2 18 住民交流サロン 住民参加でまちづくり 特集 多様な住民が日常的に集うことができ、気軽に交流できる場所と して開設がすすんでいる住民交流サロン。このサロンは、地域住 民の積極的な社会参加を促進するとともに、地域の福祉意識を高 める役割を担っています。 ここでは、4 つの住民交流サロンを紹介し、設立から現在までの 活動状況をご紹介するとともに、今後の課題等を探ってみました。 特集2/住民交流サロン ふれあいサロン 小野 (松山市) 代表 みやうちひさ し 宮内久司さん 松山市で第 1 号の常設型サロン 小野地区社協のメンバーから「わが地区 皆さん来てくださるかどうか不安もあり という気運が生まれ、3 年前に尾道市の り、松山市長にもご出席いただいて盛大に にも多様な住民が集える拠点をつくろう」 「荒神堂サロン」 、2 年前には津島町の「も やい」を訪ね、研究を重ねた末に誕生した のが「ふれあいサロン小野」です。 「開設場所の選定には、平井町商店街の 協力を得ました。商店街の方々に相談した ところ、衰退化が進む商店街の活性化にも つながるということで、この電気店移転跡 地の場所をすすめられたんです。 」と、代 表の宮内さん。元店舗なので広さは申し 分なかったそうですが、準備資金の調達に は苦労したそうで、 「当時はどんなにかき 集めても 60 万円しか準備できない。しか し、高齢者や障害者の方に安心して来てい ましたが、当日は 250 人以上の方が集ま 開催することができました。こうして、松 山市で第 1 号の常設型サロンがスタート しました。開所時間は毎週月〜金曜日の午 前 10 時から午後4時(11 月〜 3 月は午後 3時まで) 。 月曜日はストレッチ体操、火曜日は編み 物やパッチワーク、水曜日は手芸やちぎり 絵等々、曜日により講習内容を決めてい て、地元の愛媛新聞販売店が発行する「く らしのカレンダー」でも告知しています。 その他、第 1・3 月曜午後にはギター講習 会「ひよこ会」の集まりがあったり、健康 ただくためには、それなりに費用のかかる 改修が必要だったため、松山市の助成や共 同募金の配分を受け、入り口のスロープと 障害者用トイレなどを設置しました。 」と のこと。 今後の運営資金の調達に不安を残しな がらも、平成 16 年 12 月 22 日に開所式を 開催。暮れも押し迫った寒い時期なので、 19 ています。 「サロンでの 行事の講師は ほとんどが地 元の方なんで す。自 分 の 地 域に特技を持 相談を単発で行ったりと、とにかくその活 動は多彩です。特にメンバー設定などはせ ず、習いたい人が自発的に集まり、時には 講座メニューとは関係ないことを個人的 に教えたり習ったりする方もいるとか。開 所前は 70 才以上の 高齢者が、主な利用 者になるだろうと 思っていたそうで すが、開所してみる と実際はそれ以下 の中高年世代が多 く、1 日 平 均 35 人 程度の方が訪れて いるそうです。 「サロン開設後、運営のお手伝いを希望 する人が続々と増え、現在、協力員は 80 名を超えました。運営はこうした協力員 が交代で行っていますが、皆さんとても意 気に感じてくださっています。男性協力 員もエプロンをして、楽しそうに仕事をし てくださいます。サロンの利用料は無料 ですが、サロン内に設置している喫茶店で の飲食は有料で、その収入をサロンの運営 資金に充てており、これが貴重な収入源と なっています」と、宮内さん。サロン内に は、ここの活動から生まれた手芸作品や写 真などが展示され、それらの作品販売も行 い、この売り上げも活動資金として運用し 20 つ方がこんなにたくさんいらっしゃると は思わず、意外な発見でした。今は協力員 の熱意に後押しされ、運営のめども立って きており、家賃や光熱費の支払いもなんと かなりそうです。 」 現在は、サロン内に小 野地区社会福祉協議会事務局を移転。民生 児童委員も常駐する形となり、小野地区全 体の福祉活動の拠点となっています。 「こうしたサロン活動を地域全体に行き 渡らせたいと考え、現在は地区内の 6 か所 の公民館分館でも月1〜2回の割合で、講 習会の開催などのサロン活動を実施して います。今後は小野地区内 17 か所におい ても活動を展開 し、ここに来ら れない人も近所 のサロン活動に 参加できるとい う体制をつくり 特集2/住民交流サロン たいと思っているんです。 」 サロンをボランティア研修の場として活 お伺いしました。 