第25回群馬周産期研究会 会 - 群馬大学

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Kitakanto Med J
2010;60:383∼385
第25回群馬周産期研究会
会
日
時:平成 21 年 5 月 2 日
場
所:群馬大学医学部「刀城会館」
会
長:荒川
浩一(群馬大院・医・小児科学)
計上の出生数よりも多い可能性があり, ハイリスク新生
一般演題>
児の入院数には時期的変動がみられた. 今後, これらの
座長:篠崎
博光(群馬大医・保・母子看護学)
ことを
慮して必要病床数の算定および周産期医療体制
の整備を進める必要がある.
1.2006年度の群馬県におけるハイリスク新生児医療の
2.新生児センター増床前後の入院状況の変化
現状に関する検討
針谷
晃,津久井瑞江,堀越
隆伸
丸山
憲一,小泉
武宣,藤生
徹
浦野
博央,中島
一恵,塩谷
亜矢
中島久仁子,西田
豊,釜
桂子
新生児科)
鳴海
信,竹内
東光
(群馬県立小児医療センター
僚彦,桑島
(桐生厚生
都道府県単位で新生児医療施設の必要病床数を検討す
るためには, 実際に新生児医療施設に入院した患者数を
桐生厚生
合病院
小児科)
合病院新生児センターは, 1998 年より, 新
把握することが必要である. 今回, われわれは群馬県内
生児集中治療室 (以下 NICU) が 6 床, 回復期治療室 (以
の新生児医療機関に対してハイリスク新生児の入院状況
下 GCU) が 11 床で稼動していた. 群馬県内において病
に関する調査を行ったので報告する.
的新生児の病床数が不足しているため, 群馬県の補助の
合周産期母子医
元, 2007 年 2 月より増床のための改修工事を行なった.
療センター 1 病院, 地域周産期母子医療センター 5 病院,
2007 年 4 月より,NICU 9 床,GCU 12 床に増床して稼動
協力医療機関 6 病院, 特定指定病院 2 病院を対象に,
した. 増床前の 5 年間と増床後の 2 年間での, 入院状況
2006 年度に入院した極低出生体重児の患者および出生
の変化を報告する.
群馬県内の新生児医療を担っている
体重 1500g 以上の人工呼吸管理施行患者に関する調査を
行った.
年間患者数は極低出生体重児 134 名, 出生体重 1500g
増床前 5 年間で年間平
後 2 年間では年間平
166 人の入院患者数が, 増床
213 人にまで増加した
加). 出生体重 999g 以下の入院患者数は平
(28%増
で 46%増加
以上の人工呼吸管理施行患者 160 人. 極低出生体重児と
しており, 出生体重 1000g から 1499g の入院患者数は平
出生体重 1500g 以上の人工呼吸管理施行患者の月別の合
で 41%増加した. 従来, 太田地区での病的新生児が入
計は 5 月が 14 人と少なく, 7 月が 34 人と多かったが, そ
院していた
合太田病院
新生児救命センターが 2006
の他の月は 21∼27 人で推移していた. 極低出生体重児
年 4 月より病床数が減少した. 入院患者の入院時の現住
の内訳は出生体重 1000g 未満 59 人, 1000g 以上 75 人. 極
所の
低出生体重児の内, 気管挿管し人工換気が 69 人, nasal
増加した. 人工呼吸管理などの治療を必要とすることが
CPAP のみが 23 人, 出生体重 1500g 以上の人工呼吸管
多い極低出生体重児について, 患者の現住所の
布では, この時期より太田地区からの入院患者が
布では,
理患者では, 気管挿管し人工換気が 80 人, nasal CPAP
桐生地区, 太田地区, 館林地区のいわゆる東毛地域だけ
のみが 80 人であった. 極低出生体重児の入院依頼元は
でなく, 県内, 県外の広範囲から極低出生体重児が入院
127 人で院内もしくは新生児医療施設のある病院であっ
している. 増床後も特に変化はなかった.
た. 死亡退院は極低出生体重児では 134 人中 6 人で, 超
低出生体重児では 59 人中 4 人であった.
群馬県では極低出生体重児の予後は良好であり, ハイ
増床後, 入院患者数が 3 割弱増加しており, 増床の効
果はあったと
えられる. 特に極低出生体重児の増加が
目立つことは, 東毛地区の新生児医療の中核施設として
リスク児であることが予想される場合の母体搬送等, 周
の機能を果たしていると
えられる. 2006 年度からの
産期医療体制が機能していると思われた. 群馬県内の新
合太田病院
生児医療施設の極低出生体重児の入院数は, 人口動態統
り, 太田地区の病的新生児の入院数が増加した. 増床し
新生児救命センターの病床数の減少によ
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第 25 回群馬周産期研究会
たことは, 太田地区の病的新生児を入院させるためには
有利に働いたと
会
4.当施設における羊水検査の現状
えられる.
