濱中 晃弘 - 岩盤・開発機械システム工学

インドネシア露天掘り石炭鉱山における
AMD問題と廃石が植生に及ぼす影響に関する検討
岩盤・開発機械システム工学研究室
修士 2 年 濱中 晃弘
1.はじめに
インドネシアでは露天採掘により 99%以上もの石炭が生産されているが、熱帯雨林気候に属しているため、
環境修復箇所においての浸食や酸性鉱山排水(Acid Mine Drainage;以下 AMD) 問題の発生等が懸念されて
いる。
本研究では、AMD 対策法の一つである NAG タイプ別埋戻し法に着目し、インドネシアから採取した廃石・
フライアッシュを用いて数種の試験を行い、埋め戻された廃石・フライアッシュが植物の生育に与える影響
に関して検討を行った。
2.試験概要
インドネシア石炭鉱山から採取した岩石試料とフライアッシュを NAF/PAF 分類するため、地化学試験で
ある NAG 試験および ABA(Acid Base Accounting)を行った。その後、植物の根が伸長する廃石部に関して、
XRF 分析および ICP 質量分析を行うことで有害物質の定量と溶出挙動の把握を行った。また、AMD 抑制お
よび植物の生育へ影響に関して検討を行うにあたり、降雨により水が浸透するという現場状況を模したカラ
ム試験を実施し。すなわち、50mm×150mm のカラムに、NAF、PAF 及びフライアッシュ(FA)の混合試料
を充填した後、カラム上部から蒸留水を通水し、カラム下部から得られた流出水に関して各種水質分析を行
い、植物の生育に関わる種々の検討を行った。
3.結果および考察
結果の一例として、表 1,2 にカラム試験により得られた通水 1 回目及び 6 回目の水質分析結果を示す。通
水 1 回目の PAF 単層および PAF 混合層において高濃度の金属イオン溶出が確認され、フライアッシュ単層
において他のケースより高い重金属の溶出が認められることから、これらが植物生育阻害の原因となること
が懸念される。しかし、流出水の分析値は一般的に植物体中に含有するとされる金属元素濃度とインドネシ
ア環境基準値を十分に満足しており、さらに通水 6 回目においてはすべての分析値が減少している。この結
果から、AMD 抑制を効果的に行い、かつ一定の土壌養生期間を設けることが最終的な修復緑化を行うに当
たって重要であると考える。
表 2 通水 6 回目における水質分析結果
表 1 通水 1 回目における水質分析結果
通水 1 回目
通水 6 回目
FA:PAF
NAF
PAF
NAF:PAF
FA
NAF
8:2
7:3
PAF
FA:PAF
NAF:PAF
8:2
7:3
FA
pH
3.7
2.9
7.9
4.4
3.3
pH
6.5
3.4
8.4
6.4
6.1
Al (ppm)
15.6
1969.8
33.4
241.3
476.6
Al (ppm)
3.577
7.291
6.660
1.673
2.419
Cr (ppm)
0.015
0.423
0.042
0.030
0.151
Cr (ppm)
0.029
0.013
0.020
0.010
0.012
As (ppm)
0.011
0.116
0.026
0.003
0.016
As (ppm)
0.007
0.003
0.014
0.005
0.003
Se (ppm)
N.D
N.D
0.009
N.D
N.D
Se( ppm)
N.D
N.D
0.004
N.D
N.D
Cd (ppm)
0.004
0.011
0.012
0.001
0.004
Cd (ppm)
N.D
N.D
0.003
N.D
N.D
Pb (ppm)
0.098
0.116
0.317
0.112
0.234
Pb (ppm)
0.111
0.112
0.118
0.092
0.109