2013年7/8月号 - 住友商事

住商総研 ワールド・フォーカス
ISSN 1880-733X
WORLD FOCUS
2013.7,8
No.
景 観
1
グローバル人材と英語力
グローバル・ネットワーク
2
ロシア、
インドネシア、
中国(上海)
ワールド・オピニオン
6
オバマ政権の地球温暖化政策、
第二幕
世界各地で盛り上がる抗議運動
「プーチン化」するトルコのエルドアン首相
経済トレンド
8
世界の海外直接投資の回復は緩慢
マーケットトレンド
12
米中政策スタンスの変更に揺れる商品市況
産業トレンド
14
輸送用燃料としても期待の広がるLNG
国内・海外経済指標
6-7月中旬の主な動き
今月の焦点
株式会社 住友商事総合研究所
82
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
景 観
グローバル人材と英語力
大河原 昭夫
2013年も早くも半年が 過ぎた。世界を見渡すと中国をはじめとする新興
国経済の変調など 新たな流れが見られ波乱含みである。過去においても夏
の閑散期にはニクソン・ショックなど大きな事件が起きる傾向があり気が抜
けない。我が国では平年以上に猛暑日が 続いているが 7月1日から政 府の節
電要請期間に入った。今年の節電は数値目標を伴わないとのことだが、長く
暑い夏になりそうだ。来る21日にはいよいよ参院選の投票日を迎えるが自公
与党が過半数を制する勢いである。選挙後アベノミクスがどのような展開を
たどるか注目されるが、第3の矢・成長戦略の重要性については衆目が一致し
ている。そして成長戦略の大きな柱の一つがグローバル人材の育成である。
経済のグローバル化が益々進む中、我が国では「グローバル人材」がブー
ムの様相を呈しているが、その定義は必ずしもはっきりしない。グローバル
人材についての各種論評を読むと「異文化とのコミュニケーション能力が 重
要」との指摘とともに「グローバル人材の育成=英語力の強化」となっている
ことに対する違和感の吐露などが目立つが、要するに産学官各々の領域に
おいて国際的な場で十分機能を発揮出来る人材が必要だということではな
いか。
グローバル人材育成に向けての文部 科 学省の取り組みの一つに「博士課
程教育リーディングプログラム」がある。
「俯瞰的視点から物事の本質を捉
え、危機や課題の克服や新たな社会の創造・成長を牽引し国際社会で活躍
するリーダーの養成が急務である」という問題意識の下で大学院教育を充
実しようとの狙いである。この目標は立派だがこれを実現してゆくのは極め
て難しいのが現状である。同プログラムによる支援は多くの専門領域に分か
れているが、複合領域型(多文化共生社会)部会の委員を務めている関係で
先週、実施状況について某大学を現地視察する機会があった。大学側の真
剣な取り組み、そして対象となっている大学院生の多岐にわたる専門領域及
び 高い志に感銘を受けた。しかし、一方で同プログラムに参加している留学
生が少ないこと、入学に当たって英語で足切りをしていない為、英語力にば
らつきがあることなど現実的な問題が指摘された。
折しもニューズウィーク日本版の最新号が「TO E F L時代を制する英語術
~なぜ日本人は英語が 苦手なのか」という特集を組んでいるのが目につい
た。同記事を見る限り我が 国の英語教育のあり方についてはまさに百家争
鳴で相当混乱があり、英語教育改革が 喫緊の課題だというのが 読後感であ
る。何れにせよ、必要性を感じない中で幾ら勉強しても身に付かないのは当
たり前であろう。習うより慣れることが語学習得の要諦である。海外に出向
くのも良し、留学生を交えての環境でも良し、英語で物を考えることが出来
る環境が必要である。
世界のさまざまな場で活躍出来る人材が多い方が良いことに異論はなか
ろう。このようなグローバル人材には基礎学力に裏打ちされた豊富な教養と
経験が備わっていることが当然求められるが、一方で好むと好まざるとにか
かわらず世界の共通語は英語である。従って、世界で伍してゆける水準の英
語力はグローバル人材の必須のツールであり必要条件である。たかが英語さ
れど英語なのだ。
(2013年7月19日)
1
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
グローバル・ネットワーク
日ロ関係 ~ 潮目の変化を見逃すな
安倍首相訪ロとその成果
4月末、安倍首相が100名を超える企業代表団と共にロシアを訪問、日本
首相のロシア公式訪問は10年振りであった。安倍首相は昨年の政権発足後
から日ロ関係の打開に努める姿勢を打ち出しており、今年2月には森元首相
を特使として派遣するなど、日ロ関係改善の地ならしを行った結果、ロシア
側もそれに共感し、今回の訪ロに繋がったものである。今回の訪ロでは、平
和条約締結に向けた決意と各分野における協力を盛り込んだ共同声明が発
表されたほか、多くの文書が署名され、一定の成果を挙げた。しかし両国の
現在の協力関係は両国の潜在力に見合った水準には、ほど遠いことを双方
が再認識したことが最も大きな成果ではないだろうか。
日ロ経済協力の現状と新し
い展開
近年、日ロ経済協力は発展傾向にあり、昨年の貿易額は過去最高の334
億ドルに達したが、日本からの輸出の60%強が自動車、日本の輸入の70%
弱は石油、ガス、石油製品が占めるという偏った貿易構造である。しかし、
今回の首相訪ロの際に開催された日ロフォーラムの主題はこれら伝統的な
ビジネスではなく、環境都市づくり、医療、農業・食品などの新規分野であ
り、これは画一的な貿易構造を打破しなければ今後の発展は見込めないと
いう双方の危機感がベースにあったものと思われる。その後、首相訪ロ時に
北海道銀行がアムール州政府と締結した農業協力意向書に基づいた大豆播
種が実施されたり、北斗病院が画像診断センターをウラジオストクに開設す
るなどの協力が着実に進んでいる。今回、
「 史上最大、最強」と言われる企
業代表団が首相に同行したが、これは昨年のロシアのW TO加盟による関税
の引き下げ、市場開放といったビジネス環境整備への期待に加え、日ロ関係
が変化しつつあることを各企業が鋭敏に感じとったことの表われであると言
えよう。
潮目の変化
首相訪ロ後も6月のG8サミットで日ロ首脳会談が 実施されたほか、今 秋
にはG20サミット、APEC会合での首脳会談が相次いで予定されており、両
国首脳間の相互理解、信頼関係の醸成が期待できる。今回の訪ロで安倍首
相は2014年のソチ・オリンピックを意識して日本製の高級スキーウエアとス
キー板を、プーチン大統領は択捉島までを日本領とする日露和親条約が 締
結された1855年物のワインを贈るなど、これまでになかった相手国への配
慮が感じられた。また、以前のロシアは日本がやりたければどうぞという態
度であったが、最近は日本と対等という立ち位置で日本と一緒に協力を進
めてゆきたいという態度に変わってきていることを現地で日々実感しており、
両国の関係は潮目が変わってきていると思われる。変化に乗り遅れることな
く、ロシアの関心に沿ったビジネス開拓を進めてゆきたい。
(CIS住友商事ウラジオストク支店 富田実嗣)
2
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
インドネシア、持続的成長への期待
大きな経済成長の陽と陰
実質GDP成長率は3年連続6%超となる6.2%、名目GDPは8,780億ドル、
一人 当たりG D P3,500ドル 超のレベルに到達。スハルト政 権 崩 壊 後14年
が 経過した2012年のインドネシアの経済成長ぶりである。こうした発展を
支えるのが 総人口2.4億人の民間消費とされており、その象徴である高層ビ
ルや豪華ショッピングモールが 建ち並ぶジャカルタ首都圏の発展に目が向
けられる。果たしてこの成長は順風満帆なのだろうか。来年、総選挙、大
統領選挙が行われるが、改めて当国の陽と陰を掘り下げ、当国が長期に持
続的発展を遂げるために必要な政策、対策に目を向けるべきだろう。
二極化の進行
まず第一に、貧富の格差が急激に拡大している。首都圏集中の中間層拡
大、また貧困率低下( 当国政府定義、1999年23.4%から2011年12.5%へ)
は大いに歓 迎すべきだが、日収2ドル未 満での生 活を余 儀なくされる層が
全人口の46%
(2010年)
