DJ I レポート

ISSN 1342−632X
国際資料研究所報 Documenting Japan International Report 国際資料研究所報 Documenting Japan International Report国際資料研究所報 Documenting Japan International Report国際資料研究所報 Documenting Japan International Report
DJ I レポート
No.66
20060420
国際資料研究所報 Documenting Japan International Report 国際資料研究所報 Documenting Japan International Report国際資料研究所報 Documenting Japan International Report国際資料研究所報 Documenting Japan International Report
〒251-0045 神奈川県藤沢市辻堂東海岸3−8−24 fax+phone 0466−31−5061
アーカイブ 2 年
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文書基本法の実現にむけて
DJI「文書基本法案」の見直し
文書基本法の実現について、国際資料研究所は 2003 年以来本誌はじめさまざまな機会を得てはその必
要性を説いてきた。現在、管見の限り記録管理学会の「文書管理法制定推進プロジェクト」
、NIRA 総合
研究開発機構「公文書管理法(仮称)研究会」が活動している。後者は今年中には何らかの成果を発表
すると期待される。記録管理学会はこれをにらみながら、プロジェクトを推進しているところだ。
ところで、2004 年 4 月に発表した国際資料研究所「文書基本法(案)」をここに再録することにした。
2 年を経て改めて見直すと、当時見落としていたことが目に付く。今回は次の 2 点をとりあげよう。
1.公文書の「秘密」指定を時間経過によ
る段階的解除を可能とする制度
現在、秘密指定解除については、国の機関が統一し
て適用される制度がない。
米国ではクリントン政権時代に、秘密指定文書はす
べて 25 年経過後に秘密解除とするという大統領令
がでたというが、15 年ほど前に終えた筆者の国立公
文書館勤務経験のなかでは、秘密指定文書の制度的
秘密解除はなかった。当時の秘密指定文書(いわゆ
るマル秘文書)の秘密指定解除は、一件ごとにその
内容によって検討されていた。原省庁での文書取扱
いの中で、一旦マル秘扱いになると、期限を限った
秘密扱いである場合を除けば、たとえそれが公文書
館に移管されても、マル秘の効力は原府省等の裁量
範囲として残っていた。したがって、国立公文書館
では公開にむけていちいちの問合せ(協議ではない)
による確認が必要とされていたのである。
2.文書のライフサイクルにおける「企画
立案」段階の位置づけ
最近ではずいぶん普及した文書のライフサイクルの
考え方では、通常「収受・起案/決裁・施行/保管・
保存/廃棄または公文書館での保存提供」といわれ
る。情報公開制度のなかで、公開(開示)対象とな
る行政文書は、決裁前のものも対象とするとされて
いる。そのため、ある文書自体が組織共用文書であ
るかどうかということが情報公開制度においては公
開対象に当たるか否かの判断のカギとされる。特に、
決裁前にさまざまなレベルでの合意形成や意思決定
のために起草される文書は、起案文書そのものにな
るとは限らない。現用段階の文書事務ではこうした
企画立案段階で作成される文書の扱いについては、
担当者の裁量とされているため、通常の文書規程類
はこの部分について規定の設定はない。文書管理事
務の立場からは、
「収受・起案」の中でも特に「起案」
の部分については、”起案文書作成と決裁処理”と狭
おもな内容
アーカイブ二年 DJI 文書基本法案見直し……………………1
再録国際資料研究所「文書基本法案」………………………2
ISO15489 の JIS 化今後の課題/消息………………………5
義にとらえ、当該「起案文書」作成にいたる前段に
相当の時間と労力を注ぎ込んで行われる企画立案段
階がすっぽりとその視野から抜け落ちた格好である。
その結果、企画立案段階の文書そのものが、ライフ
サイクル理論に則った文書管理の枠組みから脱落し、
そのために、企画立案段階の文書は、狭義の決裁文
書とは異なり、文書管理規程類の適用条項がないた
め、その保管、保存、廃棄にいたるまでが全面的に
担当者の裁量範囲にゆだねられている。このような
「無制度状態」があるにもかかわらず、この点がな
ぜか見過ごされてきた。その上、こうした企画立案
