-1- 講談社発行 ジョー・ソロス著 徳川家広訳、松藤民輔解説 「ソロスは

講談社発行
ジョー・ソロス著
徳川家広訳、松藤民輔解説
「ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ」
私 は 、 金 融 ・経 済 特 に 投 資 に は ほ と ん ど 縁 の な い 存 在 。 投 機 の 才 の 無 さ に 自 分 で 半 ば あ き れ
果てている存在でもある。そんな私が、投機に関してホームページの下記のページで触れて
いる。
http://higejihchan.my.coocan.jp/MyInvestment.pdf
http://higejihchan.my.coocan.jp/ViewOfJikyoku.pdf
http://higejihchan.my.coocan.jp/MC200810187.pdf
私 は ず っ と 資 本 主 義 経 済 と い う の は 、” 借 金 経 済 ” と 定 義 し て き た 。 借 金 に も い ろ い ろ あ
る 。家 族 か ら の 借 金 、知 人 友 人 か ら の 借 金 、同 僚 か ら の 借 金 、サ ラ リ ー マ ン 金 融 か ら の 借 金 、
クレジットで購入という借金、各種ローン(自動車ローンなど)の借金、住宅ローンという
借金、銀行から借りる会社運営のための借金、企業が投資家から資金調達する株式等も借金
である。
金詰まりでどうにもこうにも首が回らなくなって知人友人に価値ある骨董品を抵当にして
金を借りる。その抵当となっている骨董品が、ほとんどの場合贋作であることはテレビの人
気番組の「なんでも鑑定団」が知らしめているところである。当然貸し金は帰ってこない。
私も個人的に利用した借金は、その当時の住宅金融公庫と銀行から借り入れた住宅ローン
が あ る 。こ れ ぞ 個 人 と し て は 非 常 に 大 き な 借 金 で あ る 。最 近 定 期 預 金 を し て も 金 利 は 0.05 % 。
ロ ー ン で 払 っ て い る 金 利 が 3.5 % 前 後 で 預 貯 金 す る よ り 、 ロ ー ン を 返 し た 方 が よ ほ ど 得 と い
う こ と に が 気 が つ い て 有 り 金 全 部 を 集 め て ロ ー ン の 残 金 を す べ て 返 済 し た 。こ れ に よ っ て 、250
万円くらいの利払いを避けることができた。何故こんな簡単なことにもっと早く気がつかな
か っ た の だ ろ う か 。投 機 ・投 資 に 私 が 全 く 疎 い と い う か 、関 心 が な い と い う か の 証 左 で あ ろ う 。
大きな企業が個人投資家や機関投資家から資金を調達するのが一番大きな借金だろう。現
代ではこの株式等による資金調達がなければ、企業は存在し得ないのではなかろうか。もっ
とも無借金経営をしている立派な会社も存在しているが、なきに等しい数だろう。
今回のサブプライム問題は、住宅ローンの破綻が端緒となって大津波のごとく世界を席巻
した。個人を取り巻く経済事情も大企業を取り巻く経済事情も同じ原理で動いている。個人
が破産すれば、この個人に金を貸していた人は損害を被るし、貸した金額がその人が持ちこ
たえられないほど大きなものであれば(友人知人の金融機関からの借り入れの保証人になっ
た 場 合 )、 こ の 人 も 保 証 人 の 責 任 を 果 た せ ず 個 人 も 破 産 す る が 、 金 融 機 関 も 損 害 を 被 る 。 こ
のようなマイナスの連鎖が想像できない規模で発生したのが、今回のサブプライム問題であ
ろう。このマイナスの結果を生む根本原因は、投資や経済の見通しはすべて予測から成り立
っていることであるということである。どんな経済理論を打ち立てても起きていない将来の
事 象 を 常 に 寸 鉄 人 を 刺 す よ う な 間 違 の な い 予 測 は で き る は ず は な い の で あ る。言 い 換 え れ ば 、
将来の経済予測をすべて外れなく的確に立てられるという経済理論というものは、あり得な
い と 言 う こ と で あ る 。 予 測 を 100 % 間 違 い な い も の に す る と い う こ と は 、 不 可 能 ど こ ろ か 、
総枠で考えれば私の信じているパレートの法則を当てはめるならば、投資で利を得るのは投
資 家 や 投 資 会 社 の う ち 20 % 、 損 す る 人 が 80 % で は な か ろ う か 。 つ ま り 正 し い 予 測 は 2 割 、
間違い予測が 8 割と附言できるのではなかろうか。素人投資家の 8 割の人が損をして、2 割
の人が儲けていると私は想像している。