と高水準にある点を忘れてはならない。第二に、首
都圏と地方の格差拡大である。ジャカルタ首都圏への一極集中、高比重化、
ジャワ島以外の地域ではインフラ、医療・保健衛生、教育、生活サービスは
脆弱で、生活レベル向上の停滞は無視できない。当国政 府は2025年まで
に世界10大経済大国に入ることを宣言し、人口も3億 人に達するとの見通
しを公表した。人口増加と都市化が成長を大きく支える点は論を俟たない
が、人口増加のメリット( 人口ボーナス)を確実に吸収する産業・経済・生活
の 基 盤も全国レベルで拡 充されなければ ならない。首都 圏一極 集中には
限界が来ている。また、未来を担う子供たちの教育にも依然課題を残して
いる。
持 続 的成長に向けての期
待
財政・貿易収支の赤字が深刻化する中で、現政権は、輸出規制や外資規
制に加え、インフレと金利上昇を誘発する輸入規制や、燃料等への政府補
助 金 の削減 方 針を打ち出している。労 働 条 件 改善 を要求し激化してきた
当国労働団体の不満の矛先は最近、政 府に向けられるようになっているが、
この状態が当国に進出する外国企業にとっても大きな懸念材料であること
には変わりない。一方、昨年10月に当国・日本政府の間で「 首都圏投資促
進特別地域(M PA)構想のマスタープラン」が承認された。多くの問題を抱
える首都圏の再構築と高度化を目指すものであり、首都圏機能向上に加え、
今後の地方都市開発のモデルケースにもなり得る。また、当国発展に不可
欠なインフラの未整備も慢性化しており、こうしたM PA計画を通じた重要
インフラ整備において日本政 府・企業が 連合して果たすべき役割には大き
なものがある。当国は、その成長性に加え、アジア・ASEANにおける位置
付け等からも、日本にとり非常に重要な国である。親日的という点でも重
要なパートナーである。日本を筆頭に諸外国からの期待を受けつつ、当国
の持続的発展を果たす課題に如何に対処するか、来年発足する新政権の手
腕が注目される。
(インドネシア住友商事 関根 豊)
3
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
中国発展の源は、上海に!
Better City Better Life
エッフェル 塔(2 7 6 m)、エ ンパイアステートビル(3 81m)、C Nタワー
(447m)などを越して、2008年に完成し、高さ474mと世界一の高さを誇
る上 海 環 球 金 融中心の展 望台からは、2010年上 海万博のテーマとなった
Better City Better Lifeを再現し、かつ成長し続ける上海を一望すること
が出来る。人口約2400万人(内日本人は10万人と言われている)、GD P2兆
元(約30兆円)の同市は北京、広州と共に中国主要中核都市として中国経済
を牽引している。政治の北京、経済の上海と引合いにだされることが多い上
海ではあるが、その魅力は生煎包(小龍包を蒸し焼きにした肉汁たっぷり点
心)、上海蟹、红烧肉(豚の角煮)等甘めの味付けが特徴の上海料理、アクロ
バティックな演技が 売りの上海雑技団、そして香港の100万ドルの夜景にも
負けないバンド(中国名:外滩ワイタン)の夜景と、枚挙にいとまがない。
地名の由来は「潮が満ち上
がり始める地点」?
「上海」という地名の由来は諸説あるが、その昔、同地域は遠浅の海岸で
これといった産業も育たず、潮の満ち引きを利用した漁業が盛んだった。そ
の漁法は竹で編んだ漁具(沪:H u)を使用した定置網で満 潮時に扉を開け、
干潮時には閉め、干上がった魚を獲るというもの。当該漁具の名前は今も上
海の略称として上海市の自動車ナンバープレートの頭文字に使われている。
これらの漁 法から潮の満ち引きをする地点が 重要視され、潮が満ち上がり
始める地点を「上海」、潮が引き下がり始める地点を「下海」と呼んだのでは
ないかと言われている。
発展・上昇志向
小さな漁村に過ぎ なかった一 帯が今のような大国 際 都 市に成長を遂げ
たのは1842年の南京条約による開港が 契機になっており、その時に発展し
たのが 現在では上海でもっとも有名な観光地にもなっている「外滩」である。
余談ではあるが 百田尚樹の「海賊と呼ばれた男」に登場する出光興産上海
事務所のあった「河濱大楼」は現在でも一般市民の住居として同地区に残っ
ている。
第12 次 5カ年 計 画で の上 海 市のキーワードは「四 个 中心」
(4つ の セン
ター)で、
「国際経済」
「金融」
「貿易」
「港運」で構成されている。
国際金融センターの構築、沿岸地域を活かした水上運搬サービスの向上、
国際貿易の中核化を図り、国際経済の中心となることを目指している。既に
上海汽車、宝鋼集団、江南造船所といった各中核産業のトップ企業を有して
いる上海市ではあるが内需依存型から内需+外需捕捉の動きが加速してい
る。
本 年1-5月の上 海市貿易 額は前年同期比 ▲2%減の3千 億ドルに留まっ
ているが、小さな漁村を世界有数の国際都市に成長させた上 海の人々は、
「Better City Better Life」、常に一歩先を目指した上昇志向で更なる成長
を遂げるだろう。
(上海住友商事 唐澤直哉)
4
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ワールド・オピニオン
オバマ政権の地球温暖化政策、第二幕
第二幕の始動
6月末の夏空の下、オバマ大統領が地元ワシントンのジョージタウン大にて
地球温暖化ガス(GHG)排出量削減に取り組む行動計画を発表した。2009
年末に開催されたC O P15にて国際 公約した「2020年までに17%減」を再
確認するとともに、再生可能エネルギーや原子力のシェア拡大を後押しする
内容だ。既定 路線だった新設の火力発電所への排出規制に加えて、稼働中
の施設にも網を掛ける方 針を新たに示したことがしばし休眠状態にあった
論争に火をつけた。ねじれ状態にあって機能不全気味の連邦議会を相手に
せず、既存の大気浄化法を拠り所とした新規規制案の作成を大統領権限で
環境保護局(E PA)に命じたため、共和党や石炭業界を中心に強い反発を招
いた。
不発に終わった第一幕
第一期オバマ政権がスタートして半年後の2009年夏、排出権取引を盛り
込んだワックスマン・マーキー法案は下院をクリアするが、その後、上院で廃
案となり、気候変動論議は一気にモメンタムを失った。環境保護派を支持基
盤に持つ民主党がホワイトハウスと議 会を支配している時でさえ地 球温暖
化対策の推進が 難しいことを示した形となった。政権発足当初から景気刺
激策、金融改革、ヘルスケア改革と大型 法案が目白押しだったため、優 先順
位が 下がってしまったことは否めないが、財政難により再生可能エネルギー
促進の補助金が枯渇したり、シェール革命のおかげで、政策によって誘導し
なくても石炭離れが進行したりしたという背景もある。
両陣営の反応
ニューヨークタイムズ 紙がベーナー下 院 議 長(共和 党)他 、規 制反 対 派
の発言を紹介している。曰く、大統領の方 針は火力発電 所を廃業に追い込
み、米国民から雇用機会を奪い、電力料金をつり上げる。政府による過剰な
規制であり、景気回復に水を差す行為だ、と。A P通信は環境団体が 歓迎の
意を示したと伝える一方で、迂回された議会は反発し、反対派は行政訴訟に
出て阻もうとするだろうとのE PA長官経験者(ブッシュ政権下)の見解を紹
介、
「石炭業界を倒産に追い込む暴挙に他ならない」という石炭産出州選出
の下院議員のコメントも報じた。ワシントンポスト紙は、中印が追随しない限
り「焼け石に水」にもかかわらず、どうして米国だけが経済的自殺行為に走る
のかという論評を掲載。
今後の見通し
立法措置の伴わない規制は、時の政権の方針次第で容易に撤回・変更さ
れる可能性があるため、投資環境の見通しを不透明にする恐れがある。これ
は中長期的な観点から経営判断を迫られる電力業界にとっては足かせとな
ろう。ただし、経済へ与え得るインパクトを鑑み、既存の施設に対する規制
は緩いものになるだろうとある米系調査会社は予想している。
(2013年7月16日 国際調査部 吉村亮太)
5
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
世界各地で盛り上がる抗議運動
抗議運動の季節到来?
