【緑地環境部会】 環境教育の実践と研究 ~環境と調和のとれた開発に関する技術の調査と研究Ⅳ~ 熊本県立芦北高等学校 教諭 永野 誠 Ⅰ はじめに 本部会の編成は「林業」 「農業土木」 「造園」の3分野における共通した「環境分野」 に関連した技術の習得をはじめとした調査と研究に取り組んできた。本年度は「農業 土木」の分野における教職員の知識と技術向上を図りつつ、各分野での教科指導につ ながる研究をねらいとした取り組みを報告する。 Ⅱ 研究の経過 1 第1回専門部会 (1)期日:平成24年6月12日(火) (2)会場:県立熊本農業高校 (3)内容:本年度の研究テーマ及び研究活動についての検討 (4)参加者:16名 2 第2回専門部会 (1)期日:平成24年8月6日(月) (2)会場:県立八代農業高校 (3)内容:「電子平板の基本的な技術操作について」 講師:株式会社ジーアスコム 川迫正夫 氏 エスエムケイ 三坂文彦 氏 (4)参加者:18名 電子平板とトータルステーション 午前に「電子平板の基礎的な操作手順と基礎知識」についての講義を頂き、午後は 参加者全員が「電子平板の基礎的な実技講習」を、八代農業高校に導入してある電子 平板を用いて、基礎となる2点観測間や複数観測点を測定し図面を作成した。 測量技術の進化にも「デジタル化」が進み、それにも増してパソコンの加速度的進 化が技術の発展に貢献している。トータルステーション・デジタルレベル・GPS等 の発達が、デジタル観測データを直接コンピュータに入力する事を可能にし、電子野 帳の登場も測量現場での電子機器操作の実用性を後押しするものとなった。一番大き く影響を与えたものは、各測量図面のCAD化が進み高性能地形のCAD開発が進ん だことである。 電子平板の特性として、①位置精度が高い②データの複写・再利用等の反復性が高 い③縮尺の変更に対応できる④省力化と均一化ができる⑤3次元データの利用が可能 である等 があげられる。 反面、問題点として①現時点では非常に高価である②編集のシステムが必要な場合 がある③コンピュータの基礎知識が必要である④現場装備が大きくなる等がある。利 点を含めた特性と問題点の双方から捉えても、今後の土木測量業界での導入と進化は 確実に図られることは事実である。 観測中 観測値のデータ処理 【 3 第3回専門部会 (1)期日:平成24年10月10日(水) (2)会場:熊本市建設技術専門学院 (熊本市南熊本3丁目8-16) (3)内容:「左官工について」 講師:株式会社 智建 代表取締役 (4)参加者:19名 松本智志 講義風景 氏 午前に「左官工事と建築工事の基礎知識」として、実際の技能試験の問題を参考に 講義を頂いた。午後は「左官の実技講習」として、モルタルの扱いと壁塗り、「洗い 出し工法」の施工を行った。 左官や建築業界の就業は、「やる気」の有無が大きく関与している。株式会社「智 建」では「独り立ち」を率先して業界自体の活性化を目指されており、加えて技能資格 取得にも推進されている。知識の習得に片寄りがちな専門系の高等学校での授業にも率 先して協力し、技能・技術の取得につながるための取り組みに尽力されている。 講義は、左官工事とブロック建築工事についての小テスト(設問は12問)が実施 され、少々緊張した中で始まった。その後、設問の解答と設問に関係する内容につい て詳しく説明を頂いた。問題の中から抜粋して紹介する。 かなこて ①金鏝仕上げに用いるセメントモルタルに調合(容積比)は、セメント1:砂2を 標準とする。 ②セメントモルタル塗りつけ後の養生期間は2週間以上必要である。 ③普通ブロックには 100mm、120mm、150mm、190mm の4種類がある。 ④ブロックの積み方として上下どちらでも良い。 技術講習では、不硬化性のモルタルを用いて金鏝と金鏝板の使い方を参加者の全員 が体験した。金鏝の使い方が大変難しく、参加者の大半が教室の床に多くのモルタル を無駄にしていた。その後、実際に技能検定に使用する壁に向かいモルタル塗りの施 工体験を行った。最初は和気あいあいの中に繰り広げられていたが、慣れるについて 参加者全員が無言で取り組む姿が、実技を伴う授業の素晴らしさを醸し出していた。 後半は、30cm四方の枠にモルタルと骨材(色砂利)を混ぜ、モルタルが乾燥・硬 化する前に表面のモルタルを洗い流す「洗い出し」の技法を体験した。 上記問題の解答: ①×(セメント1:砂2.5) ②○(ヒビが生じるため) 鉄筋組み解説 ③○ ④×(ブロックには上下がある) 壁塗り施工 洗い出し施工 洗い出し完成品 Ⅲ まとめ 本年度の取り組みテーマは昨年から継続して「環境と調和のとれた開発に関する技術 の調査と研究」を実施したが、その内容は各校の教育現場で活かせる実技と技能を重視 した取り組みとなった。知識だけに止まることなく実技(技能)を持って展開する教育 の重要性を体験することができたものであった。基礎・基本を熟知した上での応用力と いう観点からも、今後も継続して同様の研究を進めるべきと感じた。 最後に、本部会の開催に伴い第2回部会の調整を頂きました八代農業高校の農業土木 科の先生方、第3回の講師の御推薦から運営に御協力頂きました熊本県職業能力開発協 会の毛利様並びに熊本農業高校農業土木科の先生方に深く感謝申し上げます。
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