段階の文書が制度に則った保管・保存/廃棄・移管の
ルートに乗らないために、長期的には公文書館に移
管・公開されることがないという結果を招いている。
公文書館で公開される公文書類には企画立案段階の
文書が含まれていないのは、このような制度的な欠
落があることは、これまで全く見過ごされてきた。
ただ、利用者として公開された公文書館の資料を利
用する研究者が口々に「ライフサイクル理論に沿っ
た文書管理ではプロセスの文書が残らない」と批判
してきたことで、企画立案段階の公文書が公文書館
への移管対象に含まれていないらしいことは、ある
程度推測できていた。
実際には狭義の起案文書にいたる前段の企画立案
では、公式記録にならないさまざまな企画段階の草
案類が創出され、それらが正規の文書ファイリング
システムに位置づけられておらず、しかもそのこと
自体が長く見落とされてきたのであろう。今こそ、
この企画立案段階で創出される、いうなれば「草案
文書」の存在を法制度的に確認し、それらを含めた
文書の管理を行うような文書のライフサイクルに改
訂する必要がある。これにより、今日多くの研究者
が指摘する「経過を示す文書が残らない」という批
判は、制度的にも実務的にも解消できるだろう。(ち)
DJI レポート
No.66 20060420
文献紹介……………………………………………………6
国際資料研究所の活動/巻末随想…………………………7
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再録
目
No.66
20060420
国際資料研究所
文書基本法(案)
る国政財産として、文書や記録の作成・維持
管理・保存を必要とするものであることは、
現行の情報公開制度、並びに公文書館制度
の存在に鑑み、自明のことであることを確
認する。
<ナショナル・メモリーの確認>
国政運営にかかわり作成・維持管理・保存さ
れる文書や記録は、国の政権担当者が綴る
その国の歴史そのものであることに鑑み、
国政の文書や記録とは、現代と将来の世代
の国民共有の「国の記憶(ナショナル・メモ
リー)
」としての情報資源であることを確認
する。
次
前文
(法律の目的) 第一条
(定義) 第二条
(記録管理院の役割) 第三条
(文書の作成) 第四条
(文書の管理) 第五条
(文書の保存) 第六条
(文書の利用) 第七条
(文書の責任時効) 第八条
(罰則) 第九条
(付則)
前 文
<情報アクセス権の確認>
世界人権宣言第一九条に、
「すべて人はあら
ゆる手段により、国境を越えると否とにか
かわりなく、情報及び思想を求め、受け、
及び伝える」権利を有すると述べられてい
ることをふまえ、
この世界人権宣言は、日本国憲法第九八条
が遵守を求める「確立した国際法規」であ
ることに鑑み、
国政運営の過程で生じる文書や記録の作
成・維持管理・保存・開示は、日本国憲法に則
った人権のうちでも、情報アクセスを確保
するものであることを確認する。
<国民主権の確認>
日本国の国政は、国の主権者たる国民の信
託により、国民に由来する権威、国民の代
表による権力行使、国民による福利享受と
いう人類普遍の原理に基づき運営されるべ
きことを確認する。
<文書・記録の情報価値と、国政の円滑運営
へのメリット確認>
現在と将来の世代にとって透明度の高い国
政運営が行われ、その証拠となる文書や記
録の作成・維持管理・保存もまた国民の信頼
のもとで実施されるとともに、国政を信託
されたものにあっては、適切な国政運営、
及び意思決定を行うに必要な情報資源とな
(法律の目的)
第一条 国の機関等の業務遂行における
「文書主義の原則」の確認、およびその業
務遂行上で発生するすべての文書は、基本
的には国政を信託した主権者である国民に
帰属す共有財産であることにかんがみ、そ
の取り扱いの原則を定める。
② この法律は、文書の発生から保存期間満
了後の処分までの時間を連続的に包括管理
する。
③ 地方公共団体はこれに準じて条例を定
める。
(定義)
第二条 「文書」とは、媒体・形式の如何
を問わず、業務遂行上で必要な情報を固定
したもののすべてをいう。文書のうち正式
手続きを経た意思決定を証するものは「記
録」という。
②「現用」とは、文書の発生から保存期
間満了までの期間をいう。現用期間を終
えた文書は処分される。
③「処分」とは、現用期間満了後の文書
の取扱いをいう。処分には、保存記録の
選別と、保存記録の選別にもれたものの
廃棄がある。処分は、本法第三条に述べ
る記録管理院が所管する業務である。
④「中間書庫(レコードセンター)」とは、
半現用となった現用文書の集中管理施設を
−2−
