日本消化器外科学会

日本消化器外科学会 第 67 回日本消化器外科学会総会【2012 年 7 月】
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一般演題 206 : 鏡視下 / 脾臓
司会:上西 崇弘(藤井会石切生喜病院外科)
日時:2012年7月20日(金)13:30∼14:30
会場:第27会場(富山県民会館1F 美術館)
O-206-9 膵 頭 部 癌 術 後 に 腹 腔 鏡 用 手 補 助 下 脾 臓 摘 出 術 を 施 行 し た
sclerosing angiomatoid nodular transformation の 1 例
廣田 政志:1 松井 隆則:1 岡田 智美:1 山田 知弘:1 藤光 康信:1 小島
宏:1 1:愛知県がんセンター愛知病院外科
Sclerosing angiomatoid nodular transformation(以下,SANT)は 2004 年に Martel
らにより初めて報告された稀な脾臓良性病変である.今回,膵頭部癌術後のサーベイラ
ンスで偶発的に発見された SANT の 1 例を経験し,腹腔鏡用手補助下に摘出したので
報告する.症例は 73 歳,女性で 2009 年 12 月膵頭部癌にて膵頭十二指腸切除を施行
した.D2 郭清後に 15Gy の術中照射を施行し Child 変法にて再建した.病理組織学
的検査所見は,中分化型管状腺癌,pT3(CH(+),DU(+),S(+),RP(+),PV(-),A(-),
PL(-),OO(-)),pN1,cM0,fStageIII であった.術後はゲムシタビン塩酸塩による補
助化学療法を 6 カ月間施行した.術後 1 年過ぎのサーベイランスで施行された腹部造
影 CT 検査にて脾臓内に最大で 8mm 大の低吸収像が 4 カ所出現した.FDG-PET 検
査を施行したが脾臓には明らかな異常集積は指摘できず,他に遠隔転移を疑わせる異常
集積は認められなかった.転移性脾腫瘍が否定できず,診断的治療としての手術を希望
されたため脾臓摘出術を施行した.膵頭十二指腸切除後であったが,癒着の少ない肝上
面にハンドポート,癒着のない部位にアシストポートとスコープポートをおくことで腹
腔鏡用手補助下に手術を施行しえた.脾臓の重さは 117g,割面では境界明瞭な白色充
実性の小病変を認めた.病理組織学的検査では,脾臓内に多発する病変(6 × 5mm,4
× 3mm,3 × 2mm,2 × 2mm 大)を認め,いずれの病変も線維化を背景としてリ
ンパ球・形質細胞・好酸球を含む炎症細胞浸潤が認められた.また,それぞれの病変内
に細血管の増生する円形の結節が多発性に認められたことから SANT と診断された.
現在外来にて経過観察中であるが SANT,膵頭部癌とも再発所見は認められていない.
SANT は,癌の術後サーベイランスにおいて転移性脾腫瘍との鑑別として知っておく
べき疾患と考えられた.
第67回 日本消化器外科学会総会
日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery