白色レーザーを用いたラット眼組織の マルチプレックス多 - 分子科学会

2C10
白色レーザーを用いたラット眼組織の
マルチプレックス多光子分光イメージング
(筑波大・数理 1、東大院・理 2、筑波大・医 3)
○秋山敏宏 1、瀬川尋貴 2、加治優一 3、加納英明 1
Label-free visualization of rat eye tissue using multimodal and multiphoton
spectro-microscopy with use of a white-light laser source
(Graduate School of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba1, Department of
Chemistry, School of Science, The University of Tokyo2,
Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba3)
○Toshihiro Akiyama1, Hiroki Segawa2, Yuichi Kaji3, Hideaki Kano1
【序】現在の眼医療では、診断に共焦点顕微鏡や光干渉断層像計(optical coherent tomography;
OCT)などが広く普及している。これらは眼組織を in vivo、in situ で測定可能であるが、組織
内の屈折率差などの光学的情報に基づいた測定手法であり、そこには分子情報は含まれない。
これに対して、コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(coherent anti-Stokes Raman
scattering; CARS)をはじめとする非線形ラマン過程は、生体組織を染色や標識を施さずに“あ
りのまま”の状態で分子の情報を取得することができるため、近年注目が集まっている。そこ
で本研究では臨床診断への応用を目指し、その前段階として、複数の非線形光学現象の観測
が可能な非線形マルチモーダル顕微鏡を用いてラット眼組織の分子イメージングを行った。
【実験】実験装置は当研究室で開発した非線形マルチモーダル顕
微鏡[1]を用いた。光源は 1064 nm の単色光と広帯域の波長成分を
持つスーパーコンティニューム光で、これらを同時に試料に照射
し、そこで発生した複数の非線形光学現象を観測、イメージング
を行った。試料はラットより摘出した眼球の凍結切片(厚さ 20 μm)
を用いた。図 1 にその光学像を示す。図のように角膜、水晶体、網
膜といった眼球の各組織が含まれている。測定する直前に解凍及び
4%パラホルムアルデヒドによる固定を行った。
図 1:凍結切片(光学像)
【結果・考察】角膜、網膜において近赤外域に CARS 信号を、紫外-可視域に第二高調波発
生(SHG)、第三高調波発生(THG)、三次和周波発生(Third-order sum frequency; TSFG)の信号を
それぞれ検出することができ、それらによるイメージの取得に成功した。図 2,3 にこれらの
スペクトルおよびイメージを示す。CH3 伸縮振動 (図 3(c),(h))やフェニルアラニン残基(Phe;
図 3(e))のイメージはタンパク質の分布に相当し、組織が主にタンパク質で構成されている
ことが分かる。一方、CH2 伸縮振動は脂質分子を可視化できる。この振動モードのバンド強
度は細胞核で弱くなることが我々の先行知見で分かっており、CARS イメージ(図 3(d)、(i))
はそれを表していると考えられる。さらに核酸塩基(A,G)のプリン環によるイメージ(図 2(j))
では核の局在とその内部構造を可視化することができた。角膜のイメージングに関しては、
我々が以前報告したラット ex vivo 角膜の結果[2]と類似の結果であった。図 3 で特筆すべきこ
とは、網膜での SHG のイメージ(図 3(g))で、視物質近傍において複数の輝点が特異的な空
間分布で確認できたということである。SH の発生原理から考えると、これらの部分では局所
的に反転対称性の崩れた構造が点在していると考えられる。視物質であるロドプシンは、脂
質二重膜からなる円盤膜に埋め込まれた状態で視細胞内に存在している。ロドプシンを含む
円盤膜は、層構造を成している網膜内部で産生されて逐次外側へと送り出され、古くなった
ものは網膜最下層の色素上皮細胞にて分解される。輝点が見られる領域は、この新しく産生
された円盤膜が分布している部分に相当しており、視物質の合成と何らかの関連がある可能
性がある。
図 2:網膜(図 3(f)矢印部)で測定された各スペクトル
(a)THG,TSFG,SHG (b)CARS (Imχ(3))
図 3:取得されたイメージ
上段:角膜 下段:網膜
【参考文献】
[1] H.Segawa, M.Okuno, H.Kano, P.Leproux, V.Couderc, and H.Hamaguchi, Opt. Express, 20, 9551-9557 (2012)
[2] 瀬川、加治、加納、小澤 第 7 回分子科学討論会(2013 京都) 2D12
2C11
赤外超解像顕微鏡法による毛髪 α-ケラチンの分子配向イメージング
(東工大・資源研 1、北里大・理 2)
○牛尾公平 1、渡瀬五常 2、石川春樹 2、藤井正明 1、酒井誠 1
Orientation-sensitive molecular imaging of human hair α-keratins
by IR super-resolution micro-spectroscopy
(Tokyo Institute of Technology1, Kitasato University2)
○Kohei Ushio1, Yukihisa Watase2, Haruki Ishikawa2, Masaaki Fujii1, Makoto Sakai1
【序】振動和周波発生(VSFG)法を顕微鏡技術と融合させた赤外超
解像顕微鏡は、通常の光学顕微鏡と同程度の空間分解能を有しながら、
界面選択性や分子配向に敏感であるという特徴を併せ持つ。我々は昨
年までに、毛髪横断面(図1:α = 0°)の α-ケラチンのアミドバンド
領域において赤外超解像イメージングを行い、アミド III バンド(1250
cm-1)
では高感度で α-ケラチンが検出される一方、
アミド I バンド(1650
cm-1)では α-ケラチンが全く観測されない現象を見出した。アミド I
図1:毛髪の断面の角度α
横断面はα = 0°、縦断面はα
= 90°に相当する.
バンドは主に α-ケラチンの伸長方向に沿
った C=O 伸縮振動モードに対応し、アミ
ド III バンドは C-N 伸縮振動モードに対応
することを考慮すると、α-ケラチンでは両
者はほぼ直交な関係にある。入射光であ
る赤外光および可視光を毛髪横断面に対
して垂直に照射する我々の実験ではアミ
図2:毛髪の断面の角度α = 0°, 45°, 90°のアミドIバ
ンドにおけるVSFG像(画像の左上は角度α、赤外光
と可視光の偏光は直交関係).
