会議録要旨 - 神戸市

第6回こうべUD広場 (こうべユニバーサルデザイン推進会議) 会議録要旨
日時:平成15年10月21日(火) 午後1時∼5時
場所:ビッグアイ国 際 障 害 者 交 流 センター
開
会
●田 中 座 長 :先 ほど、見 学 会 という形 でこの「ビッグ・アイ」を見 ていただきました。内 容 的 には、まだまだこれか
らユニバーサルデザインとして改 善 していくということの可 能 性 を秘 めた施 設 だったと思 う。
それでは、ユニバーサルデザイン「UDのまち神 戸 」、これの都 市 像 を検 討 するということで、前 回 もグループ
に分 かれて討 議 していただいたけれども、実 は、このきょう議 論 していただきます結 果 を取 りまとめまして、来 る
11月 2日 のハーバーランドである、「UDフォーラム」において市 民 の皆 さん方 に発 表 したいと思 う。発 表 といっ
ても、結 果 として発 表 するのでなくて、UDの原 則 であるプロセスを大 事 にするということで、このUD広 場 に集 ま
っていただいた皆 さん方 の意 見 だけじゃなくて、広 くいろんな方 に聞 いていただいて、さらに神 戸 全 体 このUD
の考 え方 を皆 さん方 と共 有 していきたいというふうに思 う。ということで、漠 然 と議 論 する予 定 ではなく、その発
表 があるという前 提 で、どういう発 表 をするか、どういう内 容 にまとめていくかということで考 えていきたいと思 う。
ということで、そういったターゲットとすべきUDフォーラムについて、大 体 どういうような予 定 、段 取 り、イメージを
持 っているかということにつきまして、当 日 の進 行 等 を事 務 局 のほうからお話 をしていただく。
●事 務 局 (三 原 保 健 福 祉 局 計 画 調 整 課 主 幹 ):「こうべユニバーサルデザイン2003」のチラシが入 っている。
当 日 は、11月 2日 、イベントは13時 から15時 30分 までということになっている。内 容 としては、「こうべUD広 場 」
の公 開 シンポジウム、テーマは「みんなでつくる神 戸 のまちづくり」である。それから、見 寺 先 生 のほうでつくって
いただいている「ユニバーサルファッションショー」、それから、「だれでもトイレアイデア募 集 表 彰 式 」、それから、
「中 学 生 によるまちのユニバーサルデザインの体 験 事 例 発 表 」、これは長 田 中 学 校 と渚 中 学 校 である。また、
ユニバーサルデザインの商 品 展 示 なども行 いる。そういう内 容 、流 れで行 う。
最 初 にUD広 場 の紹 介 として、設 立 の趣 旨 とかこれまでの取 り組 みを田 中 先 生 のほうから簡 単 に皆 さんにお
話 していただき、きょう議 論 していただくが、とりあえず4つの分 野 ごとの「まちづくり」、「ものづくり」、「くらしづく
り」、「意 識 づくり」、それの取 りまとめを、キーワードなり整 理 したものを発 表 していただく。先 生 のほうともお話 し
たが、皆 さんにぜひ全 員 ご発 表 していただきたいが、時 間 の都 合 もございるので、それぞれ分 野 ごとに一 人 ず
つ今 日 できましたら発 表 者 の方 を決 めていただいたらと思 う。その後 、当 日 、矢 田 市 長 も来 ていただく予 定 に
しているので、市 長 との意 見 交 換 をした後 、また会 場 の参 加 されている市 民 の方 とも意 見 交 換 をその後 5分 と
15分 、合 わせて20分 ぐらい考 えている。最 後 に、これからの進 め方 とか2005年 に向 けてのまとめということで座
長 の田 中 先 生 のほうからまとめをしていただく。
今 日 は、今 からこの4つの分 野 の発 表 の仕 方 とか、どういうところにポイントを置 いて発 表 したらいいかというよ
うなことをそれぞれの部 会 ごとに検 討 していただければと思 う。
●田 中 座 長 : 当 日 は、今 ご説 明 があった広 場 での進 行 に加 えて、周 辺 にパネル展 示 とか、あるいは、いろん
な方 に来 ていただいて楽 しんでいただこうということで、「お楽 しみ抽 選 会 」もあるというようにもちらっと聞 いてい
るが、いろんな形 で盛 り上 げていきたいと事 務 局 では考 えているようであるので、したがって、ぜひご近 所 の方 と
か、お知 り合 いの方 を会 場 に来 ていただけるように、またご案 内 をお願 いしたいと思 う。
2.「UDのまち神 戸 」都 市 像 の実 現 のための取 り組 みについて
●田 中 座 長 :それでは、「UDのまち神 戸 」の都 市 像 の検 討 に入 りたいと思 う。
前 回 は二 つのチームに分 かれて、分 野 ごとに分 担 を決 めさせていただいていると思 う。今 日 は、皆 さんから出
されたご意 見 を、事 務 局 のほうで資 料 2のほうにまとめてもらっている。既 にチームに分 かれて座 っていただい
ていると思 うが、この資 料 をもとに各 自 出 された意 見 発 表 ・意 見 交 換 を行 っていただきたいと思 う。次 回 のUD
フォーラムで発 表 するというご紹 介 を先 ほどしましたけれども、どういった内 容 の骨 子 でいくのかと、そういう考 え
方 をあらわす言 葉 、キーワードでそういったものをぜひ抽 出 していただき、ぜひその整 理 の方 法 を、発 表 者 を
決 めることと絡 めてご議 論 いただきたいと思 う。
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【まちづくり・ものづくりチーム】
●進 行 役 (岩 崎 ):どうしてもしなければならないのが、最 後 に発 表 者 を決 めるということと、こちらは「まちづくり」
「ものづくり」の二 つに最 終 なっていまして2名 要 る。それで、何 を発 表 するのかということであるが、どのキーワ