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いう。中間書庫の施設は記録管理院が所管
する。中間書庫において集中管理される文
書は原府省が所管し、記録管理院が物理的
に管理する。
⑤ 文書は、時間の経過に従って「現用」
「半
現用」
「非現用」の各段階がある。「現用」
とは、事務遂行にかかわり意思決定および
実施の段階をいい、
「半現用」とは、参考利
用のために中間書庫で過ごす保存期間満了
までの時間をいう。
「非現用」とは、文書が
保存期間を満了した後の段階をいう。非現
用段階の文書は、保存記録<=アーカイブ>
として、公文書館施設で保存するか、また
は廃棄する。
⑥「公文書館施設」とは、公文書館法に定
める公文書館をいう。公文書館施設は、記
録管理院の下におかれ、保存記録の無期保
存と利用提供を担当する。
⑦「廃棄」とは、その文書そのものを物理
的に削除抹消すると共に、廃棄したという
「行為」についての記録を作成してこれを
アーカイブ化することを言う。廃棄は、記
録管理院の下におかれる記録管理局が担当
する。
⑧「アーカイブ化」とは、非現用文書を保
存記録に指定し、それらを公文書館施設に
おいて無期保存するよう定めることを言う。
(記録管理院の役割)
第三条 文書基本法を所管するため、独立
機関として記録管理院をおく。
② 記録管理院は、行政各府省、立法、司法
を含む国の機関における文書の発生から処
分までを、国の情報財産として連続的な存
在ととらえ、その管理を行う。
③ 国の機関における文書及び記録、情報源
の物理的管理の枠組み作りについては、記
録管理院が担当し、そのために国の機関に
対する指導・助言・監督・監査を行う権限
を有する。
④ 国の機関の文書記録管理のきめごとは、
すべて記録管理院の長の承認を得なければ
発効しない。
⑤ 文書の管理に関連する分野、特に業務上
のつながりだけでなく、その文書が持つ情
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報資源としての様々な側面に関連する、総
合的な視野での検討を行う。
⑥ 記録管理院に記録管理局をおく。記録管
理局には、情報記録管理システム部(情報
記録の媒体、様式、用品、システム等の開
発整備)
、行政情報記録管理部(行政各役所
の情報と記録管理の査察監督)
、司法情報記
録管理部(司法各役所の情報と記録管理の
査察監督)
、立法情報記録管理部(立法各役
所の情報と記録管理の査察監督)、印刷物・
電子情報記録部(出版公開情報記録の管理
監督と、白書、官報、政府刊行物、ウェブ
サイトの発行・発信)をおく。
⑦ 記録管理院に、情報開示局をおく。情報
開示局には情報データ部(情報公開の請求
に必要なデータの作成と管理)
、情報開示部
(情報公開の対応・オンブズマン機能)をお
く。
⑧ 記録管理院に、歴史記録局をおく。歴史
記録局には中間書庫(半現用文書の貯蔵・
管理)
、国立公文書館(国の機関の保存文書
の管理・利用提供)、国立研究資料情報セン
ター(大学等研究機関の保有する研究資料
の所在情報提供)
、歴史記録公開部(公文書
館施設で公開すべき記録の判定、公開方法
の検討)をおく。
⑨ 記録管理院に、記録保存システム部をおく。
記録保存システム部には、保存修復部(現
物記録の修復処置の実施と研究)
、代替記録
(アーカイビング)部(マイクロ化、デジタ
ル化、ファクシミリ(複製)作成の実施と
研究)
、災害・危機管理部(各役所の情報と
記録の災害・危機管理対策の策定と審査)、
記録保存研修研究部(記録管理/アーキビ
ストの現場研修実施と研修プログラム研
究)をおく。
⑩ 記録管理院の管理職は、記録士(アーキ
ビスト)の教育を受け、基盤記録士(上級
アーキビスト)の資格を有するものとする。
記録士(アーキビスト)教育とは、大学に
おける保存記録(アーカイブ)関連科目の
単位を取得することを言う。基盤記録士は、
米国アーキビストアカデミー公認アーキビ
スト CA 相当の資格を有することを要件と
する。
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(文書の作成)
第四条 国の機関における業務遂行は、
「文
書主義の原則」に則り、根拠をもって遂行
しなければならない。このためには、根拠
となるべき情報はすべて文書として固定化
し、その業務にかかわる職員はもちろん、
情報の公開を求める人に対しても情報共有
化が行えるよう、備える必要がある。これ
は、国の事務遂行に関する説明責任の根拠
となる情報基盤形成である。文書は、情報
公開法による現用文書の開示(保存期間満
了まで)