ド III バンドのみ検出可能であったことか
ら、α-ケラチンが毛髪伸長方向にきれいに配向しており、α-ケラチンの分子配向が VSFG の信号
強度に影響を及ぼしたと結論した[1, 2]。この結果は、毛髪断面の角度 α を 0°から徐々に傾けて(図
1)、α-ケラチンの分子配向を変えて測定を行ったときに、毛髪横断面(図 2 左:α = 0°)では観
測されなかったアミド I バンドによる VSFG 信号が、毛髪斜め断面(図 2 中央:α = 45°)では明
瞭に観測されたことからも支持される。しかし同時に、我々の予想とは異なり、毛髪縦断面(図
2 右:α = 90°)では入射光の電場の振動平面と平行であるのに強度が弱くなっていることも分か
った。本研究では、VSFG の信号強度が分子配向に加え、入射光(可視光、赤外光)や VSFG 光
の偏光の組み合わせに対して大きく依存すること[3]を利用し、アミド I バンドにおける VSFG 信
号強度の偏光依存性測定結果と VSFG の理論を照らし合わせて、分子配向について議論する。
【実験】励起光源に使用した赤外光と可視光は、再生増幅器によって増幅された Ti : Sapphire レー
ザーのピコ秒パルスを波長変換することで得られ、それぞれ赤外光 5-9 µm(1111-2000 cm-1)およ
び可視光 613 nm の波長を用いた。これらの光をビームコンバイナーで同軸に合わせた後、BaF2
レンズ(焦点距離:50 mm)を用いて直径約 100 µm の大きさで毛髪試料全体に照射して、赤外カ
ットフィルター、バンドパスフィルターを通した後に結像レンズにより ICCD カメラ上に結像し
た。偏光依存性測定では、α = 45º断面におけるアミド I バンドに対し、1/2 波長板、偏光フィルタ
ーで VSFG 光、可視光、赤外光における縦偏光、横偏光を変えて、全 8 通りの組み合わせで測定
した。毛髪試料には、日本人毛髪をエポキシ樹脂に包埋した後、ミクロトームで毛髪伸長方向の
直交軸に対して様々な角度(α = 0 ~ 90º:図 1 参照)で断面を切り出し、カバーガラス基板上に載
せ、エタノールで馴染ませることにより基板上に半固定したものを用いた。厚みは全て 3 μm で調
製した。
【結果・考察】毛髪伸長方向に対して斜めにカットした断面である α = 45º断面のアミド I バンド
で測定した偏光依存性の結果を図 3 に示す。画面横方向を X 偏光、縦方向を Y 偏光とおき、偏
光の組み合わせは VSFG 光、可視光、赤外光の順に表記している。これらの画像から明瞭な偏光
依存性があることは明らかであり、XXY のときに最も強い信号強度、XYX、YXX ではほぼ同程
度の弱い信号強度を示し、その他の組み合わせではほとんど信号が観測されなかった。VSFG の
信号強度は分子の超分極率 β に依存し、その値は、アミド I バンドを α-ケラチンの伸長方向に沿
った単一な C=O 伸縮振動と考えると、α = 45º断面では伸長方向に対して 45°傾いた直線分子に近
似して取り扱うことができる。このときの超分極率 β は赤外光の偏光と分子振動の向きが一致す
るときに値を持つ。α = 45º断面では、α-ケラチンが毛髪断面の長軸方向(X 方向)に配向してい
るので、YYX のときに最も信号強度が強くなる[3]はずである。しかしながら、実験結果は赤外
光の偏光と分子振動の向きが直交関係の XXY のときに最も強い信号強度を示しており、理論と
一致しなかった。アミドⅠバンドにおける VSFG 信号強度は毛髪断面の厚みに対して比例関係が
あることから、毛髪断面のカット表面近傍からの信号ではなく、試料内部の分子種からの信号で
あることは間違いない。VSFG 検出により、α-ケラチンの特異な物性が観測された、あるいは αケラチンとは異なる分子種が観測されたなどの可能性が考えられる。
図3:α = 45º断面のアミドIバンドにおけるVSFG像の偏光依存性
(画像の左上はVSFG光、可視光、赤外光の順に表記した偏光の組み合わせ).
【参考文献】
[1] S. Nagase, T. Shinozaki, M. Tsuchiya and H. Tsujimura, J. Soc. Cosmet. Chem. 43 (2009) 3.
[2] M. Sakai, K. Kikuchi and M. Fujii, Chem. Phys. 419 (2013) 261.
[3] Y. R. Shen and V.Ostroverkhov, Chem. Rev. 106 (2006) 1140.
2C12
細胞内移行性を向上させたレシオ型酸素プローブ分子の開発
(群馬大院・理工)○吉原 利忠・村山 沙織・飛田 成史
Development of Ratiometric Molecular Probes with
High Cellular Uptake Efficiency
(Gunma Univ.) ○Toshitada Yoshihara, Saori Murayama, and Seiji Tobita
【序】酸素は好気性生物の代謝過程において必須の役割を果たしており、生命活動維持において
欠かせない物質である。細胞内において 90%以上の酸素は,呼吸鎖における電子伝達系の最終電
子受容物質として使用される。一方,組織内における酸素濃度低下は,がん・脳卒中・心筋梗
塞などで見られる共通した病態である。このため,細胞,組織などの微小領域内における酸
素濃度計測法の開発は,細胞生物学だけでなく臨床医学においても重要である。組織内の酸
素濃度計測法として微小電極を用いる方法がある。この方法は,測定中電極周辺の酸素消費
を伴うだけでなく,組織に直接電極を挿入するため侵襲的である。また,細胞などm スケー
ルの微小領域測定は困難である。
一方,発光法は高感度および低侵襲的測定が可能な方法として,近年,研究・開発が進め
られている。発光法を用いた測定では,強度を計測する方法と寿命を計測する方法がある。
前者は簡便な測定法であるが,細胞など発光分子が不均一に分布している場合,得られる信
号が発光分子の濃度に依存するため定性的な評価に止まる。後者は,得られる信号が発光分
子の濃度に依存しないため定量的な評価として利用できるが,測定装置が複雑で高価である
ため汎用性に乏しい。これに対して,レシオ法は 2 波長の強度比を測定するため,強度測定
に必要な機器で定量化が可能であり汎用性が高い。我々はこれまでに,クマリン類(C343)
の青色蛍光を内標準として赤色りん光イリジウム錯体(BTP)のりん光強度を測定し,酸素
濃度を定量するレシオ型酸素プローブ分子(C343-Pro4-BTP)を開発した [1]。C343-Pro4-BTP
は,脂質膜中において酸素濃度定量を可能とするプローブ分子として機能するが,生細胞中
では,細胞への移行性が低いため定量的な評価は困難である。本研究では,生細胞内の酸素
濃度定量を目指し,カチオン性イリジウム錯体を用いて細胞移行性を向上させたレシオ型酸
素プローブ分子を新たに設計・合成し,それを用いた細胞内レシオ測定について検討した。
【結果・考察】Fig. 1 に本研究で開発したレシオ
型 酸 素 プ ロ ー ブ 分 子 ( C343-Pro4-BTQ+ ,
C343-Pro8-BTQ+)の構造式を示す。これらプロー
ブ分子は,蛍光団に青色蛍光を示す C343,りん
光団に深赤色りん光を示すカチオン性イリジウ
ム錯体(BTQ+)をプロリン残基 4,8 のオリゴプ
Fig. 1 Chemical structures of C343-Pro4BTQ+ and C343-Pro8-BTQ+.
