科学技術理解Ⅶ(科学技術史) 第5回 ルネッサンス期の技術と科学

科学技術理解Ⅶ(科学技術史)
第5回
ルネッサンス期の技術と科学
教科書の関連箇所
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3.2.中世社会と科学
3.3.ルネッサンスと科学
4.2.鉱山・冶金の発達と水車
2007年5月10日
講師: 詫間 直樹
http://www.takumas.com
[email protected]
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坑内の排水. 段式ポンプ.クランクを使
用.
アグリコラ,
1556年.
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(江沢洋,1976)
(江沢洋,1976)
中世の技術 (続き)
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ガラス
鉱山業と冶金
水車と風車
火薬と大砲
蒸留とアルコール
製紙と印刷術
織物工業 ( ⇒ 次回)
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中世の技術(前回の続き)
採鉱と冶金術
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ローマ帝国の没落とともに,鉱山業と冶金
術が衰退した: 銀,鉛,銅,スズ.
鉄の生産は,比較的,打撃が少なかった:
斧,犂.
9世紀までに政治的混乱がほぼ終了し,冶
金術が盛り返す.
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水力で動かす槌打ち鍛造所.カムを使用.
中世冶金術の特徴
(a)
(b)
(c)
(d)
旧ローマ帝国の国境を越えて,新しい鉱
山や熔錬場が設置された.
鉱業と冶金術の文献(指導書,ハンドブッ
ク等)が出版されるようになった.
石炭の使用 (12世紀∼).中世末期に
は,木材の不足により,使用量が増大.
水力の利用.ふいご,ハンマー,砕鉱機.
ストラダ,
1671年
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アグリコラ,﹃
デ・レ メ・タリカ﹄
上掛け水車で動く鉱石粉砕機.カムを使用.
鉱山学の父アグリコラ
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1494∼1555年.医者でもあった.
『デ・レ・メタリカ』(1556年)
鉱脈の探査法,坑道のつくり方,坑道の排
水・換気,鉱石を地上まで運び揚げる方法,
選鉱法,精錬法,労働条件など.
290枚にわたる図版.
揚水機,巻き上げ機,送風機,冶金炉の構
造など.
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コルシカ炉
カタロニア炉
オスムント炉
シュテュック・オーフェン
溶融銑鉄と高炉の出現(16世紀)
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水力送風機により高い温度(1200℃以上)が実
現され,溶融状態の銑鉄が得られた.
銑鉄自体は,炭素分が多く,たたくと簡単に壊れ
てしまう.しかし,銑鉄をもう一度精錬炉に入れて
脱炭すると,可鍛鉄(叩ける鉄)になる.
高炉の炉頂から原料を入れ,下部の穴から銑鉄
を取り出す ⇒ 連続的操業.(精錬炉は不連続).
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銀の精錬
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銀を含む銅鉱石から精錬.
銅(銀を含む)と鉛の合金をつくる.
その合金をじっくりと熱すると,銀と鉛が結
合し,銀と鉛の合金が抽出できる.
その合金を灰吹法*によって分離する.
*ネット版『平凡社百科事典』などで調べ
よ.
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イタリア・ルネッサンス
(14世紀∼16世紀前半)
製錬,精錬,冶金,試金.
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製錬:鉱石から金属を取り出す.
精錬:金属から不純物を取り除く.
金属の製錬・精錬は,酸化還元や蒸留,ア
マルガム法など化学理論の形成を準備し
た.
鉱物の試金法は,後の化学分析の基礎と
なった .
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ビザンツ帝国(東ローマ帝国)の滅亡.
⇒ 古典学者がイタリアに亡命.
諸都市の繁栄
⇒ 富裕商人の出現 ⇒ 文芸の保護.
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ボッティチェリ『春』
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ルネッサンス期の科学
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1543年に出版された2冊の本:
ヴェサリウス『人体の構造について』,
コペルニクス『天球の回転について』.
ヴェサリウス(1514∼1564年)
ガレノスの解剖書を読むだけではなく,実際に解
剖した.「思弁より観察を重んじる」.
ガレノスの教科書に200箇所にのぼる誤りを見つ
けた.
例:心臓の左右の心室を隔てる壁に穴はない.
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カルカル(画家)
『人体の構造に
ついて』
プトレマイオスの体系
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天球
惑星の逆行
副周転円
コペルニクス(1473∼1543)
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16世紀まで,プトレマイオスの『アルマゲスト』が
君臨.地球静止系.(地球は天球の中心ではな
いが静止している).
コペルニクスはイタリア留学中に,ギリシャ古典
文献に接し,太陽中心説に魅了される.
『天球の回転について』:太陽静止系を提唱.
第1部はシンプルだが,第2部以降は,複雑で詳
細な解析 ⇒ 周転円の数は,プトレマイオス系と
同じくらい.
原因:それまでのデータは,データ数と正確さが
不十分.
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ティコ・ブラーエ(1546-1601)
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天球システムの正確さを検証するデータを得る
ためには,幾年もの長い間にわたる系統的な観
測と精密な観測機器が必要であると認識した.
ウラニボリ天文台(デンマーク)において,1576
∼96年の20年間,太陽,月,惑星の位置を観測
し続けた.
⇒ 測定精度の限界を角度にして2分までに縮め
ることに成功.
プトレマイオスやコペルニクスの利用した天文表
では,測定精度は約10分.
エカント.角αの変化の割合が一定.
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ヨハン・ケプラー(1571-1630)
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1596年,ティコはデンマークを去り,ルドルフ2世
の宮廷数学者としてプラハに定住.
ケプラーの著書『宇宙の神秘』読み,彼を天才と
認めた.共同研究を開始.
⇒ 火星の観測結果の処理を任せる.
「エカント」(離心円に似ている)を火星の運行に
当てはめたが,角度にして8分の食い違いを見
出した.
何年かの試行錯誤の後,円運動を放棄.
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ケプラーの法則
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(1)
(2)
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『新天文学 ―天界の物理学―』(1609年)にお
いて発表.
惑星の軌道は楕円であり,太陽はその焦点で
ある.
太陽と惑星とを結ぶ動径ベクトルによって描か
れる,楕円の扇形は時間に比例して増大する
( = 面積速度一定の法則).
現象を物理的に説明しようとした.
単なる数学的記述ではない.
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