、及び公文書館法による非現用文書
の利用(歴史資料として重要な公文書等で
無期限)の対象となる。
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である。
非現用文書は、国の歴史を将来に証明する
べきものを選んで、公文書館に保存する。
非現用文書の選別と処分権限は記録管理院
にある。記録管理院以外の国の機関は、保
存期間を満了した文書の処分をするには記
録管理院の承認を必要とする。
② 公文書館に収蔵される文書の保存責任
は記録管理院にある。
(文書の利用)
第七条 現用文書は、事務遂行に第一義的
な目的として存在するが、情報公開制度に
基づく開示請求により何人も原則としてこ
れらを利用することができる。ただし、個
人情報保護制度による制約がある。
(文書の管理)
② 非現用文書は、公文書館法、国立公文書
第五条 文書は、現用、非現用の各段階で
館法の定めるところに従い、公文書館施設
その所在が異なる。現用文書は各府省、半
で利用することができる。
現用文書は中間書庫、非現用保存文書は公
③ 不存在のものについての情報も、公文書
文書館施設で保管される。
② 現用文書・半現用文書は各府省が所管し、 館施設で確認することができるよう、非現
用文書の所在、処分情報は記録管理院がこ
半現用文書と非現用文書は、記録管理院の
れを整備する。
施設において保管し、利用に供される。
③ 各府省には、現用文書の管理専門家とし
(文書の責任時効)
て記録管理者(レコードマネージャー)を
第八条 非現用文書として公文書館施設が
おく。記録管理者は、米国の公認レコード
マネージャー相当の資格をもつ者を充てる。 保存する文書については、その内容につい
て作成から決裁までにかかわった人物は、
④ 各府省の各課には、現用文書の管理担当
者として、文書担当責任者(キーパーソン) 他の法律に定めがある場合を除き、その責
任を問われない。
をおく。文書担当責任者は、記録管理院記
録保存システム部記録保存研修研究部が行
(罰則)
う記録管理現場研修を修了したものを当て
第九条 文書の不作成、私物化、改ざん、
る。
非公式な廃棄、不正手続きによる処分、そ
⑤ 文書の物理的管理責任者は、文書の所在
の他悪意ある取扱いは罰則の対象とする。
場所により異なる。現用段階では各府省の
文書担当責任者、中間書庫と非現用段階で
(付則)
は記録管理院歴史記録局の、非現用段階で
1.この法律は平成 年 月 日に施行す
は記録管理院国立公文書館の長となる。
る。
(文書の保存)
<2004 年 4 月 18 日発表>
第六条 現用文書の保存期間は常に見直す。
保存期間の決定の最終責任者は記録管理院
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ISO 15489 の JIS 化と今後の課題
小川 千代子
■」」JISX0902-1=翻訳 ISO15489
2005 年 7 月、日本規格協会は翻訳 JISX0902-1
記録管理標準を発行した。これは ISO15489-1 の
英語テキストを日本語に翻訳したものである。そ
の ISO15489 とは、1999 年にオーストラリア政府
が取りまとめた記録管理標準を下敷きに 2000 年
に ISO が採択した世界初の記録管理の世界標準で、
パートⅠ、パートⅡの二部構成である。昨年 JIS
化されたのはパートⅠガイドラインで、パートⅡ
技術報告書は JIS 化されていない。
■」」日本の ISO 窓口と翻訳 JIS 研究組織
ところで、JIS 化事業そのものは、JISC 日本工
業規格審議会が最終的な決定を行う。ISO に対す
る日本の窓口であり、国際標準機関とも訳される
国際機関である。各国とも標準を担当する政府窓
口があり、日本は経済産業省である。経済産業省
標準化担当セクションと日本規格協会が表裏の
関係で各種の ISOJIS 化の事務を担当している。
ISO15489 は、アーカイブと記録管理の標準という
ことで、TC46 情報とドクメンテーションの標準化
委員会の業務とされた。TC46 には、SC と略称さ
れる小委員会(サブ・コミティ)がいくつもある
が、そのもっとも新参の SC が SC11 で、具体的な
検討業務等々はこの SC11 が行う。日本側にもこ
れに対応する組織が置かれ、2005 年度までは日本
規格協会が INSTAC に事業を委託し、INSTAC は
TC46 国内対策委員会事務局として、SC11 国内メ
ンバーが行う ISO の翻訳 JIS 化のサポートを担当
◇◆◇アーキビストの消息
◇◆◇
してきた。
■」」ISO15489-2 の翻訳 JIS 化事業の主導者は?