ード、どのポイントを発 表 しようかということを今 日 は決 められたらと思 う。
とりあえず、宿 題 といっていたところで、宿 題 を出 してくださった方 々、あるいは間 に合 っていない方 もおられる
と思 うが、宿 題 について1人 3分 ぐらいでざっとまず一 度 報 告 していただいて、それから、その中 で一 番 キーワ
ードになりそうなこと、それぞれの方 、「これをキーワードでいったらどうか」ということもあわせてご発 表 いただけ
たらと思 う。
●長 坂 :一 つは、いつも言 われている「できるだけ相 手 の立 場 に立 って」ということなんだが、なかなか相 手 の立
場 というのが理 解 ができていないので、例 えば、そういういろんな立 場 のというか、状 況 の人 から意 見 を聞 くとか、
今 あるものを点 検 して、これもやられているが、もう少 し気 づきが要 るのかなということである。
2番 目 に、わかりやすい案 内 サイン。これは、かなりピクトグラムとか最 近 整 備 されているので、そういうものをよ
り積 極 的 に活 用 するのかなと。
3番 目 が難 しいが、つながりを考 えてと。特 に交 通 機 関 の結 節 点 というか、そのあたりで、どうしても自 分 の施
設 中 心 で考 えて、商 業 施 設 なんかは特 に自 分 のところに引 っ張 るような整 備 をしているが、もう少 し次 々と誘
導 していくというか、そういう視 点 が要 る。どうやってそういうことを皆 さんがするのかということが課 題 だが、そうい
うことが少 し要 るのかと。
それから、サインで補 足 するのはやはり一 定 の限 界 があるので、建 物 をつくる当 初 に、わかりやすくつくるとい
う観 点 も非 常 に要 るのかなと。いろんな複 合 した施 設 でしたら、事 情 もあるけれども、建 物 をつくる当 初 から、理
想 をいえば、サインがなくてもわかるような建 物 を。
●進 行 役 (岩 崎 ):私 は、幾 つかこれも、これも書 きますと言 ったものを片 っ端 から入 れるため、こんな形 で考 え
てみたらというのを無 理 やり枠 組 みをつくって、書 けることだけを書 いてみようとしました。
まず、《多 くの市 民 が利 用 する施 設 》についてビジョン・目 標 というものをどんな視 点 から考 えたらいいのかなと。
ここでの「便 利 」というのは何 なのか、「快 適 」ってなんやろか、それから「わかりやすい案 内 」というのが何 やろか
というのを、目 標 がすっとできたらなんだが、もうひとついろいろアイデアが浮 かびませんで、「安 心 」とか、「清
潔 」とか、「安 らぐ」とかいうのをセットするのでしょうけれども、「こういうのを目 標 」と一 言 で言 うのがなかなか難 し
いなと、書 き出 してみて思 いました。
それから次 に、具 体 的 な取 り組 みを考 えたらどうだという、それを考 えるときに一 番 ポイントになるのは何 なの
か?急 がねばならんのは何 なのか?市 民 の皆 さんにUDのことを考 えてもらう、市 民 の関 心 を喚 起 するというふ
うな効 果 の高 いものは何 か?というふうなことで、そういう視 点 から考 える。
そういうことであるが、長 坂 さんもさっきおっしゃったのであるが、そもそも相 手 の気 持 ちというけれども、相 手
のことがわかっていない、何 が要 るのかがよくわかっていない。今 日 もここを見 学 させていただいて、なるほど、
なるほどと思 うことはいっぱいだが、そういうものを、神 戸 としても、もう一 度 「こういうのが あったら いいのに」、
「こうだったらいいのに」という、アンケートをやってみるということ。それぞれの施 設 について、ちょっと休 憩 した
いな、のどが渇 いたなというふうなところを何 かアンケートで聞 いてみる。
それから、「UDみんなでチェック」というか、診 断 書 みたいな基 準 をつくって、いい施 設 は表 彰 してあげるとい
うふうなことは考 えていけないか。「調 査 する」という視 点 で少 し取 り組 みを考 えたらと。
次 は「つくる」である。ソフト面 で「つくる」、あるいはハード面 で「つくる」ということを、この視 点 から考 えたらと。
これもなかなかいいアイデアが浮 かぶのではないか。
もう一 つの視 点 、「知 らせる」ということから考 えたらどうか。例 えば、施 設 をずっと調 査 して、UD合 格 ステッカ
ーみたいなもので、1級 合 格 とか、3級 合 格 とか、ランクをつけるのかどうかわからないが、この施 設 はということ
で使 っている人 が「どこがUDなんや」というので見 てくださるというふうなところも、いろいろ中 身 を知 らせる効 果
があるのではないか。
それから、スケジュールとしては、何 か目 標 になるポイントに何 をやっておくのかということでセットする、あるい
はそれを実 現 するためにその過 程 が決 まるという形 で考 えるのが正 解 ではないかと私 は思 いまして、平 成 17年
にユニバーサルデザイン全 国 大 会 をやろうということになっているが、そのときに何 かここまでをやっておこうとか
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という形 で考 えたらということである。
一 通 り全 部 をざっといってしまって、どこに一 番 力 点 を置 けそうかということについて皆 さんでご意 見 をいただ
いたらと思 う。
その次 が、2ページ、《みんなが使 いやすい交 通 施 設 (駅 、電 車 、バスなど)》である。これは信 川 さんがプリン
トを出 していただいている。信 川 さんは欠 席 であるので、書 いていただいているのを読 みますと、「バリアの種 類
は多 様 である。エスカレーターやエレベーターを設 置 すれば、それで終 わりではないし、いくらノンステップバス
を高 額 で購 入 しても、バス停 の施 設 が十 分 でなければ、また、違 法 駐 車 によって、バスがバス停 に近 づけなけ
