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日皮会誌:99
( 4 ), 477-492,
1989
(平元)
掌脈悪性黒色腫のheterogeneity
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―AcralReader®で閲覧するようにしてください。
lentiginous melanoma とnodular melanomaの比較解析−
示されます。Adobe®
三島 豊 中西 孝文 藤田 隆
要 旨
表1 神大皮膚科学教室で最近約10年間
最近我々が経験した掌随悪性黒色腫16例およびその
に経験した悪性黒色腫とその前癌症の
部位別発生頻度.
前癌症の4例を解析した.掌鱈黒色腫は欧米の報告と
異りALM
8例と結節型8例で半々であった.これら
各病型の代表的症例をALM
4例,結節型2例につき
Head & neck
9
Face
18
それらの臨床的ならびに病理学的所見を対比記載する
Trunk
19
とともに各々のclinicalbehaviorを追求した.
Eχtremities
24
Palm & sole
20
Oral cavity & genitalmucosa
8
ALM
の症例には全てA-, B-, C-phaseの3相構造を認めB・
およびA-phase病巣はpagetoid
melanomaのそれぞ
れ対応する病巣と多くの共通ないし類似の特徴を有す
Subungualarea
ることを見い出した.掌鱈の結節型黒色腫も体幹のそ
10
Total
れと共通の所見を示し,極めて高い悪性度を示した.
108
はじめに
本症の個々の症例についての詳細な具体的記載の原著
近年,悪性黒色腫の発生は増加の傾向にあり,例え
は,いまだ乏しい.我々は本症病巣を,臨床的ならび
ば米国のConneticut州の黒色腫の発生頻度をみると,
に病理組織学的に検索し,2相性ではなく明らかに区
1935年には人口10万あたり男性では1.6,女性では0.7
別しうる3相性の病変が存在する事,ならびにその前
であったものが,
癌症と考えられる病巣をplantar
1972年には各々5.3,
4.4となり,男
premalignant
性で3.3倍,女性で6.3倍の増加率を示している1).斯る
melanosis"と命名し先に報告した7)
増加は欧米のみならず,我国においてもほぼ同様に認
掌脈,指趾末節の黒色腫の殆んどがReed5)らの記載
められている.しかし本邦における悪性黒色腫は欧米
の如き特徴的病像を有しているacral lentiginous
に比し,掌既に出現する率が多く,本邦皮膚悪性黒色
melanomaと呼ぶべき単一の疾患群であるかどうか.
腫全体の約1/4を占め2)3)その悪性度も高いが,その発
Clark4)もvolar
症病理はいまだ不明の点が多い.
あるとしている.そこで当教室で経験した掌陳悪性黒
Reedら5)は掌詰の黒色腫は,しばしば淡褐∼褐色の
色腫につき,
色素班を結節の周囲に示すものが多く,組織学的に斯
nodular melanomaおよびALM前癌症である
る色素班病巣は良性のmelanocytic
plantarもしくはpalmar
hyperplasia6)と
区別がつきにくいとし,この所見を掌既,指趾末節に
発生する黒色腫にユニークな病像とみなし,
lentiginous
growth
phase
増殖パターンに於ける2相性を指摘している.しかし
acral lentiginous
melanomaは稀有で
melanoma,
premalignant
掌脈の
melanoSiS7)9)
に我々が原発巣の時点より直接加療しえたALMおよ
び掌脈のnodular
Reedら4)は斑状病巣をradial
phase, 結節部をvertical
skinのnodular
の各症例を集計すると共に前2者につきまとめた.更
acral
melanomaとして著書の中で短述してい
る.その後Clark,
growth
10)
melanomaの代表的数例について
詳細に記載する.
とし,
結 果
掌脈黒色腫16例の主な臨床所見および経過を列挙す
ると表2および表3の如くなる.なお当教室で経験し
神戸大学医学部皮膚科学教室(主任 三島 豊教授)
昭和61年4月7日受付,昭和62年1月9日掲載決定
た掌脈黒色腫および前癌症のうちわけはacral
別刷請求先:(〒650)神戸市中央区楠町7−5−1
lentiginous型8例,結節型8例およびplantarもしく
神戸大学医学部皮膚科学教室 三島 豊
はpalmar
premalignant
melanoSiS7)4例であった(表
478
三島 豊ほか
表2 掌紋黒色腫症例の臨床経過のまとめ.
(1)
(1)
Case
No.
首
Name
T.Kishida 74/M
1
2
3
Acral lentiginous melanoma
Acral lentiginous type
T. Nakamura
43/F
T. Ohtani
51/M
4
T. Kominami
5
H.Yokoyama 63/M
79/F
Chart
N0.
1st
Visit
Survival
I)try
r・sole
8燃7
r・sole
゛A:3M
*゛B:7Y
r-sole
A:8M
B : 3Y
2/27/76
9/2/77
A:3M
B:2Y 1/30/79
l・■sole
A:1Y
B:3Y
3669
8/20/80
/-sole
3224
6/29/81
添
from
Recurrence
oR・
Status
presence (until
1st
from
1st
op
1st op.