ロリンリンカーで結合させた構造を有する。Fig. 2 に C343-Pro4-BTQ+,C343-Pro8-BTQ+のアセ
トニトリル(MeCN)中における空気飽和下(黒線)および脱酸素下(赤線)の発光スペクト
ルを示す
す。475nm,657nm に極大を示す
す発光は,そ
それぞれ
+
15 C343-Proo4-BTQ
+
できる。C343 由来
来の蛍光は溶
溶液中の酸素
素濃度にほと
とんど影
響を受け
けないのに対
対して,BT
TQ+のりん光
光は空気飽和
和下にお
いて強度
度が著しく減
減少した。空気飽和下
下における蛍
蛍光強度
+
とりん光
光強度の比 RI(Ip / If)は C343-Proo4-BTQ では
は 0.69,
଴
଴ ଴
C343-Prro8-BTQ+では
は 0.23 であり,脱酸素下
下での比ܴ(
୍ ‫ܫ‬୮ / ‫ܫ‬୤ )
はそれぞ
ぞれ 14,4.55 であった。また,両プ
プローブ分子
子におけ
る୍ܴ଴ / RI は 20 であ
あった。この
の値は,空気
気飽和下およ
よび脱酸
素下で測
測定したりん光寿命の値の比と一
一致している
るため,
開発した
たプローブ
ブ分子がレシ
シオ型酸素プ
プローブ分子
子と
して機能
能することが
が明らかとなった。
Intensity / arb.
arb unit
C343 に
に由来する蛍
蛍光および BTQ
B
に由来
来するりん光
光に帰属
10
5
0
C343-Pro
o8-BTQ+
4
2
0
400
600
8
800
Wavelength / nm
W
m
Fig. 2 Emission sppectra of C34
43-Pro4Q+ and C343-PPro8-BTQ+ in MeCN
BTQ
C343--Pro4-BTQ+,C343-Pro8-B
BTQ+
の細胞移
移行性の向 上を明らか
かにす
るために
に細胞実験 を行った。各プ
ローブ分
分子を HeL
La 細胞の培
培地に
最終濃度
度 5M にな
なるように添
添加し,
37℃で 220 時間培養
養後に培養液
液を洗
浄し,蛍
蛍光顕微鏡を
を用いて細胞
胞から
の発光画
画像を観察 した(Fig. 3)。
Figg. 3 Emission
n images of HeLa
H
cells inncubated with each
iriddium complex
x.
C343-Prro4-BTP は培
培養液中で凝
凝集し,細胞
胞からの発光
光がほとんど
ど観測されな
なかったのに
に対して,
C343-Prro4-BTQ+,C
C343-Pro8-BTQ+では明瞭
瞭な発光が観測された
た。よって, りん光団と
としてカ
チオン性
性イリジウム
ム錯体を用いることで
で,細胞親和
和性が顕著に
に向上するこ
ことが明らか
かとなっ
た。次に
に細胞内にお
おけるレシオ
オ画像の測 定を試みた
た。C343-Pro8-BTQ+を M
MCF-7 細胞の
の培地に
最終濃度
度 5M にな
なるように添
添加し,37℃
℃で 20 時間培
培養
後に培養
養液を洗浄し,2 波長同
同時観察ユニ
ニットを取り
り付
けた蛍光
光顕微鏡を用いて蛍光
光画像とりん
ん光画像を取
取得
した(F
Fig. 4)。得ら
られた蛍光画
画像とりん光
光画像から解
解析
したレシ
シオ画像は,
,21%酸素条
条件下では細
細胞全体が緑
緑色
となりレ
レシオ値が小
小さく,酸素
素分圧が高い
いことを示し
して
いる。一
一方,2.5%酸素条件下
下では細胞全
全体が赤色と
とな
りレシオ
オ値が大きく,酸素分圧
圧が低いこと
とを示してい
いる。
以上の結
結果より,細
細胞内において C343--Pro8-BTQ+は,
は
酸素分圧
圧をりん光強度と蛍光
光強度のレシ
シオによって
てイ
メージン
ングできるこ
ことが明らかになった 。
[1] T. Yooshihara, Y. Yamaguchi,
M. Hosaka, T. Takeuchi, and S.
Y
Tobita, A
Angew. Chem
m. Int. Ed., 51
1, 4148, 201 2.
Fig.
F 4 Emissionn images of MCF-7
M
cells incubatedd with C343-P
Pro8BTQ
B + under 211 % and 2.5 % O2.
2C13
HeLa細胞へのGFPおよびGFP付加ヌクレオソームシャペロンの
フェムトインジェクションと細胞内動態
(広大クロマチン動態数理研究拠点1, 東京農工大生命工2)
○高見 知秀1, 上脇 隼一1, 落合 博1, 小山 真人2, 小川 佳英2,
斉藤 美佳子2, 松岡 英明2, 楯 真一1
Femtoinjection of GFP and GFP-tagged Nucleosome Chaperone
into HeLa Cells and the Intracellular Dynamics
(RcMcD Hiroshima Univ.1, Dept. Biotechnol. Life Sci. Tokyo Univ. Agricul. Technol.2)
○Tomohide Takami , Jun-ichi Uewaki , Hiroshi Ochiai , Masato Koyama ,
1
1
1
2
Yoshihide Ogawa2, Mikako Saito2, Hideaki Matsuoka2, and Shin-ichi Tate1
【序】生細胞中の特定の機能を担うタンパク質の時間分解ライブイメージングは,反応速度や機能発現
の時間スケールを定量化できることから,近年注目されている。目的化合物を細胞質内へ導入するため
に,リポフェクションやエレクトロポレーションをはじめとして多くのトランスフェクション法が開発されてい
る.その中で,定量的に化学物質を細胞内に導入する方法として,従来のマイクロインジェクションを精
密定量化したフェムトインジェクション法[1]が挙げられる.この方法により,特定の分子を定量的に細胞
内に導入できれば,これまでのトランスフェクション法に欠けていた定量的議論が可能になるだけではな
く,生細胞内における特定部位への結合の選択性の定量化などその応用範囲は無限である。
そこで本研究では,緑色蛍光タンパク質(GFP, mNeonGreen)およびGFPでタグ付けされたヌクレオソ
ームシャペロン(HMGB1)をヒト子宮頸癌由来細胞(HeLa細胞)にフェムトインジェクション法を用いて直接
インジェクションし,その直後から蛍光分子の拡散を時間変化で追跡することで,インジェクションした分
子の細胞内動態についての知見を得たので報告する.
【実験】GFP(~27 kDa, 0.24 mM)とGFP付加HMGB1(~52 kDa, 0.20 mM)そして末端テールのないGFP付
加HMGB1[2](~46 kDa, 0.10 mM)の合成および調製は,我々が報告した方法に従って行った.[3,4] これ
らの試料をそれぞれリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈して50 μMにした溶液をインジェクション液とし
た.ガラスピペットは,ボロンシリケート製の外径1 mm (内径0.78 mm)でフィラメント付きのキャピラリから,
Sutter社のプラー(P-2000)を用いて,先端外径1 μm (内径約0.7μm)のものを作製した.このピペットに
上記のインジェクション液を充填してから,農工大で開発されたスグワカルチャーシステム[5]を有するフ
ェムトインジェクション装置に取り付け,プラスティックディッシュ内で培養されたHeLa細胞にナリシゲ社の
マイクロインジェクター(IM-300)を用いてインジェクションを行った.インジェクションの圧力パルス幅は10
msで行った.インジェクション直後からの経過観察は浜松ホトニクス社のCCDカメラ(ORCA-ER)を用いて
行い,その後スグワカルチャーシステムにより細胞座標位置が登録された情報を用いて特定されたイン
ジェクション後の細胞をZeiss社の共焦点顕微鏡(LSM510)に移して経過観察を行った.