れば、上 下 移 動 が生 じ、バリアとなる」。
また、「駅 にバリアがなくなっても、自 分 たちの生 活 空 間 、自 宅 からバス停 まで、バス停 から目 的 地 までの歩
行 経 路 に至 っては、依 然 手 づかずである。都 心 に行 けば、違 法 駐 車 駐 輪 で満 足 な移 動 すらできない」。全 部
トータルでやっていないということである。
駅 にバリアがなくなっても、 自 分 たちの生 活 空 間 、自 宅 からバス停 まで経 路 ができていない。
道 路 が自 動 車 中 心 というものを、公 共 交 通 も含 めて自 転 車 みたいな環 境 にやさしいものというふうなところを
トータルで見 ていく必 要 がある。
歩 行 者 が歩 きやすく、自 転 車 が走 りやすい空 間 というのは、身 体 に障 害 のある方 にとって移 動 しやすい空 間
であるならば、ぜひそのように合 わせ全 部 がいいという形 にしたらいいなということのご提 案 である。
私 もそれでちょっと書 いているのが、これも同 じように「UD診 断 書 」としているのだが、これから後 でいいたいこ
とは、居 心 地 のよい駅 というふうなところで、やっぱりチェックシートをつくる。スケジュールイメージとして一 番 最
後 に書 いている、やはり一 番 関 心 に結 びついていくのは、駅 のバリアフリー化 をどんどん進 めていく。ここはバリ
アフリー化 ができたよということをうまく発 表 していくというふうなところが、一 番 ポイントになるのではないかなとい
う取 り組 みのほうから考 えてみた。
それぞれ便 利 というのは何 か、安 全 というのは何 か、快 適 というのは何 かというのは、例 えばこんなところから
考 えてみたらということであるが、具 体 的 に何 をというキーワードがもうひとつ見 つかっていない。
次 のページには先 ほどの信 川 さんの続 きが載 っていました。ヨーロッパに多 くある歩 行 者 と公 共 交 通 専 用 のト
ランジットモールは、都 心 の活 性 化 と歩 行 空 間 の開 放 に大 きく寄 与 するといわれており、神 戸 の都 心 において
実 現 に向 けた動 きをすべきである。
具 体 的 に、①社 会 実 験 により、トランジットモールをやってみたら。
②違 法 駐 輪 ・駐 車 は民 間 NPOで取 り締 まれるよう特 区 を設 ける。
③市 民 にモニターになってもらうようなことをしたらどうか。
④商 業 者 も通 行 人 が増 えることにより潤 う。このような社 会 実 験 をやってみたらどうかという提 案 である。
次 に《観 光 のUD化 》ということについて、
●森 崎 :先 ほどのお話 にもありましたように、次 々と誘 導 していくということなんだが、その誘 導 していく中 で、観
光 ポイントというか、まさに観 光 地 をUD化 するというのもそうなんだが、きょうこのビッグ・アイを見 せていただい
たのだが、これも一 つの観 光 である。UDであることを見 に来 るというのも、まだそのレベルといったらおかしいけ
れども、みんなが「なるほど」とうなずいているところというのは、一 つの観 光 ポイントでもあるので、じゃ、それを神
戸 のまちらしいUDというのはこういうことなんだという、UDというものを神 戸 らしいもので見 せていくという、それ
を観 光 ポイントにしてしまうという。
商 店 街 とのかかわりになりますけれども、平 成 17年 は大 河 ドラマで「義 経 」が予 定 されていて、まさにざっくり
観 光 といいましたら、それがテーマではないか。観 光 業 者 、観 光 産 業 というか、それがこの17年 に重 なります。
それじゃ何 かというが、「義 経 」をUD化 するかと。例 えば、須 磨 寺 界 隈 のところに例 えば道 の駅 のようなスポット
をつくって、それがUD的 なもてなしをやられるというスタイルを重 ねていくということが何 かいいんではないかと
思 う。どうしても観 光 事 業 化 していきますので、それとかぶさってやっていきますと、まち・地 域 への浸 透 も深 まる
のではないか。平 成 17年 はそういう年 である。
●進 行 役 (岩 崎 ):僕 の書 いているところは余 り中 身 が出 てないが、後 で考 えたのだが、神 戸 観 光 UDパンフレ
ット、リーフレットみたいなものをつくることかなと考 えていたが、どこかモデルをつくって、来 ていただいてという
ふうなことを考 えるのに、今 の義 経 絡 みというのでどこをモデルにするのかというのは一 つの視 点 ではないか。
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●森 崎 :描 きやすいし。つくり方 といえばつくり方 なんだが、みんなが「なるほど」と思 えるようなテーマのほうが、
それでいてUDなんだと思 う。
●平 野 :今 まで箱 ものとか観 光 施 設 というものはあったが、今 はそういうものに頼 るのではなくて、先 ほどからも
お話 に出 ているのだが、一 人 一 人 のまち全 体 のおもてなしの気 持 ちでまた来 たいまちというように感 じていただ
けるような、そういう取 り組 みをしていこうということで、今 おもてなしについての取 り組 みを神 戸 市 のほうで、もち
ろん神 戸 市 だけではできませんので、皆 さんのご協 力 をいただきながらやっているところだが、そういうことも引
き続 きやっていきたいと思 っているし、去 年 はワールドカップがあったので、どうしても外 国 人 、外 国 人 というの
がいわれていたんだが、UDというせっかくこういう場 もあることであるし、たくさん来 ていただいているので、今 後
は、いわゆる「どんな人 でもわかりやすい」というのに向 けてやっていきたいと思 っている。
●進 行 役 (岩 崎 ):特 に観 光 の案 内 みたいなことについては……。
●平 野 :案 内 板 につきましては、この夏 に4カ国 語 の表 示 の改 訂 版 が完 了 しました。すべてを4カ国 語 というの