Stage
塁ば
s゛已ふ
右下腿±1/3
で切断
討みs
st?jl
右下腿上1/2
で切断
乞??ぃ。
6/4/84)
542
1/20/76
230
1/8/79
Duration
2Y2M
dead
4 YIM
8M
alive
6Y9M
/
alive
5Y4M-
immunochemotherapy
M.Iga
67/M
7
A. Sakai
8
M. Otoishi
32
78/M 12/28/81
66/F
漂‰
V
V
DTIC(250mg)
Stage l
右下腿上1/2 DAV
(DT!C200mg)
で切断
DAV
CDTIC200mg)
BCG CWS
Ⅳ
/
alive
4 Y9M-
Stage l
5cm離し広
範囲切断
A:7M
B:10Y 9/17/80
/
alive
3Y8M-
Stage l
5cm離し広
範囲切除
r・sole
A:2M
B:1Y 7/22/81
/
alive
2Y10M-
Stage l
右下腿上1/2 DAV
で切断
(DTIC900mg)×2
V
/・sole
A:2M
B:2Y
1/27/82
/
alive
2Y4M-
Stage l
5cm難し広
範囲切除
DAV
CDTIC900mg)×2
クレスチン
IV
/■intertoe
A : 2M
B:3Y
9/10/80
/
alive
3 Y4M-
Stage l
ピシバ昌−ル
足関節で切断 DAV
(DTIC900mg)×2
IV
5/9/79
DAV
6
level
(DTIC900mg)×1
ピシノミニーノレ
V
m
゛Aindicates duration of A・phase nodu】elesion
**Bindicates duration of B-phase plaque lesion
表3 掌諺黒色腫症例の臨床経過のまとめ.
(2)
(2)
Case
No.
1
2
Nodular
Nodular melanoma
type
Name
皆
F.Nishino 77/F
T. Kida
85/lVI
Chart
N0.
1st
Visit
4068
8/22/27
昌o
Survival
Pt
Duration
1st op・
Recurrence status from oR・
presence (until
1st
from
1st
op
Stage
6/4/84)
r・1st
笹
8M
9/7/77
10/24/80
9M
dead
1Y
84
dead
1Y4M
昌偕
Stageみ 右母指切断
sltll
→IV
下腿下1/3で
切断
immunoche・
motherapy
level
ピシ/てこ−ノレ
BCG
cws
IV
DAV
(DTIC900mg)
V
/・sole
8M
/・sole
7M
4/23/80
1M
dead
4M
Stage II 左足関節切断 (DTIC500mg)
鼠径リンパ節 ピシノζニーノレ
廓清
Z. Tsunefuka 93/M 2427
5/21/80
r・sole
7M
6/11/80
/
(dead)
by old age
8M
stage l
1∼1.3cm g! ピシバニール
しで切除
V
1638
3/23/82
l・■sole
6M
4/21/82
/
alive
2Y1M
Stage l
左足関節で切 DAV
断
①TIC900mg)X2
IV
5M
alive
lYlOM
Stage I
左末m指MP DAV
jointで切断 (DTIC900mg)
V
DAV
3
4
5
T.Hayashi 52/M
M.Yasuoka 56/M
1051
3/24/80
lt2
6
7
8
N. Komiyama
M. Ueda
49/M 凛2
57/M 高3
S. Taniguchi 84/M 2乱
忿e「
】
side
1Y
8/4/82
IV
/・sole
6M
7/27/83
/
alive
11M
s゛巴?I
左下腿下1/3 DAV
で切断
CDTIC900mg)×2
V
/■sole
lYllM
3/28/84
/
alive
2M
Stage l
左足
metatarsus・
cuboidal
jointで切断
V
DAV
(DTIC900mg)
掌叶悪性黒色腫のheterogeneity
479
表4 掌陳黒色腫症例の内訳(前癌症を介行)
−一一一一 一一
Site
Type
Nodular
ALM
Palm
Sole
6
2
8
一一
0
'I'ola】
8
8
一一
1
3
Premalignant
melanosis
Total
4
3
17
4).また我々は最近の10年間(1974.
20
1.12∼1984.
2.
23)に108例の悪性黒色腫およびその前癌症を経験した
が,部位別の頻度は表1に示した如く,掌紋原発の黒
色腫及びその前癌症と考えられる病変は20例(19%)
を占めていた.これはClarkら4)が統計をとった米国
での636例の皮膚黒色腫の掌紋における発生頻度が爪
甲下黒色腫を含めても5.6%であるのに対し,明らかに
高い頻度である.大角,清寺ら2)3)が医学中央雑誌の抄
録よりまとめた.日本人での部位発生頻度七皮膚黒
色腫291例中足底だけで71例(24%)と,おおよそ我々
の結果と一一致している.
図1 症例1(ALM)の臨床写真.深黒色・部淡自色
症 例
びらん面を伴う結節(A-phase)その周囲の深黒色局
(I) acral lentiginous型掌疏黒色腫
面(B-phase)およびさらに辺縁の淡褐色斑(C-
Acral lentiginous 型の典型的病変は,中心結節性腫
phase)を認める.
瘤(A-phase病巣)の周辺に,黒褐色局面(B-phase病
巣)と更に辺縁に,淡褐色斑(C-phase病巣)の3相構
造を示す臨床的ユニークさを有する7)
9)が,病理学的
にも,これら病巣には後述の如く互いに異なる特徴を
有し一見,
A-phaseは結節型黒色腫,
B-phaseは
pagetoid premalignant melanosis,
C-phaseは
melanocytic
hyperplasiaと類似の細胞病理学的特徴
を呈している.以下我々の検索した症例の病巣の解析
にあたっては,上述の各phaseをcriteriaとして使用
した.以下代表的な数例の臨床,病理学的所見の詳細
を述べる.