トルコ、ブラジル、インドネシア、ブルガリア、エジプト、世界各地で民衆に
よる抗 議運 動が広がっている。エジプトでは民衆の反政 府運 動を引き金に
軍が 政治に介入し、昨年選挙で選ばれた政権が倒された。抗議運 動が起き
たきっかけはそれぞれの国で多少異なる。トルコではイスタンブール中心部
の再開発に対する反対が、ブラジルではサンパウロのバス料金値上げがきっ
かけだった。インドネシアでは 政 府による補助金削減に伴う燃 料値 上げが、
ブルガリアでは政府の腐敗に対する抗議が原因となった。エジプトでは、新
政権になっても改善しない経済や治安などに対して実効性ある政策が実施
できない政権に対する国民の不満が反政府運動という形で現れた。
ソーシャル・ネットワーク・
サービス
(SNS)
の威力
トルコやブラジルでは比 較的少人数で始まった抗 議運 動がツイッターや
フェイスブックなどの(S N S)を通じて参加の呼びかけが行われた。特にト
ルコやブラジルでは、抗議運 動に対する警察の過剰ともいえる反応がS N S
を通じて伝わると、運 動は一気に全国へと広がった。2011年にチュニジア
からエジプトなどへ伝わった「アラブの春」や、同年秋にニューヨークから始
まった「オキュパイ・ウォールストリート」などの抗 議運 動も、スマホやS N S
などの技術進歩により瞬く間に広がった。
目覚める新興 国の中流 階
級
英フィナンシャルタイムズ 紙は、新興国では従 来、政治から隔絶されてい
た何億 人もの人々が 経 済 発 展、都 市化、急 速なデジタル技術の進 展により
政治的に目覚めつつあり、こうした変化が十数年というごく短い期間に凝縮
されているため、政治家や為政者がそれに順応できずにいると解説してい
る。従来、成長による豊かさの実現がこうした国民の不満に対する処方箋と
考えられてきたが、同紙は豊かさの実現だけでは問題の解決にはならず、国
民の声に耳を傾け、腐敗をなくし、格差を是 正し、公共サービスの充実を実
現した為政者が抗議運動を乗り切ることが出来る、としている。
抑圧は破滅を招く?
一方、英エコノミスト誌はフランス革命を象徴する絵画、ドラクロワの「民
衆を導く自由の女神」に、1968年のベトナム反戦運 動、1989年にポーラン
ドで始まりソビエト連邦崩壊へと至った抗議運 動と今年の抗議運 動を描き
込んだ表紙を掲載した。同誌は人数が急激に増加する中流階級は政治的に
目覚めており、大きな力となりつつある、としている。ただし、S N Sにより運
動が 瞬時に広がる半面、従 来の労働運 動などと異なり、最近の抗議運 動は
組織力がないため、抗議の焦点がぼけたり、継続的に多人数を動員したりす
る力に欠けている、とも。また同誌は、民主主義国家ではこうした抗議運 動
が起こりやすく混乱もするが、国民を街頭から力で追い出し抗議運動を抑圧
する国家には国民の不満を和らげる制度が 備わっていないため、いずれ破
滅的な危機を迎える危険性がある、と指摘している。
(2013年7月16日 国際調査部 鶴見邦夫)
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住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
「プーチン化」するトルコのエルドアン首相
トルコとロシアの反政府デ
モには共通点が多い
ロシア・東 欧を専門とする資産 運 用会 社、イーストキャピタル社のスヴェ
ドベリ・チーフエコノミストは、5月末の英紙フィナンシャル・タイムズへの寄
稿の中で、トルコで起きた市民デモが1年半前にロシア・モスクワで発生した
「反プーチン」抗議集会に良く似ていると論じている。ロシアとトルコは、根
本 的に異なる新興国市場であるが、超長 期化するプーチン政 権とエルドア
ン政権には共通点が多い。
中間 層の台 頭を見 逃した
二人の強権者
2人の指導者は、10年以上にわたり政権の座にありながら、将来的にも体
制を維持しようという強い姿勢を示している。憲法規定により連続3選が 認
められなかったプーチン大統領が 2008年、トップの座をメドベージェフ前
大統領(現首相)に一旦譲ったのちにカムバック。3期目を務めるエルドア
ン首相は憲法改 正を行い、大統領職の権限を強化した上で次はトルコ大統
領のポストを狙っている。2人とも強いリーダーシップを発 揮し、1990年代
に政治的、経済的混乱に陥っていた国を安定化させ、経済 発展の実現で功
績を収めた。しかし、その結果、民主化を求める若い中間層が生まれた。彼
らは、政治システムに対する不満を抱き始め、ジャーナリストの鎮 圧など強
権主議に向かう現政権を強く批判し、変化を要求したとスヴェドベリ氏は分
析する。
イスラム色を強めるトルコ、
一方、トルコの場 合、エルドアン政 権は今年に入って、酒の販 売規制など
アルコール依存症と戦うロ
宗 教色の強い政 策を進めており、国民の強い反 発を招いたとロシアの週刊
シア
誌 A I Fが伝えている。トルコは最近、イスラム色を強めており、
「世俗主義」
を守るべきだと主張する国民が今回の抗議デモに参加したとロシアの中東
専門家が 指摘している。ロシア政 府も最近、夜間の酒販 売禁 止措置に踏み
切っているが、宗教上の理由ではなく、ロシアの国民病であるアルコール依存
症と戦うためであると、大衆紙モスコフスキー・コムソモレツが皮肉っている。
両国は有力な対 抗 馬がな
トルコはロシアよりはるかに多元 的 な政 治 的 伝 統と強 力な市民 社 会 を
く、早期の退陣はなさそう
持っているので、独 裁 政 権に 転 落してしまう可能性は少ないと米ブルーム
バーグは指摘している。ロシアと異なり、トルコには強い野党勢力があるた
め、市民の怒りをうまく利用すれば、任期満了前の議会選挙に追い込むこと
が出来るだろうとロシアのインターネット新聞Ga zet a.r uが論じている。一
方、ロシアの野党勢力は弱く分裂している。議 会では 政 府与党が 過半 数を
維 持しているので、プーチン政 権は 盤 石である。いずれにしても、トルコと
ロシアの政界には現在、エルドアン氏とプーチン氏に対する有力な対 抗 馬
がなく、早 期退陣はなさそうである。だが、強権 主議に耐えられなくなった
人々の声に耳を傾けなければ、両国の市民の閉塞感が増える一方で、海外
投資家もリスク懸念を強めると思われる。
(2013年7月11日 国際調査部 ゴロシニコフ アントン)
7
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
経済トレンド
世界の海外直接投資の回復は緩慢
2013年の海外直接投資は
12年並みとなる見通し
2012年の世界の海外直接投資(F D I)は前年比▲18.2%減の1.35兆ドル。
世界経 済の回復 力の弱さや主要国の政 策 不透 明感が 重石となり大きく減
少。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、投資意欲の回復には時間を要し、13
年FDIも12年並みの水準に留まると予想している。その後は、14年1.6兆ドル、
15年1.8兆ドルと緩やかな増加に向かうが、直近ピーク(07年)の水準を下
回る推移が 続く見通し(図表1)。また、グローバル金融市場の混乱、景気下
振れ、主要国での政策変更等がFDIを減少させるリスクも残る。
12年は先進国向けが
F D Iの動 向を国・地 域 別にみると、先 進 国 向けは、欧州向け(前年比 ▲
大きく減少
41.7%減)、米国向け(同▲26.1%減)共に大きく減少。新興国向けは同▲