【結果と考察】ほぼ同じ大きさ(体積約4 pL)のHeLa細胞の端からGFP(~27 kDa)およびGFP付加HMGB1
(~52 kDa)分子をインジェクションした場合,注入された分子が細胞内の対岸に到達するまでの時定数
を求めたところ,それぞれ25 s,64 sとなった.レイノルズ数が低い液体中での拡散におけるストークス・
アインシュタインの式において,分子半径が分子の質量にほぼ比例すると仮定すると,時定数すなわち
拡散係数の逆数は分子の質量にほぼ比例することになる.上記で求められた各時定数と分子の質量と
の関係は若干比例関係からずれているが,これは分子構造の歪と細胞形状の個体差に起因すると考え
られた.
次に,GFPでタグ付されたHMGB1におい
て,末端テールの有無で核移行速度に変化
が生じるかを調べるために,細胞内におけ
る核内と核外での平均強度の比を,インジェ
クション時間に対して片対数プロットしたグラ
フを右図に示す.グラフにおいて縦軸の値
が零になる点では,核内外での平均強度が
等しいことになり,縦軸の値が負になるほど
核移行が進んでいることを意味する.このグラ
フから,末端テールがない方がより早く核移行
が進行することがわかった.この結果は,末端
テールがHMG本体とクロマチンとの相互作用
Figure: Time dependence of the logarithmic intensity ratio of
the injected GFP-tagged HMGB1 molecules between in and
out of the nucleus in the HeLa cell; HMGB1 with tail (blue)
and without tail (red). The time constants 1 and 2 shown in
the figure were estimated from the slope of the semi-log plots.
を阻害しているという報告[2]と一致する.そし
て,核移行が早く進行するフェーズ(時定数τ1)と核移行が遅くなるフェーズ(時定数τ2)が存在すること
がわかった.
以上の結果は試行数が少ないため,十分な統計解析を行うには実験上の困難がある.この問題を
解決するために,我々は自動インジェクション装置の開発に着手しており、この点についても併せて報告
する.
【謝辞】本研究は文部科学省生命動態システム科学推進事業「核内クロマチン・ライブダイナミクスの数
理研究拠点」の助成を受けたものです。
【参考文献】
[1] H. Matsuoka, S. Shimoda, M. Ozaki, H. Mizukami, M. Shibusawa, Y. Yamada, and M. Saito,
Biotechnol. Lett. 29 (2007) 341.
[2] M. Watson, K. Stott, and J. O. Thomas, J. Mol. Biol. 374 (2007) 1286.
[3] J. Wang, N. Tochio, A. Takeuchi, J. Uewaki, N. Kobayashi, and S. Tate, Biochem. Biophys. Res.
Commun. 441 (2013) 701.
[4] J. Uewaki, H. Kamikubo, J. Kurita, N. Hiroguchi, H. Moriuchi, M. Yoshida, M. Kataoka, N.
Utsunomiya-Tate, and S. Tate, Chem. Phys. 419 (2013) 212.
[5] Y. Yamada, N. Yamaguchi, M. Ozaki, Y. Shinozaki, M. Saito, and H. Matsuoka, Microsc. Microanal. 14
(2008) 236.
2C14
2波長蛍光Dip分光法を用いた超解像顕微鏡法
超解像顕微鏡用位相板の実用設計法の提案
*
(オリンパス (株) 、ブダペスト経済工科大学**)
○池滝 慶記*、ナンドール ボコル**
Super-resolution microscopy using two-color fluorescence dip spectroscopy
(Olympus1, Budapest University of Technology and Economics), ○Yoshinori Iketaki*, Nandor Bokor**
【序】2波長蛍光 Dip 分光法と波面制御光学の技術融合は、回折限界を上回る分解能をもつ空間
計測法を可能にした(超解像顕微鏡法)
。本分光法では、第1のレーザー光(ポンプ光)で色素分
子を S1 に励起した後、第2のレーザー光(イレース光)で S1 分子のポピュレーションを減少さ
せ、蛍光を抑制する(蛍光抑制効果)
。例えば、イレース光としてラゲール・ガウシアンビーム(LG
ビーム)用いれば非常にタイトな中空ビームが得られる。これをポンプ光と共に色素染色した試
料上にポンプ光を集光すれば蛍光抑制効果が起こり、ポンプ光の回折限界より微細な蛍光スポッ
トが得られる(図1)
。超解像顕微鏡法の実用化においては、如何に超精度良くかつ安定してこれ
らのビームを同軸で試料面に集光することが最大の技術課題であるが、我々は多層膜を用い2色
対応の位相板を開発することで克服した。光学多層膜はポンプ光とイレース光に対して独立した
位相差を与えることができるので、ポンプ光をガウスビームに保ったままイレース光のみを LG
ビームに整形できる。我々は、光学基板を4領域に分割し、各領域に独立に最適化した多層膜コ
ートした2色対応の位相板を作製した[1]。これを、商用のレーザー走査型顕微鏡に挿入すること
で超解像機能を実証した(図2)
。多層膜を用いると各領域おいて正確な位相変調が可能となるが、
反面、その一方で各領域で透過率が不均一となり、イレース光のビーム形状が歪む問題点が発生
した。また、蛍光検出する波長帯域おいて透過率も低下するのとより、検出効率の低下としった
不具合も発生した。そこで、透過率がほぼ 100%の SiO2 単層膜のみからなる極めて実用的な超解
像位相板の設計法を開発した。
図1 超解像顕微鏡法の原理
図2
:2波長対応位相板を用いたの超解像顕微鏡システム
【設計法】 図3に示す様に波長の整数倍の自由度に着目することで、SiO2 単層膜を用いて、ポ
ンプ光とイレース光に対して2色対応の位相板となる様に最適化設計を行なう。超解像顕微鏡法
の特徴として、得られる蛍光スポットの形状、すなわち点像分布関数はイレース光の形状によっ
て決定される。このことは、ポンプ光に関しては収差を多少犠牲にして、イレース光は理想結像
が出来るように位相板を設計すれば超解像顕微鏡法が実現できることを示している。単純な製膜
法により理想結果に近い超解像機能が得られることを意味する。図4に、イレース光は完全な LG
ビームとして理想結像し、一方、ポンプ波面において/5 が発生したシミュレーション例を示す。
それによれば、ポンプ光は収差により回折限界より広がるが、十分な超解像機能が誘導出来てい
ることを示している。
図3
単層膜を用いた2波長対応位相板の原理
図4 2超解像機能のシミュレーション結果
【実証実験】Nd:YAG レーザーの2倍波(=532nm)をポンプ光とし、Kr レーザー(=647 nm)を
イレース光とした場合の位相板を作製し、その超解像機能を確認した。光学基板を4領域に分割
し、夫々の領域において最適化設計した膜厚の SiO2 層をコートした(図5)。各領域を通過した
イレース光は 90°づつ段階的に位相が遅れる。一方、ポンプ光に対しては最大/11 波面収差を持
つが、ほぼガウスビームを保つ設計となっている。この位相板を レーザー走査型顕微鏡
(Olympus:Flouvew1000)の照明光学系に挿入し、ポンプ光又はイレース光の照明で発光する
200の蛍光ビーズ(Molecular Probe:F880)を用いて、それらの集光パターンを確認した(対物
レンズ:NA=1.4)。図5によれば、位相板を通過したポンプ光は、ほぼ回折限界のガウスビーム
として集光し、イレース光は綺麗な LG ビームとして結像していることが分かる。その構造が明
瞭に空間分解できていることを確認した。以上の集光ビームのパターンを確認後、ナイルレッド
で染色したフォトレジストにナノインプリントした 90nm の細線パターンを超解像観察したとこ
ろ、その構造が明瞭に空間分解できていることを確認した。すなわち、作製した位相板は回折限
界を突破した2点分解能を提供できることを示している(図 6)。以上の結果は、従来の多層膜を
用いた場合と比較して全く遜色が無い。提案する位相板は多層膜の透過率に関する欠点を解決し
ただけにとどまらない。本位相板の設計と製作は非常に簡単であるので、市販レーザー顕微鏡に
導入することで、多くの顕微鏡ユーザーは手軽に超解像機能を利用することができる。詳細な実
験結果は、本講演で詳細に報告する。尚、本研究は、科学技術振興機構の研究成果展開事業:先
端計測分析技術・機器開発プログラムにおいて実施された。
[1] Y. Iketaki, and N. Bokor, Opt. Commun. 285 (2012) 3798.