周知のように、行政改革の名の下に、小さな政
府を目指して中央省庁は人減らし、仕事減らしを
進めている。規制緩和が叫ばれたのも、規制は役
所の仕事だから、それを減らすためには規制を緩
めたりやめたりする必要があるからだったに違
いない。ISO の JIS 化事業もまた、この「規制緩和」
の波に洗われ、これまでは INSTAC が事務局を引
き受けて進めてきた事業は関係業界団体の自主
運営に任せることになってきている模様。
ISO15489-2 の翻訳 JIS 化を企画していた従来の
TC46 国内委員会 SC11 部会は、事実上事務局も予
算措置も失い、2006 年度の運営の見通しが立たな
い。いまやこのプロジェクトは関係者の良識と熱
意だけに頼る格好となった。
■」」記録管理標準 JIS 化の推進力
ISO15489-2 の翻訳 JIS 化を実務上、精神上、
および経済上、推進する関係団体の存在がなけれ
ば、日本に世界レベルの記録管理標準の実現は難
しくなってきている。これまではこの記録管理標
準 ISO15489 の JIS 化は、もともと ARMA 東京
支部のメンバーが提唱し、日本規格協会に働きか
けを行うなど、国内の推進力となった。また、記
録管理学会もこの JIS 化作業のためにメンバーが
参画している。こうした経過を踏まえ、両団体へ
の期待はいやがうえにも膨らむのである。(ち)
凡例■機関●ひと
◆訃報◆
●小倉 昇 氏 2月15日逝去。全史料協総務委員会事務局担
当、愛知県公文書館。ICA/SPA 運営委員会日本開催に向け、
強い意欲と見事な準備資料作成を手がけられた。合掌。
●イワン・ボルシャ氏 (88) ハンガリーのアーキビストで ICA
名誉会員。1981 年に日本の国立公文書館を訪問し、その状況
を海外に報告したことで知られる。2 月21日ICAWeb に掲示。
◇異動◇
●安江 明夫 氏 2 月28 日付 国立国会図書館退官
◇新年度異動特集◇
■岐阜県歴史資料館 館長下林博孝 氏(岐阜県不
破郡垂井町立東小学校)→側島哲 氏
■和歌山県文書館 館長小谷正氏→仁坂 洋員氏
■富山県公文書館 副館長水野氏→藤平 幹夫氏
■兵庫県公館県政資料館 館長(兵庫県企画管理
部教育・情報局文書課長)羽古井良紀氏(兵庫県丹
波県民局県民生活部長)→深田 修司氏
■愛知県公文書館 館長 志治孝利氏→伊藤克博
氏 高木正治氏→愛知県史編さん室
■沖縄県公文書館 館長 長田勉氏→井波謙氏
■板橋区公文書館 管理係長 小野豊子氏(退職)
→鈴木直充氏、専門員 西公三氏(新規採用)
●西来路秀彦氏 →国立国会図書館国会分館長
●吉見俊哉氏 →東京大学大学院情報学環長
●石川徹也氏 →東京大学特任教授史料編纂所
●福嶋 紀子氏 →松本市北部公民館長
●太田 富康氏 →埼玉県立文書館
●吉井 潤 氏 早稲田大学教育学部卒業→山中湖情報創造
館(学習院大学「記録保存と現代」受講生)
●岩下 ゆうき 氏 3 月から Monash University Master
of Information Management and Systems
●小川千代子 平成 17 年 4 月付 デジタル・アー
キビスト資格二種認定、デジタル・アーキビスト
資格認定委員会 v(^0^)v
★情報をお寄せくださった皆様、ありがとうございました
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●◆▼やぶにらみ文献紹介【●図書◆論文▼逐次刊行物■その他】
昨今図書館では電子ジャーナルに関心が集まっている。アーカイブの世界はどうかというと、ジャー
ナルではなくポータルサイトやメーリングリストによる情報流通が盛んに行われている模様だ。DJI レ
ポートも、紙バージョンは 1 年休みにしたものの、情報発信のために電子版は活用しないではいられな
い。今回は電子媒体の文献を紹介する。
■ユネスコ・アーカイブ・ポ
より、経過時間 30 年、50 年、80 年、それ以上、
ータル
とされている。
新機能を搭載したという ML
http://www.archives.gov/publications/prolog
情報が 4 月上旬に発信された。ユネスコのメーリング
ue/2005/winter/
リスト、ツナミポータルなど、さらに情報集約度が上が
■英国の動画政府広報
