海岸林再生プロジェクト 10 ヵ年計画 第 1 回定期報告会 記録 - オイスカ

海岸林再生プロジェクト 10 ヵ年計画 第 1 回定期報告会 記録④
トークセッション② 「プロジェクトのこれから」
平成 26 年 2 月 22 日(土)
オイスカ名取事務所 統括
佐々木廣一
育苗、植林から保育まで統括しております佐々木でございます。
本日の私のテーマは「プロジェクトのこれから」ということですが、平成 23 年からプロジェクトを立ち
上げておりますので、まずそちらの現場の動きをご説明し、合わせて今後の 10 年間の活動計画を報告さ
せていただきます。
●25 名の会員で事業立ち上げ
先ほどからお話がありましたが、名取の海岸林約 138haあるうち、126haが壊滅的な被害を受けま
した。復興・再生を市有林、県有林、民有林を含めまして東北森林管理局仙台森林管理署が行い、これ
にオイスカと再生の会が協力をさせていただくということでスタートしまして、今年で 3 年が経ちまし
た。
このプロジェクトで、オイスカが、まず苗木をつくるところから始める方針にしたのは、クロマツの
苗木がほとんどない、種苗家にもクロマツをつくる人がほとんどいない、その上、急遽本数を必要とし
ていたので、待っていては生産が間に合わないということが理由でした。またオイスカが目指していた
地元の雇用の創出という点でも、苗木の生産から着手することが最善ではないかという事情があったか
らです。
準備は、平成 24 年の 1 月から入りました。畑は、地元の方から 0.6 ヘクタール(60 アール)と、事
務所として 0.1ha(10 アール)
、合わせて 70 アールで事業を始めることになりました。私も 2012 年
1 月から雇用されましたので、早速、現場に行ったのですが、何も遮るものがなく、冬の蔵王颪がまとも
に吹き、5 月いっぱいまでは乾いた台風並みの風がくるという場所です。吹きさらしの畑だけではどうに
もならない。事務所や休憩所になる建物が必要で、また風を防ぐ防風ネットなども不可欠でした。これ
に、前田建設さんが早速対応してくれて、資材の提供ばかりかその組み立てまで、本社の事務スタッフ
の方々が来てやってくれました。電話、FAX、パソコンなどはNTTさん、東北電力さん、ユアテッ
クさん、こういうところにお願いして整ったことに感謝しています。お借りしたのは畑地で住所がない
とか、いろいろな問題が起きましたが、一つ一つクリアして、事務所を立ち上げた。現在は 32 名ですけ
れど、立ち上げたときの再生の会会員は 25 名でした。
●畑地の厳しい土壌を改良しタネが発芽
農地の土壌調査はオイスカの清藤さんを通してやりました。その結果、津波の影響でカリウム分が以
上に高く、ほかの栄養分がない。そこで牛糞、堆肥、硫安などを施して土壌づくりをしました。
抵抗性クロマツ 0.5 ㎏、1kgがだいたい 45,000 粒ですので、22,500 粒、普通クロマツですが、5k
gぐらいをお願いしたんですが、宮城県全体で 23 年度のタネは 6kgしかなかったため、われわれには
0.5 キログラムの配布になりました。
しかし畑もあるし、50,000 本体制でいきたいということもあって、普通クロマツ1.5kg、75,000
粒、普通といっても通常のクロマツよりも若干マツクイ虫に抵抗があるということでした。抵抗性クロ
マツと合わせて、トータル 97,500 粒、これを直播きしました。このときはまだ、コンテナ育苗の方針が
明確にありませんでしたので、畑に直接まくという方法を取りました。
3 月 30 日に植えて、4 月 28 日に初めての発芽を確認し、5 月の 1 日、2 日に一斉に芽を出しました。
発芽率 95%。大したもんだと組合長からお褒めをいただきました。通常、マツは 20 日間ぐらいで発芽
するのですが、やはりここは乾いて冷たい風が吹くのと、気温も上がらないということで1カ月ほどか
かりました。最初は腐ったのかなとだいぶ心配しました。
苗を管理していくには、かなりの頻度で冠水していかなければならないとのことで、会員の方にお願
いして井戸を八つ掘っていただきました。一つ掘っては塩分濃度を測ってという作業でしたが、そのう
ち電気伝導度で図った塩分濃度が 2.4 が6本でした。塩分濃度 1.2 という井戸がやっと二つ。今それを使
っています。これは津波の影響もありますし、上流にある川の水門が全部壊れているために塩水が逆流
してくることも原因していると思います。この井戸の水で1年間、問題なく育ってきています。
●24 年度から 26 年度までの床替え、稚苗の移植
床替え・稚苗移植と書いてありますが、われわれの技術の向上、一年先の練習を兼ねて、抵抗性クロ
マツの1年生稚苗を 1,000 本だけ譲っていただいて、これで床替えをやった。1年間で消毒とかいろい
ろありますが、最初でもあり、規模が小さいということで、23 年度(3 月のみ)1 か月総雇用数は 8 時
間換算で 125 人、平成 24 年度は 223 人となりました。
25 年度ですが、抵抗性クロマツは 0.5kgしか配布していただけなかった。また、25 年度からは、
種苗組合長から抵抗性クロマツについてはすべてコンテナ栽培をしない限り、タネを配布しないと厳し
く言われましたので、0.5kg分のコンテナを購入して、コンテナ播種をしました。一つ 300ccのポ
ットで、一つに 24 個ついていて、森林総合研究所が特許を取っているものです。それでは足りないので
クロマツ1kg50,000 粒、合わせて 1.5kg72,500 粒を撒きました。
ちなみに 24 年度はクロマツの大不作で宮城県で 400gしか取れなかった。あと貯蔵していたタネを使
った。だいたい1年貯蔵すると 15%発芽率が落ちるということで試験場でもテストした結果 89%の発芽
