下水越流時の呑川の水質調査結果について 1 調査目的 近年、呑川では水質浄化施設の設置や高度下水処理水の通水など環境改善対策を実施 している。しかし、依然として呑川の水質は春から夏にかけての降雨後に悪化し、悪臭 の発生、白濁現象、スカムの発生、魚の浮上事故が起きている。こうした降雨時の呑川 の水質悪化原因を明らかにするとともに今後の浄化対策の資料とするため、下水越流前 後の水質等を調査した。 2 調査概要 (1)短時間強雨時越流下水の水質影響調査 平成18年4月20日正午前後に表 1 に示すように強い降雨があった。降雨直後に現 場監視を行い、上流から流れてきた越流下水を一本橋(日蓮橋の 250m 上流)にて採水 し、BOD等の水質調査を行った。さらに経時変化をみるため、同地点で翌日調査を行 った。 表1 4月20日の毎時降水量(世田谷) 時間帯 9~10 10~11 11~12 12~13 13~14 14~15 降水量(mm) 0 3 5 7 0 0 (2)大雨時越流下水の水質影響調査 51mm の大雨が降った後の平成18年4月12日と4月13日(定期調査)に水質調 査を行った。 表2 4 月11日から 12 日の毎時降雨量(世田谷) 月日 時間帯 降水量 3 4月11日 21 22 23 ∼22 ∼22 ∼24 1 3 5 0 ∼1 5 1 ∼2 3 2 ∼3 13 4月12日 3 4 5 ∼4 ∼5 ∼6 5 4 3 6 ∼7 4 7 ∼8 4 8 ∼9 1 調査結果 (1)短時間強雨時越流下水の水質影響調査 平成18年4月20日の強い雨が降った直後の呑川は、水の流れは弱く水の色も灰緑 色で通常と変わらなかったが、次第に流れが強くなるとともに水の色も茶灰色に変わり、 強いし尿臭がするようになった。さらに、浮上した大きなコイやたくさんの稚魚が流さ れてきて、一本橋付近で大量に横たわり始めたため、その水を調査した。 その時の川の水の溶存酸素量は 0.4mg/l とほとんど無く、BOD、SS、大腸菌群数も越 流前の値と比べると数百倍の高い値であった。 1 翌日、川底の両端部分に大きな魚(コイ等)が 21 尾と稚魚数十尾が沈んで死んでいる のを確認した。水の色は緑灰色で、わずかに下水臭がした。越流時に高かった BOD 等の 値は、越流前に近い値に戻った。このことは、越流時に流れてきた汚濁物質のほとんど が川底に沈積したものと考えられる。 表3 短時間強雨時下水越流前後の呑川の水質 環境基準 (D類型) − 項 目 下水越流前 下水越流時 下水越流翌日 調査月日 4月13日 4月20日 4月21日 採水時間 13:00 日蓮橋 西蒲田1-9 微川藻臭 14:40 一本橋 池上5-2 し尿臭 14:55 一本橋 池上5-2 微下水臭 − 11.9 0.5 4.9 2以上 1.4 270 4.8 8以下 1 370 4 100以下 17000 3500000 54000 − 調査地点 臭 気 溶存酸素量 (mg/ℓ) BOD (mg/ℓ) 浮遊物質量 (mg/ℓ) 大腸菌群数 (MPN/100ml) − − (2)大雨時越流下水の水質影響調査 平成18年 4 月 11 日の 21 時頃から 12 日の 9 時頃にかけて合計 51mmの雨(世田谷) が降った後の呑川は、水の色は緑灰色で臭気も感じられなかった。下水越流後の水質も、 17 年度平均値よりも若干高い程度であったが、翌日には平均値程度までに下がった。 表4 大雨時下水越流後の呑川の水質 項 目 下水越流後 下水越流翌日 17年度平均値 調査月日 4月12日 4月13日 − 採水時間 調査地点 臭 気 溶存酸素量 (mg/l) BOD (mg/l) 浮遊物質量 (mg/l) 大腸菌群数 (MPN/100ml 11:30 山野橋 西蒲田4-20 − 11:42 御成橋 蒲田5-6 − 13:30 山野橋 西蒲田4-20 無臭 14:15 御成橋 蒲田5-6 無臭 − 御成橋 蒲田5-6 − 6.5 6.3 10.1 9.1 6.9 3 7 2.7 2.5 2.3 7 6 1未満 3 3 110000 22000 33000 70000 33000 2 4 まとめ 呑川では、にわか雨や夕立のような一時的に強い雨が降った後に、スカムが発生した り、魚のへい死事故が発生するなど水質が悪化することが多い。今回昼過ぎに一時的に 強い雨が降り、魚が浮上するなど水質が悪化した時の越流下水の水質を把握することが できた。越流下水については、大量の雨水によって下水が希釈されることから、溶存酸 素は低くならず、汚れもそれ程ではないと言われていた。しかし今回の調査結果では、 強雨時の越流下水中には溶存酸素がほとんどなかったことと通常時と比べて数百倍も汚 れていることが明らかになった。さらに翌日には、水質がほぼ通常時程度まで改善され たことから、呑川に流入した大量の汚濁物質は速やかに川底に沈積したものと考えられ る。 また、大雨後には呑川の水質はそれほど悪化せず、雨の降り方の違いで水質への影響 が大きく異なることが明らかになった。 3 表5 水質調査結果(強雨時越流下水影響調査) 調 査 地 点 日蓮橋 一本橋 一本橋 調 査 月 日 採 水 時 間 色 相 臭 気 4 月 13 日 13:00 淡黄緑色 微川藻臭 100 以上 7.2 11.9 1.4 5.9 1 17000 104 0.02 11.7 0.28 0.130 10.4 0.554 0.535 4 月 20 日 14:40 茶灰色 し尿臭 − 6.1 0.5 270 100 370 3500000 25 0.64 12.7 3.77 0.05 6.89 3.38 2.74 4 月 21 日 14:55 緑灰色 微下水臭 − 6.2 4.9 4.8 8.0 4 54000 1750 0.07 8.31 0.46 0.10 7.71 1.04 0.93 透視度 (cm) pH 溶存酸素量 BOD COD 浮遊物質量 大腸菌群数 塩化物イオン 陰イオン界面活性剤 全窒素 アンモニア性窒素 亜硝酸性窒素 硝酸性窒素 全りん りん酸性りん 表6 (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (MPN/100ml) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) 水質調査結果(大雨時越流下水影響調査) 調 査 地 点 山野橋 調 査 月 日 採 水 時 間 色 相 臭 気 透視度 (cm) pH 溶存酸素量 BOD COD 浮遊物質量 大腸菌群数 塩化物イオン 陰イオン界面活性剤 全窒素 アンモニア性窒素 亜硝酸性窒素 硝酸性窒素 全りん りん酸性りん (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (MPN/100ml) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) 4 月 12 日 11:30 − − − 7.3 6.5 3.0 2.2 7 110000 22 0.04 4.86 2.97 0.16 1.32 0.399 0.325 4 月 13 日 13:30 淡黄緑色 無臭 100 以上 6.8 10.1 2.7 4.0 1 未満 33000 1310 0.02 7.44 0.39 0.038 6.08 0.545 0.498 4 御成橋 4 月 12 日 11:42 − − − 6.8 6.3 7.0 4.0 6 22000 28 0.02 3.15 1.39 0.11 1.31 0.315 0.265 4 月 13 日 14:15 淡灰黄緑色 無臭 67 7.0 9.1 2.5 4.4 3 70000 2650 0.02 4.67 0.99 0.08 3.12 0.550 0.505
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