ったという。
Public Information Films
世界中のアーカイブをあらゆる側面から集約したの
http://www.nationalarchiv
がこのユネスコ・アーカイブ・ポータルだといっても過
es.gov.uk/films/?homelink
言ではあるまい。就職情報あり、イベント情報あり、も
=news イ ギ リ スの国 立
ちろん機関としてのアーカイブのポータルもあれば、
公文書館のサイト。イラ
ウェブ上にある「デジタルアーカイブ」のポータルもあ
ストや静止画像のアイコンが並ぶからログ画面
る。日本では紹介が不十分なのか余り知られていな
の中から、見たいアイコンをクリックする。ネコ
い「世界の記憶」のバナーも出来た。古代から未来ま
が登場しているひとつを開いてみたら、猫のチャ
で、あらゆる記録と記憶の保存管理利用を考えるの
ーリーが鍋が吹きこぼれているガスレンジのそ
に、ユネスコ・アーカイブ・ポータルは不可欠の基礎
ばで、総毛立ててネコ語でミュオミュオと何か言
ツールである。
う。これを傍らの子どもが英語に翻訳してくれる。
http://portal.unesco.org/ci/en/ev.php-URL_ID=576
文字で読むことも出来る。たとえば、「チャーリ
1&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html
ーがね、ガスレンジのそばはとっても危ないって
■米国に地方公共団体アアーカイブの ML スタート
言うんだ。熱いものがたくさんあるから」という
米国で、地方公共団体アーカイブのメーリングリスト
がスタートした。
[email protected]
■NARA『プロローグ』2005.冬号 サウンドオブミュー
ジックの虚実他
移民の国米国ならではの資料を駆使したアーキ
ような、45∼60 秒程度の短いメッセージが中心。
1964-79 年のなんと楽しい政府広報!
■日本国立公文書館
ICA 電子記録関連文献の日本語訳が掲載された。
これは大変ありがたい。
http://www.archives.go.jp/hourei/hourei3.html
ビストのエッセイは、あのサウンドオフミュージ
■ICA アーキビストの倫理綱領
ックのストーリーと、ナチ政権から逃れて米国に
ICA のサイトに、日本語を含め約 20 ヶ国語で、ICA
やってきたフォン・トラップ一家の実像の違いを
アーキビストの倫理綱領がpdfで掲載されて
語る。1940 年前後の移民の記録が公開されている
いる。ICA の倫理綱領は、1996 年に取りまとめら
ことに、彼我の違いを感じた。日本では帰化した
れ、以後 1997 年には全国歴史資料保存利用機関
人の記録は個人情報であろうし、帰化の経過情報
連絡協議会国際交流委員会報告書に全文訳が掲
は、もしかしたら日本風に言うと門地にあたるか
載された。その後「日本のアーキビスト」のサイ
もしれない。そうなると、日本で同様のことがあ
トにこの翻訳が引用掲載されたが、ICA が掲載し
ったら、その記録を公開利用に供するにはどれく
ているのも、このウェブサイトをそのまま引用し
らいの時間経過を要することになるのだろうか。
た形になっている。
ちなみに、国立公文書館の公開基準は情報内容に
http://www.ica.org/biblio.php?pdocid=12
−6−
DJI レポート
No.66
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DJI国際資料研究所の主な活動 2006 年 1 月 1 日∼3 月 31 日
<執筆>
・「文書館学を文書館で」(松本市文書館だより 12 月 17 日
号)
・「日本のアーカイブをめぐる現状と地域資料保存の課題―
関西の取組みに期待すること―」『歴史科学』No.183 pp.33−
46, 2006.3, 大阪歴史科学協議会
<講演>
2 月 25 日 「アーカイブの基礎」、日本脚本アーカイブズ設立
準備室、東京
3 月 10 日「同志社大学所蔵竹林文庫の整理手法」大学図書
館問題研究会、同志社大学
3 月 16 日「アーカイブとアーキビスト」W 社内研究会,東京
<出講>
1 月 12,19,22,26 日 文化・人間情報学基Ⅳ「アーカイブの世
界」,東京大学大学院情報学環