率ということだったのですが、95%だったということでしたので上々です。
今、60,000 本ちょっと育っているというところです。
床替え、これは 24 年度に播種した抵抗性クロマツと普通クロマツ 90,000 本で、蔵王の種苗家から床
替え機というのを借りてきたのですが、これがスギ用の機械でマツ用ではなかったため、土に埋まるの
に欠損が出て、手で植えた方が早かったのではないかというぐらい手間がかかったのですが、とにかく
90,000 本やりました。
その後、消毒から草取りまでボランティアも来まして、8 時間換算で 592 人分の雇用を創出している
ところです。
●今後の活動について
26 年度。2 月 6 日、急きょ種苗組合の会議があり、そこでタネの配布がありましたが、私どもには抵
抗性クロマツが前年度より若干増えまして 0.65kg、29,250 粒、普通クロマツ 0.5kg、25,000 粒、
それに岩手県産アカマツ 0.35kg、33,000 粒です。
これはすべてコンテナで行うことにしましたので、15,000~16,000 本分が足りないということになり
ます。ほかにも内陸の防風林、10ha も手伝うことになっていました。防風林のほうは、海から大分離
れているのでアカマツでいいだろうということで、アカマツを調達したのです。普通は 1 つの穴に一粒
ですが、この抵抗性アカマツは 1kg当り 95,000 粒もあり、普通クロマツや抵抗性クロマツに比べ倍以
上の粒数なので、1 つの穴に 2 粒撒いて、成長の悪い方を間引くというやり方をとりました。それで 26
年度は 70,700 粒稚苗を育てたわけです。
床替えは、昨年出ました普通クロマツが 85~90%発芽しているので、45,000 本ぐらい。あと抵抗性ア
カマツは種苗で岩手県から譲っていただき、4,000 本いただくことにしました。合わせて 49,000 本の床
替えを今年やりたいと思っています。
26 年度に出荷できる数は、普通クロマツは 70,000 本床替えしましたが、乾燥が厳しいとか、土壌や
肥料の関係で 40%ぐらいが枯れたりしました。
苗規準というのがあり、25 ㎝から 45 ㎝ということになっています。それに照らすと、25 ㎝未満は約
5,000 本ありました。確実に苗にできるのは普通クロマツ 40,000 本、抵抗性クロマツ 9,000 本、合わせ
て 49,000 本です。
昨年育てた抵抗性クロマツは秋に出せるのは今 20,000 本あります。そのうち 25 ㎝以上は 18,000 本あ
りますので、合わせて 67,000、あと 5,000 本と 1,000 本をプラスにしていますが、これは 25 ㎝未満で
すので、あとで成長するのでそれも利用していきたい。秋の補植用に 49,000 本ということになっていま
すが…。
26 年度は 15ha の植林を計画しています。すると 75,000 本ほど必要ですが、26,000 本ぐらい苗木が
足りない。県の種苗組合を通じて購入させていただくことにしています。県内全体では苗木が 300,000
本あるということなので、それを使わせていただきたいと考えています。
26 年度植林可能な面積は 27ha あるということですが、
そのうち 3 ヘクタールは国有林からいただく。
あと 24ha残っていますが、管理農路、のり面、生産垣等を除くと 20haとのことです。
20haに全部に植えると、27 年度はあいてくるところが 5ha、あと内陸防風林のところが 5~6ha
ということなので、あまりにも年度に波があると、苗木の需給管理が難しくなるので、26 年度は 15ha、
27 年度も 15ha、それ以降は 10haにして推移して 32 年度までに何とか植林を終わらせていきたいと
思っています。
植林するマウンドですが、これもオイスカの清藤参事に土壌調査をやっていただいたのですが、苗の
方はカリが異常に高いとさきほどいいましたが、海岸のマウンドは逆にカリがほとんどなくゼロに近い。
苗木土のほうからバックで運んできたのが、凝灰岩質の堆積岩で、雲母が軽石のようになって、空気と
水に触れると溶けて、隙間を全部ふさいでしまうという性質がある。盛土縁は水はけがいいということ
で、土壌が厳しい上、3 月から 5 月までは冷たく乾いた風が毎日のように 10mか 20mぐらい吹くという
ようなことから、砂漠で植林するより難しいと分析しています。
去年荒浜の方で 50%、過去の県の植林の歴史でも毎年毎年 50%は枯れていたと聞きます。できれば
30%の枯れに抑えたい。風対策としては、森林管理署、管理局の方で静砂垣(防風垣)をやってもらっ
ていますけれども、これでは春の蔵王おろしには耐えきれないだろうと考えています。防風ネットの設
置等の必要性もあるでしょうが、できるだけ苗木を枯らさないようにしようと思っています。
●5 月の植樹祭について
植林体制については、ボランティアとかいろいろお話がありますが、やはりプロの集団でやらなけれ
ば無理だろうと思っています。雨が降ったらやめる、乾燥が続いたらやめるというようなことではなく。
苗木の管理が絡みますので森林組合とか再生の会の会員、一部の専門家集団の方々にお願いして「事業
規模」での植林をしなければ結果を出せないと考えています。ボランティアの人たちは自分の手で苗木
を植えて、貢献をしたいという要望も強いと思いますので、5 月 24 日に 300 人規模の植樹祭をやります
が、そこにはプロが 10 人に1人ぐらい指導しなければいけないだろうと考えています。あとで植林をし
直すとか、苗木を購入するなどがないようにやっていきたい。募集もそのような形にするつもりです。
植樹をしたいという人は 5 月 24 日に応募してお手伝いをお願いしたいです。
時間が来ました。これで終わらせていただきます。