は見 にくいのでできないが、主 要 な駅 であるとか施 設 等 については、日 本 語 とローマ字 または英 語 の併 記 とい
う形 でさせていただいているので、日 本 語 がおわかりにならない方 に対 しても、わかりやすくはなっているかと思
う。
●寺 田 :具 体 的 な施 設 になるが、この9月 、王 子 動 物 園 に視 覚 障 害 者 の方 のために、カバの実 物 大 の模 型 を
六 甲 アイランドの市 立 高 校 のデザインコースの生 徒 さんがつくって、それを置 いているが、それが障 害 者 の方
だけじゃなく、子 どもからお年 寄 りまで実 際 にさわって楽 しめるということで、すごく評 判 のようである。こういった
ものをほかのライオンとか、ほかの大 型 動 物 に広 げていってはどうかということと、そういった模 型 は、UD模 型 づ
くりの大 会 とか、子 どもたちと一 緒 につくるような形 でイベント化 していったらどうかと思 う。
次 は、「観 光 みやげのUD化 」ということで、これも神 戸 らしさということで、神 戸 のいろいろとあるワインとか、お
酒 とか、神 戸 ビーフといった製 品 のUD化 をしていって、ユニバーサルデザインはそのままおみやげで持 って帰
ってもらう、UDをおみやげにするということで神 戸 は進 めていったらどうかという提 案 である。その進 め方 は、具
体 的 にチームをつくって、軽 い一 升 瓶 とか何 かわかりませんけれども、いろいろと具 体 的 に提 案 していったらど
うかといった内 容 になっている。
●進 行 役 (岩 崎 ):UDという視 点 から解 き明 かしてみてという。同 じ軽 い酒 瓶 はもう出 ているが、それをどう説 明
するのかという。
●鈴 木 :私 は最 初 ものづくりの担 当 のほうになっていたが、考 えているうちに、なぜかまちづくりのほうになってし
まって、それで、観 光 とその博 物 館 とか、美 術 館 とか、公 共 の施 設 のUD化 について考 えみたんだが、主 に3
点 考 えた。
施 設 計 画 段 階 で行 われるイベントを予 測 して最 初 から設 計 するというものが一 つである。海 外 では博 物 館 が
一 つコミュニティというか、地 域 活 性 化 の場 としてとらえられているところがあって、美 術 であるとか、自 然 科 学 系
であるとか、日 本 ではすべて分 かれて博 物 館 をつくっているが、海 外 では、そういった美 術 であるとか、自 然 科
学 系 のものであるとか、展 示 するものの区 別 を全 くしないで、全 部 一 緒 にして博 物 館 としているところがあって、
そういうところから考 えて、その展 示 物 の区 別 がないのと同 じようにとうか、来 られる方 の区 別 もないような感 じに
したいと思 っている。
私 は今 たまたま須 磨 の水 族 園 のほうでボランティアをしているが、水 族 園 の水 槽 の裏 側 ツアーというものがあ
りまして、裏 側 ツアーは、もともとバックヤードであるから、台 車 が通 れるような感 じで、スロープが多 い設 計 にな
っているんだが、それでもやっぱり車 いすの方 が通 れるほどには広 くはないんである。であるから、そういったバ
ックヤードツアーにも対 応 した設 計 というものが最 初 からなされれば、いろんな方 が博 物 館 に集 まるようになるし、
そして、ここにも書 いているが、一 つの地 域 活 性 化 の場 として博 物 館 をとらえるということがUD化 につながるの
ではないかと思 った。
2点 目 は、建 物 の規 模 に合 わせて案 内 板 やサインを掲 げるだけでなく、実 際 に遠 くから誘 導 できるものが必
要 ということだが、先 日 、兵 庫 県 立 美 術 館 に行 きまして、すごく広 いが、サインがほとんど見 あたらない、歩 いて
いて「こんなところにサインがある」というふうに、こちら側 が歩 きながら見 つけてしまうような感 じで、余 り広 いと、
そのサインだけではなかなか気 がつかないというか、そのサインをサポートというか、アシストできるようなものをふ
やすということもUD化 の一 つかなと、サインをもうちょっとわかりやすくすることの一 つかなと思 う。
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3点 目 は、先 ほど平 野 さんがおっしゃったことと同 じだと思 うが、案 内 板 を多 言 語 に対 応 するものにするという
ことであるが、プラス日 本 語 以 外 の言 語 を話 せるボランティアの方 を配 置 するというのもUD化 の一 つだと思 う。
●進 行 役 (岩 崎 ):「観 光 」が一 番 たくさん書 かれていて、これは乗 っかりやすい入 り口 なのかもわからない。「サ
イン」の話 も乗 っかってくる。さっきの森 崎 さんの話 でいったら、4つの言 語 で書 いても「義 経 」がわかるのかなと。
「義 経 」を、言 葉 だけではなくて、もっと画 像 として示 せなかったら読 めない、観 光 としてはわからないのかなと感
じながら聞 いていました。「観 光 」をキーワードのうちの一 つに乗 せるとしまして……。
●寺 田 :先 ほどの長 坂 課 長 と重 なる部 分 があるので、簡 単 に説 明 させていただきます。
サインというのは、ある程 度 計 画 的 に配 置 することが重 要 なことと、やっぱり一 定 のルールで統 一 されたもの
がサインとしての外 せないキーワードであるので、そういった統 一 のルールということで「神 戸 サイン整 備 ガイドラ
イン」(公 共 ・民 間 )を作 成 してはどうかということである。
●進 行 役 (岩 崎 ):モデルゾーンをつくってやるのかなと。それで、そこに見 に来 てもらう。どっちかというとそこの
観 光 にと思 っていたが、先 ほどの森 崎 さんのお話 とセットでいったら、須 磨 寺 の回 りは結 構 傾 斜 もあって、交 通
