セミ・ノックインマウス - フェニックスバイオ

セミ KI マウス作出文書 2-2.doc
ご依頼主様各位
株式会社フェニックスバイオ
宇都宮事業所
『セミ・ノックインマウス』(組換え BAC ゲノムクローン Tg マウス)
作製受託サービスの概要について
『セミ・ノックインマウス』とは?;
従来から、トランスジェニック(Tg)マウスの作製には、哺乳類ゲノムから得られた数 kb のコアプロモーター配列
に、発現させる遺伝子の cDNA を連結させたシンプルな遺伝子発現ベクターが利用されてきました。このようなコ
ンベンショナルな方法で良好な動物モデルが得られる場合もありますが、導入遺伝子の発現量や組織特異性が内在
性の遺伝子と異なる場合が多く、Tg マウスを用いた研究の妨げになる場合があります。
導入した遺伝子カセットから期待通りにトランスジーンが発現しないケースが頻繁に起こるのは、以下の原因に
基づくと考えられています;
1、プロモーターの活性と特異性;
意図する時期、組織に外来遺伝子を発現させるためには、コアプロモーター配列のみでなく、(多くは未同定
の)エンハンサーなどの制御配列が必要である。
2、ポジションエフェクト;
外来遺伝子がインテグレートされる宿主ゲノムの領域によっては、宿主ゲノムによるサイレンシングを受ける
ことがある。
3、mRNA のサーベイランスメカニズム;
イントロン配列が欠如した cDNA から転写された mRNA は変異を受けた遺伝子の産物と認識されるため、
外来遺伝子から転写された mRNA が特異的に分解されてしまう。
一方、マウスゲノムプロジェクトにより、全マウスゲノム DNA 配列をクローン化した BAC クローンライブラリ
ーが構築され、今や標的遺伝子のゲノム DNA 配列を含む 200 kb のゲノムクローンを迅速に探索、入手できるように
なりました。そこで、このゲノムクローンの標的遺伝子の開始コドンの直後にインフレームになるように、外来遺伝
子(例えば、変異を持つヒトの相同遺伝子座、 Cre カセット、蛍光タンパク質、エピトープタグ等) をコードする
DNA 配列を置換、挿入した組換えゲノムクローンを構築して Tg マウスを作製することができれば、エキソン/イン
トロン構造が維持されている上に、未同定の制御配列が全て含まれていると思われるので、あたかもノックインされ
たように外来遺伝子を発現させることができると考えられます。
従来の遺伝子工学の技術では 100〜200 kb にもおよぶ BAC ゲノムクローンを組み換えてクローン化すること
は不可能でしたが、大腸菌内での能動型相同組み換え反応である、Red/ET Recombination Technology (Zhang
Y et al, A new logic for DNA engineering using recombination in E. Coli., Nature 20 (1998) 123-128)
を応用することにより、特異的に BAC ゲノムクローンの DNA 配列を操作することが可能になりました(図 1)。環
状の BAC クローンをシリカゲルカラムにより精製し、その DNA 溶液をマウスの受精卵にマイクロインジェクショ
ンすることにより、様々な Tg 動物が作製されたデータが既に報告されています。しかしながら、我々の最近の経験か
ら、このようなシンプルな方法では Tg 動物の作製効率が著しく不安定であることがわかりました。
そこで、理化学研究所バイオリソースセンター、動物変異動態解析技術開発チームの阿部 訓也先生にご指導を
いただき、同チームで確立された方法を用いました。環状の BAC クローンを特異的制限酵素でリニアライズさせ、パ
ルスフィールド電気泳動でその長鎖の DNA を精製し、前核期受精卵にマイクロインジェクションすることにより、
短鎖の DNA フラグメントをマイクロインジェクションした場合と比べて同等の効率で、BAC クローンの Tg マウス
を作出できるようになりました。(阿部ら、投稿準備中)
以上に示した手法で、標的遺伝子のゲノム BAC クローンを探索、GFP などのタグ配列やドミナントネガティブ変
異を導入した組換えゲノムクローンの構築、高純度の組換えゲノムクローンの精製を行ない、従来と同様にマイクロ
インジェクション法で Tg マウスの作製を行なう事によって、あたかもノックインマウスのように正確に組織、時期
特異的にトランスジーンを発現するマウスモデルを、短期間に作出することが可能になりました。弊社はこのモデル
マウスを『セミ・ノックインマウス』と呼んで、様々な研究分野を支援する受託サービスを行なっております。
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セミ KI マウス作出文書 2-2.doc
作業内容:
標的遺伝子の全てのエキソン/イントロン
配 列 、 お よ び 5' お よ び 3' 隣 接 領 域 を 含 む
C57BL/6 系統マウス由来のゲノム BAC クロー
ンを単離する。Red/ET テクノロジーを利用して
(図1)、標的遺伝子の停止コドンの塩基配列の
直前にタグタンパク質をコードする遺伝子カセ
ットを挿入し、組織特異的に標的遺伝子とタグタ
ンパク質が融合したキメラタンパク質を組織特
