92 回 ド・ライトの建築を思い出すそうだ。 すきっかけとなったフランク・ロイ かける。雄大な自然は、建築を目指 季節が変わる度に山へドラ イ ブ に 出 た気持ちかも知れない。冬以外にも 身で堪能する感覚。登山愛好家と似 滑ることだけではなく、自然を全 ます﹂ 。 ことで、日常からの開放感を得られ いたりしてね。白い世界に身を置く 入れてきたコーヒーを飲ん で 一 息 つ 架けてイス代わりにして。ポットに ている途中でスキー板にス ト ッ ク を ね。昔は制限も少なかったから、滑っ るコースとか、休憩時間も良いです 面白い。誰も滑っていない起伏のあ れるのが大きな魅力だと話す。 ﹁コースは、整備されていない方が さもさることながら、自然を感じら は、そうしたスポーツとしての面白 経験した上級者である。だが譲さん ば滑りきることさえ難しい 大 回 転 も くつも訪れている。スキルがなけれ 甲田など、東北有数のスキー場をい 大学時代からは安比高原や蔵王、八 スキー部に入部したのをきっかけに、 ア ル ペ ン ス キ ー。 小 学 五 年 生 で ら続けている大切な時間がある。 ものと言う譲さんだが、子供の頃か りしてしまう。仕事が趣味のような は、プライベートでも建築の話ばか 福士美奈子さん。夫婦でもある二人 福士譲さんと、無二の相棒、建築家・ 青森市に事務所を構える建築家・ 第 ❶ ❹ 建築家の Off Time 仕事が趣味と言える人ほど、 特別な時間割をもっている。 ❷ ❸ フクシアンドフクシ建築事務所 福士譲氏[43歳] 福士美奈子氏[44歳] 互いが経験した時間が、 撚り合わさって新しい創造へと繋がっていく。 取材・撮影/齋藤純子 12 ❽ ❺ ❾ ❻ ﹁いつか大自然の中の建築にチャレ ンジしたい。ヒュッテや山の中の温 一方、スキーは譲さんに教わって 泉なんていいですね﹂ 。 かなりの腕前である美奈子さん。彼 クシ建築事務所共同設立 女自身の趣味は﹁指紐﹂ 。糸を指だけ ハウス入社/ 2005 年フクシアンドフ アンドフクシ建築事務所共同設立 で編んでいくもので、そのルーツは 勤務/ 1999 年一級建築事務所モダン モダンハウス入社/ 2005 年フクシ 古く、千二百年前の中国の書物に既 に書かれていたという。三年半ほど 士課程修了後、石井和紘建築研究所に 場に勤務/ 1999 年一級建築事務所 前に指紐の教室に誘われた の が き っ 北大学大学院工学研究科建築学専攻修 攻修士課程修了後、山本理顕設計工 かけで、日本の第一人者とも言える 東北大学大学院工学研究科建築学専 先生から手ほどきを受けた。 ﹁細かい 1970 年宮城県生まれ/ 1994 年東北 大学工学部建築学科卒業/ 1996 年東 作業ですが没頭すると余計 な こ と も 考えなくていいので、ストレス発散 会 話 を し な が ら も、 十 本 の 指 だ 作品の一部。❾編む前にどんな仕上がりにするか考えながら糸を選ぶ。❿指紐の材料 になります﹂ 。 でいく。❼元気づける、誕生を祝うなど、贈る相手への想いを込める。❽これまでの けであっという間に編み上げていく。 り返しながらゲレンデを満喫する 2 人。❻指に掛けた糸を順番に入れ替えながら編ん 完成品は腕に巻いたり、鞄のストラッ 共に頂上へ。❹木々が落とす影は譲さんが好きな景色のひとつ。❺華麗なターンを繰 プにしたり、アレンジも様々。知り スキー。上手く滑るにはテクニックが必要。❸今期最後の雪を楽しむスキーヤー達と 合いにプレゼントする時は 贈 る 相 手 ❶晴天に恵まれたスキー場で笑顔を見せる 2 人。❷オンシーズンとは雪質が異なる春 の幸せを願いながら心を込めて作る。 福士美奈子 1971 年岩手県生まれ/ 1994 年東北 大学工学部建築学科卒業/ 1996 年 ❼ ❿ 糸の種類、色の組み合わせでバリエー ションは無限大。組み合わせを考え 出かけるときも一緒のこ と が 多 い るのもまた楽しい。 という二人。旅先では好奇心旺盛な 美奈子さんが先だって工芸 品 の 制 作 体験などをするそうだ。 ﹁建築にも繋 がることかもしれませんが、何かを ﹃作る﹄ことが好きなんでしょうね﹂ 。 ﹁ついつい仕事のことばかり考えて しまうけれど、自由な発想のために は心に余裕がないと。机にかじりつ いてばかりでは良い案も浮 か ば な い から、少し離れて、新しい刺激を受 ける時間も大切にしていき た い ﹂ と 話す譲さん。これからも二人の建築 13 家は互いを尊重し、二人分の創造性 を活かしながら共に歩んでいく。 を収めたかわいらしい手芸箱。 福士譲(青森県青森市)
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