機 関 も、鉄 道 もあり、バスで行 くという話 もあり、モデルゾーンみたいなセットの仕 方 もあるのかなと今 思 いながら
話 を聞 いていました。
次 に公 園 のほうに移 りたいと思 う。
●佐 藤 :私 ども六 甲 道 北 地 区 のまちづくりすべてがUDの壮 大 なる実 験 の場 であろうというふうには理 解 してお
り、特 に公 園 の場 合 は、今 までの公 園 のつくり方 と多 分 かなり違 った形 であろうと思 うのは、白 紙 の状 態 で地 域
にまず提 示 されたということが、住 民 にとりましては責 任 の大 変 重 いことでして、それと同 時 に、自 分 たちのため
の公 園 がつくれるという二 つのことがまちの中 では大 変 大 きなものになっていた。
最 近 、実 施 設 計 の前 になっているが、そのとき中 井 純 子 さんをお招 きしておりまして、そうすると、中 井 純 子 さ
んがいらっしゃることだけでも、まちの意 識 が全 然 違 ってくるという、大 変 に大 きな経 験 をいたしました。障 害 を
お持 ちの方 がユニバーサルのお話 をなさるということは、住 民 にとってはすごい大 きな刺 激 でして、このことだけ
でも、もう今 度 の私 どものつくる計 画 案 というのは、まるっきり変 わっていく可 能 性 があるかなというふうにも思 っ
ているぐらいなので、公 園 をつくるということだけではなくて、まちをつくるということは、もうハードとソフトが重 なっ
ていないとだめだろうというふうに思 う。
今 回 の発 表 の中 には多 分 こういうものは出 ないかもしれませんけれども、まちをつくるということは、多 分 ソフト
とハードがきちんと重 なっていて、両 方 が機 能 していかないと、どちらがどちらという形 ではなくて、二 つがないと
うまくいかないんだろうというふうには思 う。その中 で、サイン計 画 をいろいろとお書 きしましたが、まちの中 では、
少 しずつ進 んでいきますと、さっき寺 田 さんがおっしゃいましたけれども、統 一 性 のあるサインというのが、やっ
ぱりまちの中 でも意 識 的 には出 てきまして、「やっぱりしゃれたデザイン」であってほしいと、あれもこれも勝 手 に
つくるサインではなくて、まちの中 では、「あっ、これがサインや!」というふうに思 えるものをつくりたいし、先 ほど
の「さわってわかる」みたいな、そういうふうなものもつくったら、公 園 に来 てくださる方 は楽 しいだろうなという話
が町 中 では出 ているから、やっぱりものをつくる、まちをつくるというときのコンセプトというのは、ハードとソフトと
両 方 できるよという意 味 ではUDかなというふうに思 っている。
●進 行 役 (岩 崎 )::私 も書 かなあかんかったのだが、ここに間 に合 いないでして、あと思 ったのが、UDのモデ
ル公 園 をつくるといいるか、それはモデル公 園 というか、UDのいろんなグッズというか、装 置 とか、製 品 とかのそ
の展 示 会 にあわせた同 じような効 果 を持 つというか、実 際 に使 ってみて使 い勝 手 がいいのかどうかということも
検 討 もしてもらう、そういう意 味 でのモデル公 園 をつくったらどうか。そのことと、公 園 で使 うUDのいろんな施 設 、
装 置 、機 械 みたいなものをものづくりと連 携 させていく、それをどんどん使 って実 験 もしていくという、実 験 の場
でもあるUD公 園 、モデル公 園 みたいなものをつくっていってみたらどうか。積 極 的 にそこでいろんなUDの情
報 を集 めていく、それをまたものづくりに反 映 させていく、そういう場 というのがあり得 るのやないかなというのを、
実 は中 井 さんに来 ていただいているワークショップに私 も出 ているのであるが、やはり中 井 さんがおられるだけ
でみんなが考 えるということになるんである。その辺 が、そういうところへみんなが行 って考 えるという機 会 をつく
るのが非 常 に大 事 かなと。
その次 が、《だれもが利 用 しやすい商 店 街 》である。
●森 崎 :商 店 街 については、先 ほどの観 光 の話 ともセットになってくる話 でして、今 の観 光 スポットをつなぐ動
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線 の中 に「商 店 街 」というのが必 ずありまして、商 店 街 はまさにいわば長 いものである。それを入 れていくという
その観 光 スポットをつないでいく。だから、須 磨 寺 の商 店 街 さん、あの中 に空 き店 舗 と書 いているが、道 の駅 の
ようなスペースがあって、そこでもてなしをするというところに心 のユニバーサルデザインも絡 ませながらもてなし
して、そこにしつらえがあるといいるか、そういうふうなことをやっていこうぜというところで、商 店 街 のこの岩 崎 さ
んの書 かれているところに、歩 きやすい商 店 街 、安 心 して買 い物 ができる商 店 街 、何 とかのできる商 店 街 づくり
ということになる。できるだけ多 くの方 がということは、できるだけ多 くのお客 様 に親 しんでもらう商 店 街 づくりにな
りますので、商 売 にはすごく直 結 する考 え方 だと僕 は思 っていまして、何 かそういう動 きをそれぞれの商 店 街 さ
ん、活 発 に動 いている商 店 街 さんに声 をかけると、動 きそうな気 配 はあるんだがね、具 体 的 に。その辺 をセット
して知 らせれば動 いてくれる。
●進 行 役 (岩 崎 ):今 のまちづくりの最 後 に三 原 さんのほう、サインの話 を。
●事 務 局 (三 原 ):私 のほうは、サインで特 に《外 国 人 に対 応 したサイン整 備 》という項 目 での宿 題 に対 する答
えとしている。
対 象 者 としては、「日 本 語 を理 解 できない人 」ということを「外 国 人 」というふうに一 たん置 いている。もちろんだ