異 的 に 発 現 さ せ る た め の 組 換 え BAC 型
(RecBAC)発現ベクターを構築する。
パルスフィールド電気泳動により高純度に精
製された RecBAC 発現ベクターを調製し、マイク
ロインジェクション、または精子ベクター法によ
り RecBAC 発現ベクターを C57BL/6 系統マウ
スの受精卵に注入し、その産子を得る。これらの
産子からゲノム DNA を抽出して、サザン解析法に
より RecBAC 発現ベクターがゲノムにインテグ
レートされたマウス(セミノックインマウス)、
ファウンダーを同定する。
同定されたファウンダーを野生型の同系統マウスと交配し、サザン解析によりセミノ
ックインマウス、G1 個体を同定し、導入遺伝子が生殖系列細胞に伝達されたセミノック
インマウス系統を供給する。
作業行程とタイムライン
(1)標的遺伝子のゲノムクローンの探索、および取得(1ヶ月)
1、標的遺伝子の cDNA をクエリーにして
マウス BAC クローンライブラリーを
検索し、標的遺伝子のゲノム配列を含
むマウス BAC クローンを探索する
(図2)。
2、マウス標的遺伝子を含む BAC クローン
を入手する。
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セミ KI マウス作出文書 2-2.doc
(2) Red/ET テ ク ノ ロ ジ ー を 利 用 し た
RecBAC 発 現 ベク タ ー の 構 築 ( 1.5 ヶ
月)
1、大腸菌のセレクションマーカーを含む
フラグメント、および標的遺伝子のゲ
ノム DNA 配列をタンデムに連結させ、
Red/ET ターゲティングベクターを構
築する。
2、タグタンパク質をコードする遺伝子カセ
ット、および標的遺伝子のゲノム DNA
配列をタンデムに連結させ、トランス
ファーフラグメントを構築する。
3、BAC クローンのマウス標的遺伝子の特
異的領域に、Red/ET ターゲティング
ベクターを挿入させる。
4、トランスファーフラグメントにより 、
Red/ET ターゲティングベクターに含
まれる大腸菌のセレクションマーカー
を置換、除去する。
5、シークエンス解析、サザン解析法により
構築した RecBAC 発現ベクターのコ
ンフィギュレーションを確認する。
(3)高純度 RecBAC 発現ベクター溶液の調製(0.5 ヵ月)
1、RecBAC 発現ベクターでトランスフォームされた DH10B 大腸菌株を培養する。
2、培養した菌株から環状 RecBAC 発現ベクターを抽出、精製し、制限酵素 PI-SceI による
直鎖化を行う。
3、直鎖化された高分子の RecBAC 発現ベクターをパルスフィールド電気泳動により分離
させ、目的のサイズの DNA 断片を含むゲルを切り出して、電気溶出により遊離させ
る。
4、透析により受精卵注入用バッファーに置換し、4℃で使用するまで保存する。
(4) 受精卵への遺伝子導入、セミノックインマウスファウンダーの作出(2ヵ月)
1、過排卵処置を施された若齢の雌性 C57BL/6 マウス個体と雄性同系統マウス個体との
交配により採取される受精卵に、高純度 RecBAC 発現ベクター溶液を顕微注入し、
セミノックインマウス、ファウンダーの候補個体を得る。
(5) サザン解析によるセミノックインマウスファウンダーの選抜(組織採取後1ヵ月)
1、 得られた産子を離乳まで育成し、その組織サンプルを生検してゲノム DNA を抽出する。
2、 ゲノム DNA サンプルを制限酵素で完全消化させ、生成したフラグメントをアガロース
ゲル電気泳動で分離してナイロンメンブレンにトランスファーする。
3、 RI 標識された TetR プローブとサザンブロットをハイブリダイズさせ、セミノックイ
ンマウス、ファウンダーを選抜する。
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Red/ET テクノロジーとゲノムライブラリー
を利用した組換えゲノム発現ベクターの構築
レポーター遺伝子
レポーター遺伝子
マウス ( ラット ) ゲノム由来
標的遺伝子座
マウス ( ラット ) ゲノム由来
コアープロモーター
組換えゲノムクローン ( 〜
200 kb)
マウス ( ラット ) ゲノム由来組織
特異的エンハンサー
パルスフィールド電気泳動による高分子 DNA フラグメントの精製
マイクロインジェクション、サザンスクリーニング
図4、セミノックインストラテジーの概要
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セミノックインマウス作出受託サービス 価格表
標準価格(税込)
標的遺伝子を含む BAC ゲノムクローンの取得
¥105,000
BACDNA シークエンス解析(エキソン 10 個)
¥160,650
組換え BAC 型標的遺伝子発現コンストラクト
長鎖高純度 DNA フラグメントの精製
C57BL/6 系統マウス、マイクロインジェクション
(300 ユニット)
サザン解析によるファウンダーの選抜
¥2,679,600
¥315,000
¥1,260,000
¥315,000
以上
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