極低出生体重児が, 東毛地域だけでなく, 群馬県内の
平石
光,勝俣
祐介,定方
笠原
慶充,田村
友宏,峯岸
久
敬
広範囲の地域から入院している現状は, 群馬県全体とし
(群馬大院・医・産科婦人科学)
て極低出生体重児を受け入れる病床数が不足しているた
近年, 高齢妊婦 (35 歳以上) の増加に伴い, 羊水検査等
めと
えられる. 群馬県全体の病的新生児の必要病床数
による胎児出生前診断の需要が高まっている. 羊水検査
(Amniocentesis) は診断精度が高いものの, 一定の確率で
について再度検討が必要と思われる.
流産の危険を伴う侵襲的な処置である. 2006 年 4 月 1 日
3.当院における要注意菌保菌者の増減に関する検討
関谷亜矢子,大木
康
五十嵐淑子,荒川
浩一
,河野
美幸
より 2009 年 3 月 31 日までの 3 年間に当施設において羊
水検査を施行した 87 症例について検討した.
平
(群馬大医・附属病院・周産母子センター
年齢 35 歳, 平
週数 15 週. 検査理由は, 高齢妊娠
56%, 超音波検査異常 46%, 前児または血縁の異常 10%,
NICU)
本人希望のみ 6%, 血清マーカーの異常 3%であった. 羊
院内感染菌として重要なグラム陰性菌はその頭文字を
水検査施行例において, 本人希望のみで施行した症例で
とって S.P.A.C.E.と称される. NICU では院内感染対策
は染色体異常は 1 例も認められなかった. また, 前児の
がきわめて重要であり, 当院 NICU では MRSA を含む
異常のみの症例と血清マーカーの異常のみを理由とした
これら要注意菌の監視培養を行っている. その増減の要
症例でも染色体異常を認めなかった. 21 トリソミーは
因について
NT 肥厚と関連が示唆された. また, 18 トリソミーでは
察し, 乾式ミルク加温器の導入と Acineto-
bacter Baumanii 保菌者数の関係について報告する.
染色体異常との関連が示唆された. NT 肥厚例に関して
2005 年から 2007 年の 3 年間について, 監視培養の結
は, 35 歳以上では 11 例中 6 例と高率に染色体異常を認
果を検討した. 培養の頻度は, 2005 年から 2006 年 9 月は
めたが, 35 歳未満では 16 例中わずか 1 例に染色体異常
毎週, 2006 年 10 月以降は隔週で行った. 培養内容は咽頭
を認めるのみであった. また, 一般的には, 児喪失率は
培養,
0.3%程度とされているが, 87 例中 2 例 (2.2%) が羊水検
培養 (MRSA のみ), 眼脂があるときにはこれも
査と関連する流産が疑われ, いずれも正常核型であった.
検査した.
緑膿菌保菌者の増減は VLBW 入院数の増減と関連を
認めた. また手洗い槽排水溝・水道蛇口から緑膿菌を検
最も多い検査理由は高齢妊娠のみの妊婦で, 染色体異常
を認めた症例はなかった.
えられた. MRSA は環境菌
流産率も高いことから, 症例ごとのカウンセリングを
でなく全例持込であった. 2005 年に医師ガウン中止,
慎重に行い, 適応症例を厳選することと, 管理方法の再
出し, 水系を介する感染も
2006 年 5 月に面会者ガウン中止したがこれによる各種
が必要と思われた. 超音波異常のない高齢妊娠症例に
要注意菌の新規出現状況に変化を認めなかった. 2006 年
対する対応を検討することと, NT 精度を上げることが
9 月環境菌検査を行ったところ,ミルクウォーマー・手洗
今後の課題と思われた.
い槽排水溝に A. baumanii を認めた. このため乾式ミル
ク加温器の設置, 蛇口の消毒を施行した. それまで A.
baumanii の保菌を常時 1−4 人に認めていたが, 乾式ミ
ルク加温器へ変
後, A. baumanii 保菌者数は減少しほ
5.出生前診断を受けた母親の心理過程について―外来
での関わりを通して―
田
藤垣
ぼ認めなくなった.
口
素子,萩原
洋子,佐藤
直美
久子
(群馬県立小児医療センター
当院では, 院内感染を引き起こすことで知られるグラ
ム陰性桿菌の保菌者数が多いことが問題となっている.
由佳,
産科)
出生前診断が行われることが日常的であるが, 母親と
えられ, 乾式ミル
その家族は胎児疾患を認めた場合どうするか, その方向
クウォーマーの設置により A.baumanii の保菌者数が減
性を自己決定しなければならない. 診断を受けた母親が
少した.緑膿菌・セラチア菌保菌者は依然多く,環境菌検
どのような心理過程をたどるのかを知り, 今後の外来看
査等を繰り返し対応を検討中である.
護のあり方について
感染経路として水系を介する感染が
えた.
出生前診断を受け外来フォローの後出産した母親 3
名. データ収集 : 半構成的面接法.
中から産褥 1ヶ月
析方法 : 妊婦外来
診までの思いと, 看護者や家族を含
んだサポート体制を中心に聴取し, 逐語録を作成, 体験
したことや思いを抽出し, それらを場面ごとに
類, 対