くの中学校、高校に呼び掛けているところ 最後に今後の展望について宮内さんに 「児童福祉活動に力を入れたいと思って います。昨今の児童虐待や家庭問題、教育 問題について、解決に積極的に取り組んで いきたいですね。毎月第1土曜日に子ども とお年寄りの交流の場として「ふれあい広 場」を開催したり、児童を集めて七夕会を 企画するなどの活動も行っていますが、今 後は、児童の保護者の方々にも積極的に参 加していただきたいと思っています。親子 が孤立しないよう、サロンを中心として 地域全体でサポートしていきたいと考え ています。また、現在は倉庫になっている ホール裏の空間を、おもちゃや本などを備 えたキッズルームに改修して、子どもたち に開放したいと考えています。さらにこの 用できないかと模索しています。現在は近 で、その一環として東温高校美術部にお願 いして、サロンの看板を制作していただき ました。 」 「それと、地域住民の健康問題 の解決や病気予防に一役買う場にしたい。 専門講師を招いて講演会を開いたり、運動 のきっかけをつくるようなイベント開催 も考えています。その他、障害者との交流 にも力を入れたい…。 」と熱く語っていた だきました。 協力員の熱意と積極的なボランティア、 商店街をはじめとする地域のみなさんに 支えられ軌道にのりつつあるふれあいサ ロン小野。どうやら、愛媛県での成功モデ ルとなりそうな勢いを感じました。 21 ハルモニア広場 (今治市) 代表 かたおかみず ほ 片岡瑞穂さん 子どもと一緒に集える場所を 今治港のすぐ前にある「ハルモニア広 して利用してもらえればいいなと思って 援を中心としたサロンで、現在は今回話を 母さんですが、子育て中の不安や知識不足 場」は、昨年 3 月にオープンした子育て支 お伺いした片岡さんと、かつてはサロン の利用者だったボランティアのお2人、計 3 人でお世話をしています。現在は毎週火 曜日の 10 時から 14 時までの開所ですが、 10 月からは祝祭日を除く月曜から金曜ま で開所する予定です。 片岡さんいわく「子育て中のお母さん の応援ができればと思っています。子育 てって意外と大変で、今の若いお母さんた ちには、子育てで溜まったストレスを発散 する場所があまりないんですよ。そんなお 母さん方のストレス発散の場として、そし て子どもたちにはのびのびと遊べる場と います。 」片岡さん自身お子さんを持つお で泣きたくなったことも多かったいいま す。そんな経験を生かして、他のお母さん たちの子育てを支援できればとの思いか ら、ここのお手伝いを始めたそうです。 「今は、1 日平均 10 〜 15 組の親子が利 用しています。家からお弁当を持ってき て、朝からずっとここにいる方が多いです ね。お母さん方は、先輩お母さんからいろ んなことを教わったり、子育ての知識の共 有とおしゃべりによるストレス発散をし ています。一方、子どもたちは、絵本を読 んだりおもちゃで遊んだり、お昼寝したり と自由に楽しんでいます。 」 今は毎週火曜日だけの開所で、ちょうど 隣の料理屋さんの定休日と重なっている ので、料理屋さんの駐車場をご好意で利用 させてもらっているそうですが、10 月か ら週 5 日の開所となると駐車場不足の問 題が浮上してきます。その他にも、スタッ フ不足などの問題が山積みだといいます。 「いろいろ課題はありますが、もっと多 22 富ですし、子育てについてもベテランです 人に必要な情報が行き届いていないよう ニア広場を成功させる意欲でキラキラ輝 力を入れていきたいですね。今は、必要な な気がしているんです。地域には、いろん な才能と知識を持ったお母さんがたくさ 特集2/住民交流サロン くの人に利用してもらうために、広報にも からね。 」片岡さんの大きな瞳が、ハルモ いていました。 んいらっしゃると思うんですよ。そんな方 たちに集まってもらって、趣味をひろげた り、知識を共有したり、世界をひろげる場 所にしてもらいたいですね。そういう意味 では、お年寄りとの交流にも力を入れてい きたいと思っています。なんと言ってもお 年寄りの方達は人生の大先輩で知識も豊 ふれあいサロン きないや (今治市関前岡村) 代表 び どう み ち こ 美 藤 美智子さん 子どもからお年寄りまで、誰でもきないや! 今治市からフェリーで約1時間、関前岡 は生まれました。 は、フェリー乗り場から徒歩3 分の場所に 所が少ないんです。お年寄りも子どもも港 村地区にある「ふれあいサロンきないや」 あります。 