! 時空間符号化 MIMO 無線通信方式に関する研究 - 電気通信普及財団

04―01041
時空間符号化 MIMO 無線通信方式に関する研究(継続)
代表研究者 岩 波 保 則
名古屋工業大学工学研究科教授●
共同研究者 岡 本 英 二
名古屋工業大学工学研究科助教授
1 まえがき
近年,無線通信において高速大容量通信の需要が高まり,送受信共に複数本のアンテナを用いたシステムにつ
いての研究が盛んに行われている [1] 。MIMO システムでは同一周波数で同時刻に空間多重信号伝送ができ,
SISO(Single-Input Single-Output)システムに比べ,送信アンテナ数を M,受信アンテナ数を N としたとき通
信路容量がアンテナ数 min(M, N)倍に増加することが明らかとなっている[1],[2]。
また,通信路の誤り制御方式として高信頼度,高スループットが得られる Hybrid ARQ 方式がある[3]∼[6]。
本稿では,アンテナ 4×4 の準静的レイリーフェージング MIMO 通信路および12パス指数減衰準静的レイ
リーフェージング MIMO 通信路において固有モード伝送方式を用い,伝送容量の最大化を行うため,MIMO
固有モード伝送路の利得に応じて送信アンテナ電力の最適配分を行う。また LLR パケット合成[7]及び,LDPC
符号(Low-Density Parity-Check codes)[8]を用いることで,Hybrid ARQ のスループット特性を改善すること
を検討する。さらに伝送容量の増大を図るため 64QAM, 16QAM, QPSK 変調を用いて適応変調を行うことも検
討する。
Hybrid ARQ 方式として2種類の符号化率の LDPC 符号を用いて LDPC 符号化 Type-I/Type-II HARQ 方式
を提案し,無符号化 HARQ(再送による繰返し符号化 HARQ)とのスループット特性の比較検討を行った。
2
MIMO 固有モード伝送
MIMO 通信路について M×N 各送受信アンテナ間のパスの利得や位相を要素とする通信路行列 H について
次のように特異値分解を行う。
¸
H = UDV H
このとき受信信号ベクトル R は送信信号ベクトル S を用い
¹
R = HS + N = UDV H S + N
u として送信し,受信側で受信信号ベクトル
と表すことができる。ここで,送信信号ベクトル S について S = VS
H
u
R について R = U R の処理を行うと
u + N,( ruk = m k s k + nu k , k = 1, f, min (M, N))
u = DS
R
º
と表せ,最大 min (M, N) 個の独立な SISO 通信路を構成できる。
MIMO システムにおいて注意すべき点は,送信電力を SISO システムと同一に抑えなければならないことで
ある。本稿では,伝送容量を最大にするため各送信アンテナの電力を注水定理(Water filling theorem)に基づ
いて制御する。
K 個の通信路が並列に存在する場合,その通信路容量の総和は
K
C=
!log (1 + E
0k
»
/N 0k )
k = 1
で与えられる。式»におけるについて
― 245 ―
K
!E
0k
¼
=0
k = 1
となるよう電力を分配する。固有モード伝送では受信信号は
½
ruk = m k s k + nu k
となることから,各通信路の雑音電力は送信電力を1と考えると
N ok = E 9 nu / _ m ki 2C = v 2 /m k
¾
となる。従って各アンテナから送信されるエネルギーは,式»より Lagrange の未定係数法を用いて
A - N ok /2 = A - v 2 /( 2m k ), v 2 /( 2m k ) # A
E ok = *
0
, v 2 /( 2m k )> A
と解ける。未定係数 A は式¼を満たすように定める。
3
¿
適応変調アルゴリズム
MIMO 固有モード伝送においては,SNR の高い固有モードチャネルに対して 64QAM や 16QAM 等の多値
変調を,SNR の低い固有モードチャネルに対して BPSK 等の2値変調を用いることで,伝送容量の増加が期待
できる。
本稿では MIMO 固有モード伝送において適応変調アルゴリズムを以下のように考える。
但し MIMO 固有モードチャネルの SNR の高い順番に ch1,ch2,ch3,ch4 とする。また本稿では固有モー