症例1 :T.K,
74歳男性.
初診:昭和51年1月20日.
図2 症例1,
A-phaseの組織像:真皮に密に増殖す
る殷子状黒色腫細胞.HE染色,×198.
主訴:右足紋の色素斑を伴う腫瘤.
既往歴:糖尿病.
受くも,腫瘤はなお増大し当院皮膚科へ紹介され即日
家族歴:特記すべき事なし.
入院.腫瘤の発生した50年11月頃より,褐色斑(C-
現病歴:約7年前,右足駄腫部に鶏卵大非隆起性黒
phase)が病巣辺縁部に目立ち,徐々に拡大し初診日ま
色局面(B-phase)があるのに気付く.それ以前の色素
でに当初の約2倍の大きさになったという(図1).
斑の存在は不明.以後次第に拡大.昭和50年11月頃,
現症:A-phase病巣は右足駄腫部に21×19×15mm
黒色局面内に小指頭大腫瘤形成(A-phase).易出血性,
の深黒色一部淡紅白色でびらん面を伴う弾性硬の結節
癈挫感があった.某病院皮膚科.軟膏療法のみで加療
が1コ存在. B-phase病巣はA病巣と多くは連続し,
480
島 1";;;
tか
図3 症例1,
A-phase : 処により束状構築を示しながら黒色腫細胞が真皮深層へ増
殖する.HE染色,×99.
図4 症例1,
B-phase : 表皮下層の類球形ないし骸子状の異型色寿細胞のpagetoid
型増殖を認める.HE染色,×172.
その周囲に深黒色∼帯青黒色,不整形,爪甲大までの
にて切断術施行.同時に触知せる右鼠径リンパ節を生
浸潤を伴う表面粗造なわずかに皮膚面より隆起せる局
検をかねて剔除.リンパ節に転移は認められなかった.
面として数コ存在.(ンphase病巣はA病巣,B病巣の
手術前後にHydrea
さらにその辺縁で,腫部より土踏まずにかけ,足底の
BCGcws
ほぼ半分にわたって淡褐色,非隆起性,表面ほぼ平滑
munochemotherapyを施行し,術後の経過良好で同年
な色素斑として認められる.右鼠径部に小指頭大リン
6月13日に軽快退院したが,元来重度の糖尿病があっ
パ節を3∼4コ触知.
たため近医(某県立病院内科)へ通院し,当科へは来
経過:昭和51年2月27日,右下腿膝関節より1/3下方
院しなかったが,昭和53年4月頃,胸部X線検査にて
3錠1日(2回1週),計49錠,
0.025ml皮下注(1回1月),計5回にてIm-
481
掌陳悪件黒色腫のheterogeneity
図5 症例1,
B-phase : 処により異型色素細胞の表皮基底層から中層への個別的増
殖もみられる.HE染色,×175.
図7 症例2(ALM)の臨床写真:1,2,5,7はA phase,
4,5,6,7はB-phase,
3,4,6,8,9は
C-phaseを示す.ただし5,7ではB-phaseはA phaseと連続し,
3,4,5,6ではB-phaseはC-
phaseと連続する.
異常陰影を指摘され,同時期より昭和54年7月頃まで
近医入院.一時退院したが,昭和54年10月頃より右鼠
図6 症例1,
C-phase:表皮基底層を中心とt.て
dendritic less atypical
HE染色,×350
melanocyte
を多数認める.
径部リンパ節腫脹出現し,全身状態不良にて再入院.
昭和55年3月16日死亡した.
病理組織像:A-phase病巣では,しばしば扁平化し,
482
三島 豊ほか
図8 症例2 , A-phaseの組織像.
×99.
HE-dopa染色,
図9 症例2,B・phaseの組織像.
×99.
図10 症例2 , C-phaseの組織像.
HE-dopa染色,
HE-dopa染色,×198.
更には部分的に欠損びらん化をきたす表皮下層より,
中等度の細胞浸潤をmelanophageと共に真皮上層に
真皮深層へと連続的に比較的大型の明るい原形質を有
認める.
する,歌子状黒色腫細胞の密な増殖(図2)が認めら
起の良く発達した多数のノラノソームを含む,
れる.処により,紡錘形黒色腫細胞が密に配列し,明
multidendritic less atypical melanocyteの個別的増
らかな束状構築を示しながら,表皮直下から真皮深層
殖を示す(図6).これは又,
へとほぼ連続的に増殖を示す(図3).定型的B-phase
も時に散見される.
病巣は表皮下層に,原形質が明るく,軽度eosin淡染性
melanophagesに著明で,表皮細胞へは軽度であるが,
で均等に微細穎粒状メラノソームを含札大型の類球
角質層内にはmelanosomeの蓄積がある程度認めら
形ないし歌子状細胞の密に集族した腫瘍細胞巣の多発
れる.表皮の構造は全く正常に保たれ穎粒層も温存さ
を示す(図4).これらの一部は表皮中層にも存在する.
れている.真皮上層には中等度のリンパ球性細胞浸潤
さらに同様歌子状細胞は表皮基底層より一部中層に達
を認める.
するpagetoid型の不規則な個別的増殖を示す(図5).
