【目的】 印環細胞癌では個々の癌細胞の胞体に貯留する粘液の性質が

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印環細胞癌の粘膜内環境に適応した粘液形質発現
関 貴行1,伊東 干城2,伊藤 栄作3,船田 信顕2,滝澤 登一郎l
l東京医科歯科大学 保健衛生学研究科 分子病態検査学,2東京都立駒込
病院 病理科,3青梅市立総合病院 病理
【目的1印環細胞癌では個々の癌細胞の胞体に貯留する粘液の性質が本来の胃
粘膜における粘液分化を模倣する傾向にある。今回は印環細胞癌の粘膜内環境
に適応した粘液分化の傾向を捉えるため組織学的検討を行った。【方法】最大
径3cm、深達度SM1までの印環細胞癌を用いた。MUC6に対する免疫染色と
pH25AB−PAS染色により、癌細胞を表層細胞型、幼若細胞型、腺細胞型に分類
した。それらの細胞によって構成される層構造を、三種の細胞全てが観察され
る完全型パターン、腺細胞型が観察されない領域を含む不完全型パターンの二
つに分類し、最大径および背景粘膜との関係、さらに層構造における増殖細胞
の分布と腸型形質発現について検討した。【結果1病変部の最大径が大きいほど
完全型パターンの割合が高かった。腸上皮化生が病巣内外に存在する場合では
不完全型パターンの割合が高く、また、病巣における化生腺管の占有率や化生
腺管の完成度が高くなると、その割合が高くなる傾向にあった。病巣における
増殖細胞の陽性率、さらにMUC2陽性率は、不完全型パターンの場合でより高
率であった。【考察】印環細胞癌の粘液分化は腫瘍が発育する過程で誘導される
と考えられるが、少なからず背景粘膜の影響を受けていると思われる。
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H.pylori陰性非萎縮性胃粘膜に発生する通常型腺癌と腺腫の特性
松原 亜季子1,九嶋 亮治1,柿木 里枝1、竹村 しづき2,石田 光明5,
小島 史好5、馬場 正道3,角谷 亜紀4,岡部 英俊1,服部 隆則2
[滋賀医科大学 附属病院 病理部、2滋賀医科大学 医学部 病理学講座,
3済生会滋賀県病院 病理科,4済生会千里病院 病理科,5滋賀医科大学
附属病院 検査部
H.pylori(HP)陰性で非萎縮性の胃粘膜に発生した通常型胃癌と腺腫の特性につ
いて考察した。滋賀医科大学附属病院および関連病院で2004年から2006年7
月までに外科的切除又は内視鏡的粘膜剥離術および粘膜切除術を受けた502例
を対象とし、腫瘍の背景粘膜や断端の切片を観察し、シドニーシステムに準じ
て腸上皮化生0−1+、萎縮0−1+、活動性0と炎症細胞浸潤0−1+の全て満たすも
のを抜粋し、21例(約4.2%)の症例が得られた(手術例14例、内視鏡切除例7例〉。
症例の内訳は、分化型腺癌7例、未分化型腺癌11例、小腸型低異型度腺腫3例
であり、癌の平均年齢は64.8歳(41−82歳、MIF=7/11〉、腺腫は57.7歳(37−73
歳、M/F=3/0)であった。癌のうち早期癌はll例(分/未=6/5)、進行癌は
7例(分/未=1/6)であった。これらを対象に、MUC2、MUC5AC、MUC6、
CD10、PG1、Ki−67、P53の免疫染色を施行した。分化型早期癌は胃型もしくは
胃型優位混合型の形質を示した。未分化型は早期癌では完全胃型であったが、
進行癌では胃型と腸型の混合型となっていた。HP陽性の萎縮性胃粘膜を背景
とした胃癌の結果を合わせて考察する。
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A型慢性胃炎における内分泌細胞の変動の病理学的検討
坂下 千明,岩渕 三哉.近藤 眸,落合 剛史
新潟大学大学院保健学研究科
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未分化型化する腺管腺癌の特徴
杉原 洋行,凌 志強,仲山 貴永,吉村 彰伸、向所 賢一 服部 隆
則
滋賀医科大学 病理学講座
【目的】A型慢性胃炎における内分泌細胞の変動とカルチノイド(CD)の特徴を
明らかにする。【方法】材料はA型慢性胃炎4例の切除胃。ghrelin(Ghr)等のホ
ルモン12種、chromogranin A、vesicular monoam1ne transporter−2(VMAT−2)
を染色した。【結果】A型慢性胃炎ではVMAT2とGhr細胞は胃底腺粘膜(腸
これまで私たちはCGHによる系譜解析で、腺管成分(TC)のある低分化腺癌
(POR)は印環細胞癌(SIG)と腺管腺癌(TUB)の両方に由来することを示し
てきた。今回は未分化型に進展していくTUBの特徴を抽出するために、早期
上皮化生無)に最も多く、幽門腺粘膜(同)にはgastrin細胞が増加していた。
のTUBをCGH解析し、TCを一部に含む未分化型胃癌の複数箇所のCGH解
