7仁ゴ 3 1 月 31 日 清 (副査) 教授吉井直二郎教授清水信夫 論文内容の要旨 〔目的〕 円口類・魚類・幼生時の両生類にみられる側線器官は高等背椎動物の内耳系と発生的・機能的 に極めて類似した典型的な機械受容器の一種で,具体的には水または側線管内液の流れを介して 微小な水圧の変動を検出する器官である。 本研究は異なる門または綱に属する数種の動物の側線器官について,乙の器官の 1 ) “流れの 受容器"としての基本構造および 2) 動物種による構造の差異と系統発生との関係を,その微細 構造を中心に比較,検討しようとしたものである。 〔方法と成績〕 円口類のカワヤツメ (Entospheuns japonicus) ,軟骨魚類のホシザメ 硬骨魚類のウナギ (Anguilla japonica) ,およびナマズ 燐酸緩衝 2% 四酸化オスミウムで固定, Epon812 ( M u s t e r u s manazo) , (Parasilurus asotus) に包埋, の各側線器官を P o r t e r B l u mM T1 型ウノレトラミ クロトームで切片を作製し,目立 HS-7S 型電子顕微鏡で観察した。 側線器官の感覚上皮は基底膜をそなえ,支持細胞と知覚細胞とからなる。支持細胞は基底膜か ら自由表面まで達する柱状の細胞で,支持細胞相互の聞には複雑な in t e r d i g i t ation がみられる。 頂端に近い細胞質中には水平に走る線維が多く, desmosome 網状に交わりあう。 に連絡する。線維層の下には表面から基底部に向って, この線維は細胞側壁の ミトコンドリア,コツレジ装 置,粗面小胞体などが順次配列している。核は粗面小胞体の間に存在する。核下部から細胞基底 端にもミトコンドリアが多い。 知覚細胞は洋梨形あるいは徳利様で,上皮の基底部から約%の高さから自由表面まで達するが, 基底端は基底膜に接しない。細胞表面には 20--60本の不動毛が六角状の配列をもって突出し,そ -264 ー の吻側または尾側の一端には一本の長大な繊毛がみられる。吻側端に繊毛をもっ知覚細胞と,尾 側端に繊毛をもつものとは交互に配列する。不動毛直下の細胞質は紙密な cuticle を形成するが 繊毛の下は cuticle を欠く。 Cuticle の下には比較的多くの滑面小胞体がみられる。核上部およ び細胞周辺部にはミトコンドリア・粗面小胞体・コツレジ装置などが散在し,核周辺部から細胞基 底部にかけて多数の synaptic vesicle 様の小胞が認められる。 に固まれた直径約 0.3μ 物によっては, の球体がみられ, s u b s y n a p t i csac また細胞基底部には上記の小胞 小型の求心性神経終末がこれと向いあっている。動 を伴う遠心性終末も存在する。 感覚上皮下の結合組織内には多くの毛細血管と神経線維がみられる。 各動物の特徴的な構造を比較してみると,カワヤツメの側線器官は free neuromast として表 皮内に点在し,上皮細胞のものに似た tonofilament に富む。 遠心性神経終末・有髄神経線維は みられず全体的に原始的な形態を示す。ホシザメでは真皮中体軸方向に走る側線管の内腹側に感 覚上皮が索状に発達する。乙れは表皮下に陥没した free neuromast が相互に連絡したもので, c a n a lorgan の原型とみられる。ウナギおよびナマズの側線器官は側線管内 neuromast となり, 索状の感覚上皮が 2 次的に分離したものと考えられる。ウナギの有髄神経線維は上皮下で髄鞘を 失なうが,ナマズのものは上皮内まで進入する。上皮の構成も,より規則的であり,ナマズの側 線器官はウナギのものより高度に発達していると思われる。 i n c l u s i o nbody をもっ乙と, ウナギの側線器官は, 結晶様の 遠心性神経終末の発達が悪いことなど,やや特殊な性質を示すも ののようである。 〔総括〕 円口類(カワヤツメ) ,軟骨魚類(ホシザメ) ,硬骨魚類(ウナギおよびナマズ)の側線器官の 構造を電子顕微鏡的に観察し,比較検討した。 すべての側線器官の感覚上皮は,基底膜から自由表面に達する支持細胞と,支持細胞に取囲ま れて,自由表面から支持細胞の%程度の深さで終わり基底膜に達しない知覚細胞とからなる。文 持細胞には表面から基底部へミトコンドリア・コツレジ装置・粗面小胞体・核などが順次配列し, 核周辺から細胞基底部にもミトコンドリアが多い。 知覚細胞は表面に数十本の不動毛群と,その一端にある一本の繊毛とからなる感覚毛をそなえ, 繊毛は|舜りあう知覚細胞では逆の位置にある。感覚毛の下には cuticle が発達する。知覚細胞基 底部には求心性神経終末がみられる。遠心性終末は種類によってはみられない。感覚上皮表層に は機械的な補強構造が発達する。 側線器官の分化・発達の程度は系統分類的な進化の度合いと平行するようである。 論文の審査結果の要旨 魚類及び両棲類の幼生に見られる側線器管は晴乳類内耳特に前庭器と相同の器官であり, 機 能・構造の上で多くの類似点をもっている。本研究は系統発生的に異った綱に属する数種の魚類 -265- の側線の徴細構造を検討し,種属特異性をはなれ,流れの感覚器として基本的な微細構造を検討 し,特に感覚毛の配列 cutic1e と細胞接着装置の関係など機械受容器として固有の微細構造を明 らかにした。また遠心性の抑制終末の存在を確認し,その分布および微細構造の上で動物聞に発 達の度合の差があることを明らかにした。 これらの所見は側線が内耳前庭部と微細構造上もきわめて類似しており,内耳のモデノレとして 前庭の感覚受容機構の解明のための,生理的,形態的な実験に用い得る事を示したものであり学 位請求論文として価値あるものと認める。 戸 hv nhu ヮ“
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