症例2 :T.N,
これら腫瘍細胞は,クロマチンに富む類球形の大型の
初診:昭和52年8月n日.
核とその内部に明瞭な核小体を有し異型性を示す.表
主訴:右足獣の色素斑を伴う腫瘤.
皮の構築はほぼ正常に保たれ,リンパ球を中心とする
既往歴,家族:特記すべき事なし.
C-phase病巣は表皮基底層を中心に樹枝状突
B-phase病巣の移行部に
Melanosome transferは真皮の
43歳女性.
掌胆悪性黒色腫のheterogeneity
483
かったと言う(B-phase).昭和51年冬頃にこれら多数
の色素局面の中央部(図7の1,
2)にあかぎれ様変化
がおき,易出血性となり次いで腫瘤形成(A-phase).
これは来院時鮮紅色,栂指頭大充実性腫瘤で,表面び
らん性となっていた.右課部外側寄りの病巣(図7の
5)に初め黒色局面があり,昭和52年8月頃より図7
の1,2と同様に一部に淡褐色調を有する帯紅白色結
節を生じてきたと言う.昭和52年4月頃より上述の環
状に配列せる黒褐色局面に,部分的色素消退がみられ
たと言う.昭和52年6月,近医外科にて外用療法受く
も改善をみず,同年8月近医皮膚科受診し当科を紹介
された.
現症:A-phase病巣は右足駄深部(図7)の1,
5,7の部分に栂指頭大から碗豆大ぐらいまでの結節
を認めた.表面湿潤腐爛した,鮮紅色∼暗赤色を呈す
る弾性硬充実性腫瘤が存在する.特に5,7の結節は周
囲に黒褐色の色素局面を有する.
B-phase病巣は図の
3,4,5,6,7の部分に,5,7ではA-phase病巣と
連続し,
3,4,6ではC-phase病巣と連続して,深黒
色∼青黒色の不整形,爪甲人前後のわずかに皮膚而よ
図11 症例3(ALM)の臨床写真.右足計腫部の深黒
り隆起せる浸潤局面が存在する.
C-phase病巣は図の
色の結節(A-phase),黒褐色不整形の局面(B-
3, 4, 6, 8, 9の部分に.
3,4,6ではB-phaseと連
phase),および淡褐色斑(C-phase)を認める.
続して黒褐色∼淡褐色非隆起性,表面ほぼ平滑な色素
斑を認める.両鼠径,大腿部に明らかなリンパ節腫入
現病歴:約3年前(昭和49年頃),右足駄腫部に7
を認めない.
ALMは時に斯る不連続型病巣を示す.
∼8ヵ所の黒褐色色素局面があるのに初めて気付い
経過:昭和52年8月18日当科入院.同年9月2日,
た.色素局面は環状に配列していたが結節の形成はな
右下腿膝関節より1/2下方にて切断術施行.手術前後に
図12 症例3,
A-phaseの組織像.
HE-dopa染色,×99.
2,
484
島
図13 症例3,
×99.
Hydrea
B-phaseの組織像.
HE-dopa染色,
じけか
図14 1j回列3、C-phaseの組織像.
HE-dopa染色、
×198.
3錠/日(2回/週)10日間計30錠.
Picibanil
筋注(0.2∼l.OKEまで漸増,3回/週)計3回(発熱
のため中止).DTIC 50mg,
lOOmg,
日間×1クール.
0.025ml皮下注(1回/月)
BCGcws
lOOmg,静注計3
計3回にてImmunochemotherapyを行った.術後の
経過良好で同年11月10日に退院.退院後もBCGcws
0.025ml皮下注(1回/月)にて経過観察を続けていた
が,翌昭和53年5月始めより右大腿部リンパ節が腫脹
しはじめ,急速に増大し5月8日には47×33×12mm
大,圧痛のある皮下腫瘤となった.同時に下腿の断端
部にも21×12mm大の腐爛面が出現し,肉芽腫様にも
り上がってきた.そのため同年5月11日再入院し,局
所再発及びリンパ節転移を疑い6月7日,右大腿中央
より再度切断術及び右鼠径∼後腹膜にわたる広範囲リ
ンパ節廊清を施行.組織検査の結果は,断端部の肉芽
腫様隆起は慢性炎症像のみで悪性像はなかったが,右
大腿部から右浅鼠径リンパ節にかけての黒色腫細胞の
転移が認められた.再手術後にHydrea
週)22日間,計66錠.
3錠/日(2回/
Picibanil皮内注(0.2KE∼5KE
まで漸増,3∼4回/週)計20回.
DTIC
50mg, lOOmg,
lOOmg静注3日間×6クール,計18日間.
BCGcws
0.025ml皮下注(1回/月)計3回にて強力なImmuno-
図15 症例4(ALM)の臨床写真.腫部外側寄りに表
面色素斑を有する廉爛した肉芽腫様結節(A・phase)
と青黒色から深黒色の局面(B-phase)および非隆起
性淡褐色斑(C-phase)を認める.
chemotherapyを再度施行.経過良好にて同年8月11
日退院し,退院後もBCGcws皮下注(1回/月)にて経
主訴:右足駄の黒色斑を伴う結節.
過観察を続けているが,昭和59年6月4日現在で再発
既往歴:高血圧.
をみない.
家族歴:特記すべき事なし.