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以 上 書 い て き た こ と を 顧 み る と 、 昔 の 破 産 ・倒 産 は 、 規 模 の 小 さ な 中 小 企 業 か ら 始 ま る か 、
その親会社の倒産からの子会社の連鎖倒産がほとんどであったように思う。それが最近は、
金を貸す銀行などの金融会社の倒産や、証券会社や保険会社の金融のトップにある一番大き
な 企 業 か ら 破 産 し て ゆ く と い う 今 ま で に は な い 破 産 ・倒 産 劇 が 見 ら れ 始 め て い る よ う に 素 人 の
私には見える。そして今回のサブプライム問題に端を発した破産により、世界中が連鎖倒産
に陥ってしまったようだ。
もう一つ考慮しなければならないのは、会社の決算書の内容は常に正しいとは限らないと
言うことである。人間が携わるすべての結果には、人間がやる以上必ず間違いが存在する。
私は以前勤めていた会社で、貸借対照表の数字の意味するところに長年疑問に思っていた
ことがあった。私としては、利益は余り生じていないという判断に相違して、大きな利益が
毎年出ていたのである。経理に疎い私は、その原因をつかめずにいたが、あるとき在庫も資
産のうちという言葉を聞いて、私はマイナスがプラスになるからくりを理解できたように思
った。
会社の倉庫には長年大量のいわゆる死に在庫が眠っていた。調べてみたらその在庫金額が
売れないにもかかわらず、一度も減額措置がなされてこなかったことに気づいた。在庫のほ
と ん ど が 仕 入 れ 価 格 の 90 % 引 き を し て も 売 れ な い よ う な 死 に 在 庫 で あ る 。 そ れ が 仕 入 れ た ま
まの金額で資産の部に計上されてきたのである。
不思議なのは、この実態を会計士が知らなかったのか、社長が丸め込んで生きた在庫とし
て会計士を信じさせてしまったのか、また銀行が何故この決算書の真実を見抜けなかったの
かということである。私は自分の感じ取ったことを社長に説明し、在庫評価をやり直して我
社の資産の実態をつかんで体勢を立て直すべきだと申し上げたが一顧だにされなかった。メ
イ ン バ ン ク で あ っ た 銀 行 が 他 行 と 合 併 し て か ら も 、対 照 表 の 実 態 を 見 抜 か れ ぬ ま ま 推 移 し た 。
そのため長年ボーナス時期に銀行から金を借り入れて会社は多額のボーナスを払ってくれた。
個人的事情で退社した次の年、会社が 1 億 5 千万円の赤字を計上していたことを昔の同僚
から聞かされた。合併していた銀行がさらに他行と合併してから、対照表の真実が把握され
た の で あ ろ う 。 こ の 銀 行 は 、 メ イ ン ・バ ン ク の 座 を 降 り 、 貸 し 付 け ゼ ロ 回 答 の 銀 行 と な っ て し
まった。
この「ソロスは警告する」は、経済・金融に暗い私の理解の外の本であるが、読んで分か
ったことと言えば、上で私が疑問に思っていたことに対する解答書のような気がした。つま
り、いくら高名な経済学者が経済理論を打ち立てても、所詮砂上の楼閣のような存在で、将
来起きてもいないことをその原理を当てはめて予測しても、当たることもあれば当たらぬこ
ともある全く不確実性のあるものであるということだ。当たれば大儲け、外れたら大損。
私 の 頭 の 中 に 焼 き 付 い た キ ー ワ ー ド は 、「 市 場 原 理 主 義 」 と 「 需 要 と 供 給 の 均 衡 点 に 向 か
って価格は収斂するする傾向がある」とする「均衡理論」であった。これらの経済理論の胡
乱さの裏打ちにしているのが「再帰性」という理論のようだが、私にははっきりと理解でき
ないでいる。
将来の経済の動きに対していくら経済理論を打ち立てても、それは「当たるも八卦当たら
ぬ も 八 卦 」 と い う 当 て に な ら な い 存 在 で あ る 。 将 来 の 見 通 し を 100 % 間 違 い な い も の に す る
方 式 、 経 済 理 論 は な い の で あ り 、 こ う い う こ と を 経 済 ・金 融 に 関 係 す る 専 門 家 、 FRB 総 裁 、 財
務長官、証券会社、銀行、などがこのことをしっかり理解していないというソロスの指摘を
私は是とするものである。
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その上、人間は過ちをする動物である。ことさら私利私欲旺盛な人間の見通しには、過ち
がついて回るものと、私は思っている。
い ず れ に し て も 、 経 済 ・ 金 融 ・投 資 に 関 心 の あ る 方 は 、 読 ん で 損 し な い 一 冊 だ と 思 う 。
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