567 H - 01 第 45 回地盤工学研究発表会 (松山) 2010 年 8 月 遠心力模型実験によるパイルドラフト基礎の支持機構検討 パイルドラフト 遠心力模型 支持力 土木研究所寒地土木研究所 北海道大学大学院 国際会員 ○冨澤 幸一 国際会員 西本 聡 国際会員 三浦 清一 1.はじめに 構造物基礎は支持形態の違いから, 浅い基礎で代表される直接基礎と深い基礎である杭基礎に概ね大別されるが, その 1) . ただし, ラフトとパイルでは 中間に直接基礎(ラフト)と杭(パイル)を組み合わせたパイルドラフト基礎がある 各々の支持力形態や設計理論が大きく異なることから, パイルドラフト基礎の設計法を成立させるためには変形性能す なわち長期の沈下量や偏心・傾斜を含めた鉛直荷重に対する支持機構の解明が課題となる.2) そのため,パイルドラフト 基礎の鉛直支持機構に関する基礎資料 3) を得る目的で, ラフト基礎に対するパイルの有無およびパイル配列に注目した 遠心力模型実験を実施した. 2.遠心力実験モデル 900 み試験とした. 本試験の基礎モデルは, ラフトのみの直接基礎 800 (ケース 1)・2 列パイルとラフトを組み合わせたパイルドラフ ト基礎(ケース 2)・パイルを片側 1 列に配置しラフトを併用し たもの(ケース 3)の 3 ケースとした. パイルは片側 1 列 9 本で ある. 実験に用いた模型パイルは, 径 D=10mm, 長さ L=200mm 土圧の変化 p(kN/m2) 遠心力模型実験は, 50G 場での静的鉛直載荷試験すなわち押込 ① ② ③ ④ ⑤ 700 600 ③ ④ ② ① ⑤ 500 400 ① 土圧計位置 ② G.L.0m ③ ④ ⑤ 300 200 100 のスチールパイプを用い, ラフトの地盤反力が発揮させるように 0 摩擦杭基礎として 1D 間隔に設置した. 模型地盤材料には珪砂特 0 0.05 0.1 粉 8 号を用い, 落下法で地盤造成し密度ρd=1.32g/m2 が一定とな るよう管理した. 鉛直載荷試験時のラフトの効果を検証するため, 基礎における載荷重と地盤反力の関係を図-1 に示した. 図によれ 土圧 p(kN/m2) 遠心力模型実験の実施により, ケース 1 試験で得られたラフト 土圧分布 200 300 400 土圧合計:P'(9036kN) 500 600 ば, ラフトの沈下量つまり鉛直変位δに対して各土圧①・②・ 700 -0.5 ③・④・⑤は直線的な増加傾向を示している. 土圧合力も鉛直変 0 位量δに概ね比例している. このため, 本試験の荷重レベルでは 土圧計 線形内の挙動と判断される. ただし, 土圧は平面の位置により発 現にバラツキを示した. 土圧の発現は中央部が大きく, 端部にい 荷重が大きくなり鉛直変位が進行するに従い顕著となる. 2 列パイルのパイルドラフト基礎 遠心力模型実験よりケース 2 試験で得られた載荷重と 2 列パイ 0.5 5 5.5 δ=0.10m ラフト 400 500 土圧合計:P'(17262kN) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 3.5 載荷重:P(17825kN) 土圧計 4 4.5 5 5.5 δ=0.15m ラフト 0 土圧 p(kN/m2) 100 土圧分布 200 300 400 500 600 700 -0.5 土圧合計:P'(25163kN) 0 0.5 1 1.5 量の設定に応じは, 土木構造物基礎の分野においてもパイルドラ フト基礎の実用化の可能性を示している. 4.5 300 700 -0.5 ラフトの土圧分布を見ると, ケース 1 と同様に, 中央部が大きく 立していると考えられる. つまりこの試験成果は, 許容鉛直変位 4 200 の傾向に鉛直変位の違いで大きな差異は認められなかった. また, 基礎の支持はパイルのみではなくラフトの地盤反力との合力で成 3.5 土圧分布 6:1(パイル 2 列分の反力合計:ラフト土圧合計)の関係にある. こ ケース 2 はパイルを摩擦杭とした通常の杭基礎形式であるが, 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 載荷重:P(11567kN) 600 荷 重 分担 比に注 目すれ ば, パ イ ルの 受け持 ち 分が大きく概ね 地盤反力の発現であることが分かる. 1.5 0 ルおよびラフトの反力の関係を図-1 に示した. パイルとラフトの 端部にいくほど低下している. 特にパイル付近では非常に小さな 1 100 土圧 p(kN/m2) くほど低下している. この傾向は地盤内応力の伝搬に起因し, 載 δ=0.05m ラフト 100 ラフト基礎 0.25 0 3.試験成果 3.2 0.2 載荷重:P(5765kN) 土圧計 各ケースでラフト底面の幅方向に 5 個の土圧計を設置した. 3.1 0.15 変位量 δ(m) 図-1 ケース 1 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 3.5 4 4.5 5 5.5 載荷重~ラフト地盤反力 A study of bearing mechanism of piled raft foundation through centrifuge model test Koichi TOMISAWA, Satoshi NISHIMOTO (Civil Engineering Research Institute for Cold Region), Seiichi MIURA (Graduate School of Engineering, Hokkaido University) 1133 160 140 120 400 土圧計位置 G.L.0m 杭周辺土圧の変化 p(kN/m2) ① ② ③ ④ ⑤ ① ② ③ ④ ⑤ 180 杭 周 辺 土 圧 の 変 化 p(kN/m 2) ① ② ③ ④ ⑤ 載荷装置 200 杭 100 80 60 350 case2 ① ② 土圧計位置 G.L.0m ③ ④ 300 ⑤ 杭 250 200 150 100 40 50 20 0 0 0.05 0.1 0.15 0 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 土圧計 鉛直変位 δ(m) 載荷重:P(20233kN) 土圧計 0.25 0.3 0.35 0.4 200 杭 土圧合計:P'(4335kN) 反力合計:P'+q(31023kN) 杭反力:q(13968kN) 土圧合計:P'(3498kN) 300 反力合計:P'+q(7794kN) 400 杭反力:q(4296kN) 0 0.5 0.5 1 1.5 杭反力:q(12720kN) 1 ケース 2 1.5 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 3.5 4 4.5 5 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 3.5 載荷重:P(13008kN) 4 4.5 5 5.5 δ=0.25m ラフト 5.5 0 載荷重~2 列パイルとラフト反力 土圧 p(kN/m2) 3.3 200 土圧計 図-2 杭 100 500 -0.5 300 0 δ=0.20m ラフト 0 土圧 p(kN/m2) 土圧分布 杭 500 -0.5 載荷重:P(8969kN) 土圧分布 0 土 圧 p(kN/m 2) δ=0.35m ラフト 100 400 0.2 杭貫入変位量 δ(m) 片側 1 列パイルのパイルドラフト基礎 遠心力模型実験よりケース 3 試験で得られた載荷重と片側 1 杭 土圧分布 100 200 土圧合計:P'(5660kN) 反力合計:P'+q(11596kN) 300 杭反力:q(5936kN) 400 500 -0.5 0 0.5 1 1.5 列パイルおよびラフトの反力の関係を図-3 に示した. パイルと ラフトの荷重分担はケース 2 とは異なり, ラフトの受け持ち分 土圧計 0 に比例的に顕著となる. つまり, 鉛直変位δ=0.20m ではラフト 100 の土圧合力よりパイル反力が大きいが, δ=0.35m ではそれが逆 転し若干ながらラフトの受け持ち合力が大きくなった. 土圧 p(kN/m2) が比較的大きいことがわかる. この傾向は載荷重の増加ととも また, ラフトの土圧分布①・②・③・④・⑤を見ると, パイル 載荷重:P(17446kN) 4 4.5 杭 300 土圧合計:P'(8035kN) 反力合計:P'+q(15611kN) 400 0 土圧計 0.5 1 1.5 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 杭反力:q(7576kN) 3.5 載荷重:P(22395kN) 4 4.5 配置した場合と片側 1 列のみの場合で大きな違いが無く同等の 支持力を発揮した. これは今後, 偏心や許容変位量の設定・耐震 性に留意する必要はあるものの, 基礎形式に自由度を持たせた 5 5.5 δ=0.35m ラフト 0 土圧 p(kN/m2) この結果, 載荷重に対するラフトの鉛直変位がパイルを 2 列 5.5 δ=0.30m ラフト 杭 土圧分布 ケース 2 と同様にほとんど発現していない. 5 200 とが分かる. これは片側のパイル反力と均衡を保つためと考え られるが, 若干の偏心が生じている. なお, パイル箇所の土圧は 3.5 土圧分布 500 -0.5 が無い側の土圧①が中央部③と同程度の大きく発現しているこ 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 100 200 300 400 土圧合計:P'(10726kN) 500 -0.5 0 0.5 1 反力合計:P'+q(19886kN) 1.5 2 2.5 3 土圧計位置 (m) 3.5 杭反力:q(9160kN) 4 4.5 5 5.5 パイルドラフト基礎の可能性を示唆していると考える. 4.まとめ 図-3 ケース 3 載荷重~1 列パイルとラフト反力 一連の遠心力模型実験より, パイルドラフト基礎の鉛直支持機構に関し以下の知見が得られた. 1)ラフト基礎の土圧合力は鉛直変位に比例的の増加傾向を示した. ただし, 土圧分布は一応ではなく, 中央部が大きく端 部にいくほど低下した. この地盤内応力などの支持力理論に起因するものと考えられた. 2)2 列パイルを配置したパイルドラフト基礎では, 鉛直変位量の増加に伴い, パイルとラフトが一体となり抵抗する支持 機構となる. 本試験ではパイルの受け持ち分が大きく, 荷重分担比は概ね 6:1(=パイル:ラフト)程度であった. 3)片側 1 列のみにパイルを配置したパイルドラフト基礎は, 2 列の場合と同等の支持力を発揮した. ただし, パイルが無 い側のラフトの土圧が載荷重の増加に従い大きく発現し, パイルとラフトの荷重分担は同程度となった. 参考文献 1). 社団法人 建築学会:建築基礎構造設計指針, pp.327-348, 2001. 2).木村亮, 長谷川雅:模型急速載荷試験による群杭 およびパイルド・ラフトの鉛直支持力特性の検討, 土木学会論文集Ⅲ No.778, pp.29-39, 2004. 三浦清一:パイルドラフト併用基礎の支持機構の解析(1・2) 3). 冨澤幸一・青地知也・ 第 42 回地盤工学研究発表会講演集, pp.1293-1296, 2007. 1134
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