4.4%減と小 幅 減に留まり、新 興 国 向けF D Iが史 上初めて先 進国 向けを上
回った。F D I受け入れ金 額が最も多い国は米国で、中国、香港、ブラジル、英
領ヴァージン諸島が続いた。
投資国としては、新興国が同1.0%増と増加が 続いた一方、先進国が同▲
23.1%減と減少。資金の出し手としても、新興国の存在感が 高まった。とり
わけ中国の対外FDIは、米国、日本に次ぐ3番目の規模に拡大した。
業種別では資源関連、
全体の約5割を占めるグリーンフィールドFDI( 新規法人設立を伴う投資)
製造業がシェア縮小、
で業種別の動向を探ると、製造業(同▲41.7%減)、一次産業(同▲66.9%
サービス業が拡大
減)が大きく減少し、全体でも同▲33.0%減となった。一方、サービス業は
同▲16.2%減に留まり、シェアを拡大した。
(図表2)。
資源価 格 低下を受けて鉱 業が大きく減少したほか、製 造 業の中でも、石
油・石炭製品、金属産業など資源との関係が強い産業が大きく減少した。そ
のほか、世界的な景気低迷を受け、輸送機、電子・電気など消費財製造業も
減少した。一方で、企業向けサービス、貿易、金融、運 輸等の専門サービス
が底堅く推移した。
(図表1)
対内直接投資の推移
2.5
(兆ドル)
(図表2)
グリーンフィールドFDI
(業種別)
その他
ラ米
アジア
米国
欧州
世界
2.0
サービス業
一次産業
80%
1.5
60%
1.0
40%
0.5
20%
0.0
製造業
100%
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
( 出所)UNCTAD
0%
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
( 出所)UNCTAD
(2013年7月9日 経済調査部 田辺史子)
8
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
日本
日本経済は着実に持ち直している。円高修正や株高、財政支出拡大、米国経済の堅調等を受けて、企業、
家計の景況感が改善。設備投資も緩やかに持ち直し。但し、中国経済失速が輸出に重石となるリスクが
高まっている。6月14日、今後10年間の平均成長率2%を目標とする「日本再興戦略」が閣議決定された
が、法人実効税率引き下げが見送られるなど、課題が残った。
● 日銀短観
16
● 設備投資
(D.I.,%)
全産業
(2010年=100)
120
製造業
(10億円)
900
資本財出荷(除く輸送機械)
機械受注・民需(除く船電、目盛右)
非製造業
8
110
800
100
700
0
-8
-16
1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q
2010
2011
2012
2013
(注)2013年3Qは先行きDI
(出所)日本銀行
90
10/1
10/7
11/1
11/7
12/1
12/7
13/1
600
(出所)内閣府、経済産業省
6月日銀短観業況判断D Iは、製造業、非製造業共に改善。 設 備 投 資 の 先 行 指 標 となる 5月 機 械 受 注 は 、前 月 比
13年度の 想 定為替レートは1ドル=91.20円と3月調査
10.5%増の7,992億円と2008年10月以 来の高水準と
(85.22円)から円安方向に修正されており、米国経済
なった。非 製 造 業が、鉄 道 車 両の大 型 案件や 金 融 機 関
堅調もあって、鉄 鋼や自動車、機械などの輸出産業の景
のシステム改修などを受けて、同24.5%増と大幅に増加。
況感が 回復。非 製 造業では、宿 泊・飲 食サービス、建 設、 製 造業も同3.8%増と2カ月ぶりの増加。資本財出荷も
不動産が大きく改善。金融緩和や財政支出拡大等の「ア
昨 年後半以 降 増 加が 続いており、設備 投 資は 緩やかに
ベノミクス」の恩恵を受けた。
持ち直している。
● 住宅市場
(前年比%、12カ月移動平均)
30
● 公共投資
(前年比%、12カ月移動平均)
6
40
(前年同月比%)
公共工事出来高
15
公共工事請負金額
3
20
0
0
0
-15
-3
首都圏マンション販売
一戸あたり平均価格(目盛右)
-30
10/1
10/7
11/1
11/7
(出所)日本不動産経済研究所
12/1
12/7
13/1
-6
-20
10/1
10/7
11/1
11/7
12/1
(出所)東日本建設業保証株式会社、国土交通省
12/7
13/1
6月首都 圏マンション販 売戸数は前年同月比 22.0%増
公共 投 資の先行指 標である6月公共工事請負金 額は前
と大幅 増 加。契 約率も81.6%と販 売 好調の目安となる
年同月比21.7%増と3カ月連続の大幅増。6月末の時点
70%を5カ月連続で上回った。価格上昇や住宅ローン金
で、2月に 成 立した緊 急 経 済 対 策 の 8 5%が 公募・契 約
利の先高観が 高まっていることに加え、消費税引き上げ
段 階まで 進 捗。今後 請負金 額自体は 増 勢が 鈍 化してい
前の駆け込み需要が 顕在化。住宅着工戸数も増加が 続
くものの、13年度予算の執行もあり、景気押し上げ 効果
くなど、住宅市場の好調が鮮明となっている。
は年後 半も 持 続 する見 込 み。5月公共工 事 出 来 高は同
12.9%増と増加継続。
9
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
米国
米国 経 済は回 復 継 続 。外 需 低 迷と強 制歳出削 減が 重石となり、生 産 活動の回復は遅 れているが、株
高や住宅価格上昇による資産効果に加え、雇 用環境改善を背景に個人 消費が好調。6月にバーナンキ
FRB議長は、13年後半にもQE3を縮小する可能性について言及した。
● 小売売上高と鉱工業生産
9
● 雇用
(前年同月比%)
6
小売売上高
(10万人)
(%)
11
雇用者数増減 失業率(目盛右)
鉱工業生産
4
10
2
9
0
8
6
3
0
10/1
10/7
11/1
(出所)FRB、商務省
11/7
12/1
12/7
-2
10/1
10/7
(出所)労働省
13/1
11/1
11/7
12/1
12/7
13/1
7
6月 小 売 売 上 高 は 前 年 同 月 比 5 .7% 増と、自 動 車( 同
6月非農業部門雇用者数は、製造業の低迷が続いたが、
11.4%増)、非店舗(同13.8%増)等を中心に増加が続い
小売業や建設業を中心に増加が続き、前月比19.5万人増
た。住宅価格上昇による資産 効果や雇 用環 境改善を受
となった。失業率は7.6%と前月比横ばいとなったが、労
け個人消費が好調。一方、生産活動は輸出回復力の弱さ
働参加率が上昇するなど、景気見通し改善を背景に職探
や強制歳出削減が 重石となり回復が 遅れており、6月鉱
しを始める人が増え、雇用環境は徐々に改善している。
工業生産は同2.0%増と小幅増に留まった。
ユーロ圏
ユーロ圏経済は低迷が続く中で、消費者マインドなど一部に底入れを示唆する指標も見えつつある。但し、
各国政府による財政健全化への取組みや企業の慎重な雇用姿勢(6月失業率は過去最高の12.2%)を受
けて、当面、内需の回復力は弱い状況が続く公算が高い。
● 個人消費
102
● 鉱工業生産
(2010年=100) (DI,%)
-5
100
-10
98
-15
-20
96
94
小売売上数量
-25
消費信頼感(目盛右)
