導入事例 ティーオーエー 「 音空間 」を創造する業務用音響システムのトップメーカーが、 SAP R/3とSQL Server 7.0により基幹情報システムを再構築。 TOA(ティーオーエー)株式会社は、国内の90%の主な空港の放送設 備、ウィーン国立歌劇場のフルデジタルミキシングシステム、NHKホ ールの音響システム、横浜ランドマークタワーの非常用放送設備など を手がけた、業務用音響システムのリーディングカンパニーである。 Windows NT 4.0をプラットフォームとして、Oracleデータベース、 SAP R/3会計モジュールを1999年4月より稼働したが、2000年4月、 データベースをOracleからSQL Server 7.0に移行。2001年の全社 業務システム構築をIT推進の契機としてさらなる飛躍を図っている。 ■ソリューション概要 ●ユーザー:TOA株式会社(ティーオーエー株式会社) 本社所在地:〒650-0046 神戸市中央区港島中町7丁目2番1号 代表取締役社長:神田忠起 資 本 金:52億8,000万円 従業員数:794名 売 上 高:252億1,200万円 設 立:昭和24年(1949年)4月20日 事業概要:拡声放送機器、通信機器、その他情報伝達機械器具の製造販売/音 響機器、映像機器、その他電子・電気機械器具の製造販売/上記機 器の賃貸ならびに工事の設計施工/不動産の賃貸および管理/ホー ル・スタジオの賃貸経営ならびに音楽等のイベント・催し物の企画 運営/上記に付帯または関連する一切の事業 ●システム概要 SAP R/3(財務会計/管理会計/販売管理/在庫・購買管理/生産管理 )によ る全社経営基幹情報システムの再構築 ●使用ソフトウェア ・Microsoft SQL Server 7.0 ・Microsoft Systems Management Server ・Microsoft Windows NT Server 4.0 ・Microsoft Windows 98 ・Microsoft Windows 95 ・SAP R/3 ●システム導入のメリット ・SAP R/3の導入により、経営基幹情報システムの再構築に順調に着手 ・データベースをSQL Server 7.0へ移行後は、自動チューニング/管理機能に よりデータベース領域の管理もスムーズ ・SQL Server 7.0に移行してから、パフォーマンスの面で問題はまったくなく、 トラブルも発生していない 国内空港放送設備の90%の納入実績を 誇る、 “ 音空間”創造企業 TOA株式会社は、業務用音響システムのトップメーカー として、人々が集まるさまざまな場所で、安全・確実・快適な TOA株式会社 管理本部 情報システム部長 小熊 晃一氏 “ 音 ”環境の創造に取り組んでいる。 TOAは、みずからを “ We're Maker.” と呼んでいるが、そ の意味は、音響システム機器のメーカーという狭い領域にと どまらず、 “ 音 ”あるいは“ いい音が流れる空間 ”そのものを 創り出す企業であるということだ。 TOAの事業分野は多岐にわたっているが、大きく情報伝 達と空間演出の2つに分けることができる。 情報伝達の分野は、空港、高層ビル、鉄道の車両、会議場、 実績を振り返る。 同社では、生産管理、販売管理、会計、物流などの基幹シス テムが、メインフレームをベースに個々に開発されてきたが、 ホテルなどの放送・音響・非常用放送設備などを指す。とくに 1998年から、経営基幹情報システムの再構築を目指す中期 空港については、関西国際空港をはじめ新東京国際空港、東京 計画がスタートし、ERPパッケージの導入が決定された。 国際空港など国内の90%の空港の放送設備を納入している。 この中期計画には、情報武装化/業務の簡素化/ダウンサイ また、空間演出には、オペラハウス、放送、ホール、ドー ジングという目的があった。 ム、スタジアム、大規模商業施設が含まれる。オペラハウス 「ベテランが退職すると業務のノウハウもなくなってしまう の実績として、ウィーン国立歌劇場、ドイツのケムニッツ州立 のではなく、できるだけ業務を標準化して、仕事の質は落と 歌劇場のフルミキシングシステムがある。 さない。また、企業独自のやり方ではなく、世の中の標準的な 仕事のやり方に合わせて、無駄な作業をしないことが必要で す。そのためにERPパッケージには、ツールとしての運用性 に優れ、 ブラックボックスとして十分な機能が要求されます」 (小熊氏) TOA株式会社 管理本部 総務部 広報課 主任 吉村 真也氏 デファクトスタンダードとしてSAP R/3を選択、 OSは迷わずWindows NT 4.0に決定 ERPパッケージの導入に際して、TOAでは以下のような 選択の基準を持っていた。 ・基幹業務に必要な機能を十分に備えていること。 同社管理本部総務部広報課主任吉村真也氏は、同社の事業 分野の広さについて次のように述べている。 「当社は、 1954年 に世界初の電気メガホンEM-202を開発し、その後選挙用の スピーカーで事業の基礎を築きました。現在は、機器ではなく “音を買っていただく” ことを社訓にする創造的企業です。防 ・機能面ばかりでなく、ベンダーに信頼性、製品導入実績、 将来性があること。 ・ベンダーのパートナーの企業数、コンサルタント数が十分 であり、教育体制が整っていること。 ・導入するパッケージが、デファクトスタンダードになりうる 災・防犯用の監視カメラが売上の20%を占めていること、 ものであること。 