感動のマン・ザ・ヤード! 海王丸、サンフランシスコへ - 独立行政法人

ナイスティー
独立行政法人
航海訓練所
2010年は、1860年に幕府の軍艦咸臨丸が我が国の公式な船として初めて太平洋を横断し、サンフラ
ンシスコに寄港してから150年の節目に当たります。
東京海洋大学、神戸大学および海技大学校からの実習生92名を乗せた練習船「海王丸」は、同港に
寄港する遠洋航海を実施しました。この航海は、3級海技士を志す実習生にとって欠くことのできな
い航海訓練であるとともに、我が国外航海運の礎とも言える咸臨丸の偉大な航跡を辿る航海でもあり
ました。
今回は、その特集号です。
海王丸、サンフランシスコへ
4月7日13時から海王丸の第一教室で行われた出航式には、緊張しつつも大きな期待を胸にした実習
生92名と一般から募集した研修生12名(咸臨丸乗組員の子孫を含む)の姿がありました。14時、海王
丸は静かに航海訓練所有明専用桟橋を離れて東京を後にし、サンフランシスコに向け出航。冷たい雨
の降る中、350名を超える大勢の人たちの見送りに応えて実習生はマスト上での「登しょう礼」を行
いました。続いて3回鳴り響いた汽笛。これらがしばしの別れを印象付けました。
出航三日後、36枚の全ての帆を広げた海王丸は、長期間の帆走航海を開始。海が荒れて船体が35度
も傾くときもありましたが、概ね天候に恵まれ、予定よりも6日早く北米大陸をランドフォール(目
視による陸地の初認)、帆走のままエンジンを使わずにサンフランシスコ沖に辿り着きました。
咸臨丸は38日、今回は22日で目的地に到達。連綿と海技が伝承されていることと150年の間の技術
の進展を実感させる航海でした。
感動のマン・ザ・ヤード!
「登しょう礼」は、英語で「マン・ザ・ヤード ( Man the Yards )」といい、帆船が行う最高の
儀礼とされています。今回、サンフランシスコ湾への入口
にかかるゴールデン・ゲート・ブリッジをマン・ザ・ヤー
ドでくぐり抜けることを実習生自らが希望。それを実現し
ました。東京出航前に実習生は咸臨丸に関する調査を行っ
て互いにその結果を発表しており、咸臨丸の航跡を辿って
帆走により目的地に着いた達成感は一入で、このときのマ
ン・ザ・ヤードがこの航海で最も心に残っていると、多く
の者が述べています。
また、航海中は、サンフランシスコで予定されている行
事への参加準備を訓練の傍ら行ってきました。停泊中に
行った行事のいくつかを紹介します。
・船内の一般公開に訪れた2,000名を超える見学者に実習生
が説明。
・総領事主催のレセプションに招かれた実習生が海王丸の
歌を披露。
・カリフォルニア商船大学の学生と実習生との交流。当地
若者と実習生とのスポーツ交換会。
・咸臨丸乗組員の墓碑に献花。 など
実習生は、異文化に触れつつ我が国の青年の代表と心得
て国際親善に努め、かつて商船教育を受けた者が「無冠の
外交官」と言われていたことも学びました。
動かせない。
船は一人では
。
ことを学んだ
る
す
力
協
と
仲間
、
スコ目指して
サンフランシ
帆走開始!
感動の瞬間!
ゴールデンゲ
ートブリッジ
海が荒れてい
るときの作業
は大変。
咸臨丸の乗組
員も同じ体験
をしたのだろ
う。
海王丸航跡
咸臨丸航跡
アメリカ大陸
に上陸!
いよいよ下船のとき。
ありがとう「海王丸」
スコ港では、
くれた!
サンフランシ
々が歓迎して
人
の
ん
さ
く
た
ただいま!
全員元気に帰ってきま
した。
帰りはエンジンを使って
の航海です。
機関科の出番!
<海王丸の遠洋航海スケジュール>
4/7
東京出港
5/5
サンフランシスコ入港
5/9
サンフランシスコ出港
5/19 ホノルル入港
5/23 ホノルル出港
6/8
東京入港
6/10 下船
海王丸の遠洋航海の様子は、HPでも紹介しています。
http://www.kohkun.go.jp/
海王丸魂を胸に・・・
150年前、咸臨丸は5月9日にサンフラン
シスコを出港し、帰途、ホノルルに寄港し
て帰国しています。海王丸も同日に出港し、
ホノルルを経由して6月8日に東京に帰着し
ました。この日、実習生は朝から着岸作業
のために甲板上を忙しく駆け回っていまし
たが、どの顔にも達成感に満ちた笑顔が溢
れていました。作業に当たる実習生のきび
きびした動作と真っ黒に日焼けした顔が約
2ヶ月の遠洋航海を物語っており、一回り
成長した実習生の姿がそこにありました。
6月10日、晴れ渡る空の下、実習生92名
の下船式が行われました。船長から今航海
の総括にあたる訓示を受けると、それぞれ
がこの2ヶ月を振り返り、思いを馳せてい
るようでした。船内に「蛍の光」が流れ、乗組員がそろって見送る中、実習生は船長・機関長と固い
握手を交わして舷梯を降り、本船を後にしました。この数ヶ月、海王丸が彼らにとっての家であり、
学校であり、友人との交流の場でありました。実習生らは船を降りたあとも、名残惜しそうに海王丸
を背景に記念撮影を続けていました。
この航海で培った「海王丸魂」を胸に、近い将来、航海士・機関士として日本のライフラインを支
えてくれることを期待し、ごきげんよう!
日米をつなぐメッセージ
今回、海王丸がサンフランシスコへ向かうにあたり、横須賀市浦賀地区の二つの小学校より、卒業
を間近に控えた6年生から米国の子供たちへ宛てたメッセージを預かりました。浦賀は、150年前に咸
臨丸が太平洋に乗り出した地。子供たちは自分の街の歴史や咸臨丸についてよく勉強しており、海の
向こうのまだ見ぬ友達に多くの興味を抱いているようでした。
サンフランシスコ到着後、海王丸船長からサンフランシスコ市長にこのメッセージを手渡すと、出
港の日、今度はカリフォルニアの六つの学校の子供たちから500を超える多数のメッセージが海王丸
に託されました。
帰港後の6月12日、海王丸船長および一等航海士が
浦賀を訪れ、中学1年生になった子供たちにメッセー
ジを届けました。船長から、海王丸の航海の様子や
自分たちのメッセージがどのように届けられたかに
ついての説明を聞いた後、当時の校長先生や現在の
担任の先生などが見守る中、子供たちにメッセージ
が手渡されました。メッセージは、英語で書かれた
文章、覚えたばかりの日本語で書かれた文章など
様々でしたが、それらを手にとって、みな一生懸命
に読んでいました。
海王丸が日米の橋渡し役となり、小さな国際交流
が生まれました。
NIST
ナイスティー
海王丸遠洋航海特集号
※NISTは独立行政法人航海訓練所の
英語略称です
発行日 2010年 9月15日
発行人 岡 野 良 成
編集人 星 野 哲 昭
本紙に関するお問い合わせ先
独立行政法人航海訓練所事務局総務課
Tel. 045-211-7303
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