関前岡村地区は、たすけ合いのサービス 1時間を1点と定め,お互いの能力と時間 を会員の間で交換する新しい形の互助シ ステムであるタイムダラーを日本で初め て取り入れた所です。10 年以上前からタ イムダラー活動「だんだん」があり、その 活動の中から「ふれあいサロンきないや」 「ここには、みんなが気軽に集まれる場 に座り込んで話していたり…。そこで、誰 もが無料で気軽に利用できる場所を作ろ うということで、平成 17 年の 5 月 16 日 にオープンしたんです」 。ある会社の事務 所だった建物を月 3000 円という破格の 家賃で借りることができ、古く、傷んでい た屋根の葺き替えや内装も女性 10 人のボ ランティアの方を中心に、近所の方にも手 23 伝ってもらい完成させたそうです。 「今 介類の販売などに利用してもらい、その売 方にあまり負担をかけてもいけませんか ろいろ工夫をしてるんですが、まだまだ足 は、自然体でやってます。ボランティアの ら、朝 8 時 30 分に鍵を開けて夕方 5 時 30 分に鍵を閉めるまで、皆さんには自由に 利用してもらっています。その間、ボラン ティアの方には時間が空いたときに来て もらっているという感じですね。 」 お年寄りの 方は、将棋を したり、お茶 を飲みながら のおしゃべり の場として、 島 に い る 16 人の小学生と 12 人の中学生は学校帰りに宿題をしたり 本を読んだりする場として活用している ようです。 「原則的には平日のみの開所で すが、土日・祝日、そして 5 時 30 分以降 も希望があれば利用でき、地元の人だけで なく島外の人の利用も大歓迎で、地の利を 生かしフェリーの待ち時間などに気軽に 利用してもらいたい」とのこと。先日は、 同窓会の会場としても利用されました。 「利用料は無料ですから、運営費の調達 には苦労しますね。サロンの前にテントを 張ったんですが、そこを青空市場として魚 24 り上げの一部を寄付してもらったりとい りませんね。 」 お年寄りと子どもたちのコミュニケー ションづくりのために企画を考えている そうですが、費用の面でなかなか実現が難 しいようで、お金をかけない企画を模索中 だとか。 「地元の人の意見を聞きながら、より 利用しやすい環境づくりをしていこうと 思っています。イベント等もやりたいです し…。とにかく今は細く長く続けていくこ とを目指します。 」 「ゆい」とか「こうろく」などと呼ばれて いる、昔からの助け合いの風習がある関前 岡村地区。ボランティアの方たちのやさし い笑顔とバイタリティーで、明るい地域を 築いていきます。 特集2/住民交流サロン 高齢者のやすらぎの家 やまね(新居浜市) 代表 もり た もとはる 森田元治さん 地域に密着した「家」を目指して 高齢者の方が生きがいを持って生活で き、地域の方と う思いで立ち上げたボランティアグルー より良い『やま きるよう、地域で支え合っていけたらとい プ「なの花」 。その活動拠点が高齢者のや すらぎの家「やまね」です。 古い民家を借り、森田さん夫婦を中心と した5人のボランティアで、サロンの開設 に取り組みました。資金面や人の問題など いろいろ苦労があったようですが、中でも 大変だったのが、2004 年の台風で流れて きたヘドロのくみ出し作業、そのヘドロは 今も駐車場の隅に残っています。 「私たちの得意なことを、私たちも楽し みながらやっています。今は、曜日を決 め、折り紙や墨絵、絵手紙教室などを開催 し、一緒に楽しんでもらっています。サロ 相談しながら ね』に育ててい きたいと思っ ています。例えば休館日には地域の方に、 趣味の会、打合会、勉強会などの場所とし て利用してもらったり、高齢者の方に喜ん でいただけるような様々なイベント等を 盛り込み、皆さんに楽しんでもらえるよう 頑張っていきたいと思ってます。 」 要約筆記や手話ボランティアのネット ワークもあり、様々な場面で地域の方の手 助けを目指す「やまね」 。今後の発展に期 待しています。 ンの開所時間は、月・火・木・金曜日の 11時から 17 時までで、利用料として1日 につき300 円をいただいてるんです。 」 今年 3 月にオープンした「やまね」 、日 が浅く、広報が行き届いていないことも あってか、利用者の数が今ひとつ伸びない ようです。 「利用していただく方の意見や要望を聞 25
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