ワークショップ 学 会 レ ポ ート W76-4 RAに対するトシリズマブの有効性における 罹病期間による影響 ̶ 多施設研究グループ登録症例からの検討 ̶ 浅井 信之 先生(名古屋大学 医学部 整形外科) Q u i c k R e v i e w 2008年7月∼2011年12月に名古屋大学整形外科および多施設生物学的製剤治療研究グループ(Tsurumai Biologics Communication: TBC)関連17施設において、トシリズマブ投与開始から52週経過した関節リウマチ(RA)患者196例を対象に、罹病期間によるトシリズマブ の有効性への影響をレトロスペクティブに検討した。罹病期間別に5群に分け、投与後24週、52週時においてLOCF法により評価をおこなった。 罹病期間1年未満のRA患者において、トシリズマブ投与開始から1年以内にBoolean寛解を示した割合は62%と高く、他群よりも 有意に高値であった。また、Boolean寛解の各コンポーネント達成に関与する患者背景因子を多変量解析で検討したところ、TJC ≦1、VAS≦10患者群においては、罹病期間(1年以内)が重要因子であった。以上より、RA発症から1年以内にトシリズマブ投与を 開始することで、新寛解基準を達成することが期待できる。 ■24週、52週におけるDAS28-ESR寛解率は、1年未満群85%→77%、1∼2年群47%→59%、2∼5年群44%→56%、5∼10年群31%→35%、10年以上群 28%→33%となり、1年未満群は他群に比べて有意に高い寛解率を示した。 ■24週、52週におけるEULAR基準によるgood responseの割合は、罹病1年未満群において24週、52週とも85%と高い割合を示した。 ■24週、52週におけるBoolean寛解率は、1年未満群38%→62%、1∼2年群6%→18%、2∼5年群18%→18%、5∼10年群4%→8%、10年以上群4%→9% となり、1年未満群は他群に比べて有意に高い割合を示した。また、関与する患者背景因子を多変量解析で検討したところ、TJC≦1およびVAS≦10の達成に関しては 罹病期間が1年以内であることが重要な因子として抽出された。 ■SJC≦1の基準は52週において罹病期間にかかわらず半数以上で達成されており、トシリズマブが高い抗炎症作用を有することが示唆された。 表1 図3 患者背景 1年以内 1∼2年 2∼5年 5∼10年 10年以上 (n=13) (n=17) (n=34) (n=52) (n=80) 罹病期間(年) p値 0.7±0.3 1.5±0.3 3.5±0.8 7.5±1.4 18.1±7.2 <0.0001* 55.1±12.6 55.5±16.1 52.4±13.3 56.3±15.4 60.1±10.2 0.1111 53.4 76.5 70.6 80.8 90.0 ステージ (Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ) 5/7/1/0 4/11/1/1 クラス(1/2/3/4) 5/8/0/0 生物学的製剤使用歴有(%) 年齢(歳) 性別(女性、%) 70 15/11/5/3 5/10/20/17 1/4/21/54 <0.0001** 60 1/14/2/0 7/22/5/0 <0.0001** 50 38.5 76.4 73.5 82.7 65.0 0.0196 40 MTX併用率 (%) 23.1 58.8 52.9 48.1 43.8 0.3120 30 ステロイド併用率(%) 38.5 58.8 67.6 86.5 67.5 0.0066** 20 DAS28-ESR 5.6±1.3 6.0±1.3 5.6±1.3 5.7±1.1 5.7±1.3 0.8179 10 TJC 7.5±5.1 8.5±7.0 6.9±5.8 7.9±6.5 8.6±7.5 0.8959 0 SJC 7.2±5.8 7.7±5.1 6.9±5.6 6.9±4.8 6.3±5.5 0.6349 0.6363 48.3±32.3 57.8±26.0 61.9±24.5 56.2±22.0 57.5±25.0 ESR(mm/h) 61±28.4 74.1±30.0 57.9±31.5 62.9±32.4 64.6±34.1 0.5364 CRP(mg/dL) 4.8±5.1 4.9±2.9 3.2±2.6 3.1±2.4 3.0±2.8 0.0890 患者全般VAS(mm) MMP-3(ng/mL) 0.4167 368.2±451.2 436.3±330.9 335.2±238.2 357.1±220.2 340.0±300.7 90 90 80 ** *Kruskal-Wallis検定 **Pearson’ s χ2検定 62 54 38 24 29† 1年以内 1∼2年 18 18 18 4** 1∼2年 2∼5年 8*** 5∼10年 4** 9*** 10年以上 Fisher χ 検定 vs 1年以内 *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 TJC≦1 ■24週 ■52週 77 1年以内 1∼2年 44 47 33 40 21*24 30 ** *** 13 15 ** 20 *** *** 10 14 10 0 2∼5年 5∼10年 10年以上 1年以内 1∼2年 2∼5年 5∼10年 10年以上 Fisher χ2検定 vs 1年以内 *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 ■24週 ■52週 85 62 50** 50 41† 40 * 37 30 * 35 2∼5年 5∼10年 10年以上 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 41* 24 38*** 29*** 31 *** 17 ** 0 SJC≦1 62 ■24週 ■52週 69 59 47 59 59 56 42 61 48 1年以内 2∼5年 5∼10年 10年以上 Pearson’ s χ2検定 vs 1年以内 *p<0.01 2∼5年 5∼10年 10年以上 Boolean寛解の各コンポーネント達成 (52週時)に 寄与する患者背景因子(多変量解析) オッズ比 (95%信頼区間) TJC≦1 4.857 罹病期間1年以内 (1.123-28.159) 1.193 投与前TJC (1.104-1.304) 投与前SJC 投与前VAS 1年以内 1∼2年 1∼2年 Fisher χ2検定 vs 1年以内 †p<0.05 Pearson’ s χ2検定 vs 1年以内 *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 表2 TJC≦1、SJC≦1の割合 41 89 10 ** 6 53 93 MMP-3正常値の割合 20 * 54 96 50 30 2 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 92 (%) 100 70 ■24週 ■52週 図2 91 70 Pearson’ s χ 検定 vs 1年以内 †p<0.05 60 1年以内 94 80 Boolean寛解率 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 94 94 60 2 図4 ■24週 ■52週 CRP≦1 80 69 90 図1 ■24週 ■52週 (%) 100 100100 VAS≦10 (%) 100 0.0121** 3/25/24/0 4/23/49/4 VAS≦10、CRP≦1の割合 1.016 (1.002-1.030) SJC≦1 VAS≦10 CRP≦1 10.458 (2.921-44.516) 1.139 (1.061-1.231) 1.027 (1.011-1.044) ・不可逆的な構造的破壊は身体機能に関連し、炎症抑制後にも身体機能障害が残存する。 Smolen JS, et al.:Ann Rheum Dis 69:1058-1064,2010 薬剤の使用については添付文書をご参照ください。
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