SMC金融・経済マーケットレポート ・経済マーケットレポート - Hi-HO

SMC金融・経済マーケットレポート
SMC金融・経済マーケットレポート
文責(株)エス・エム・シー 豊島 健治
直 接 金 融 の 魅 力
(中小企業と小人数私募債)
日本では永く間接金融(銀行等からの借入
による資金調達)優位の時代が続いてきた。し
かし、バブル崩壊以降この流れに異変が起きて
いる。企業の銀行からの借入依存度が低下して
いるのだ。全国企業の金融機関借入金残高は9
4年春より前年比マイナスとなり、以降若干の
増減はあるものの時を追ってむしろ減少幅を
拡大させている。この傾向に銀行等の金融機関
は強い危機感をいだいているのが実状である。
この原因はいろいろ考えられる。第一は景
気後退による資金需要そのものの停滞である。
第二にバブル崩壊を起因とする企業側からの
財務リストラによる借入金削減努力と金融機
関側からの不良性貸出の削減の動きである。そ
して、第三は直接金融への傾斜である。この第
三の動きは、経済全体の構造問題にも関連して
おり、最も大きな原因と考えられる。この動き
は多少景気が回復した位では変わらず、今後も
大きな流れとなるであろう。
何故直接金融かといえば、その魅力は二つ
ある。一つは言うまでもなく、調達コストが低
いという魅力である。銀行という中間コストを
省いた分安上がりになるのは物の道理である。
もう一つは、調達の機動性にある。調達する企
業の事情(資金需要、金利観など)によって、
調達の時期や規模を決定できる。金融コストを
極力下げなければこの大競争時代についてい
けない、そんな思いが直接金融を増加させてい
るのだ。
直接金融の主たる調達手段は、普通社債(S
B)と転換社債(CB)である。両者とも中小
企業には殆ど縁が無く、いくら魅力があろうと
直接金融のメリットは大企業を中心とした一
部企業しか得られない、これが一般の常識であ
る。私も銀行にいた時期からそう思い込んでい
た。
しかし、である。CBはともかくSBについ
ては、ある種の制約はあるものの中小企業も発
行できるのだ。既にそうした資金調達を行なっ
ている企業があるのを知ったのは、今年の春だ
った。
早速法律関係をあたってみた。商法 296 条
では「会社ハ取締役会ノ決議ニ依リ社債ヲ募集
スルコトヲ得」とあり、基本として社債発行に
よる資金調達を認めている。その上でいろいろ
制限を課すというのが社債の法的構造である。
商法、証券取引法等の関連法文を調べてみると、
但し書きがかなりある。中小企業の社債発行に
よる資金調達が可能となる法的根拠は、この但
し書き規定にあった。これを「小人数私募債」
という。
小人数私募債募集会社のメリットはたくさ
んあるのでここでは割愛するが、基本的な魅力
は先に述べた通りである。無担保、低利且つ金
融機関に関与もされずに調達できる点が最大
の魅力である。しかし、それだけにハードルも
高いと知らなければならない。
小人数私募債は、小人数の縁故者を対象に
社債を引き受けて貰うことになる。したがって、
縁故者が発行会社を信用して社債を買ってく
れなければ実現は不可能となる。それが最も高
いハードルで、それさえ問題なければスムーズ
に資金調達できる。ちなみに縁故者とは、代取
を含む役員、社員、取引先等の限定された範囲
の者であり、1回の発行では49名を超えては
ならず、数名でもかまわない。
低金利の現況下、銀行預金金利に満足して
いない人は多い。かなりの資金が「外もの」に
流れている。縁故者の投資にたえ得ると自負す
る中小企業は、この辺で社債発行を検討してみ
たらいかがだろうか。面白いスキームが出来る
筈である。
Weekly Fax Report
1996.9.21(96−19)
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