ドチャネルについて,最適電力配分を行っているため,チャネル利得の小さいチャネルには電力が配分されない
場合が生ずる。
図1に各固有モード通信路における PER(Packet Error Rate)特性を示す。従来型 SR-ARQ のパケットス
ループット h はパケット誤り率 PER を用いて次式で表される[3]。
À
h = (1 - PER)
このため M-QAM 変調を用いた従来型 SR-ARQ のスループット h M はパケット誤り率 PER M と,変調方式の
伝送容量 C M ,符号化率 R を用いて
Á
h M = (1 - PER M ) RC M [bits/s/Hz]
と表すことができる。64QAM と 16QAM,16QAM と QPSK 変調の切替えはそれぞれ,h 64 = h 16,h 16 = h 4 とな
るパケット誤り率を変調の切替え基準とする。h 16 = h 4 となるときの PER 16 と PER 4 は式Áより次のように導け
る。
Â
PER 16 = (PER 4 + 1)/ 2
図1より PER 16 . 0.5 のとき 1 >> PER 4 であることから
Ã
PER 16 = 0.5
同様に h 16 = h 4 について導くと, PER 64 = 0.333 となる。しかし,図1より PER 64 = 0.333 となる Es/N0 を
PER 16 = 0.5 となる Es/N0 と比較するとほぼ同じ値になることから,アルゴリズムの簡略化のため各変調方式の
切替えは,各固有モードチャネルにおける PER 特性に基づいて,PER M = 0.5 となる各固有モードの受信 SNR
の閾値(Th11∼Th34)を定めている。本提案方式では,従来型 SR-ARQ 方式ではなく LLR パケット合成を用いた
SR-ARQ 方式であるため,式Àで求められるスループットと本方式を計算機シミュレーションした場合のス
ループットは完全に一致しないが,PER M > 0.5 においては LLR パケット合成を用いた SR-ARQ 方式のスルー
プットが式Àと近似できる。
また,変調方式の組み合わせは,同一伝送速度の組み合わせのうち最もPER特性が良い組み合わせになるよう
に選択している。図2のように伝送速度 2∼24bits/s/Hz を 2bits/s/Hz ごとに区切った12段階の適応変調を考え
る。伝送速度が大きい方から順に適応変調ステージをⅠ∼Êとする。並列伝送の場合,同一パケットを送信し受
― 246 ―
i
信パケットをビット LLR に基づいてパケット合成するものとしている。また,受信 SNR の閾値 Th j は i 番目
の固有モードチャネルにおける j 番目の閾値を示す。例えば ch2 における閾値は Th12 > Th22 > Th32 となっている。
Packet Error Rate
1.E+00
QP SK (ch1)
QP SK (ch2)
QP SK (ch3)
QP SK (ch4)
16QAM (ch1)
16QAM (ch2)
16QAM (ch3)
16QAM (ch4)
64QAM (ch1)
64QAM (ch2)
64QAM (ch3)
64QAM (ch4)
1.E-01
1.E-02
1.E-03
0
10
20
30
40
Average Es/N0 per receive ant enna [dB]
図1 各固有モード通信路における各変調方式の PER 特性
Fig. 1. Characteristics of packet error rate on each eigen-mode channel.
XII XI X IX VIII VII VI V IV III II
I
ch1 4
4 16 16 16 64 64 64 64 64 64 64
ch2 4
4
4
4
16 16 16 64 64 64 64 64
ch3 4
4
4
4
4
ch4 4
4
㑣୯
4 16 16 16 16 64 64
4 4 4 4 16 16 4 16 16 64
Th21 Th33 Th22 Th!1 Th23 Th12 Th34 Th24 Th13 Th14
is parallel
transmission
64: 64QAM
16: 16QAM
4 : QPSK
図2 12段階適応変調
Fig. 2. 12 stages adaptive modulation.
4
適応変調 Hybrid ARQ 方式の送受信器構成
前節の適応変調を用いて,LDPC 符号を用いた2種類の Hybrid ARQ 方式と,誤り訂正符号を用いない
Hybrid ARQ 方式を提案する。
i.無符号化(再送による繰り返し符号化)HARQ方式
送受信器構成を図3に示す。送信機側では従来型 SR-ARQ のように,パケットを送信フレームに割当てる。
例として送信フレームの構成を図4に示す。再送パケットがある場合は再送回数を小さくするため,通信路利得
の最も良いチャネル1から順に割当てる(図5)。各固有モード通信路に割当てられたパケットをそれぞれ変調
し,電力を分配する。その後ユニタリー行列 V の演算を行い送信する。受信器ではユニタリー行列 UH の演算
によって各固有モード通信路に分離し,それぞれのビット LLR を算出する。再送パケット及び並列伝送パケッ
トを合成し,各パケットについて CRC 符号により誤り判定した後 ACK/NAK を送信側へ返信する。
Ì.LDPC 符号化 type-I HARQ 方式
受信器構成を図6に示す。送受信器構成は i. 無符号化 HARQ 方式に LDPC 符号化/復号ブロックが加わって
いる。使用する符号は,適応変調の特徴である高伝送速度を保つため,符号化率 R≒0.8 の LDPC(1000, 803)
符号を用いており,復号には sum-product アルゴリズムを用いている。送信フレームの構成は図5同様である。
Í.LDPC 符号化 type-II HARQ 方式
送受信器構成を図7に示す。送信側では,初回送信又は再送回数が偶数回の時 CRC 符号のみを付加した無符
号化パケットを,再送回数が奇数であるパケットは LDPC 符号化で生成されたパリティビットのみのパケット
を送信フレームに割当て,i,Ì同様に送信する。送信フレームの構成例を図8に示す。受信器では固有モード
通信路に分離し,それぞれのビット LLR を算出し,再送パケット及び並列伝送パケットを合成する。再送パ
― 247 ―
ケットは再送回数に関わらず LDPC 復号を行い,復号後は無符号化パケット同様に誤り判定を行った後
ACK/NAK を送信側へ返信する。用いた LDPC 符号は無符号化パケットとパリティパケットのビット数が同じ
になるように符号化率 R≒0.5 の LDPC(2048, 1025)符号を用いている。
㪭䊶㪪
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㪤㫆㪻㪅㩷
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㪛㪘㪫㪘㩷
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㪹㫀㫋㩷㪣㪣㪩㩷
㪺㫆㫄㪹㫀㫅㫀㫅㪾㩷
㪹㫀㫋㩷㪣㪣㪩㩷
㪟㩷
㪬㩷䊶㪩
㪩㩷
㪹㫀㫋㩷㪣㪣㪩㩷
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㩷㩷
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㪘㪻㪸㫇㫋㫀㫍㪼 㩷
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㩷㩷
㩷㩷
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㪼㫅㪺㫆㪻㪼㫉㩷
㪛㪘㪫㪘㩷
図3 無符号化 HARQ 方式の送受信器構成
Fig. 3. System blocks on uncoded adaptive HARQ
NAK ή㧦٤ NAK ᦭㧦˜ ㅍାᷣ㧦㧙
pac1
٤
pac2
٤
٤
pac4
٤
pac5
٤
pac6
٤
pac7
٤
䎆
pac3
ch1
ch2
pac1
pac2
pac4
ch3
pac3
pac5
pac6
ch4
pac6
64QAM
16QAM
QPSK
図4 無符号化 HARQ 方式の送信フレーム構成
Fig. 4. Transmit frame format on uncoded adaptive HARQ
NAK ή㧦٤ NAK ᦭㧦˜ ㅍାᷣ㧦㧙
pac3
˜
pac4
㧙
pac5
˜
㧙
pac7
٤
pac8
٤
pac9
٤
pac10
٤
䎆
pac6
ch1