病理組織像:本例のA-phase病巣(図8),
B-phase
現病歴:約2年前,右足脈腫部の中心,現在結節の
病巣(図9),ならびにC-phase病巣(図10)は各々の
存在する部分に,灰褐色爪甲天色素性局面(B-phase)
如く,ほぼ症例1に記載した所見と同一であった.
の存在に気付く,それ以前の色素斑の存在は不明.約
症例3 :T.O, 51歳男性.
5ヵ月前(昭和53年8月頃)より初発巣の遠位側に爪
初診:昭和54年1月8日.
甲天淡褐色斑(C-phase)の発生に気付く.約3ヵ月前
掌陳悪性黒色腫のheterogeneity
図16 症例4 , A-phaseの組織像.
図17 症例4,
B-phaseの組織像.
485
HE-dopa染色,×46
HE-dopa染色,×46
昭和53年10月頃)より,色素性局面に軽度疼痛を生じ,
某病院皮膚科を受診し,当科紹介された.
被覆皮膚が一部めくれ破れてきたので,見るとその下
現症:(図11),
A-phase病巣は右足註腫部に9×
に灰黒色の腫瘤(A-phase)が存在していたと言う.約
8×0.8mm大の深黒色,表面粗造の結節が1コ存在
1ヵ月前(同年12月頃)初発巣周囲近位側にも淡褐色
し,わずかに血痴を付着する.
斑(C-phase)を生じ,遠位側の色素斑も徐々に拡大し
より約1cm前方遠位側に8.5×13×0.1mm大,黒褐色
暗色化してきたが,結節の色調,大きさに目立った変
不整形のごくわずかに皮膚面より隆起せる局面が存
化はなかった.昭和54年1月初旬,右足紋全体に散在
在.両病巣は淡褐色斑(C-phase)で連続している.
性に発生した雀卵斑様色素斑に気付く,同年1月8日
C-phase病巣はA-phase及びB-phaseと連続して両
B-phase病巣はA-phase
486
三島 豊ほか
図18 症例4 , C-phaseの組織像.
図19 症例1
HE-dopa染色,×198.
(palmo-plantar nodular melanoma)
の臨床写真.ドーム型の結節は認めるが黒色色素局
面(B-phase)を結節周囲に示さない.
者の周囲に,46×36mm大の境界明瞭な淡褐色不整形
非隆起性色素斑として存在する.足獣全体にわたって
図20 症例1の組織像.表皮境界部よりの黒色腫細胞
の垂直侵入型増殖を認める.
HE-dopa染色,×20
約10コの帽針頭大から1/4爪甲大までの雀卵斑様,淡褐
色色素斑が散在してみられる.右鼠径部に小豆大のリ
ACNU
ンパ節を2コ触知する.
chemotherapyを行った.手術後の経過は良好で,同年
経過:本症例は,昭和54年1月9日に当科入院.同
4月6日に退院し,その後もBCGcws
年1月30日に右下腿膝関節より1/2下方にて切断術施
lOOmg静注,計3日間×1クールでImmuno-
(1回/月)及びPicibanil
0.025ml皮下注
3KE皮内注(1回/1∼2週)
行し,同時に触知せる右鼠径部リンパ節の剔除を行っ
にて経過観察し,昭和59年6月4日現在再発をみない.
た.結果はリンパ節転移は認めなかった.手術前後に
病理組織像:本例のA-phase病巣(図12),
Picibanil皮内注(0.2∼3KEまで漸時増量,3∼4回/
病巣(図13),
週),計34回.
とも前記の症例とほぼ同様の所見を呈していた.
DTIC
50mg, lOOmg,
lOOmg,
VCR/mg,
B-phase
C-phase病巣(図14)を示す.各phase
487
掌計悪性黒色腫のheterogeneity
巣が一部黒色化してきたのに気付く.尚同腫部内側寄
りにも正確な時期不明なるもこの経過中に黒褐色色素
性局面が発生し徐々に拡大.同年4月5日近医皮膚科
受診し,当科紹介された.
現症:(図15),
A-phase病巣は左足脈の腫部外側よ
りに,33×27×5mm大鮮紅色から暗赤色の表画ほぼ平
滑で,腐爛湿潤した肉芽腫瘍腫瘤が1コ存在する.腫
瘤表面には11×2.5×Omm大,不整脈の暗灰黒色色素
斑が2コ存在する.
B-phase病巣はA-phaseと一部は
連続し,一部はC-phaseと連続して腫部やや右方寄り
図21 図20の拡大.真皮浅層の黒色腫細胞は大型の異
に,青黒色から深黒色のわずかに厚みをもった表面粗
型な核と軽度好酸性原形質を有し類球形ないし殷子
造,不整形爪甲大までの局面が数コ存在.
状を呈する.所々に表皮の非薄化を示す.
はA,
HE-dopa
染色,×99.
C-phase病巣
B-phaseと連続した周囲に,淡褐色∼茶褐色の非
隆起性不整形色素斑として存在.
経過:昭和54年4月23ロに当科へ入院.高齢で高度
症例4 :T.K,
79歳女性.
肥満及び膝関節症のため,切断術は行わず,同年5月
初診:昭和54年4月6日.
9日に病巣部黒褐色斑より約5Cm離して,広範囲に剔
主訴:左足註の黒色斑をともなう腫瘤.