1 月 10,17,24,31 日 2 月 7 日 文書館学、東京学芸大学
<発表>
3 月4日 「第 38 回 ICA 円卓会議@アブダビ」、横断的ア
ーカイブズ論研究会シンポジウム、静岡大学佐鳴会館、浜松
<参加>
1 月 14 日 原子力市民講座 東京大学
1 月 10 日 神奈川地域史研究会代表委員会傍聴、藤沢
1 月 19,26 日 公文書管理法(仮称)研究会、東京
1 月 27 日, 2 月 21 日 日本規格協会 TC46SC11WG3 会議、
赤坂、東京
1 月 17日 JHK 情報保存研究会新年会、神楽坂、東京
1 月 30 日 第5回情報とドキュメンテーション研究会
日本海運クラブ、東京
2 月 8、23 日、3 月 8 日 アーカイブの世界研究会、東京
2 月 8 日、3 月 2 日 JHK 情報保存研究会役員会、東京
3 月 4−5 日 横断的アーカイブズ論研究会シンポジウム、静岡大
学佐鳴会館、浜松
1 月 20 日,2 月 20 日 記録管理学会文書管理法制化推進プ
ロジェクト、日本レコードマネジメント、国立情報学研究所、東京
2 月 14-15 日 全史料協役員会、岡山
2 月 19 日 全史料協資料保存委員会、名古屋市市政資料館
2 月 22 日 松本市文書館運営協議会、松本
2 月 23 日、3 月 14 日 内閣府「電子媒体による公文書等の管
理・移管・保存に関する研究会」、東京
2 月 24 日 記録管理学会理事会、東京
3 月 13 日 全史料協資料保存委員会資料保存セミナー、
国文学研究資料館、東京
3 月 23 日全史料協総務委員会、愛知県公文書館,名古屋
3 月 28 日 記録管理学会特別例会「文書管理法(仮称)制
定推進ガイドラインの検討」、九段会館、東京
3 月 30 日 TC46SC11 打合せ 東京
<調査>
1 月 23 日 藤沢市文書館、藤沢、神奈川
<見学>
1 月 22 日 板橋区公文書館、東京
2 月 7 日 渋沢史料館、東京
2 月 15 日 岡山県立記録資料館
2 月 19 日 名古屋市市政資料館
2 月 22 日 松本市文書館
3 月 11 日 島津創業資料館、京都
3 月 30 日 東京大学山上会館会議室
<巻末随想・一年休刊>
●DJI レポート 休刊のお知らせ
拝啓
皆様には、日頃より DJI レポートをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
お蔭様で 2006 年 1 月には第 65 号を発行することが出来ました。
この DJI レポートは、国際資料研究所の小川千代子が単独で発行してきました。発刊の
きっかけは 1995 年 1 月の阪神淡路大震災による文書館関係機関の被害状況調査報告でし
たが、その後も文書館の専門誌として役割を果たしてきたところです。とても楽しい仕事
ではありますが、11 年のあいだ独走状態の編集発行人には少しリフレッシュ休暇が必要に
なってきました。そこで、大変勝手ですが、2006 年度 1 年間、休刊させていただきたく、
お知らせ申しあげます。2006 年度の購入ご予定の皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、
ご理解を賜りたく、よろしくお願い申しあげます。なお、2007 年 4 月には復刊します。
また、休刊中もブログ DJI レポート電子版 http://djiarchiv.exblog.jp/ は継続し、
【DJI メ
ル友速報】は随時お届けします。ご希望の方は、[email protected] までお知らせくださ
い。このホームページも、時々更新したいと願っています。
2006 年 2 月吉日
Documenting Japan International Report 国際資料研究所報
小川千代子
ISSN 1342−632X
DJIレポート
No.66
20060420
発行所:国際資料研究所 Documenting Japan International 代表 小川 千代子
〒251-0045 神奈川県藤沢市辻堂東海岸3−8−24 fax+ phone 0466−31−5061
Email:djiarchiv@ybb.ne.jp
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