から日 本 語 を理 解 できないということに対 しては、絵 文 字 を中 心 とした表 示 の整 備 をする。ただ、絵 文 字 で表
現 できないものというのがある。例 えば、「須 磨 」という言 葉 は絵 で表 現 できませんので、固 有 名 詞 的 なものにつ
いては、やはり多 言 語 になるのかなと。ただ、それは単 純 に多 言 語 というのでも4カ国 がいいのかどうかわかりま
せんので、言 語 表 記 につきましては、日 本 語 、つまり音 が出 るような表 記 の仕 方 、ちょっとわからないんだが、
私 が書 いたのは、漢 字 、ひらがな、ローマ字 、ハングルと書 きましたけれども、英 語 で書 いても、英 語 で読 んで
も日 本 人 にはわかりません。「すま」と読 める、例 えば、西 洋 の方 はローマ字 がいけるのかなと思 うし、漢 字 は…
…、ちょっとわからない。それを読 んだらどうなるかといったら、回 りの人 にそれを教 えてと言 っていただいたらい
いのかなということで、絵 文 字 と多 言 語 だが、表 音 文 字 を工 夫 すると。これがどういうものがあるのかよくわから
ないのだが、それぐらいかなと思 っている。
それから、サイン自 体 の見 やすい工 夫 だが、大 きさとか、場 所 とか、カラーとか、こういうものは、多 言 語 だけで
はなくて、同 時 に必 要 なのかなと。ただ、統 一 性 を持 たせるときに、カラーまでも全 部 一 緒 に決 めてしまうと、逆
にまちの景 観 とかに合 わない部 分 もあるから、形 だけを決 めて、カラーとかいったものは景 観 に合 わせて若 干
いろいろバリエーションがあるよというほうがいいのかなと思 う。
それをじゃどういうふうに取 り組 むかということで、一 般 的 に使 われている絵 文 字 、トイレとかいったものは大 体
わかっているので、それ以 外 のものでまだできていないようなものについては、皆 さんからアイデアを募 集 したら
いいのかなと。市 民 の方 に親 しみを持 ってもらうためにも、公 募 というのはわかりやすいのかなと思 う。
それから、場 所 についても、実 際 に地 元 の人 たちは、ここを歩 いていたら、どこが見 やすいかというのが大 体
わかると思 うので、そういうふうな部 分 を選 ぶ。しかも、それは歩 いている人 とか、車 に乗 っている人 とか、いろい
ろ内 容 が変 わりますので、その辺 も地 元 の人 たちと話 をしながら決 定 をしていく。
ただ、サインというのは、人 によるサポートがとても大 事 なので、案 内 板 の前 で困 っている人 がいたら声 をかけ
るという神 戸 市 民 をふやすということとあわせて、サインの整 備 をする。そしたら、そのときには、案 内 板 の前 で
困 っている人 が何 に困 っているかが少 なくともわかるようにするためには、「すま」と言 ってもらわなければいけな
いので、そのあたりをどうするのかと思 う。そういうふうなことである。
それで、やっぱりどこかモデル的 にしてはどうかということで、今 、北 野 などでやろうとしているので、そのあたり
の中 で取 り組 んでもらってもいいのかなと思 う。
案 内 板 については、これはお金 がかかりますので、当 然 広 告 なんかも含 めて入 れたらいいのかなと思 う。
●進 行 役 (岩 崎 ):PR効 果 も含 めての「観 光 」というところに無 理 やり引 っ張 っていっているが、そこのところが
平 成 17年 の「義 経 」につなげていくと。
それから、ものづくりについては、見 寺 さんが通 して考 えるとおっしゃっているが。
●見 寺 :ものづくりの一 番 基 本 は、よく言 われている、産 官 学 民 の取 り組 みによる具 体 的 なものの流 れかなとい
うふうに、堅 い言 葉 ではそういうふうに言 うのであるが、実 際 考 えてみますと、ものをつくるという、ものはつくれる
んだけれども、そのものをだれに使 ってもらって、どういう場 所 で提 案 できるかということが一 番 大 切 なのではな
いかなと思 う。
−6−
そのためには、2年 後 の会 議 をねらったとき、今 日 のビッグ・アイを見 ても思 ったが、空 港 ができたとき、どこか
こういうビッグ・アイみたいなところの例 えばホテルであるとか、市 内 でもいいんだがこういうものがあれば、障 害 を
お持 ちの方 でもどんどん海 外 からでも来 られるし、逆 に、障 害 をお持 ちの方 がどんどん来 られたら、ここはすご
く住 みやすいまち、居 心 地 のいいまちだというPRができて、そこから逆 に一 般 の人 たちも来 られる。それを、先
ほど森 崎 さんが言 われた例 えば須 磨 の義 経 のこととか、それからモデルショップというものが町 中 にいろいろで
きる。UDの公 園 があったりする。私 がぜひつくりたいのは、UDショップと言 われるものを一 番 人 が集 まるところ
につくりたい。そういう公 園 があり、ホテルがあり、観 光 のできるところがあって、市 場 もあってみたいな、一 般 の
生 活 者 の方 が参 加 できるようなところにモデルショップをつくって、そこにみんなが行 き交 う場 所 をつくるというこ
とが一 番 早 い道 かなというふうに思 う。
いろんな意 見 を聞 いていると、皆 さん考 えている方 向 性 というのは、ほぼ同 じだと思 うが、それを具 現 化 できる
かできないかというところに一 番 ポイントがかかっているというふうに思 っている。
そういう中 でいうと、そのUDショップというものをつくることによって、そこでセミナーを開 いたり、それからまた、
地 場 産 と絡 めてものをつくっていって、そこで提 案 するということもできますし、また、ものをつくるプロセスを考 え
ていけば、そのものづくりの原 点 というのは教 育 になるので、その教 育 の中 で発 想 というものを培 う。それは先
