親水性水域の大腸菌群数等の測定結果 - 東京都環境公社

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〔報告〕
親水性水域の大腸菌群数等の測定結果
和波
一夫
竹内
健
三島
寿一*
森岡
浩然*
(*工学院大学工学部)
1
はじめに
都内海浜公園は水遊びや潮干狩りなどに利用され、
都民の貴重な憩いの場となっている。しかしながら、
糞便性大腸菌群数が高い値で検出されるなどの水質
葛西
問題がある。海浜公園と運河について糞便性大腸菌
群数、COD、窒素、りん等の水質測定を行った。ここ
お台場
では細菌項目の結果について報告する。
2
調査方法
(1) 調査地点
海浜公園の調査地点を図 1 に示す。葛西海浜公園
城南島
は西なぎさ(以下、葛西)、お台場海浜公園は砂浜
ゾーン(以下、お台場)、城南島海浜公園は砂浜
(以下、城南島)を調査地点とした。運河の調査地
点を図 2 に示す。城南島海浜公園と森ヶ崎水再生セ
ンター(以下、下水処理場)の間に 10 地点を設定し、
このうち 4 地点(st.1:下水処理場前、st.5:城南
大橋地先
、st.8:環境基準点 ST23、st.10:城南島
海浜公園沖)について大腸菌群数等の細菌項目を測
図 1 海浜公園調査地点
定した。
(2) 調査時期等
海浜公園については 2006 年 5 月から 2007 年 3 月
の間に、月 1 回の頻度で計 11 回調査を行った。運河
については、2006 年 6 月から 2007 年 3 月の間に、計
8 回調査を行った。
(3) 採水方法
海浜公園では波打ち際(水深 40cm 程度の箇所)の
表層水を採水した。運河地点は、船上から表層水を
st.10
採水した。
st.5
(4) 調査項目
st.8
ア.現地測定項目:気温、水温、pH、電気伝導率、
st.1
透視度等。
イ.水質分析項目:COD、SS,全窒素、硝酸性窒素、
亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素、全りん、りん
酸性りん等。分析方法は、JISK0102 工場排水試
験方法に従った。
図2
ウ.細菌項目:糞便性大腸菌群数の測定は水浴場の判
東京都環境科学研究所年報
2007
運河調査地点
― 155 ―
定基準で指定されている MFC 法、大腸菌群数の測定
4 日間の降雨量は 7mm)であった。7 月は調査当日も
は BGLB 最確数法(以下、BGLB 法)とクロモアガー
雨天であり、大腸菌が高い割合で検出されたのは雨天
ECC 法(以下、クロモアガー法)、大腸菌の測定は
時越流水中の糞便の影響が考えられた。
クロモアガーECC 法を用いた。
3
測定結果
(1) 海浜公園の測定結果
海 浜 公 園 MF C 糞 便 性 大 腸 菌 群 数 ( C F U / 1 0 0 m l )
大腸菌群数等の測定結果を図 3 に示す。MFC 法糞便
2000
性大腸菌群数が水浴場基準 C ランクの 1000CFU/100ml
1500
を超える場合は、水浴不適とされる。葛西は 11 回測
1000
定中に水浴場基準を超える値はなかった。お台場は 2
葛西
お台場
500
城南島
回不適であった。城南島は 1 回不適であった。お台
5日
日
2月
1月
3月
日
14
5日
10
7日
12
月
11
月
5日
4日
10
月
9月
9日
12
7月
8月
日
日
16
13
6月
5月
この調査日前 4 日間の降雨量は 50mm であり、雨天時
日
0
場・城南島とも不適となったのは 10 月 4 日であった。
越流水の影響が示唆された。
BGLB 法大腸菌群数の環境基準については、東京都
海 浜 公 園 B G L B 大 腸 菌 群 数 ( MPN / 1 0 0 m l )
内湾の B、C 類型では定められていないので、環境基
6000
準が設定されている東京湾 A 類型の基準
5000
1000MPN/100ml を参考値に比較する。葛西は 11 回測
4000
3000
定中に A 類型の基準を超えることはなかった。お台場
葛西
2000
お台場
は 4 回超え、最高値は 4900 MPN/100ml であった。城
1000
城南島
日