除し中間層植皮術施行した.手術前後にPicibanil皮
既往歴:虫垂炎,高血圧,膝関節炎.
内注(0.2∼3KEまで漸次増量,3∼4回/週),計27回
家族歴:特記すべき事なし.
DTIC
現病歴:約3年前,左腫部外側寄りの現病巣部に1/
mg静注,計3日間×1クール.
2爪甲大の角層の肥厚,亀裂と慶爛を生じ,軽い接触で
下注(1回/月),計3回にてImmunochemotherapyを
出血しやすくなったと言う(B-phaseと推定).昭和53
行った.手術後の経過は良好で,同年8月11日軽快退
年3月頃より近医にて軟膏療法受くも効なし.同年4
院.退院後もBCGcws
月頃よりその一部が肉芽腫様腫瘤となり,湿潤し次第
て観察し,昭和59年・6月4日現在で再発を認めない.
に増大していった(A-phase).昭和54年2月頃より病
病理組織像:本例のA,B,C各phaseの糾織像は前
図22 症例1
50mg,
50mg,
lOOmg,
VCR
ACNU
HE-dopa染色,×50.
100
0.025ml皮
O.()25ml皮下注(い・│/月)に
(palmo-plantar nodular melanoma)の腫瘍辺縁組織像では1∼2コ
の表皮突起の範囲で表皮内腫瘍細胞巣のみの部を認める.
lmg,
BCGWws
島 豊ほか
488
図24 症例8
(palmo-plantar nodular melanoma)
の臨床像.半球状に隆起した結節のみ認める.
typeが目立つが,しかしこのtypeの特徴的所見とさ
れている淡褐∼黒褐色の色素斑ないし局面を明確に示
さない黒色腫症例の存在しうる事を我々は見出し
た7)8)9)すなわちClarkらぱ掌鱈における黒色腫につ
図23 腫瘍辺縁部には臨床的には淡褐色班(C-phase)
を認めないが組織像では少数のdendritic non atypical melanocyteを認める.
いて結節型及びsuperificial
稀であり,
HE-dopa染色,×
350.
lentigo maligna
spreading
melanomaは
は未だ見た事がない"と記
載4)している.しかし最近になりColeman,
Reedら11)
は掌胆における結節型黒色腫発生の可能性に言及して
記の3例とほぼ同様であった(図16,図17,図18).
いるが,その具体的な所見や症例の記載はない.そこ
以上acral
でacral lentiginous type と対比しながら,我々の観察
lentiginous 型悪性黒色腫8例を通覧す
ると表2の如くであるが,昭和59年6月4日の時点で
し得た結節型掌駄黒色腫(nodular palmo-plantar
生存7例.原病死は1例となっている.初診時年齢は
melanoma)と名付けるべき症例をまとめると,表3の
43歳から88歳までで平均年齢は65.1歳,性別は合:
如くなる.紙面の都合で定型的な症例と考えられ,原
♀=5:3.治療は表2に示す如く下腿amputation
発巣より詳細に観察し得た症例2例につき,特に詳述
5例,
する.
5cm離し広範囲切除3例でいずれもimmuno-
chemotherapyを加えた.全例,初診時Stage
l であっ
症例1
:F.N,
77歳女性.
たため,明らかに触知せる所属リンパ節の生検的剔除
初診:昭和52年8月22日.
以外には,予防的廓清は行わなかった.病例2の如く,
主訴:第1指掌側の黒褐色腫瘤.
後にstage
既往歴:中耳炎,高血圧.
II として再発したものはその時点でただち
に広範囲リンパ節廓清を施行したが,現在も生存中で
家族歴:特記すべき事なし.
ある.病例Iは重症糖尿病で,他病院他科入院中のた
現病歴:生来,現病巣部に黒子は存在しなかった.
め,追跡できずStage
約7ヵ月前(昭和52年2月頃),右第1指掌側先端部に
IV にずれこみ死亡した.
(II)結節型掌疏悪性黒色腫
掌胆の悪性黒色腫症例を検討し,
dino,
Reed,
黒褐色非隆起性色素斑に気付く.その後次第に増大.
Clark,
Bernar-
Kopfの報告4)の如くacral-lentigious
約1ヵ月前(昭和52年7月下句)より,癈蝉感を感じ
圧痛を生じるようになり,病変部の隆起が著明になっ
常詰悪性黒色腫のheterogeneity
489
てきた.昭和52年8月某病院皮膚科を受診し,当科に
紹介された.
現症:右第1指末節掌側に13×13×4mm大の,暗黒
褐色,ドーム型の腫瘤が1コ存在する(図19).却削こ
は多数の不規則な亀裂があり,軽度の鱗川をともな≒
右肘高,肢高の所属リンパ節は触知しない.
経過:本症例は昭和52年8月25日に当科人院.同年
9月7日に右第1指基関節より,切断術施行した.所
属リンパ節は触知せず,生検は行わなかった.術後よ
りPicibanil
(0.2KE∼l.OKEまで漸時増量,3回/
週),計3日間,
BCGcws
計2回施行した.
Picibanilは筋注後の発熱とそれにと
0.025ml皮下江(1回/月),
もなう高血圧のため,3日間以上施行できなかった.
術後の経過は良好で,同年10月24日に退院し,退院後
もBCGcws
0.025ml皮下注(1回/)にて観察を続け
ていたが,昭和53年2月,道でころび右大腿骨骨折し
某病院に入院したため,当科で経過観察できなかった.