日 、森 崎 さんのところでUD研 究 会 があり、小 学 生 の子 どもがものをつくったときに、ものすごくいい発 想 が出 て
きた。私 どもの大 学 では、1年 生 の発 想 論 の中 に「UD」という切 り口 を入 れれば、それが1回 生 の原 点 になって
卒 業 研 究 のときにその作 品 をつくる、社 会 に出 ればデザインの基 礎 になるというふうに、まずものづくりの原 点
というものを教 育 の中 に入 れていく。
その次 に、実 際 に企 業 さんなりでものをつくっていくときは、今 、問 題 調 査 とか、それから、つくってからの使 い
勝 手 調 査 なんかもしているから、一 般 の方 を含 めた上 できちっとそういう調 査 を行 う。その調 査 に基 づいて、プ
ロのデザイナーであるとか、それからプロのメーカーさんが入 って一 緒 にものづくりをする。その後 で、神 戸 市 の
人 と絡 んでいただいて、市 の条 例 ないしは市 の推 進 協 議 会 のほうで実 際 に展 開 していく場 所 を決 めてもらうと
いうふうな形 で、何 か一 本 の目 標 を持 って、そこでみんなの意 見 が自 由 に行 き交 える場 所 というものが絶 対 必
要 だと思 うんである。
そう思 うと、神 戸 というのは、そういう場 所 がないのかな。大 阪 の例 えばATCエイジレスセンターであれば、も
のは見 られますし、そこでもこういうやはり施 設 はある。でも、神 戸 というのはどこなのかなといったときに、私 は、
やはり2年 後 に大 きな国 際 会 議 を開 くというのであれば、それを目 標 に具 体 的 なそういうものをつくっていく、み
んなでやっていく、そして評 価 をしていかないと、口 だけに終 わってしまうのではないかなというふうには思 いま
した。
●進 行 役 (岩 崎 ):ものづくりをちゃんと見 せて、モニタリングできる場 所 をつくっておかないと先 にいかないとい
うこと。
●見 寺 :ものづくりをして、おしゃれなまちにしたいという視 点 からいうと、「観 光 」が栄 えないと、おしゃれになら
ないであるよ。人 が移 動 しないと、服 というのはおしゃれにならないんであるよね。そういう意 味 でいうと、快 適 に
移 動 できる楽 しい観 光 地 をいっぱいつくるというのは、おしゃれなまちの原 点 になるのではないか、ものづくりの
原 点 になると思 う。
●進 行 役 (岩 崎 ):まちづくりの場 でも、常 にどれだけ人 に見 てもらえるかと。汚 いところができたら、そこを隠 す
と、どんどん汚 くなる。汚 いところが出 てきたら、余 計 人 に見 てもらうということが一 番 大 事 である。ということを常
に言 っているんであるが、その辺 、まちを見 てもらう、都 市 を見 てもらうのに一 番 いい方 法 というのは「観 光 」やな
いかと、観 光 スポットがいろいろあって、そこでいろんなUDのものが見 られて、かつもうちょっと整 理 をしてショッ
プあるいは体 験 できるところというのがきちっとセットされて、それが平 成 17年 のときに全 部 がシステムアップでき
ていると、上 手 に連 携 して見 てもらえるということである。
●見 寺 :それの中 心 が多 分 地 場 産 業 になると思 う。
●岩 崎 :地 場 産 のところにそういうショップができていて、そこが観 光 知 的 に見 てもらえたらいいと。
●見 寺 :それが一 番 いい。
●岩 崎 :小 西 さん、ものづくりの面 からはどうでしょうか。
●小 西 :先 ほどから皆 さんのお話 をよく聞 かせていただいて、私 たち消 費 者 協 会 は、もうひたすら「人 にやさし
−7−
い家 電 製 品 づくり」というものを運 動 としてやってきたわけだが、こういうものをいかにUDの思 いの中 に浸 透 させ
ていくかということが私 たちの役 割 であると思 っているので、先 ほどからずっとお話 を聞 いていて、すごく思 った
のである。
今 日 、見 学 させていただいて一 番 感 じたのは、やはり新 しいUD製 品 、家 電 製 品 が私 はイメージにあるんだ
が、それを提 案 することも大 事 だけれども、やはり今 まである商 品 をベースにして新 しい提 案 をしていく、そこに
プラスアルファしていくというようなことがすごく大 事 なことだと、私 たち消 費 者 協 会 の人 間 として、そういうものづ
くりも今 から大 事 なんだなと思 ったんである。たくさんの製 品 が出 回 っていて、この中 で本 当 にやさしい製 品 は、
これに近 いけれども、もう少 しプラスアルファしたらどうだろうかというような提 案 が具 体 的 にできるのではないか
なと、今 日 は施 設 を見 学 させていただいて、もうすごくそれを感 じた。であるから、消 費 者 協 会 としては、意 識 づ
くり、啓 発 が一 番 大 事 な仕 事 だと思 っている、こういう作 業 の中 でね。
それから、こつこつとそういう一 つ一 つの製 品 をチェックしながらプラスアルファしていくということを、この中 で、
せっかく参 加 させていただいたのだから、提 案 させていただきたいなと思 った。
●進 行 役 (岩 崎 ):確 かにドアのノブだけが置 いてあっても、それが使 い勝 手 がいいかどうかは、持 ってさわって
いてもわからへんのである。つけてみて、動 かしてみて初 めてわかる。それから、ドアの重 さであるが、先 ほど中
井 純 子 さんなんかは、自 分 で直 接 さわって開 けられるかどうか試 してはりましたけれども、やはり製 品 パーツじゃ
なくて、使 える形 にしてあって、それを体 験 してと。
●小 西 :既 にものがたくさんできているわけであるから、それにプラスアルファすることを考 えることがすごく大 事
になってきたなと思 って。
●進 行 役 (岩 崎 ):改 良 もせずに、チェックもせずに、また新 しいものを考 えもしようがないということである。
●小 西 :そういうことでまたそれを提 案 していくというのも一 つの大 事 なことなんでしょうね。