ch2
pac3
pac5
pac8
ch3
ch4
pac7
pac9
pac10
pac10
64QAM
16QAM
QPSK
図5 無符号化 HARQ 方式の再送時フレーム構成
Fig. 5. Retransmit frame format on uncoded adaptive HARQ
― 248 ―
㩷
㩷㩷
㩷㩷
㩷㩷
㩷
㪛㪘㪫㪘㩷
㪚㪩㪚㩷
㪼㫅㪺㫆㪻㪼㫉㩷
㪣㪛㪧㪚㩷
㪼㫅㪺㫆㪻㪼㫉㩷
㩷
㩷
㪘㪻㪸㫇㫋㫀㫍㪼 㩷
㪤㫆㪻㪅㩷
㪭䊶㪪
㪪㩷
㪫㫉㪸㫅㫊㫄㫀㫋㩷
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㪚㪪㪠㩷
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㪹㫀㫋㩷㪣㪣㪩㩷
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㪣㪛㪧㪚㩷
㪻㪼㪺㫆㪻㪼㫉㩷
㩷
㩷
㪛㪘㪫㪘㩷
㫇㪸㪺㫂㪼㫋㩷
㪹㫀㫋㩷㪣㪣㪩㩷
㪺㫆㫄㪹㫀㫅㫀㫅㪾㩷
㪹㫀㫋㩷㪣㪣㪩㩷
㪟㩷
㪬㩷䊶㪩
㪩㩷
㪹㫀㫋㩷㪣㪣㪩㩷
㩷
㩷㩷
㩷㩷
㩷㩷
㩷
㶎㩷㪈 㩷
図6 LDPC 符号化 type-I HARQ 方式の送受信器構成
Fig. 6. System blocks on LDPC coded type-I adaptive HARQ
̪2
CRC
Adaptive
Enc
Mod.
DATA
ౣㅍ࿁ᢙ
ᄸᢙᤨ
V࡮S
LDPC
Transmit Power
CSI
Enc
Allocation
ౣㅍᤨ LDPC
Packet
Dec
CRC
Dec
DATA
Combining
ACK/NAK
Bit LLR
Bit LLR
Bit LLR
Bit LLR
UHкS
図7 LDPC 符号化 type-II HARQ 方式の送受信器構成
Fig. 7. System blocks on LDPC coded type-II adaptive HARQ
NAK ᦭㧦n ㅍାᷣ㧦㧙 ᧂㅍା㧦0
pac5
2
pac6
㧙
pac7
㧙
1
pac9
㧙
pac10
0
pac11
pac12
0
0
pac13
0
䎆
pac8
ch1
ch2
pac5
parity8 pac10
pac11
pac12
ch3
pac13
ch4
pac13
Parity packet
64QAM
Uncoded packet
16QAM
QPSK
図8 LDPC 符号化 type-II HARQ 方式の送信フレーム構成
Fig. 8. Transmit frame format on LDPC coded type-II adaptive HARQ
5
MIMO-OFDM 通信路への適用
3節の適応変調アルゴリズムは固有モード伝送に基づいているため,シングルキャリア伝送では,通信路がブ
ロックレイリーフェージング通信路を仮定できる場合に有効であるが,マルチパス通信路である場合そのまま適
用できず,遅延波を取り除く処理が必要となる。このため,OFDM 変調を用いてマルチキャリア伝送を行うこ
とにより,マルチパス通信路への適用を行う。
MIMO-OFDM システムへ3,4節の提案方式を用いるため,OFDM のサブキャリアへ提案方式を適用する。
― 249 ―
送受信器構成を4節iの HARQ 方式を用いた場合について図9に示す。
送信側では,まず情報系列に CRC 符号を付加する。チャネル情報に基づいて配分された各チャネルの配分電
力から,適応変調アルゴリズムに従って 64QAM, 16QAM, QPSK の何れかの1次変調を行い,ユニタリー行列
の演算を行う。ここまでの一連の処理をサブキャリア数分行い,アンテナ毎に直並列変換し,IFFT しガードイ
ンターバルを挿入し送信する。
受信側では,アンテナ毎にガードインターバルを除去し,FFT,直並列変換を行う。サブキャリア毎にユニ
タリー行列演算を行ったのち,各固有モードチャネルに分離し,それぞれビット LLR を算出する。並列伝送パ
ケット又は再送パケットについてはパケット合成を行い,LDPC 符号の復号を行った後,誤り判定する。4節
のÌ,Íの HARQ 方式を適用する場合は,図9の※3のブロックを図6,7の※1, 2のブロックに変更する。
̪3
DATA CRC
Adaptive
Enc
V࡮S
Mod.