その間の同年3月上旬より,右前腕屈側に2コの大豆
大青黒色腫瘤が出現し,4月上旬には指切断端に青黒
色小結節が出現.次いで4月中旬頃より,漸次左肩,
下肢など全身に同様青黒色小結節が増加し,全身のリ
ンパ節腫脹も出現してきたため,漸く来院し同年7月
6日当科へ再入院し,
DTIC50mg,
VCRlmg静注開
始するも,すでに全身の衰弱激しく,メラニソ尿を認
図25 症例8の組織像.
HE-dopa染色,×20.
め,同年8月10日死亡した.剖検にて全身の皮膚,皮
下脂肪織,リンパ節,その他主要臓器(肝,心,肺,
ていない表皮内腫瘍細胞巣をみるが,これらは1∼2
腎,消化管,骨髄等)への転移巣を確認した.
コの表皮突起の範囲内である(図22).なお,かかる辺
病理組織像:原発病巣は全体的に表皮真皮境界部よ
縁部にはALMのC-phaseに比べると極めて小数で
り真皮への垂直侵人性増殖を示し,皮下脂肪織に達す
はあるが異形性のないよくのびた樹枝状突起を有する
る(図20).かかる侵人性腫瘍巣の表皮内腫瘍細胞およ
yラノサイトも認めることが出来る(図23).
び真皮浅層の腫瘍細胞は,大型の異型性に富む核と軽
症例8
度eosin好性の原形質を有し,大部分類球形ないし殷
初診目:昭和59年2月23日.
:S.T,
84歳男性.
于状を呈する.これら腫瘍細胞は不規則な個別的増殖
主訴:左足底黒色腫瘤.
を強く示し,穎粒層及び角質層にもDOPA反応陽性の
現病歴:代々の専業水田農業従事者で40年前より現
細胞として認められる.これらの部位では穎粒層の消
在右足底に見られるとほぼ同様なheel,
I趾基部,V趾
失,錯角化,過角化を示すとともに,所々に表皮の著
基部にhyperkeratosis,
明な非薄化を示す(図21).さらに所により,同様の殼
V趾基部のtyrosisは上記と同じく貨幣大で月1回か
子状大型腫瘍細胞が充実性の表皮内腫瘍細胞巣を形成
みそりで削っていた.3∼4年前頃,左足底第V趾基
し, Paget病細胞様増殖パターンも示す.真皮の深部に
部のtyrosisに亀裂を生じ易出血性となったが黒色変
移行するにつれ,腫瘍細胞の大部分は紡錘形の,しば
化及び結節は認めなかった.昭和57年4月頃同部の指
しば索状配列傾向を示す異型細胞より成り,リンパ球
頭大の黒色腫瘤に気付き以後比較的急速に増大した.
及びmelanophageと混在する.腫瘍辺縁部において
現症:左足底の第V趾基部から足縁にかけてほぼ
も,腫瘍細胞は中心部と基本的にほぼ同様の増殖パ
円形の半球に隆起した48×47×18mmのtumorを認
ターンを示すとともに,真皮内への侵入増殖をきたし
める.色調は黒灰色で一部暗赤色調,黒色の部分を混
tyrosis有り,現病巣部の左第
490
三島 豊ほか
じ, tumor周囲皮膚,
そのため黒色腫の予防的治療における境界母斑の重要
tumor表面にmacerationを認め
る(図24).
性が一転してないがしろにされる傾向となった.第4
治療および経過:全身検索するも転移巣認めず,鼠
期はいわばClarkら19)の反省期とも見なしうるもの
径部のリンパ節にも転移を疑わせるlesionなぐ昭和
で,最近に至り母斑細胞性母斑のうちのdysplastic
59年3月28日腫瘍辺縁から1.7∼2.5cm離し第V趾
nevus
metatarsus-cuboidal
生すると主張し,これをfamilial
jointでのamputationを施行し
syndrome
と呼ぶ病巣からは高率に黒色腫が発
type
(B-K
mole
DAV(DITC900mg)でchemotherapyを行なった.
syndrome)とsporadic
病理組織像:本例の組織像は前記の症例(1)とほ
Ackerman2o)の説で彼は悪性黒色腫の4型が臨床的ま
ぼ同様であった(図25).
たは組織学的に再現性をもって同定できることを否定
Nodular型掌鱈黒色腫8例を通覧すると,表3の如
している.更に彼は黒色腫に真に異なる4つの型があ
type
に分けている.第5期は
くであるが昭和59年6月4日の時点で生存4例死亡4
るのかまたはこれは基本的に一つの病的過程であって
例となっている.年齢は49歳から93歳までで平均年齢
異なる解剖学的部位においてわずかな形態学的な差異
は69.1歳.性別は合:♀=7:1であった.治療は表
を表現しているにすぎないのではないかとの疑問を投
3の如く行なわれたが,原則的には足底に発生した結
げかけている.
節型黒色腫症例では下腿離断術を施行した.臨床的に
我々はかかる揺れ動く学説の時代的推移の中にあっ
局所リンパ節への転移を認め得ないstage
て1960年初頭以来一貫して悪性黒色腫の母斑細胞系お
的予防リンパ節廓清は行なわずwait
lでは同時
and see policy
よびメラノサイト系のontogenyを究明し,
son's
と異なり初診時stage
nevus由来の黒色腫はメラノサイト性黒色腫であり,
lの7例中5例が1年以内にリ
ンパ節転移をきたし再発した(表3).
