光ファイバを用いたコンクリートのひび割れ検知に関する実験研究 構造研究室 石嶺真作 1. はじめに 沖縄県内のコンクリート橋では塩害による鉄筋中 の PC 鋼線の腐食膨張により生じるひび割れ対策が 重要であり、そのひび割れの早期検知および進展モ ニタリングの技術が求められている。そのモニタリ ング技術として、耐候性が高い、高感度の光ファイ 写真1.塩害によるコンクリート橋のひび割れ バを用いる方法がある。 格子 本研究では、光ファイバセンサを使用した、塩害 橋梁の異常検知モニタリングを目的として、光ファ λB1 イバの検知能力の検証実験を行った。その結果につ いて報告する。 λB2 2. 光ファイバセンサについて 光ファイバセンサは、図 1 に示す FBG センサを用 張力 いた。FBG センサの原理は、光ファイバ内に導入さ 図1.FBG センサの内部構造 ひずみゲージ れた複数の格子に反射する光の波長を利用し、外力 右側 によりひずみが生じると格子の間隔が伸び、その格 上 南 下 子から反射する光の波長変化より、ひずみを算出す 左側 る技術である。反射光の波長の変化とひずみの関係 式は下の式で求めることができる。 南 ΔλB=λB(1-ρe)ε ここで、λB は反射波長(nm)、ΔλB はひずみ発生に ICロック 側線 光ひずみ計 取り付け金物 鋼材 北 鋼繊維補強鋼材 よる反射波長の変化による波長のシフト量(nm)、ρe 300 は光ファイバの光弾性係数、ε はひずみ(με)を表 (単位:㎜) 図 2.引張実験試験体 している。 :ひずみゲージ 曲げ試験 3. 実験方法 実験は、FBG センサのよる静的引張実験、曲げ実 験、疲労実験で発生するひび割れの検知の検証を目 FBGセンサ 300mm 曲げ疲労試験 的として行った。図 2 に引張試験で使用したコンク リート補強鋼材試験体、図 3 に曲げ試験で使用した コンクリート梁を示す。FBG センサは、どこに発生 200mm するか分からないひび割れの検知と、ある程度の領 図 3.曲げ実験試験体 域内に発生するひび割れを検知することを目的に、 図 2、図 3 に示すように 200 ㎜~300 ㎜離れた固定治 具間の平均ひずみを測定した。固定治具には IC ロッ クを用いた。その IC ロック間に張力を導入する側線 を使用し、FBG センサは側線上に接着した。光ひず み計の測定に使用する FBG アナライザ si425 を 写真 3.使用した FBG アナライザ(si425) 25 800 写真 3 に示す。今回の実験で FBG センサは、静的載 光ひずみ計 電気式ひずみゲージ 700 荷実験:125Hz 疲労試験:25Hz でデータを保存した。 載荷 600 4. 実験結果 除荷 ひずみ(με) 500 【引張実験】 実験結果を図 4 に示す。電気式ひずみゲージ、FBG 400 300 200 センサ共にひずみ 200μ付近で発生したひずみを感 100 16:50:00 16:49:40 16:49:20 16:49:00 16:48:40 16:48:20 16:48:00 16:47:40 16:47:20 16:47:00 16:46:40 16:46:20 16:46:00 16:45:40 16:45:20 16:45:00 れの影響により、計測ひずみ値の信頼性が著しく低 16:44:40 0 -100 16:44:20 知しており、電気式ひずみゲージは発生したひび割 時間 下しており、計測不能となった。FBGセンサは、 図 4.引張実験結果 ひび割れの影響によりひずみの値に乱れが生じ、ピ 約23万回振幅 乱れが生じている ーク時には約 750μまで上昇。除荷に伴いひずみの 値も低下、最終的に約 50μの残留ひずみが発生。 【引張疲労実験】 試験結果を図 5 に示す。約 23 万回振幅付近にて、 ひび割れの発生、進展の影響と思われるひずみの値 ひび割れ発生そして進展 した可能性 の乱れが生じ、発生後のひずみの値は発生前と比べ て減少、不規則な動きとなっている。 【静的曲げ実験】 図 5.引張疲労実験結果 試験結果を図 6 に示す。10kN 載荷時にコンクリー ひび割れの発生 300 ト梁にひび割れが発生しており、FBG センサ、電気 FBGセンサ 250 式ひずみゲージ共にひび割れを検知している。FBG ひずみゲージ ひずみ(με) センサは固定治具区間の平均ひずみを計測している ため計測区間内のひび割れが開くことにより、ひず みの値が増加している。以上の原因により、FBG セ ンサと電気式ひずみゲージのひずみの値に差異が生 200 150 100 50 じたと考えられる。 0 16:51:25 【曲げ疲労実験】 16:52:08 16:52:51 16:53:34 16:54:18 時間 試験結果を図 7 に示す。約 11 万回振幅にてひび割 図 6.曲げ実験 れの進展と思われるひずみの動きが満たれた。発生 前ではひずみのグラフは規則的に動いているが、発 規則的に動いている。 ひずみの値が下がっている。 生後はひずみの値は低下している。 5.結論 引張実験、疲労実験の結果より FBG センサでの引 張によるひび割れの発生、進展の検知が可能である 約11万回で ひび割れ進展 と分かった。静的曲げ実験、曲げ疲労実験の結果よ り FBG センサでの曲げによるひび割れの発生、進展 の検知が可能であることが分かった。以上の結果よ り、FBG センサを用いたコンクリートのひび割れの 図 7.曲げ疲労実験 検知、進展モニタリングは可能であると言える。 現在、実際の橋梁に FBG センサを設置して計測を 行いデータ解析中である。 26
© Copyright 2024 ExpyDoc