図5
最適化設計した単層膜を用いた2波長位相板によるビーム変調機能の確認
図6
90nm L&S スケールパターンの超解像計測
2C15
光駆動ナトリウムポンプロドプシンの
Na+輸送ダイナミクスの研究
(名古屋工業大学 1, JST さきがけ 2)
○井上圭一 1, 2, 吉住 玲 1、加藤善隆 1、神取秀樹 1
Dynamics of Na+ Transport of Light-driven Sodium Pump Rhodopsin
(Nagoya Institute of Technogy1, JST PREST2) ○Keiichi Inoue1,2, Rei Abe-Yoshizumi1,
Yoshitaka Kato1, Hideki Kandori1
【序】ナトリウムポンプロドプシン(NaR)は光のエネ
ルギーを使って、細胞内側から外側へナトリウムイオン
(Na+)を濃度勾配に逆らって能動輸送する、光駆動型
のナトリウムポンプである[1]。このとき光を吸収するの
が発色団である all-trans レチナールであり、光吸収に伴
って 13-cis 型へと異性化し Na+輸送に必要なタンパク質
の構造変化を誘起する。我々は昨年東京湾に棲息する海
洋性細菌 Krokinobacter eikastus より、最初の NaR である
Krokinobacter rhodopsin 2 (KR2)を発見し、その機能や光
反応サイクルについて研究を行ってきた[1, 2]。その中で
KR2 は生理学的な条件に近い NaCl 溶液中では Na+を輸
送するが、溶媒中の陽イオンを Li+に置き換えると、Li+
も輸送する。しかしそれに対してサイズの大きい陽イオ
ンである K+、Rb+、Cs+ が溶媒中に存在する場合には、
それらのイオンの代わりに H+が輸送される。このこと
は KR2 は周りの環境によってナトリウムポンプおよび
プロトンポンプの 2 つの機能を持つ、ハイブリッド型の
ポンプであることを意味している。
一方、過去の研究例の多い光駆動型プロトンポンプで
図 1. NaR で保存されているレチナー
ル周辺のアミノ酸残基の予想される
位置。(構造は Xanthorhodopsin の
もの(PDB code: 3DDL)を使用)
あるバクテリオロドプシン(BR)などと比べて、KR2 は以下の様な特徴的な配列を持つ。BR
の場合、N 末端側から 3 つめのヘリックスにあたる Helix C には 2 つの酸性アミノ酸(Asp85、
Asp96)が存在し、プロトンポンプ機能において非常に重要であることが知られている。しか
し KR2 ではこれらがアスパラギン(Asn112)およびグルタミン(Gln123)に置き換わってお
り、また BR で Asp85 と水素結合を形成する Thr89 の位置に新たなアスパラギン酸が存在す
る(Asp116)(図 1)。このことから KR2 は既知のロドプシンとは完全に異なった配列を持
ち、それらが Na+の輸送に重要だと予想される。実際に Asp116 はレチナールの根元にあるプ
ロトン化シッフ塩基から H+を受け取るプロトンアクセプターとして働くことが示され、その
過程が Na+輸送に極めて重要なことが明らかとなっている[1]。そこで本研究ではそれ以外の
Asn112 や Gln123 について変異体を作製し、機能測定や光反応サイクルの測定により、Na+の
輸送におけるこれらの残基の役割の解明を試みた。
【実験】KR2 の変異体は大量発現用に形質転換した大腸菌・C41(DE3)株を用いて発現した。
また精製のため C 末端側に His タグを導入し Co2+-NTA カラムで精製した。また光反応サイ
クルは CCD Linear Detector Array を用いたレーザーフラッシュフォトリシスシステムを用い
て、過渡吸収スペクトルの時間変化を見ることで調べた。励起光にはナノ秒 Nd3+:YAG レー
ザーの二倍波( = 532 nm、1 mJ/pulse)を用いた。
【結果と考察】今回 Asn112 と Gln123 をそれぞれ Alanine
に変異させた KR2 N112A および Q123A 変異体について研
究を行った。これまでに Q123A については Na+輸送活性が
野生型の 1/3 程度になるのに対し、N112A では Na+の輸送
能が完全に消失する一方で NaCl 溶媒中でも H+を輸送する
様になることが分かっている[1]。これらの輸送機能の違い
がどの様に生じるのか、光反応サイクルを野生型のものと
比較することで、その理由の解明を試みた。
まず野生型 KR2 の光反応サイクルは図 2 のように 3 つ 図 2. 野生型 KR2 光反応サイクル
の中間体を経由する形で表される。このうち L M から O 中間体の過程において Na+が細胞
質側から KR2 の中に取り込まれる。これに対し Q123A の光反応サイクルを過渡吸収変化か
ら調べたところ、全体のサイクルの戻り速度が野生型の 3 倍程度遅くなっていることを示す
結果が得られた(図 3A)。ここから Q123A の Na+輸送活性が減少した理由は Turn over 速度
の低下が主な要因であることが分かる。一方でこの残基は Na+の取り込み経路上に存在する
と予想されるが、その過程に対応する L M→O の速度が野生型の 5 倍程度遅くなっており、
実際に効率的な Na+の取り込みに Gln123 が関与していることが分かる。次に N112A の過渡吸
収変化をみると、野生型と比べて 100 倍以上の L M 中間体の長寿命化がみられ、一方で O
中間体の蓄積がなくなっていた(図 3B)。これは野生型の KCl 溶液中での H+輸送に対応す
る光反応と類似している。従って Asn112 は Na+と H+のうち特に前者の輸送に重要な役割を果
たしており、この残基を変異するとのレチナール近傍への過渡的な Na+の結合が阻害され、O
中間体が消失し、代わりに NaCl 溶液中でも H+が輸送されるようになったと考えられる。
講演ではさらに Asn112、Gln123 以外の残基の変異体についても結果を報告し、NaR の Na+
輸送におけるより詳細なメカニズムについて議論する。
図 3. 野生型 KR2 光反応サイクル
【参考文献】1. Inoue K, et al. (2013) Nat. Commun. 4, 1678.