P/S
IFFT
P/S
IFFT
+GI
P/S
IFFT
+GI
P/S
IFFT
+GI
-GI
+GI
Transmit Power
Allocation
CSI
Dec
DATA
Combining
CRC
Packet
ACK/NAK
Bit LLR
Bit LLR
Bit LLR
Bit LLR
H
U кS
S/P
FFT
S/P
FFT
-GI
S/P
FFT
-GI
S/P
FFT
-GI
図9 MIMO-OFDM へ適用した無符号化 HARQ 方式の送受信器構成
Fig. 9. System blocks on MIMO-OFDM uncoded adaptive HARQ
6
計算機シミュレーション
シミュレーション条件を表1に示す。
表1 シミュレーション条件
ᖱႎࡆ࠶࠻ᢙ/ࡄࠤ࠶࠻
⺋ࠅᬌ಴╓ภ
ࠕࡦ࠹࠽ᧄᢙ
ᄌ⺞ᣇᑼ
⺋ࠅ⸓ᱜ╓ภ
ㅍାࡈ࡟࡯ࡓ㐳
OFDM ࠨࡉࠠࡖ࡝ࠕᢙ
OFDM ࠟ࡯࠼ࠗࡦ࠲࡯ࡃ࡞㐳
ㅢା〝
ࡈࠚ࡯ࠫࡦࠣផቯ
Ꮻㆶㅢା〝
1008 ࡆ࠶࠻ (i, iii)
787 ࡆ࠶࠻ (ii)
CRC-16 ╓ภ
4×4
64 QAM ᄌ⺞ᣇᑼ
16QAM ᄌ⺞ᣇᑼ
QPSK ᄌ⺞ᣇᑼ
ߥߒ
(i)
LDPC (1000,803) ╓ภ (ii)
LDPC (2048,1025) ╓ภ (iii)
512 ࠪࡦࡏ࡞ (i, iii)
500 ࠪࡦࡏ࡞ (ii)
64
T/4
Quasi-static Rayleigh fading
ㅢା〝 (ࠪࡦࠣ࡞ࠠࡖ࡝ࠕ)
12 ࡄࠬ㔚ജᜰᢙᷫ⴮
Quasi-static Rayleigh fading
ㅢା〝 (ࡑ࡞࠴ࠠࡖ࡝ࠕ)
ㅍฃାᯏߣ߽ߦᣢ⍮
⺋ࠅήߒ
― 250 ―
シングルキャリア伝送及びマルチキャリア伝送とも,通信路は再送パケット送信時に初回送信と同一の通信路
行列となるよう,一定時間通信路行列が変化しないブロックフェージング通信路を仮定している。12パス電力指
数減衰準静的 Rayleigh fading 通信路の最大遅延時間はガードインターバル以内と仮定する(図10)。
図11,12に準静的 Rayleigh fading 通信路におけるシングルキャリア伝送での各 HARQ 方式のスループット
特性及び平均再送回数特性のシミュレーション結果を示し,図13,14に12パス電力指数減衰準静的 Rayleigh
fading 通信路におけるマルチキャリア伝送での各 HARQ 方式のスループット特性及び平均再送回数特性のシ
ミュレーション結果を示す。
図11よりシングルキャリア伝送時準静的 Rayleigh fading 通信路において,SNR が 25dB 以上の大きい環境
で無符号化 HARQ,type-II HARQ のスループットが最も大きいことがわかる。Type-II HARQ は無符号化
HARQ に比べ,SNR が 10dB 以上ではほとんど特性が等しいが SNR が 10dB 未満ではスループットの改善が
確認できる。これは図12のように無符号化 HARQ よりも再送回数が大きくなるため,LDPC 符号の誤り訂正能
力が得られ,スループットが改善できることが考えられる。また,type-I HARQ は 25dB 以上では無符号化
HARQ よりもスループットが低くなるが,25dB 未満では無符号化 HARQ よりもスループットが改善されるこ
とが確認できる。これは LDPC 符号を常に用いているため,SNR の大きい環境では誤り訂正能力が必要となら
ないため符号化の冗長によって無符号化 HARQ よりもスループットが低下するためであり,SNR の比較的低
い領域では誤り訂正能力により図12のように再送回数が小さく低減されるためスループットの改善が得られる
ためと考えられる。また,本稿の Type-I HARQ には R≒0.8 の LDPC 符号を用いたが,符号化率の小さく誤り
