チューリップ花持ち向上技術 - 新潟県農業総合研究所

新潟県農林水産業研究成果集(平成25年度)
活 用 技 術
平成 25 年度
品質保持剤を用いたチューリップ切り花の花持ち向上技術
[要約]チューリップ切り花に品質保持剤を前処理および後処理すると、花茎の伸長や葉の黄化、花
弁の老化を抑え、花持ちが良くなる。
農業総合研究所園芸研究センター 育種栽培科
連絡先
TEL 0254-27-5555
FAX 0254-27-2659
[背景・ねらい]
消費者は花持ちの良い切り花を購入したいというニーズが強く、花き業界では消費拡大のため花持ち
保証販売の動きを進めている。チューリップは花弁の老化のほか、花茎の伸長や葉の黄化など草姿の変
化により、花持ちは5~7日程度である。そこで、花持ちの短いチューリップ切り花に対して、出荷時
や観賞時に品質保持剤を使用して花持ちを延長させる技術を確立し、消費の拡大を図る。
[成果の内容・特徴]
1 生産者段階における前処理
(1)切り花を通常の切り前で収穫し、調整・結束後、5℃程度の作業場または冷蔵庫内で、200 倍に
希釈した市販のチューリップ用前処理剤で3時間水揚げする(図1)
。
(2)前処理剤の使用により、花茎の伸長や葉の黄化を抑制し、草姿の観賞期間を3日程度延長するこ
とができる(図2、図4‐A)
。
2 消費者段階における後処理
(1)切り花を観賞する際に、市販の切り花用後処理剤を使用基準に従って生け水に添加する(図1)
。
(2)後処理剤の使用により、花弁の老化を抑え、花の観賞期間を3日程度延長することができる。市
販されている数種の後処理剤の効果は、ほぼ同等である(図3、図4‐B)
。
3 前処理剤と後処理剤の併用処理による品質保持技術
(1)前処理剤と後処理剤を併用すると、花茎の曲がりや葉の黄化を抑制するとともに、花弁の老化を
抑え、10 日程度の花持ちが期待できる。
(図4‐C)
。
[成果の活用面・留意点]
1 本試験は「イルデフランス」および「クリスマスドリーム」を用いた結果であり、前処理剤および
後処理剤の効果には品種間差がある。
2 品質保持剤の資材コストは、前処理剤が 1 本当たり1~3円程度、後処理剤が標準的な花瓶(約 500
mL)あたり 20 円程度である。
3 チューリップ用の前処理剤は C 社製のものを用いる。
4 前処理剤には花弁の老化を抑える効果はほとんどない。また、前処理剤を用いると、花の大きさや
花弁の展開程度が無処理の花と異なる場合がある。
5 室温が高い場合など、観賞条件によっては葉等に障害が発生することがある。
新潟県農林水産業研究成果集(平成25年度)
10
5
調整・結束
生
産
者
水揚げ
前処理剤
C社のチューリップ用前処理剤
を水揚げの水に添加し、
冷蔵庫や作業場で処理
梱包・出荷
販売
0
-5
5
花茎・処理なし
-10
処理あり
-15
葉色・処理なし
処理あり
0
-20
収穫時
4日後
8日後
図2 前処理剤が切り花の花茎長および葉色に及ぼす影響(クリスマスドリーム)
イルデフランス
クリスマスドリーム
蒸留水
後処理剤A
購入
消
費
者
花茎の伸長量 (cm)
収穫
葉色の変化値(SPAD値)
[具体的データ]
後処理剤B
切り戻し
観賞
後処理剤
市販の切り花用後処理剤を
生け水に添加
図1 品質保持剤の処理体系
後処理剤C
0
3
6
9
12
15
図3 後処理剤が花の日持ちに及ぼす影響
横軸は日数、後処理剤A~Cは市販の後処理剤(切り花長持ち剤等と表記)
後処理剤A~Cは市販の後処理剤(切り花長持ち剤等と表記)
処理あり(8日目)
処理あり
処理なし
処理なし(5日目)
A 前処理剤の効果 (イルデフランス)
処理あり
B 後処理剤の効果 (8日目:イルデフランス)
処理なし
処理あり
処理なし
C 前処理剤と後処理剤の併用効果 (10日目 左:イルデフランス、右:クリスマスドリーム)
図4 品質保持剤がチューリップ切り花の花持ちに及ぼす影響
【試験条件】 花蕾着色ステージで収穫し、調整後、5℃の冷蔵庫内で3時間水揚げ。出荷箱に梱包して5℃の冷蔵庫内で2日間保管(流通シミュレー
ション)。その後、10℃の冷蔵庫内で2日間湿式保管(販売シミュレーション)。出庫後、切り戻しを行い、室温20℃、湿度60%、12時間明条件(1000 lx
; 8:00~20:00)の条件下で花持ち調査。花弁が老化するまでの期間は、花弁の1/3が萎凋、退色または落弁するまでとした。
[その他]
研究課題名:花もち保証に対応した切り花品質管理技術の開発
予 算 区 分:公募(実用技術開発事業)
研 究 期 間:平成 22~24 年度
発表論文等:チューリップ切り花における糖質処理が品質保持に及ぼす影響(園芸学研究)