常滑焼の貿易陶器

平成 22 年度 第 3 回企画展
常滑焼の貿易陶器
平成 22 年 9 月 4 日(土)∼ 10 月 17 日(日)
しゅでいりゅうまき
朱泥龍巻 明治時代に始めて常滑で製品化された輸出用陶器が朱泥龍巻であった。石膏型を用いて型起こしした龍
を貼り付けたもの。石膏型の導入には明治 16 年開設の常滑美術研究所が大きく関与していたと考えられる。
朱泥龍巻 鶴首壺
右側の壺の底には「龍工組」の印が押されている。日本の御神酒
徳利の形態に中国風の龍を巻き付け東洋趣味を強く表したもの。万
国博覧会が盛んに開催されていた時代であり欧米人の異国の文物に
対する関心が高まっていた時代背景が、このような製品をもとめた
のであろう。また、朱泥龍巻は神戸の港から輸出されたのであるが
神戸において龍の部分に金箔が貼られたり、漆の装飾が加えられる
などの加工が加えられていた。
朱泥龍巻 大壺
欧米では磁器製品をインテリアとして扱うことが広く行われてい
る。壺や皿も容器としての機能が求められるのではなく壁の装飾で
あり室内の装飾品として扱われることが少なくない。この大壺も明
らかにインテリアとして用いられることを前提に作られている。壺
の底に「ハ日本 常滑 長三之製」の印が押されている。伊奈初之
丞が職人を雇って長三ブランドで生産したものと考えられる。輸出
品でありながら印の文字は日本語を用いており、西欧文化圏に送り
出すという意識は「龍工組」同様に認められない。
朱泥龍巻 シュガーポット
あるいはキャンディーポットの可
朱泥龍巻 壺
能性もあるが、小型の製品であり、
小型の壺で左右同型に見えるが腰の
これは実用的な容器として生産され
締め具合などが微妙に異なっている。
たものであろう。
朱泥龍巻 スタンド
壺や鉢などを乗せる台であ
り、それ自身でも装飾品とし
て機能する。
朱泥龍巻 深鉢
朱泥龍巻 土瓶
口の内外にも装飾を
国内向けに生産された土瓶だが
凝らした深鉢型製品。
胴に龍巻の装飾が施されている。
大正・昭和期の製品と考えられる。
とうしっき
陶漆器 大正時代に常滑で輸出用製品の中心となったのが瓦のように燻し焼をした器胎に漆を塗り蒔絵風の装飾を
加えた陶漆器であった。
龍巻が中国を強く意識した造形であったのに対して陶漆器は和風を前面に押し出している。
漆が日本を代表する工芸品であることによると考えられる。そして、底にはMADE IN JAPANの印が押
されるようになる。
陶漆器 花瓶
陶漆器 花瓶
陶漆器 盤
陶漆器 花瓶
牡丹と梅と山鳥の絵
楼閣山水図の一種と
底に三足が付く。装飾は翼を広
渓谷に掛かる朱塗りの
が色漆や金を用いて描
思われるが海辺の景色
げた鳳凰で繊細なタッチで描かれ
橋が描かれ奥の仏塔に向
かれている。
が描かれている。
ている。
かう人物が二人、橋の袂
に配されているが、その
意匠は中国風。
陶漆器 盤
これも三足がつき鳳凰が描
陶漆器 盤
かれているが、保管状態が悪
黒漆の上に青灰色の漆
かったようで光沢が失われて
を重ね青貝技法を用いて
いる。
花の文様を描いている。
絵付け花瓶
昭和になって漆の代わりに塗料を用いて絵付けをした壺が陶漆器の
後に登場する。左は古代エジプトの壁画などからデザインした装飾。右
はマジョリカ陶器のコピーで底にJAPANの文字がヘラ書きされてい
る。このころから、それまでの東洋・日本という趣がなくなり、安価な
コピー商品という面が出てくる。
陶漆器 火鉢
日陶連の合格印が内面に押されてお
り統制経済下で生産されたものと考え
られる。昭和 10 年代の常滑の商社が
印刷したカタログには陶漆器の花瓶や
火鉢が各種掲載されており、陶漆器は
内地向けの商品も少なくなかった。
ロッキンガムティーポット 大正時代にイギリスから持ち込まれ、常滑では栗色土瓶と呼んで、その複製を試みて
いる。その生産が本格化するのは昭和に入ってからで、本場のロッキンガムの名前で呼ばれるようになる。同様の
ティーポットは、アメリカなどでも生産されており、日本はその市場に格安製品を送り込んでいった構図になりま
す。
ボディーの形や把手の形、装飾のデザインなどでヴァリエーションがあり、メーカーでは型番で分類されていた。
底にはMADE IN JAPANの文字にメーカーのトレードマークを組み合わせた記号が陽刻されている。釉
は低温で溶ける鉛釉系を基礎釉としている。
仏花瓶 第 2 次大戦中に金属の供出で寺院の仏具が不足
したときにロッキンガムティーポットのメーカーが生産し
た仏具のひとつ。香炉や燭台なども同じ素材で生産されて
いる。
ノベルティ 瀬戸窯ではドイツのマイセンで生産されていた
人形などをモデルにして高級感の高いノベルティが生産され
ていたが、常滑の窯では動物の置物やランプスタンド、貯金
箱、塩や胡椒の入れ物など雑多で安価な製品が量産されてい
た傾向が見受けられる。
塩・胡椒入れになる人形
頭頂部に四箇所小さな穴が開け 貯金箱
首振り人形
てありS&Pと呼ばれる塩・胡椒 金色の文字は転写によって付けられてお
首と頭をバネで繋いであり、
入れとして出荷されたもの。人
首が振動に応じて揺れる構造に
り、焼き付けたものではない。産地の標示
形よりS&Pのほうが関税率が低 もシールになっている。
なっている。彩色は塗料で行い
かったという。
釉薬を使っていない。
ランプスタンド
ビールジョッキ
下胴部に穴が開けて
ドイツのジョッキを
あり、電線を通すよう
見本として生産されてい
になっている。上部の
る。髭ジョッキなどと呼
穴には金具が付き先端
ばれたが、人物の顔では
に電球を取り付ける構
なく風景などをあしらっ
造。
たジョッキもある。
ディズニーキャラクター
ウォルト・ディズニーのライセンス下で生産され
たWinne−the−Poohのノベルティで 1
ダース入りカートンに梱包された状態。貿易物生産
の末期には、こうしたキャラクターグッズ生産が行
われた。