訂正能力の高い LDPC 符号を適用することで,高 SNR ではスループットが低下するが低 SNR 時にさらにス
ループットの改善が期待できる。
図13より OFDM 伝送時12パス電力指数減衰準静的 Rayleigh fading 通信路において,シングルキャリア伝送
時同様に SNR が大きい環境では無符号化 HARQ,type-II HARQ のスループットが大きいが,SNR の小さい
環境は Type-I HARQ スループットが最も大きく,次いで Type-II HARQ,無符号化 HARQ の順に小さくなる
ことが確認できる。しかし,Type-I/II HARQ は無符号化 HARQ に対し送受信器の演算量が増加しているが,
それに対してスループット特性の改善量は大きくないため,無符号化 HARQ 方式は比較的簡易な送受信器構成
であるにも関わらず比較的良好なスループットが得られていることが考えられる。
㧙1dB
11T
図10
64
0
T
4
12パス電力指数減衰準静的 Rayleigh fading 通信路の遅延プロファイル
㪘㫍㪼㫉㪸㪾㪼㩷㫅㫌㫄㪹㪼㫉㩷㫆㪽㩷㫉㪼㫋㫉㪸㫅㫊㫄㫀㫊㫊㫀㫆㫅
Fig. 10. Delay profile on 12-path power decaying Quasi-static Rayleigh fading channel.
㪈㪇
㪐
㪏
㪎
㪍
㪌
㪋
㪊
㪉
㪈
㪇
㪄㪉㪇
㪬㫅㪺㫆㪻㪼㪻
㪟㪘㪩㪨
㪣㪛㪧㪚㩷㪺㫆㪻㪼㪻
㫋㫐㫇㪼㪄㪠㩷㪟㪘㪩㪨
㪣㪛㪧㪚㩷㪺㫆㪻㪼㪻
㫋㫐㫇㪼㪄㪠㪠㩷㪟㪘㪩㪨
㪇
㪉㪇
㪋㪇
㪘㫍㪼㫉㪸㪾㪼㩷㪜㫊㪆㪥㪇㩷㫇㪼㫉㩷㫉㪼㪺㪼㫀㫍㪼㩷㪸㫅㫋㪼㫅㫅㪸㩷㪲㪻㪙㪴
図11
各 HARQ 方式のスループット特性(準静的Rayleigh fading通信路)
Fig. 11. Throughput performance on each adaptive HARQ scheme on quasi-static Rayleigh fading channels.
― 251 ―
㪘㫍㪼㫉㪸㪾㪼㩷㫅㫌㫄㪹㪼㫉㩷㫆㪽㩷㫉㪼㫋㫉㪸㫅㫊㫄㫀㫊㫊㫀㫆㫅
㪈㪇
㪐
㪏
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図12
各 HARQ 方式の平均再送回数特性(準静的Rayleigh fading通信路)
Fig. 12. Average number of retransmission for each adaptive
HARQ scheme on quasi-static Rayleigh fading channels.
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図13
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各 HARQ 方式のスループット特性(12パス電力指数減衰準静的Rayleigh fading通信路)
Fig. 13. Throughput performance on each adaptive HARQ scheme on
12-path power decaying quasi-static Rayleigh fading channels.
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図14
各 HARQ 方式の平均再送回数特性(12パス電力指数減衰準静的Rayleigh fading通信路)
Fig. 14. Average number of retransmission for each adaptive HARQ scheme on
12-path power decaying quasi-static Rayleigh fading channels.