92
10/1
10/7
11/1
11/7
(出所)Eurostat、欧州委員会
12/1
12/7
13/1
-30
(2010年=100) 106
(DI,%)
25
102
98
0
-25
鉱工業生産
受注DI(目盛右)
輸出受注DI(目盛右)
94
10/1
10/7
11/1
11/7
12/1
(出所)Eurostat、欧州委員会
12/7
13/1
-50
消費者信頼感 指 数は昨 年11月を底に7カ月連続で改善、 5月鉱工業生産は前月比▲1.3%減と4カ月ぶりの減少。
6月は前月比3.1ポイントも上昇した。小売売上数量も、
5月から6月にかけてのドイツでの洪 水による一 時 的な
マインドの改善を受けて5月には4カ月ぶりに前月比増加
影響とする見方も多いが、欧州委員会の景況感調査では
に転じており、最悪期は脱しつつある。但し、ドイツを除
企業の受注判断や輸出受注判断はようやく下げ止まっ
き深刻な雇用情勢が 続く中で、当面、回復は緩やかなも
たに過ぎず、世界経済の見通しが 下方修正される中で、
のに留まる。
先行きに不透明感も残る。
10
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
中国
中国経済は、減速続く。世界経済回復の遅れを受けて輸出が減少したほか、内需も減速。政府は高成長
の維持よりも、経済改革を優先させる姿勢を示しており、財政政策による下支えも期待し難い。金融市
場では不動産や過剰設備産業への引締めが強化され、6月は短期金利が急上昇した。
● 実質GDP成長率
28
● 輸出
(前年同月比%)
(前年同期比%)
14
小売売上高
固定資産投資
(都市部)
12
GDP(目盛右)
24
20
10
16
8
12
10/1
10/7
11/1
(出所)中国国家統計局
11/7
12/1
12/7
13/1
6
40
(前年同月比%、3カ月移動平均)
20
0
全体
EU
日本
ASEAN
-20
10/1
10/7
11/1
(出所)中国海関総署
米国
11/7
12/1
12/7
13/1
4- 6月実質G D P成長率は、前年同期比7.5%増と、前 期
6月輸出は前年同月比▲3.1%減と17カ月ぶりの減少。貿
(同7.7%増)から減速。外需の減速が 重石となったこと
易取引を装った投機資金流入への取り締まり強化を受け、
に加えて、固定資産投資や生産活動も伸び悩んだ。6月
輸出の弱さが鮮明となった。先進国向けの減少に加え、
小売売上高は同13.3%増と増加幅が拡大したが依然低
A S E A N等の新興国向けも減速。外需低迷に加え、賃金
水準で、内外需ともに先行き不透明感が残る。
上昇、通貨高も重石となり、今後も低迷が 続く可能性が
高い。
ブラジル
ブラジル経済は、固定資産投資や鉱工業生産を中心に持ち直しているものの、賃金の伸び悩みを背景に
個人消費の増勢が鈍化するなど回復力は弱い。6月以降デモの多発など社会不安の拡大を受けて、株価、
国債価格が下落。7月に中央銀行は消費者物価の上昇を背景に政策金利を0.5%引き上げ8.5%とした。
● 小売売上数量
20
● 鉱工業生産
(前年同月比%)
(前年同月比%)
8
20
(前年同月比%)
(前年同月比%)
小売売上(数量)
消費者物価(目盛右)
15
資本財(目盛右)
7
20
10
10
6
5
5
0
10/1
10/7
11/1
11/7
(出所)ブラジル中央銀行、IBGE
12/1
12/7
13/1
40
鉱工業生産
4
0
0
-10
10/1
10/7
(出所)IBGE
11/1
11/7
12/1
12/7
-20
13/1
小売 売 上 数 量は、食 品価 格 の上昇に伴いスーパーマー
5月 鉱 工 業 生 産 は 、大 方 の 予 想 を下 回 る 前 年 同 月 比
ケットを中心に増勢が鈍化、5月も前年同月比4.5%増と
1.4%増に留まった。6月以 降もデモの 影 響が徐々に顕
伸び悩んだ。インフレ高進(6月C P Iは前年同月比6.7%
在化する公算が 高い。消費財や中間財の生 産は一 進一
上昇)が 実質 購買 力の 低下につながっている。また、こ
退の動きが 続いている一方、資本財生 産は輸送機械 や
れまで 個人 消費を支えてきた 雇 用 拡 大のテンポも、足
農 業 機械を中心に増 勢を維 持しており、設 備 投 資の 持
元では緩やかになりつつある。
ち直しを示唆している。
(2013年7月18日 経済調査部 経済分析チーム)
11
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
マーケットトレンド
米中政策スタンスの変更に揺れる商品市況
2013年上期の国際商品市
況は、総じて弱含み
2013年上期の国際商品市況は総じて弱含みで推移。需給安定化に加え、
米国量的緩和策の出口論議活発化、新興国経済減速、ドル高等が相場を圧
迫した。主要商品中ではW T I原油・米国天然ガスのみが年初来プラスを維
持。シェール革命は、米国の石油ガス大幅増産による国内需 給不均 衡の調
整段階を経て、世界の各方面へとじわり浸透しつつあることを覗わせる。
6月は 原 油 の 相 対 的 堅 調
目立つ
6月単月では、原油市場で米国内外の需給格差が 縮小し、W T I、ブレント
の価格が100ドル付近に収 斂する推移となった。金・銀は大幅続落、中国の
需要シェアの大きい非鉄金属は水準を切り下げ、穀物は米国新年度の増産
見込みが強まる中で軟調に推移した。
米中政策シフトにより不透
明感増大
米国では、バーナンキF R B議長が6月F O M Cにおいて、月額850億ドルの
資産購入策(QE3)の縮小に年内着手・来年半ば終了との目途を提示した。
FRBはあくまで想定通りの景気回復が 継続することが 前提であると強調し
たが、過去にもF R Bの政策変 更が米国への資 金 還 流を通じて新興国危 機
を招いた事例があり、新興国株式・債券・通貨は強い売り圧力を受けた。ま
た、中国では過剰与信対策のため中央銀行が流動性供給を縮小、国内短期
金利の急騰を招き、中国現指導部が成長減速を容認してでも構造改革推進
へとシフトする強い意 志が 示された。米中の政 策スタンス変 更が 新たな危
機を生むシナリオは現時点でメインシナリオではないが、世界経済の行方は
不透明感を増している。
商品市況も新たな需 給 均
衡点模索へ
米国の非伝統 的金融緩和策 縮小、中国の「水増しされた成長」からの脱
却、欧州緊 縮財政などの構造調整が 図られる中で、商品市況も新たな需給
均 衡点を模索する局面へと移行している。短期 的に反 発する場面があって
も、上期の軟調地合いを引き継いで不安定な推移は継続する見込み。
原 油は短期 的には底堅く
原油:中東・北アフリカの地政学的リスクはくすぶり続け、定修明け製油所稼
推移
働率上昇や季節需要も追い風に、短期的には強含みで推移すると予想され
る。しかし、世界の原油需給はひっ迫しておらず、油種間・限月間値差に対す
る調整一巡後は上値が 重くなる見込み。
非 鉄 相 場の見通しには 強
非鉄金属:中国経済の減速、L M E在庫取引の行方など不透明要素は多く、
い不透明感
需給均衡点を探る推移が 継続。下振れリスクに対する警戒は残るが、価格下
落幅が示すほどの需給悪化は生じておらず、短期的には反動高も期待。
貴金属市場の地合い脆弱
貴金属:金銀は過去12年に及んだ長期上昇相場の調整局面継続。白金族は
南ア鉱山労使交渉睨みとなるが、生産リスクは一定程度織り込み済み。
穀物は、天候リスク残るが、 穀物:トウモロコシは7月中旬、大 豆は8月以降に最も重要な受 粉期を迎え