症例1と2では胃底腺内にVMAT−2とGhr細胞過形成があり、腺管外の内分
泌細胞結節は疎らで小さく、Ghr>VMAT−2細胞主体であった。症例3と4で
析結果と比較した。またTP53の変異とLOHを同様に複数箇所で解析した。そ
は胃底腺内の内分泌細胞過形成は疎らであり、腺管外の内分泌細胞結節は密で
多く、VMAT−2(+)結節数>>Ghr(+)結節数であった.4例にみられたCDと
CD疑い結節はVMAT・2(+)Ghr(一)が多かったが、VMAT−2(+)Ghr(+)もみられた。
VMAT、2とGhr以外の内分泌細胞は過形成や結節、CDには無いか稀であった。
【まとめ】A型慢性胃炎では、VMAT−2とGhr細胞は胃底腺粘膜(同)に最も多
かった。A型慢性胃炎の萎縮胃底腺粘膜領域の内分泌細胞の過形成と結節、CD
の結果、浸潤癌中のTCでは、TCの無いものに比べ10p+が多く、TCの有無
にかかわらず、未分化型進行癌には8q+と17p一が多かった。特に、SIGの初期
成分が無くTCのある(TUB由来の推定される〉PORでは、腫瘍全体にTP53
の変異とLOEがみられるものが多く、一部はアレイC G HでMDM2の過剰発
現を示し、それによるp53の不活化が起こっていた。一方、早期のTUBでは
関与していたが、CD形成に至る主体はVMAT−2細胞であった。
逆に8q一と17p+がしばしば見られ、TCではまれであった6q一も多かったが、
TCで多くみられた10p+はほとんどみられなかった。これらのことから、早期
癌として見つかるTUBはほとんど未分化型化せず、未分化型化するTUBは脱
分化前にTP53の不活化がおこると考えられた。
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形成にはVMAT−2細胞(いわゆるECL細胞を含む)だけでなく、Ghr細胞も
胃固有腺型超高分化腺癌の臨床病理学的特徴と生物学的悪性度の検討
八尾 隆史1,中島 豊2,岩下 明徳3,平橋 美奈子4,恒吉 正澄l
L九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理,2福岡赤十字病院 病理,
3福岡大学筑紫病院 病理・4九州がんセンター 病理
胃癌には細胞異型・構造異型ともに乏しい超高分化型腺癌が存在し、胃腺窩上
皮型あるいは腸型の報告はあるが、胃固有腺型はこれまでに報告がない。胃固
有腺への分化を示す早期の超高分化腺癌4例に関して、その臨床病理学的特徴
と生物学的悪性度を検討した。患者は男性1、女性4、年齢は平均66歳(53∼
71)、病変の発生部位は胃体上部∼噴門部、大きさは全て5mmであった。病
変の周囲粘膜は1例のみ腸上皮化生を伴う萎縮粘膜であったが、他の3例は体
部腺粘膜であった。腫瘍細胞はクロマチンに富むわずかに腫大した核と好酸
性あるいは好塩基性の細胞質を有する腺管が不規則に配列しながら、粘膜中層
以下を主体として増殖し、全例SM表層(0.1∼0.4mm)に浸潤していたが間
質反応は認めなかった。脈管浸潤は全例陰性。免疫組織化学染色では、MUC6
とpepsi且ogen Iに陽性であり固有腺への分化を示していた。p53は全例陰性、
Ki−67陽性細胞はごく少数のみであった。胃固有腺型超高分化腺癌は、胃上部に
発生し、小さいながらSMへ浸潤するという特徴を有しているが、低悪性度で
あると考えられる。この病変の臨床的重要性を解析するためには今後の症例の
集積が必要である。
肝様腺癌における抗癌剤耐性分子の発現
釜田 茂幸1,小林 壮一12,宮崎 勝i,岸本 充2
1千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学, 2千葉大学大学院医学研究
院病態病理学
【目的】肝臓は薬剤代謝の中心となる臓器で、抗癌剤の代謝・不活化に関して
も重要な役割を果たしている。AFP産生胃癌は抗癌剤抵抗性の疾患であるが、
中でも病理組織学的に肝組織に類似した構造を有する肝様腺癌で、肝特異的な
抗癌剤耐性分子が関与しているかどうかについて検討した。【方法】肝様腺癌
を呈するAFP産生胃癌13例、通常型胃癌32例を用いて免疫組織学的染色法
で調べた。肝で発現し薬剤耐性に関与する膜蛋白であるPgp(P−glycoprotein)、
MRP1(multidrug resistance−related protein l),MRP2,MRP3,MRP6,細胞内蛋白
DPD(dehydroprimidine dehydrogenase)の発現を検討した。【結果】肝様腺癌
ではPgp,MRP1,MRP2,MRP6、DPDの各分子の発現が増強しており、Pgp以外の
分子は通常型胃癌と比較し有意差が見られた。MRP3は肝様腺癌での発現はな
かった。【結論】肝様腺癌ではAFP以外にも肝特異的な分子の発現が見られる
ことが示された。また、細胞レベルで抗癌剤耐性を獲得する分子の発現が強く、
抗癌剤耐性の一因と考えられた。