2. Ono H, et al. (2014) J. Phys. Chem. B 118, 4784-4792.
2C16
(6-4)光回復酵素の低温赤外分光法における DNA 修復中間体の測定
(名工大院・工 1、阪大院・基礎工 2、米国・スクリプス研 3)
○山田大智 1、山元淳平 2、張宇 1、岩田達也 1、人見研一 3、
E. D. Getzoff3、岩井成憲 2、神取秀樹 1
Low-temperature FTIR study of the intermediates
in xenopus (6-4) photolyase repair process.
(Nagoya Inst. Tech. Japan1, Grad. Sch. Eng. Sci., Osaka Univ. Japan 2,
The Scripps Res. Inst., USA3)
○Daichi Yamada1, Junpei Yamamoto2, Yu Zhang1, Tatsuya Iwata1, Kenichi
Hitomi3, Shigenori Iwai2, Elizabeth D. Getzoff3 and Hideki Kandori1
【序】生物は太陽光のエネルギーを巧みに利用するが、光エネルギーを特異な酵素反応に利
用するのが DNA 光回復酵素である。興味深いことにこの酵素は、紫外線によって生じた
DNA 損傷を、近紫外光あるいは青色光を使って修復することができる。光吸収を担うのは
酵 素内 部に 結合し た FAD で あり 、酸化 型 (FADox ) から 光照 射によ りセ ミキ ノン 型
(FADH•)を経て酵素活性をもった完全還元型(FADH–)を生成する。光回復酵素には、シ
クロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)(Figure 1. 右)を修復する CPD 光回復酵素と(6-4)光
産物(Figure 1. 左)を修復する(6-4)光回復酵素があるが、いずれも FADH–が基質存在下で
光を吸収することで修復が実現する。(6-4)光回復酵素は CPD 光回復酵素よりも発見が遅く、
反応機構の理解も遅れている。CPD より複雑な構造を有する(6-4)光産物の修復においては酸素の
転位が必須であ
り、修復過程に
おけるオキセタ
ン中間体などが
提案されてきた。
しかし、複雑な
構造をもった(64)光産物 を修復
できる(6-4)光回
Figure1. (6-4)光産物(左)、DNA(中央)、CPD(右)[2]
復酵素の反応中
間体の捕捉を含
めた詳細な構造解析は皆無である[1]。
我々はフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を用いた構造解析を試み、これまで FADox から FADH–
への光反応及び(6-4)光産物の修復における FTIR 差スペクトルを得ることに成功し、反応機構解
明に向けた端緒を開くことが出来た[2-4]。今回我々は、Xenopus (6-4)光回復酵素に対して低温
FTIR 分光法を用いた構造解析を試みたところ、(6-4)光産物の修復中間体に由来する信号を含ん
でいると考えられる赤外差スペクトルを温度依存的に捉えることに成功した。さらに、13C 標識
した(6-4)光回復酵素の測定を行うことで、FTIR シグナルの帰属と中間体の構造モデルを提案す
る。
【実験】Xenopus 由来の(6-4)光回復酵素の調製は以前に報告した方法を用いた[4]。13C 標識した
(6-4)光回復酵素は M9 培地(0.5 g/ 1L culture 14NH4Cl、4 g/ 1 L culture 13C-Glucose を含む)を用い
て培養し調製した。二本鎖 DNA は 14 塩基対からなり、配列中に合成した(6-4)光産物を含む。塩
基配列を以下に示す[5]。
5'-CGCGAATTGCGCCC-3' (TT:(6-4) 光産物)
3'-GCGCTTAACGCGGG-5'
FTIR 測定は、(6-4)光産物存在下で、Xenopus (6-4) 光回復酵素の再溶解試料を作製し、277 K で
>450 nm の光照射により還元型を蓄積させた[2]。その後 77-277 K で目的の温度にセットし、温
度が安定するのを待って>390 nm 以上の光を照射し、光照射前後の差スペクトルを得た。
【結果と考察】低温で測定した光照
射前後の差スペクトルは、277 K(修
復前後の差スペクトル)とは異なる
ものであった(Figure 2.)。77 K で
は、1800-1700 cm-1 の C=O 伸縮振動
が見られているが、200 K 以上で見
られる Amide I の領域(1700-1600
cm-1)に変化が見られなかった。そ
のため、77 K は他の温度での測定
と異なる状態を示していると言える。
また、230 K では、200 K では見ら
れないリン酸 PO2-の非対称伸縮振動
領域(~1230 cm-1 )に変化が見られ
ていることから、200 K と 230 K で
は異なった状態を示していると考え
られる。250 K を見ると 277 K と類
似したバンドが見られた。1720 (+)
cm-1 のバンドは修復され新たに生じ
たチミンの C4=O(Figure 1. 中央)
に由来すると考えられているバンド
である。そのため、250 K でも修復
反応が起きていると考えられが、
230 K 以下ではスペクトルの形が
277 K のものとは異なるため、これ
らの温度では完全には修復がなされ Figure2. 低温FTIR分光法を用いた77-277 Kの温度
ておらず、修復中間体だと考えられ 範囲での(6-4)光産物の修復中間体の測定結果。
る。以上の事から、低温で得られた
スペクトル(77, 200, 230 K)は少なくとも 3 つの修復中間体を捉えられていると考えられる。
さらに、同じ測定を 13C 標識(6-4)光回復酵素についても行い、両者のスペクトルを比較するこ
とで、1800-1700 cm-1 のバンドが(6-4)光産物の C=O 伸縮振動、1700-1600 cm-1 のバンドが(6-4)光
回復酵素 の Amide I、低波数領域のバンドが DNA のリン酸骨格であると同定した。これらの結
果から、各温度における中間状態の構造モデルを提案する。
[1] Sancar, A. Chem. Rev. 2003, 103, 2203-2237.
[2] Zhang, Y., Iwata, T., Yamamoto, J., Hitomi, K., Iwai, S., Todo, T., Getzoff, E. D., Kandori, H.
Biochemistry 2011, 50, 3591-3598.
[3] Zhang, Y., Yamamoto, J., Yamada, D., Iwata, T., Hitomi, K., Iwai, S., Todo, T., Getzoff, E. D., Kandori,
H. J. Phys. Chem. Lett.2011, 2, 2774-2777.
[4] Yamada, D., Zhang, Y., Iwata, T., Hitomi, K., Getzoff, E. D. and Kandori H. Biochemistry 2012, 51,
5774-5783.
[5] Iwai, S.; Shimizu, M.; Kamiya, H.; Ohtsuka, E. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 7642-7643.