買い材料乏しい
ることから、引き続き天候に左右されやすい。但し、今 春の長雨で土壌水分
は潤沢で例年並みの天候も予想されており、買い材料乏しく、軟調な推移が
続く。
(2013年7月12日 経済調査部 市場分析チーム)
12
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
主要国際商品
■エネルギー(ブレント原油)
■貴金属(COMEX金)
ブレント原油[ICE]
$125
金[COMEX]
$1,800
$1,700
$120
$1,600
$115
$1,500
$110
$1,400
$105
$1,300
$100
$95
1/2
$1,200
1/23
2/13
3/6
3/27
4/18
5/9
5/30
6/20
7/11
$1,100
1/2
1/24
2/14
3/8
4/1
4/22
5/13
6/4
6/25
ブレント原油はなお年初来マイナス圏ながら底堅く推移。 四半 期ベースの下 落 率はニクソンショック後 最大。Q E3
中国経済減速に伴う需要悪化懸念や米国・イラク等の増
早 期縮小見通しを市場は既に織り込んだが、ドル先高観
産に対し、季 節需要・地 政 学 的リスク・米W T I原 油の堅
は根強く積極的な買い材料に乏しい。底打ちを模索する
調が相場を下支え。短期的には季節要因もあり底堅いが、 中で 現物 需要 動 向や 鉱山会 社の生 産調 整など 需 給面に
世界需給にひっ迫感は薄く、次第に上値は重くなる見込
注目が戻れば、下落ペースは緩むと思われる。
み。
■非鉄金属(LMEアルミ)
■農産品(CBOT大豆)
アルミ
[LME(3ヶ月物)]
$2,300
大豆[CBOT(2013年11月限)]
¢1,400
$2,200
¢1,350
$2,100
¢1,300
$2,000
¢1,250
$1,900
¢1,200
$1,800
$1,700
1/2
1/23
2/13
3/6
3/27
4/19
5/13
6/4
¢1,150
1/2
6/25
供給過 剰が相場を圧迫し続ける中、中国でもC h a l c o減
1/24
2/14
3/8
4/1
4/22
5/13
6/4
6/25
大豆相場は軟調に推移した。注目された6月末公表の米農
産、政府による過剰生産能力削減策強化が 発表されてお
務省「 作付面積報告」は予想通りに過去最高の作付面積と
り、実効性を見極める局面。またLMEが提案した在庫出
なったほか、今年の米国産地は、昨年の干ばつから一転、理
庫迅 速化策は承認されれば 来年4月施行の運びで、市場
想的な天候に恵まれ供給緩和観測が強まっている。また南
への影響に不透明感が残る中、調整局面継続。
米産の供給増も上値に重石。なお、引き続き天候リスク残る。
基準日:2013/6/28 vs 5/31、
2012/12/31
50%
株価指数
40%
為替
エネルギー
貴金属
非鉄金属
農産物
30%
20%
10%
0%
-10%
-20%
-30%
前月末比
年初来
粗糖
小麦
トウモロコシ
大豆
鉛
亜鉛
ニッケル
銅
アルミ
パラジウム
プラチナ
銀
金
天然ガス
暖房油
ブレント原油
ガソリン
WTI原油
CRB指数
豪ドル︵対米ドル︶
ユーロ︵対ドル︶
円︵対ユーロ︶
円︵対ドル︶
インドSENSEX
ロシアRTS︵$︶
ブラジルボベスパ
上海総合
S&P500
日経平均
-40%
(出所)Bloomberg
13
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
産業トレンド
今月のフォーカス : 輸送用燃料としても期待の広がるLNG
背景にシェールガス革命
2011年にI E A(国際エネルギー機関)は、シェールガス革命により天然ガ
スの利用拡大が創出される「ガスの黄金時代」の到来を予想。これ以降、主
に発電と産業分野において天然ガス活用の動きが活発化したが、天然ガス
が 長 期 的かつ安定的に生 産される見通しが 強まったことを受け、最近では、
輸送用燃料にも天然ガスを活用する動きに発展している。I E Aが6月末に発
刊した「天然ガスの中期展望2013」においても、今後5年の間に、ガスの生
産量が増加する米国や、大気汚染が深刻な中国を中心に輸送用燃料として
天然ガスの利用需要が増大すると見込んでいる。
メリットの大きい天然ガス
燃料
天然ガスを燃料とした車やトラックは、ガソリン車やディーゼルトラックに
比べ、CO2やNOX等の排出量が大幅に削減され環境負荷が低い。このため、
電化が困難で、燃料消費量が大きいトラックや鉄道、さらに燃料の環境規制
が 強化されている船舶において天然ガスへの転換が 進むとされている。特
に、ガス価格が低下している米国においては、天然ガスの単位量当たりの価
格は原油の1/5まで下がっており、天然ガスを輸送用燃料として利用するメ
リットが大きい。
長距離走行に適したL N G
燃料
なお、天然ガスを燃料とする場合、圧縮天然ガス(C N G:C o m p r e s s e d
Natural Gas)、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)があるが、
L N G燃料は、低温でガスの容量を600分の1に圧縮でき、燃料タンクが小さ
くてすむこと、かつ1回の燃料供給で長 距離走行が 可能である点がメリット
とされている。C N G燃料については既にバスや地域配送など走行距離が短
い用途に使用されている。
長距離トラックで先行
これまで、LNG燃料トラックや船舶は、燃料供給インフラの整備が普及の
足かせとされてきた。だが、トラックについては米国で複数の企業が燃料供
給所を数年以内に300ヶ所以 上開設する計画で、トラック輸送会 社も商業
ベースでL N G燃料トラックを購入し始めるなど、普及の素地が 整いつつあ
る。船舶は、燃料供給インフラが 整っていないことから、現在は航海範囲が
限 定的なフェリーでの利用に留まっ
ているが、L N G燃料船普及の機運が
高まっており、国 内外 の 造 船 会 社が
L N G燃 料エンジンや船舶の開発を
競っている。
日本企業への期待
以上のように、L N Gを輸送用燃料
とした 動きは 着 実に進 んでおり、世
界一 のL N G輸入国である日本の 企
業 も 長 年 培 った L N G 輸 送 技 術 や
L N Gタンク製 造等 の 技 術を活かし
存在感を築くことが 期待される。
(図表)
北米におけるトラック向け
燃料供給インフラ整備状況
2013年6末時点
営業開始済みLNG 供給スタンド
24
Clean Energy Fuels
8
Blu
7
Applied Natural Gas
2
Gaz Metro
3
Kiwik Trip
1
Enviro Express
1
Shell
開発段階のLNG供給スタンド
1
285
( 出所)住商総研
(2013年7月17日 経済調査部 舘 美公子)
14
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
産業景気:加工組立型産業・非製造業
250
一般機械
(前年比増減、
%)
250
工作機械受注計
150
建機出荷額
100
50
0
0
産業機械受注計
-50
-100
10/6
10/12
11/6
(出所)日本工作機械工業会等
-50
11/12
12/6
新車登録台数
-100
13/6
10/6
10/12
11/6
(出所)日本自動車工業会等
12/12
6月の工作機械受注額は内需・外需揃って振るわず前年比12.4%