初診時stage
ALMの場合は
lの8例中2例にのみ転移再発を認める
のみであり,なおかつ症例2(表2)はstage
手術後約7年再発を見ない.
II で再
nodular型掌跡黒色腫は
melanotic
Hutchin-
で経過観察を行ない治療を続けたが本型の場合ALM
pagetoid
freckle由来黒色腫とcellular
melanomaと多くのnodular
melanomaは
母斑細胞性黒色腫であるとの知見9)17)21)
27)を提出して
きた.
掌欧に発生する特徴的な悪性黒色腫をReedが
ALMに比べて同stageで同様治療を施行しても予後
acral lentiginous
が悪い事が推測できた.
諒の黒色腫はほとんどこの型であるかの如く受けとら
melanoma
として記載した当時,掌
れていたが,既に三島9)が1979年報告した如く掌醜黒
考 按
悪性黒色腫の最近20年間における研究の進歩7)I2)
15)
色腫もheterogeneityを有していることが判明してき
には目覚ましいものがあるがその進展は大きく5つの
つつある.このことは本論文に記載する症例の詳細な
時期に分ける事がでできる.第1期は1953年のAllen
所見からより明らかである.更には我々の教室で見ら
ら16)の論文によって代表される如き悪性黒色腫は全て
れた如く本邦においては掌脈黒色腫はacral
境界部母斑細胞から生じるもので稀なmalignant
lentiginous
blue nevusを除けば均質な単一疾患と考えられた時
考えられる.
代である.第2期には悪性黒色腫は母斑細胞のみなら
Acral
type
とnodular
lentiginous
melanoma
type
がほぼ半々であると
の臨床・病理学的検討
ず正常表皮メラノサイトからも段階的癌化により発生
を詳細に行なうと上述の如く多くの点で特にそのB・
しうるもので,その代表的前癌症がHutchinson's
phaseおよびA・phase病巣はpagetoid
melanotic
それぞれ対応する病巣と多くの共通ないし類似の特徴
freckleであることが三島17)により1960年
見い出され黒色腫の2系列発生が判明し,今日に至っ
を有する.更に微細構造的解析においてもB-phaseの
ている.第3期はかかる黒色腫の2型性の発見に引き
melanosomeは大部分spheroidでありこの点は明ら
続き,
かである7).また両者の前癌症であるplantar
SSM型がClark,
Mih
blue
「8)らにより見い出され
本症の3型分類が1969年提唱されてきた時代である.
premalignant
しかしながらこの時点でClarkらは1950年代後半ま
melanosisの共通性ないし類似性も同様である.
melanosisとpagetoid
で幾世紀にわたって認められていた黒色腫の母斑細胞
lentiginous
起源を一挙に否定する正反対の説にゆき,全ての黒色
B-phaseの前状態の可能性もあるが一方ALMは
腫は原則的にメラノサイトの悪性化によるとした18)
pagetoid
melanomaの
premalignant
melanomaのC・phaseの本態は不明で
melanomaが機械的刺激を受けやすくかつ
Acral
491
掌随悪性黒色腫のheterogeneity
ユニークな組織学的性質を有する掌駄に発生したため
のmelanocyte
性が否定できない.
activationによるものであるとの可能
文
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―Comparative Analysis of Acral Lentiginous Melanoma
andNodular Melanoma on Palm or Sole―
Yutaka
Mishima,
Department
(Received
We
analysed
precanceroses
and
occurring
In contrast
of acral・lentiginous
nodular
melanoma.
representative
precanceroses.
B-(plaque
and
We
the palm
malignancy
In
melanomas,
and C・(macule
premalignant
A・ and
or sole also possesses
addition.
B・and C・phases
as
well
we have
B・phases
cases
the
which
features
detailed
shared
with
January
of malignant
emphasize
9,1987)
melanoma
and
4 cases
of their
the almost
findings
clinical behaviour
of a three-phase
common
of a11 16
pattern, namely
melanoma
features
on the trunk. It was
that occurring
preponderance
of 4 representative
focal and progressive
many
exclusive
of eight cases each of acral・lentiginous
cytopathological
the presence
occurring
Fujita
of Medicine
patients。
Europe,
representing
of ALM
frequently
common
as
found
phase) phases,
melanosis
of all melanoma
and
the clinical and
In every case of ALM,
cytopathologically.
the us
16
Takashi
School
(ALM)onvolar skin, our series consisted
investigated
nodular
phase),
pagetoid
or sole of Japanese
reports from
and
University
for publication
clinico-pathologically
on the palm
melanoma
Nakanishi
Kobe
April 7, 1986; accepted
discussed
to previous
Takafumi
of Dermatology,
with
also found
on non-volar
ALM
cases,
and
and
A-(n‘odulephase),
genesis both clinically
pagetoid
melanoma
that nodular
and
melanoma
areas and eχhibits the highest
we discussed
ALM
precancerous
lesions called plantar
premalignant
melanosis,
which
consist of
melanoma,
volar melanoma
only。
words: acral-lentiginous
on
types。
apnJDermatol99:477∼492,1989)
Key
2
including
melanoma,
plantar-premalignant
melanosis,
nodular