5日
14
2月
3月
日
5日
1月
12
月
10
7日
11
月
4日
5日
10
月
9月
9日
8月
12
7月
6月
13
日
日
16
5月
クロモアガー法は公共用水域の公定測定方法ではな
日
0
南島は 1 回超え 3300MPN/100ml であった。
いが、大腸菌群だけでなく大腸菌そのものも同時に検
出できる利点がある。お台場では 9 回の測定中、大腸
海 浜 公 園 ク ロ モ ア ガ ー 法 大 腸 菌 群 数 ( MPN / 1 0 0 ml )
菌群数 3000 MPN/100ml を超える高い値が 2 回検出さ
れた。同法による大腸菌数もお台場が高い傾向がみら
6000
5000
れた。クロモアガー法による大腸菌数/大腸菌群数の
4000
比を算出したところ、大腸菌群数が 1000MPN/100ml を
3000
葛西
2000
お台場
1000
城南島
2~18%であった。以上の MFC 法、BGLB 法、クロモア
5日
3月
日
2月
14
日
10
1月
5日
12
月
7日
4日
11
月
10
月
5日
9日
9月
日
12
7月
ガー法、の3方法の測定結果から、海浜公園の 3 調査
0
8月
超える検体については、大腸菌数/大腸菌群数の比は
地点のなかでは、お台場が大腸菌によるリスクが最も
高い地点と考えられた。
海 浜 公 園 ク ロ モ ア ガ ー 法 大 腸 菌 ( MPN / 1 0 0 ml )
(2) 運河の測定結果
500
400
300
葛西
腸菌群数の比は、7 月は 81~89%(調査日前 4 日間の
5日
3月
日
2月
14
日
10
1月
5日
12
月
図 3 海浜公園の測定結果
降雨量は 25.5mm)であり、9 月は 6~58%(調査日前
東京都環境科学研究所年報
7日
12
7月
1000MPN/100ml を超える検体についての大腸菌数/大
11
月
0
められた。クロモアガー法の大腸菌群数が
城南島
4日
大腸菌群数は、運河中間地点の st.5 が高い傾向が認
お台場
10
月
100
5日
から沖合の st.10 への広がりが推測された。BGLB 法
9月
200
日
を超えたが、st.10 は 1350CFU/100ml であり、st.1
9日
月調査時に MFC 法糞便性大腸菌群数 10000CFU/100ml
8月
大腸菌群数等の測定結果を図 4 に示す。st.1は 7
2007
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運 河 MF C 糞 便 性 大 腸 菌 群 数 ( C F U / 1 0 0 m l )
12000
10000
8000
運河 st 1
6000
運河 st 5
4000
運河 st 8
2000
運河 st 10
日
3月
19
日
日
21
24
2月
1月
12
12
月
9月
12
日
日
日
29
8月
25
日
28
7月
6月
日
0
運 河 B GL B 大 腸 菌 群 数 ( MPN / 1 0 0 m l )
80000
70000
60000
50000
運河 st 1
40000
運河 st 5
30000
20000
運河 st 8
10000
運河 st 10
日
19
日
2月
3月
21
日
1月
24
12
日
12
月
12
日
9月
29
日
7月
8月
25
日
28
6月
日
0
運 河 ク ロ モ ア ガ ー 法 大 腸 菌 群 数 ( M PN / 1 0 0 m l )
25000
20000
15000
運河 st 1
運河 st 5
10000
運河 st 8
5000
運河 st 10
2月
日
3月
19
日
21
日
24
1月
12
日
12
月
8月
9月
12
日
29
日
25
7月
日
0
運 河 ク ロ モ ア ガ ー 法 大 腸 菌 ( MPN / 1 0 0 m l )
25000
20000
15000
運河 st 1
運河 st 5
10000
運河 st 8
5000
運河 st 10
日
3月
19
日
2月
21
日
24
1月
12
日
12
月
9月
12
日
8月
29
日
25
7月
日
0
図 4 運河の測定結果
東京都環境科学研究所年報
2007