減、
14ヶ月連続の減少。5月の建機出荷額は、
内需が復興需要で好
調、
外需は中国などで苦戦が続き同9.5%減少(10ヶ月連続)。一
方、
5月の産業機械受注額は主力の内需が非製造業を中心に投
資が回復、
6ヶ月振りの増加となる同14.1%増。
半導体
(前年比増減、
%)
100
20
1,100
0.20
800
-20
0.05
-60
10/6
10/12
11/6
(出所)経済産業調査会等
11/12
12/6
12/12
700
0.00
13/6
150
電子・電機
20.0%
15.0%
民生用電気機器販売
(前年比増減、
%)
140
120
100
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
-100
-120
12/11
13/5
11/11
12/5
(店舗調整済・前年比増減、
%)
小
売
コンビニエンスストア
総販売額(既存店)
大型小売店
総販売額
5.0%
0
-50
11/5
10.0%
50
13/6
5月の建設受注は軒並み好調。民間受注額は、工場や不動産業
等の受注増により前年比26.6%増と2ヶ月連続増加。官公需も
国(政 府)関連工事の大幅増により同32.7%増と2ヶ月連続 増
加。新設住宅着工戸数も9ヶ月連続で 増加、2008年10月以 来
の高水準。
薄型テレビ
販売台数
100
新設住宅着工戸数(左)
600
10/5
10/11
(出所)国土交通省
5月の半導体集積回路生産額は、円安効果やスマホ向けが伸び
前年比21.4%増と2ヶ月連続増加。
D R A M価格も市場縮小を見込んだメーカーの減産により需給
が引き締まり、上昇基調。
(前年比増減、
%)
建設工事
受注額民需(右)
900
0.10
1ギガDRAM価格(右)
12/12
建設工事
受注額官公需(右)
1,000
0.15
0
12/6
設
1,200
0.25
半導体集積回路
生産額(左)
建
(年率換算・千戸)
1,300
60
40
11/12
5月の自動車生産台数は前年比6.2%減と9ヶ月連続減少。車種
別では乗 用車同7.8%減、トラック同1.7%増、バス同25.4% 増。
5月の輸出台 数も同7. 2%減で10ヶ月連 続 減 少。6月の国 内 販
売は同15.8%減。エコカー補助金終了の反動に加え、稼働日が
1日少なかったことも響いた。
(千円/個)
0.30
80
200
生産台数
100
50
-40
輸出台数
200
200
150
自動車
(前年比増減、
%)
0.0%
-5.0%
携帯電話
国内出荷台数
-100
10/5
10/11
11/5
(出所)経済産業統計協会
11/11
12/5
12/11
13/5
5月の移動電話国内出荷台数は夏商戦による販売向上で13ヶ月
ぶりの前年比増加。
5月の民生用電気機器販売は、好調だった昨年の反動を受け2ヶ
月連続減少。一方、新設住宅着工戸数が伸びていることから、住
宅設備の換気扇や食器洗い洗濯機が伸びた。
-10.0%
10/5
10/11
11/5
(出所)経済産業省等
チェーンストア販売額
(食料品)
11/11
12/5
12/11
13/5
5月の大型小売店総販売額は、百貨店(前年比2.4%増)で夏物
衣料や高級品が好調に推移し、同0.9%増と2ヶ月ぶりの増加。一
方、コンビニ総販売額(既存店ベース)は、雑誌やたばこの販売
減により同1.2%減と12ヶ月連続の減少。チェーンストア販 売額
(食料品)も農産品安が続き15ヶ月連続減と低迷続く。
(2013年7月12日 経済調査部 産業分析チーム)
15
住商総研 WORLD FOCUS 2013.7,8
国内・海外経済指標
主要国の概要、経済成長率
基礎指標(12 年、輸出入は 11 年)
面積
(千㎢)
IMF 経済見通し(%)
(2013.7)
名目 GDP 同、一人
人口
輸出
輸入
(百万人) (10 億ドル) 当たり(ドル)(10 億ドル) (10 億ドル)
実質 GDP 成長率(前年同期比%)
2012
2013f
2014f
12.1Q
2Q
3Q
4Q
13.1Q
日本
378
128
5,964
46,736
786
763
1.9
2.0
1.2
3.4
3.9
0.2
0.4
米国
9,629
314
15,685
49,922
1,301
2,166
2.2
1.7
2.7
2.4
2.1
2.6
1.7
1.6
ユーロ圏
2,509
331
12,198
34,116
2,294
2,353
-0.6
-0.6
0.9
-0.1
-0.5
-0.7
-0.9
-1.1
ドイツ
357
82
3,401
41,513
1,464
1,199
0.9
0.3
1.3
1.3
1.0
0.9
0.3
-0.3
フランス
552
63
2,609
41,141
605
706
0.0
-0.2
0.8
0.3
0.1
0.0
-0.3
-0.4
英国
244
63
2,441
38,589
460
633
0.3
0.9
1.5
0.6
0.0
0.1
0.0
0.3
オーストラリア
7,741
23
1,542
67,723
187
191
3.6
3.0
3.3
4.4
3.6
3.3
3.2
2.5
中国
9,598
1,354
8,227
6,076
1,429
1,132
7.8
7.8
7.7
8.1
7.6
7.4
7.9
7.7
韓国
99
50
1,156
23,113
422
435
2.0
2.8
3.9
2.8
2.4
1.6
1.5
1.5
台湾
0.4
36
23
474
20,328
247
219
1.3
3.0
3.9
0.6
-0.1
0.7
4.0
1.7
1,905
244
878
3,592
148
130
6.2
6.3
6.4
6.3
6.4
6.2
6.1
6.0
513
64
366
5,678
173
179
6.4
5.9
4.2
0.4
4.4
3.1
19.1
5.3
インド
3,287
1,223
1,825
1,492
177
293
3.2
5.6
6.3
5.1
5.4
5.2
4.7
4.8
ロシア
17,098
142
2,022
14,247
472
321
3.4
2.5
3.3
4.8
4.3
3.0
2.1
1.6
313
39
488
12,538
170
206
2.0
1.3
2.2
3.5
2.3
1.3
0.7
0.5
メキシコ
1,958
115
1,177
10,247
292
311
3.9
2.9
3.2
4.9
4.5
3.2
3.2
0.8
ブラジル
8,515
198
2,396
12,079
198
173
0.9
2.5
3.2
0.8
0.5
0.9
1.4
1.9
アルゼンチン
2,780
41
475
11,576
71
57
1.9
2.8
3.5
5.2
0.0
0.7
2.1
3.0
インドネシア
タイ
ポーランド
2Q
7.5
(備考)ユーロ圏の一人当たり GDP は PPP ベース、輸出入は域外貿易
IMF 経済見通し:下線は 2013.4 の数字
(出所)世界銀行、IMF、Bloomberg ほか
主要マクロ指標、金融指標、商品市況
12.3Q
4Q
13.1Q
2Q
13/4
5
6
鉱工業生産(前年同期比%)
日本
-3.9
-5.9
-7.9
米国
3.4
2.8
2.4
ユーロ圏
-2.4
-3.1
中国
-3.4
-1.1
2.0
1.7
-2.4
-0.6
-1.3
10.0
10.0
9.5
9.3
9.2
2.0
2.0
8.9
貿易収支(財収支、10 億ドル)