神戸ルミナリエの音デザイン、さまざまな音に関するイベン これらの点を検討した結果、ベンダー3社の提案の中から トをXEBECホールで開催している点を評価され、1995年 に企業メセナ大賞を受賞したことなども、ぜひ皆様に知って いただきたいと思います」 SAP R/3が選択された。 さて、同社ではSAP R/3の導入を検討する際に、ネット ワークOSとしてUNIXかWindows NT 4.0のいずれかを選 ぶ必要があった。 自社開発の個々の基幹システムから、 世界標準ERPパッケージ導入へ TOA株式会社管理本部情報システム部システム課長松室 慎二氏は、選択の決め手として、Windowsの文化の存在を 挙げる。 「1970年に初代のメインフレームを導入し、生産管理システ 「UNIXとWindows NTということでは、当初からWindows ムを稼働しました。1977年には、全国の営業所からパンチ NTと決めていました。1992年にいわゆるDOS/Vパソコン カードを使用して販売データを本社に集約していましたが、 をはじめて導入しました。1996年に、全国の営業所を含め 1980年東北ブロックを手始めにオンライン化を推進しま て全社規模でグループウェアを導入しました。1997年に した。1978年から会計処理システム、1981年には物流シ Windows NT Server 4.0を全国に設置し、営業支援システ ステムのオンライン化に着手しました。情報系システムは、 ムを導入しました。部内ではWindowsの文化といってもい 1996年からグループウェアを全社に導入し、1998年に社 いものが育っていました。SAP R/3も当初は会計モジュール 員1人1台のPC利用環境を実現しています」 と、TOA株式会社 のみだったので、機能的にもWindows NTで十分対応でき 管理本部情報システム部長小熊晃一氏は情報システム構築の ると考えました 」 ライセンスコストと自動チューニング機能を比較し、 SQL Server 7.0への移行を決断 TOAでは、SAP R/3の導入に際して、いったんWindows TOA株式会社 管理本部 情報システム部 システム課長 松室 慎二氏 NT 4.0とOracleデータベースの組み合わせで運用を始めて いながら、約1年後にデータベースをMicrosoft SQL Server 7.0に移行した。この間の経緯は、どのようなものであったの だろうか。 当初は、Windows NT 4.0プラットフォームに対しても、 Oracleデータベースの実績が豊富であるという判断から、 Oracleの導入が決定した。 この時点では会計モジュールのみ10GB程度の容量だった しかし、運用約1年を経た2000年4月、以下の2点の理由 が、ハードウェアを変更しなかったため、ユーザーはデータ から、SQL Server 7.0への移行が検討された。 ベースの移行をまったく意識することなく、すべての作業を ・Oracleのライセンス契約保守料がアップし、今後のシス 終了した。 テムの全国展開を考慮すると、コスト面で不安が生じた。 TOAの現状のシステム構成は図のようになっている。本社 ・データベースとしてOracleは高い信頼性を持っているが、 情報システム部には、データベースサーバー (SQL Server 7.0、 細やかなチューニングが必要であった。この点、SQL SAP R/3搭載) 、アプリケーションサーバー (SAP R/3搭載、 Server 7.0は、運用面でほぼ自動化されており、併せて 近く導入予定 )、生産子会社向けアプリケーションサーバー レスポンスの迅速性も評価された。 (SAP R/3搭載、同じく近く導入予定)、開発用サーバー また、Microsoftが全社でSQL Serverを使用しているこ (SAP R/3) 、BWサーバー(SAP BW 2.0)が、各1台ずつ とはもちろん、ブリヂストン株式会社など、導入事例が豊富 設置されている。 になってきたことも移行の契機になった。SAPジャパンと いずれも、Windows NT Server 4.0を搭載したこれらの Microsoftの親和性も、安心できる材料のひとつであったと サーバーは、メインスイッチ “CoreBuider3500” と2台のル いうことだ。 ータを経由して、全国の営業所、関連会社など44台のルータ マイグレーションは、開発用マシンにより、SAPジャパン に、 フレームリレー網、ISDN網などによって接続されている。 のSEが中心となって2000年4月19∼22日の4日間で完 PCは、全社で約900台が導入され、1人1台の環境を実現し 了した。データの移行に関してはほとんど問題がなかったが、 ている。 SAP R/3のカーネルの入れ換えとデータベースのエクスポ SAP R/3のモジュールは、1999年4月にFI(財務会計) 、 ートとインポートに多少時間がかかった。 CO(管理会計) が稼働、データベース移行後、2000年7月か データベース移行後の検証作業は、5月の連休に本番用マ らはSD(販売管理)、MM(在庫/購買管理) 、PP(生産管理) シン上で、 やはりSAPジャパンのSEを中心に2日間で行った。 モジュールが稼働している。 ●システム構成図 <情報システム部> Windows NT Server 4.0 SAP R/3 SQL Server 7.0 PⅡXeon x 4 2GB RAM DBサーバー <営業所など> Windows NT Server 4.0 SAP R/3 Windows NT Server 4.0 SAP R/3 Windows NT Server 4.0 SAP R/3 Windows NT Server 4.0 SAP BW 2.0 PⅢXeon x 4 2GB RAM PⅡ 1GB RAM PⅢ x 2 2GB RAM PⅢ x 2 1GB RAM APサーバー 開発用サーバー. 生産子会社向け APサーバー 全国38ヶ所の営業所、 関連会社など BWサーバー フレームリレー網 ルータ メインスイッチ ルータ LBP SAPLPD クライアント クライアント クライアント 本社、東京、大阪、名古屋の 各営業所など6ヵ所 データベース領域の管理もスムーズ、 障害のない安定したシステム運用を実現 ることができるようにしたい。全国一律で推進することは難 しいので、まずモデル地区を設定し、徐々に全国に拡大して いく方針だ。 Oracleデータベースの運用時には、データベース領域の EC/EDIへの対応は、SAP R/3をグループのスタンダード 管理、チューニングに際して、細かいパラメータ設定が必要 として拡大していくことが前提になる。たとえば、グループ だった。 内で伝票の形式一つをとっても、まだ標準化されていない段 情報システム部のスタッフが、Oracleデータベースの操 作に慣れていないことも原因のひとつだったが、販売データ 階だが、SAP R/3をコアにして各社が標準に合わせる努力 をしていけば、EC推進の基盤ができていくことになる。 を夜間にバッチインプットするときに、Oracleデータベー 「 今後、ひとつの企業の独自開発システムというものは、 スの領域を増やす必要が生じ、領域管理がうまくいかず数回 徐々になくなっていくことでしょう。SAP R/3に期待するこ パンクしてしまった。 とは、Microsoftをはじめパートナー企業との親和性を強め、 これに対して、SQL Server 7.0への移行後は、ディスク たとえば入社して間もない社員でも、ひとつのツールと同様 容量が全体として十分かどうかを注意していれば、あとは自 の感覚で、らくらく操作できるように標準化を進めてほしい 動データベースチューニング/管理機能により、放っておい ということです」 (小熊氏) てもデータベース領域の管理も行ってくれるので、たいへん 手離れがよくなった。視覚的なSQL Server Enterprise Managerの操作性も、満足のいくものであった。 SQL Server 7.0に移行してから、パフォーマンスの面で 問題はまったくなく、大きなトラブルも発生していない。 Windows 2000のActive Directory、 IntelliMirrorにより、 見積管理システムの一元管理も可能 TOAでは、営業支援用として、各営業所のPCに見積管 2001年にメインフレームを撤去し、 全社業務システムをSAP R/3をベースに構築 理/物件管理システムを導入している。このアプリケーショ ンは、MS-DOSで開発され、現在Visual Basicに移行しつ つある。 TOAは、経営基幹情報システムの再構築を、次のように 継続していく計画だ。 まず、大きな目標として2001年7∼8月にかけて、TOA Windows 2000のActive Directoryと分散ファイルシ ステムを利用することにより、システム内に分散するデータ やネットワークリソースの一元的管理が可能になる。また、 株式会社単体で業務システムを再構築する予定だが、重要な IntelliMirrorテクノロジーによって、情報システム部から営 ポイントは、その際にメインフレームを完全に撤去するとい 業所へのソフトウェアの自動インストールなどの管理も容易 うことだ。そして、今後はグループ会社への展開も視野に入 になる。これらのWindows 2000の新機能を利用すれば、 れている。 どのPCからログインしても、同一環境で作業することがで また、Windows 2000については、2001年の業務シス テムの構築を前に、次期のクライアントマシンの更新に合わ きるように、情報システム部からの管理をさらに効率的に行 うことができるだろう。 せて、一気にOSをWindows 2000に引き上げる計画も検 討中だ。現状では、クライアントのOSは、Windows 95を 中心にWindows 98も混在している。 モバイルソリューションについては、現状では、情報シス テム部門のノートPCからSAP R/3の画面を開くことが可 ●TOA株式会社 宝塚事業場 管理本部 情報システム部 〒665-0043 宝塚市高松町2-1 能な段階。近い将来、各営業所の営業マンが、Windows TEL.0797-71-2211 2000搭載のノートPC上で出先でも即座に見積書を作成す http://www.toa.co.jp/ ●SAPジャパン株式会社 西日本支社 西日本営業本部 SAP R/3“ 受注伝票一覧 ”画面 〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田3-3-10 梅田ダイビル TEL.06-6345-3059 FAX.06-6345-3050 http://www.sap.co.jp/ © 2000 Microsoft Corporation. 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