― 252 ―
7 むすび
本稿では,シングルキャリア伝送での準静的 Rayleigh fading 通信路及び OFDM 伝送での12パス電力指数減
衰準静的 Rayleigh fading 通信路において,無符号化適応変調 HARQ,LDPC 符号化適応変調 type-I HARQ,
LDPC 符号化適応変調 type-II HARQ の提案を行い,各方式のスループット特性の比較検討を行った。
この結果 SNR の大きい環境では,無符号化適応変調 HARQ は比較的簡易な送受信器構成で良好なスルー
プットが得られ,再送回数も小さく低減できることが確認できた。LDPC 符号化適応変調 type-I HARQ は比較
的 SNR が小さい環境でスループット特性の改善が得られるとともに,再送回数を最も小さく低減できることを
確認した。また,LDPC 符号化適応変調 type-II HARQ は無符号化適応変調 HARQ よりも再送回数が大きくな
るが,スループットの改善が得られることを確認できた。
謝辞
本研究は平成17年度電気通信普及財団の補助を受けて行われた。
文 献
[1] “MIMO systems and applications: part I, part II,”IEEE JSAC, April, June 2003.
[2] G. Foschini and M. J. Gans,“On limits of wireless communication in a fading environment when using
multiple antennas,”Wireless Personal Communications, Vol. 6, pp. 31-355, Mar. 1998.
[3] S. Lin, D. Costello, Jr., and M. Miller,“Automatic-repeat-request error-control schemes,”IEEE
Commun. Mag., Vol. 22, pp. 5-17, Dec. 1984.
[4] David Chase,“Code combining - A maximum-likelihood decoding approach for combining an arbitrary
number of noisy packets,”IEEE Trans. Commun., Vol. 33, No. 5, pp. 385-393, May 1985.
[5] J. Hagenauer,“Rate compatible puncture convolutional codes (RCPC-codes) and their application,”
IEEE Trans. Commun., Vol. 36, No. 4, pp. 389-400, April 1988.
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June 2000.
[7] 牧野伸一,岩波保則,“LLRパケット合成を用いた SR ARQ のスループット特性の一評価,”信学技報,
NS2002-72,RCS2002-100,Vol. 102,No. 204,pp. 61-66,July 2003.
[8] R. G. Gallager,“Low-Density Parity-Check codes,”IRE Transactions on Information Theory, IT-8,
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[9] 下津,岩波,岡本,“MIMO 固有モード伝送を用いた適応変調 LDPC 符号化ハイブリッドARQの検討,”
信学技報,RCS2005-37,June,2005. G.J.Foschini,“Layered Space-Time Architecture for Wireless
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vol.1, no.2, pp.41-59, 1996.
― 253 ―
〈発 表 資 料〉
題 名
掲 載 誌 ・ 学 会 名 等
発 表 年 月
適応変調 MIMO 固有モード伝送を用いた
SR-ARQ 方式のスループット特性の一評
価
電子情報通信学会2006総合大会講演論文
集 B-5-69
2006年3月
クローズトループ送信ダイバーシチにおけ
る送信アンテナ増加時の性能向上に関する
検討
電子情報通信学会2006総合大会講演論文
集,B-5-38
2006年3月
MIMO 固有モード伝送を用いた LDPC 符
号化適応変調 Hybrid ARQ 方式の検討
第28回情報理論とその応用シンポジウム
SITA2005,Vol.2,pp.595-598
2005年11月
LDPC 符号化時空間多重通信方式に関す
る一検討
電子情報通信学会和文論文誌 (B),Vol.J88B, No.9,pp.1886-1891
2005年9月
A consideration on LDPC coded MIMO
OFDM receiver structure
International Symposium on Wireless
Personal Multimedia Communications,
WPMC’
05, Aalborg, Denmark, Sept.18-22,
2005, pp. 711∼715
2005年9月
LDPC 符号化 MIMO OFDM 通信方式に
おける受信機信号分離検出方式に関する検
討
電子情報通信学会ワイドバンドシステム研
究会,WBS2005-1,pp.1-6 2005年6月24日
2005年6月
MIMO 固有モード伝送を用いた適応変調
LDPC 符号化ハイブリッド ARQ の検討
電子情報通信学会無線通信システム研究
会,RCS2005-37,pp.59-64 2005年6月17日
2005年6月
― 254 ―