-26.7
12.3Q
4Q
13.1Q
2Q
13/4
5
6
政策金利(%、月末)
日本
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
米国
0.25
0.25
0.25
0.25
0.25
0.25
0.25
ユーロ圏
0.75
0.75
0.75
0.50
0.75
0.50
0.50
英国
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
主要株価指数(月末)
日本
-25.0
-29.1
-7.2
-8.2
日本(日経平均)
8,870 10,395 12,398 13,677 13,861 13,775 13,677
米国
-176.3 -179.4 -175.2
-58.4
-63.4
米国(NY ダウ)
13,437 13,104 14,579 14,910 14,840 15,116 14,910
18.5
19.8
18.1
20.4
ユーロ圏
35.3
42.9
35.1
中国
79.1
83.0
42.3
65.7
英国(FT100)
27.1
消費者物価(前年同期比%)
日本(除く生鮮) -0.3
5,742
香港(ハンセン)
5,898
6,412
6,215
6,430
6,583
6,215
20,840 22,657 22,300 20,803 22,737 22,392 20,803
為替レート(月末)
-0.1
-0.3
-0.4
0.0
ドル・円
78.0
86.8
94.2
99.1
97.5
100.5
99.1
米国(コア)
2.0
1.9
2.0
1.7
1.7
1.7
1.6
ユーロ・ドル
1.29
1.32
1.28
1.30
1.32
1.30
1.30
ユーロ圏(コア)
1.6
1.5
1.4
1.1
1.0
1.2
1.2
ユーロ・円
100.2
114.5
120.8
129.0
128.3
130.6
129.0
中国
1.9
2.1
2.4
2.4
2.4
2.1
2.7
主要商品市況(期近物、月末)
日本
4.3
4.2
4.2
4.1
4.1
米国
8.0
7.8
7.7
7.5
7.6
11.5
11.8
12.1
12.1
12.2
失業率(%)
ユーロ圏
7.6
(備考)中国の鉱工業生産四半期データは累積ベース
(出所)世界銀行、IMF、Bloomberg ほか
16
7.6
CRB 指数
309
295
296
276
288
282
276
原油(WTI、ドル / バレル)
92.2
91.8
97.2
96.6
93.5
92.0
96.6
金(ドル / オンス)
1,771
1,676
1,595
1,224
1,472
1,393
1,224
銅(ドル /トン)
8,205
7,931
7,540
6,750
7,055
7,309
6,750
(2013年7月17日 経済調査部 道山弘美)
2013年6-7月中旬の主な動き
〈国際〉
●新興国の経済成長と日本の原発停止を背景に、
2012年のC O2排出量は前年比1.4%増
と過去最高に
●G8首脳会議は、
金融機関が持つ企業や個人の口座情報を共有して課税回避を防ぐ仕組
み作り等の推進に合意
〈米州〉
米国
●第5回米中戦略・経済対話がワシントンで開催され、
投資環境整備のための投資協定締結
交渉で全分野を対象に交渉を進めることで合意
●米国家安全保障局(NSA)が電話や電子メールなどの情報を収集していた事実が元CIA
職員のスノーデン容疑者の暴露により発覚
〈中南米〉
ブラジル
●過去20年で最大規模の抗議運動が発生、
教育・福祉の改善や汚職の一掃など多様な要求
を政府に迫る
〈アジア・大洋州〉
中国
●習近平国家主席が中米3カ国と米国を訪問、
米国ではオバマ大統領との首脳会談を実施
●EUが中国製太陽光パネルに反ダンピング課税の導入を決定、
中国はEU産ワインのダン
ピング調査を進める一方、
EUとの継続協議を確認
●新疆ウイグル自治区トルファン地区でウイグル族武装グループと警官隊が衝突、
死者35名
●輸出の落込みと生産活動の停滞で第2四半期のGDP成長率は7.5%、
中国経済の減速が
より鮮明となった
韓国
●朴大統領が訪中、
中韓首脳会談を実施、
朝鮮半島の非核化や中韓FTA推進などを目指す
共同声明を発表
モンゴル
●大統領選挙で現職のエルベグドルジ大統領が1回目の投票で過半数を上回り再選に成功
インド
●2012年度のGDP成長率は5%と10年ぶりの低水準、
個人消費が伸び悩み、
輸出も減少
ベトナム
●政府首脳らに対する初の信任投票が実施され、
政府首脳や閣僚は信任されたが、
経済関
係閣僚に批判票
オーストラリア● 与党労働党の党首選でラッド元首相が3年ぶりに党首に返り咲き、
ギラード首相が退陣
〈中東・アフリカ〉
エジプト
●軍のクーデターでムルスィー前大統領が解任され、
最高憲法裁判所のマンスール長官が
暫定大統領に就任
カタール
●ハマド首長が33歳のタミム皇太子に権限を移譲、
湾岸諸国君主の存命中の退位・権力移
譲は異例
イラン
●大統領選が実施され、
1回目の投票で過半数を集めたロウハニ最高安全保障委員会元事
務局長が当選
トルコ
●イスタンブール中心部ゲジ公園での反政府デモに強硬姿勢のエルドアン首相とデモ参加
者の溝が埋まらず
アフリカ
●オバマ米大統領が就任後初めて本格的なアフリカ訪問(セネガル、
南アフリカ、
タンザニア)
を実施した
〈欧州・CIS〉
欧州
●6月27日・28日に開催された欧州首脳会議で銀行の破綻処理・予算・若者の失業対策など
に合意
EU
●クロアチアが7月1日にEUに加盟、
EUは28ヵ国体制に拡大
ロシア
●プーチン大統領は、
スパイ活動取締法違反容疑などで訴追されているCIA元職員でモスク
ワ空港内に滞在するスノーデン容疑者の引き渡しを拒否、
米・露関係に影響
今月の焦点 2013年7月中旬-8月のスケジュール
8月23日
★マダガスカル大統領選挙(予定)
2001年の大統領選ではラチラカ候補と競ったラヴァロマナナ候補が勝利したが、
2009年
のクーデターでラジョリナ氏が政権を樹立。
しかし、
国際社会の信任が得られず、
大統領選
実施へのロードマップが策定されたものの、
政治的合意内容と異なる候補者が出馬表明
し、
国際社会の批判を受けている。仏政府も、
現職のラジョリナ大統領、
ラヴァロマナナ前大
統領のララオ夫人、
ラチラカ元大統領の3候補に対し出馬辞退を要求、
選挙の再延期の可
能性もあり、
マダガスカルの政治情勢は依然として混沌としている。
7月15〜25日
7月19〜20日
7月中
7月28日
7月28日
8月23日
◯環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉会合(マレーシア)
◯G20財務相・中央銀行総裁会議(モスクワ)
◯ジンバブエ大統領選挙、
議会選挙
◯カンボジア国民議会選挙
◯マリ大統領選挙(第1回投票)
◯マダガスカル大統領選挙(予定)
(2013年7月17日 国際調査部 林 幹雄)
住商総研 ワールド・フォーカス
2013年 7,8月号
No.82
編集・発行 株式会社 住友商事総合研究所
東京都中央区晴海 1−8−11(〒104−6136)
電話 03−5166−3181
E-MAIL. [email protected]
URL. http://www.sumitomocorp.co.jp/special/wf/index.html
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