2C17
超効率的電子状態計算と軌道間相互作用解析による
人工 DNA の理論的機能設計
(九大院・総理工 1, JST-CREST2) ○折本 裕一 1、河村 祐希 1、Liu Kai1、青木 百合子 1,2
Theoretical functional design of artificial DNAs by
O(N) elongation method and TS/TB interaction analysis
(Kyushu Univ.1, JST-CREST2) ○Yuuichi Orimoto1, Yuki Kawamura1, Kai Liu1, Yuriko Aoki1,2
【序】 核酸に化学修飾や金属錯体を導入した人工 DNA は新奇な物性・機能を持ちうるナノテクノロジー
材料として注目されている[1]。人工 DNA の新たな機能創出のためには、ミクロな立場からその分子構造
と電子状態・電子物性の関係を知ることが本質的第一歩である。非経験的量子化学計算は、小~中規模
分子の電子状態を得る方法として有用であるが、系のサイズ(N)の3~4乗に比例した計算コストのため
生体分子のような大規模系については現在でも取り扱いが困難である。本研究では、当グループで開発
してきた巨大系の電子状態を超効率的・超高精度に得ることのできる O(N) Elongation 法を人工 DNA に
適用し、導電性・強磁性・非線形光学特性などの物性抽出を行う。さらに、別途開発してきた Throughspace/bond 解析法によって分子構造と電子物性の関係を軌道相互作用の観点から定量的に明らかにし、
高い次元での人工 DNA の機能設計に結び付けていく。
【方法】 Elongation(ELG)法[2]は、高分子の重合反応のように反応末端にモノマーを付加させつつ反応
末端付近のみ固有値問題を解くことで系の電子状態を逐次的に伸長させる(図1a)。適当なサイズの出
発クラスタ計算から得た正準分子軌道(CMO)をユニタリ変換によって 2 種類の領域局在化軌道(RLMO)
―反応末端側の Active RLMO と反対側の Frozen RLMO―に変換する。付加モノマーと相互作用のな
い Frozen RLMO を固有値問題から外し、相互作用領域(Active RLMO+付加モノマー)のみ解くことで、
計算精度を落と
さず効率的に電
子状態を伸長で
きる。軌道局在化
と部分固有値問
題を繰り返すこと
で 、 Frozen
RLMO が次々と
蓄積される。さら
に軌道の tailing
が及ばなくなった
領域の原子軌道
( AO ) 基 底 関 数
図1 (a) Elongation 法の手順、(b) Through-space/bond 解析法における軌道収縮による
を計算から外して
相互作用カット(上)とその手順(下).
いくことで(AO カ
ットオフ法)、固有
値問題だけでなく積分計算等の時間も一定となり、オーダーN が実現する。本方法により、非周期性巨大
分子の電子状態を従来法との全エネルギー誤差が 10-8~10-9(ナノ)hartree/atom オーダーという超高精
度を保ちつつ、超高速 O(N)計算が可能である。
Through space/bond(TS/TB)相互作用解析法[3]は、分子内の特定の軌道間相互作用について基底
関数のガウス型関数の軌道指数を人為的に増大させることでカットし、注目している軌道間相互作用の
寄与を非経験的レベルで定量解析する方法である(図1b)。まず、通常の軌道指数および人為的に増大
させた軌道指数それぞれで各種 AO 基底の積分計算を行い、カットしたい相互作用に対応した積分要素
について通常の積分と人為的な基底関数で得た積分を置換する。置換後の積分によって SCF 計算を行
うことで特定の軌道相互作用をカットした状態における系の全エネルギーや電子状態が得られる。積分レ
ベルでの操作のため、post HF 法との結合によって電子相関効果を正しく取り込みながら相互作用をカッ
トでき、従来法では難しかった電子相関効果や励起状態に対する解析も可能である。
【結果と考察】 DNA に対する ELG 法のベンチマークテスト[2b]の結果を示す(図2a)。系のサイズ N とと
もに計算時間が急激に増大する従来法に比べ、ELG 法では AO カットオフ法が始まった後、各ステップ
にかかる計算時間がほぼ一定になる。ELG 法の従来法との全エネルギー誤差は、塩基対 20 ユニット目
でわずかに 2.59×10-9 hartree/atom であり、ナノ Hartree オーダーの高精度計算を実現している。次に
ELG 法が様々な DNA に対して安定的に計算可能であることを確認するため、ランダムな塩基配列、異
なるカウンターイオンや二重らせんのピッチを持つモデルに適用した(図2b)。結果から、塩基対 20 ユニ
ット目でいずれも 10-8 hartree/atom の誤差をキープしており、これは1万原子の巨大系を想定しても 0.1~
0.01 kcal/mol 程度で
あり、十分に化学的
精度を満たしてい
る。天然 DNA を超
え、系の一部にフッ
素化や塩基対の金
属錯体置換を施した
人工 DNA について
も ELG 法の適用性
を調べたところ(図2
c)、図中の矢印で
示した位置でそれぞ
れ、10-8 hartree/atom
オーダーの誤差を
維持していることが
図2 (a) ELG 法の計算時間のベンチマークテスト(HF/STO-3G) [2b]、(b) ランダム
わかった。特に金属
な塩基配列をもつ DNA の ELG 計算、(c) 人工 DNA に対する ELG 計算.
錯体型 DNA に対す
る従来法計算では、
系内の金属原子に起因して SCF 収束性が非常に悪く、結果が得られないケースも多かったが、ELG 法
では格段に収束性が高まり、従来法で計算が収束しないモデルが容易に計算できることもわかった。今
後、ELG 法による導電性・強磁性・非線形光学特性等の物性抽出を介して構造と物性の関係を明らかに
し、人工 DNA の機能設計を目指す。
さらに高度な機能設計に結び付けていくため、人工 DNA に TS/TB 解析法を適用する。巨大系にお
ける解析が可能となるよう ELG 法と TS/TB 法を結合させ、ELG 法で得た RLMO を基底とした相互作用
解析ができるよう開発を行う。これにより、人工 DNA の分子構造と物性・機能の関係を軌道間相互作用
の観点から理解していく。
本研究は JST 戦略的創造研究推進事業 CREST、および科学研究費助成事業(課題番号:25810103)
により実施されたものであり、計算の一部は九州大学情報基盤研究開発センター・研究用計算機システ
ムにより行った。
[1] (a) K. Tanaka, A. Tengeiji, T. Kato, N. Toyama and M. Shionoya, Science, 299, 1212 (2003); (b) G. H. Clever, C. Kaul and
T. Carell, Angew. Chem. Int. Ed., 46, 6226 (2007); (c) E. Uhlmann and A. Peyman, Chem. Rev., 90, 543 (1990). [2] (a) A.
Imamura, Y. Aoki and K. Maekawa, J. Chem. Phys., 95, 5419 (1991); (b) Y. Aoki and F. L. Gu, Phys. Chem. Chem. Phys., 14,
7640 (2012). [3] (a) A. Imamura, H. Sugiyama, Y. Orimoto, and Y. Aoki, Int. J. Quantum Chem., 74, 761 (1999); (b) L. Jiang,
Y. Orimoto, and Y. Aoki, J. Chem. Theory Comput., 9, 4035 (2013).
2C18
タンパク質内エネルギー散逸のラマン時空間マッピング
(阪大院・理)○水谷 泰久
Raman Temporal Mapping of Energy Flow in Proteins
(Graduate School of Science, Osaka University) ○Yasuhisa Mizutani
巨視的には、エネルギーの散逸はフーリエの熱伝導の法則で記述される。では、系の空間ス
ケールを原子の大きさまで小さくするとエネルギー散逸はどのようにみえるのだろうか。そんな
素朴な疑問からわれわれの研究はスタートした。本講演では、その研究成果を紹介したい。
原子の空間スケールでエネルギー散逸過程を観測するためには、熱源となる分子(以後、ヒ
ーター分子とよぶ)を用意し、周囲の溶媒分子へのエネルギー移動を実時間観測すればよい。し
かし、実際にそれを行うには二つの難しさがある。ひとつは同種の溶媒分子を区別して個々に観
測することは極めて困難であるということである。そこで、溶媒分子ではなく、熱エネルギーの
伝導を観測するための分子(以後、プローブ分子とよぶ)を用意し、それへのエネルギー移動を
観測する。もうひとつの問題は、液相中においては拡散によってヒーター分子とプローブ分子の
相対位置が時々刻々変化してしまうということである。そのため、ヒーター分子とプローブ分子
との距離を制御することが必要である。したがって、実験のデザインとしては、一分子だけに過
剰なエネルギーをもたせた状態をどのように生成するか、分子単位で過渡的なエネルギーをどの
ように計測するか、そして、ヒーター分子とプローブ分子との距離をどのように制御するかが鍵
となる。そのためにわれわれは、水中で三次元構造を安定に保持しているヘムタンパク質を利用
した。
ヘムタンパク質は、ヘム(鉄ポルフィリン錯体の一種)を補欠分子族としてもつタンパク質
の総称である。ヘムは可視領域に強い吸収帯をもち、速い無輻射遷移を起こすために、光励起後
ピコ秒以内に吸収した光子エネルギーは振動エネルギーに変換される 1-2。すなわち、ヘムは非常
に効率的なヒーター分子として働く。一方、プローブ分子にはトリプトファン(Trp)残基を利用
した。Trp 残基がもつ過渡的なエネルギーを計測するために、そのアンチストークスバンド強度
を利用した。220-230 nm の紫外光を用いると Trp 残基の共鳴ラマンバンドが共鳴増大する 3-4。
タンパク質は水中で安定な立体構造を保持するので、Trp 残基のアンチストークス共鳴ラマンス
ペクトルを時間分解測定することで、ヒーター分子(ヘム)とプローブ分子(Trp 残基)の相対位
置を規定してエネルギー散逸過程を観測することができる。また、人工変異体を用いることによ
って、タンパク質中で望みの位置に Trp 残基を導入することができる。これらはタンパク質を用
いることの大きなアドバンテージである。このようにしてわれわれは、共鳴効果によってタンパ
ク質の局所的な情報が選択的に得られる、およびアンチストークスラマンバンド強度からエネル
ギー分布に関する情報が得られる、というラマン分光法の特色を最大限に活かして、タンパク質
内エネルギー散逸の時空間マッピングに挑んだ。
まずわれわれは、考案した手法によってアミノ酸残基の振動励起状態が観測できるかのテス
ト測定として、ヘムタンパク質のひとつであるチトクロム c を用いた実験を行った。チトクロム
c を選んだ理由は、Trp 残基が一つのみであり、タンパク質内で一つの残基を選択的に観測できる
こと、また、酸化形チトクロム c は光反応をほとんど起こさないことが知られているためである。
酸化形チトクロム c の時間分解アンチストークス紫外共鳴ラマンスペクトルでは、ヘムの光励起
に伴って、バンド強度の増大とそれに引き続いた減少が観測された。バンド強度の増大はヘムか
ら Trp 残基への振動エネルギーの流入に、バンド強度の減少は Trp 残基から周囲のアミノ酸残基
への振動エネルギーの流出に対応していると考えられる。このようにわれわれは、エネルギーが
タンパク質分子内を散逸する様子を、位置を指定して観測することに初めて成功し、本手法の有
用性を実証した 5。
そこで次に、上述の実験の発展形として、Trp 残基の位置が異なる変異体の比較から、エネ
ルギー散逸の距離依存性を調べた。試料には、立体構造が詳細に調べられているマッコウクジラ
由来のミオグロビンの変異体を用いた。ヘムから同じ方向で、かつ距離の異なった位置に Trp を
導入した変異体 3 種を作製し、ヘムからのエネルギー散逸について、距離依存性を調べた 6。これ
らの変異体では大腸菌中での発現量が大きく落ちたため、当初変異体試料の作成には苦労したも
のの、プラスミド、精製法を改良することで収量を大幅に改善し、測定に必要なタンパク質試料
を得ることができた。760 cm-1 にみられる W18 バンド強度の時間変化を調べたところ、バンド強
度の増加と減少の時定数は、ヘム-Trp 距離が 6.8 Å の変異体では 3.0 ps と 9.6 ps、ヘム-Trp 距
離が 12.4 Å の変異体では 4.0 ps と 19.2 ps と求められた。また、アンチストークス強度はヘム-
Trp 距離が長くなるにつれて弱くなることがわかった。これらの結果は、熱源からの距離が離れ
ると、観測サイトでのエネルギーの伝達速度が遅くなる、および余剰エネルギー量が低下すると
いう熱拡散の考え方と矛盾しない。しかし、熱拡散方程式より求められた温度分布をもとにアン
チストークス強度を計算すると、3 種類の変異体の実測バンド強度は同一のパラメーターでは表
現できなかった。これはナノメートル前後のミクロなスケールでのエネルギー伝搬を考える際、
熱拡散の考え方では、その挙動を適切に表現できないことを示している。
ミオグロビンは、安定性が高い、考察するうえで基礎データがそろっているなど、エネルギ
ー散逸を研究するうえで有利な点をもっている。しかし、主鎖の構造が複雑で、Trp 残基の位置
を系統的に変えることが難しい。そこで、4 本の α へリックスからなるシンプルな主鎖構造(4 ヘ
リックスバンドル)をもつチトクロム b562 を用いて、エネルギー散逸の距離依存性を調べた。こ
の主鎖構造を利用すると、α へリックスに沿って Trp 残基の位置を 1 ターンずつずらすことによ
って、ヘム-Trp 距離を系統的に変えることができる。そこで、そのような 3 種の変異体につい
て、アンチストークススペクトルを測定したところ、ヘム-Trp 距離が長くなるにつれてアンチ
ストークス強度は弱くなり、強度の立ち上がりが遅くなることがわかった。ミオグロビンと比較
するとチトクロム b562 の距離依存性は緩やかで、これは Trp 残基の位置を α へリックスに沿って
等間隔で変化させているためであると考えられる。
ラマン分光法の特色を活かすことによって、タンパク質分子内のエネルギーの流れを残基サ
イズの空間分解能で研究する道を切り開くことができた。タンパク質内のエネルギー散逸は、タ
ンパク質における化学反応を考えるうえでも基礎的で重要な過程である。ここで述べた手法を、
異なる構造モチーフをもつタンパク質に系統的に適用していくことによって、原子の空間スケー
ルでのエネルギー散逸機構を明らかにしたいと考えている。
謝辞 ここで述べた研究成果は、大学院生の藤井直樹君、宮本光紘君、水野操博士、石川春人博
士との共同研究の成果である。
参考文献
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