●進 行 役 (岩 崎 ):全 くゼロから神 戸 でスタートしなくても、今 まであるものをうまく実 際 に使 ってみて、モニタリン
グをして、新 しい提 案 をその上 に付 加 していく。
●小 西 :そのためには、いろんな人 の意 見 というものを聞 くアンケート作 業 みたいなものが必 要 になってくるかも
わかりませんけれどもね。
●進 行 役 (岩 崎 ):無 理 やり「観 光 」へ結 びつけていることがあるのかもわかりませんが、「ものづくり」と「まちづく
り」の接 点 というものは、たくさんの人 に見 てもらう、それから、その人 の意 見 を聞 くというのと、それから、具 体 的
に使 える形 でものが見 ることができる、さわることができる、体 験 できるという場 があって、そこでモニタリングがで
きて、そいつをものづくりへつなげていくというサイクル、この前 、見 寺 さんが、サイクルでもって、流 れでもって、
そういうもう一 遍 もとへフィードバックするような形 、それを神 戸 市 民 だけじゃなくて、人 が来 てもらったときに、神
戸 がそれをとらえているということをPRもするし、それからまちとしてのモデルをつくって、いろいろ体 験 してもらう
ということをリンクさせるというふうなところが、今 日 出 ている話 を無 理 やりひっつけると、そういうふうになるかと思
うが、その辺 で発 表 を、まちづくりとものづくりからいくのを、実 際 にいいものをつくっていく、そういうサイクルをつ
くっていく形 、場 として、それから方 法 として、まちと観 光 とを使 って、それで地 場 産 の場 所 でもって、そいつをU
Dショップみたいな形 で持 っていくということを、まちづくり側 とものづくり側 からどなたかが発 表 していいただくと。
●事 務 局 (三 原 ):それと、モデルのお話 をされているが、最 終 的 に、多 分 この広 場 から「それをモデルで一 遍
やってみようか」というところ、例 えば、商 店 街 であれ、どこどこをやってみようかというところが次 は生 まれてくるよ
というふうなことが広 場 から出 ていくという形 のものまで希 望 したいと、そういう話 であれば我 々としては一 番 嬉 し
い。
●進 行 役 (岩 崎 ):佐 藤 さん、公 園 というテーマパークをつくっていこうという、まちづくりのほうの発 表 をお願 い
します。
−8−
「くらしづくり・意 識 づくりチーム」
●進 行 役 (吉 田 ):事 前 にこのくらしづくり・意 識 づくりのチームの課 題 についてご意 見 をお寄 せいただいている
んが、せっかくであるから、ご意 見 をいただいた部 分 を全 部 説 明 していただきたいのだが、時 間 のほうがありま
せんので、特 にご意 見 を寄 せていただいた中 からこの場 で特 に強 調 して言 いたいというような内 容 につきまして、
簡 単 に説 明 というか、発 表 していただきたいと思 う。
●中 井 (純 ):意 識 づくりのため具 体 的 に何 をしていくのかというところを書 かせていただいた。これをまとめるに
あたって、印 象 というか、感 じは、これまでのユニバーサルデザインとか、計 画 とか、教 育 とか、普 及 ということを
いうと、どうしても一 般 の人 に対 して障 害 者 や高 齢 者 の存 在 を考 えてみてということで、当 事 者 がどうかかわる
かとか、障 害 のある者 が高 齢 者 の問 題 を考 えたり、車 いすの者 が例 えば知 的 障 害 の人 のことを考 えたりという、
その相 互 に考 え合 うという関 係 じゃなくて、だれかがだれかのことを一 方 的 に考 えるというイメージがあったんで
ある。それでまとめている間 に、心 のユニバーサルデザインのところにも出 てきたのだが、だれかが一 方 的 にだ
れかのために何 かを考 えたりしたりするのではなくて、だれもが何 らかの形 で役 に立 ったり、手 を貸 してもらった
りという形 ができるのが一 番 いいのではないかというところに行 き当 たった。
●進 行 役 (吉 田 ):持 っている力 を皆 さんが出 し合 ってというものである。
●中 井 (純 ):健 常 者 と言 われる方 も、常 に手 を貸 す側 、何 かをして差 し上 げるということじゃなくて、自 分 も今
の生 活 が成 り立 っていること自 体 、手 を貸 したり借 りたりしているんだという部 分 である。
●水 越 :私 がこの広 場 のメンバーになってから、視 覚 障 害 者 のことで考 えているのは、意 識 づくりのところの①と
いうところでしょうか、視 覚 障 害 者 自 身 が今 まで余 りにも適 応 主 義 でやってき過 ぎたから、その点 は反 省 をして、
視 覚 障 害 者 が、自 分 は視 覚 障 害 者 なんだということをアピールしなければならない。今 までいわば隠 してきたと
いうような形 でしたからね。座 敷 牢 に閉 じ込 められた人 は一 番 隠 された状 態 だったが、自 分 の意 思 で自 分 が障
害 者 であることを隠 してきたきらいがある。これは視 覚 障 害 者 だけじゃなくて、皆 さんそうかもしれませんけれども。
それが差 別 や偏 見 を助 長 した大 きな原 因 だったと、それを除 いていかなければ始 まらないなと、自 分 の反 省 も
含 めて。であるから、障 害 者 が外 に出 やすい状 態 になる必 要 がある。今 は非 常 に出 にくいであるから。
そして、「受 け入 れる」ということは「拒 まない」ということではない。拒 まないだけでは受 け入 れたことにならない。
「受 け入 れる」ということは、同 じ利 益 が得 られる、与 える、そこへいかないと「受 け入 れ」ではない。例 えば、早
い話 が、障 害 児 が普 通 の小 学 校 へ行 きたいと、「さあ、どうぞいらっしゃい。来 てもらったけれども、ほかの子 と
同 じことしかしませんよ。あんたが障 害 があるからといって特 別 なことは何 もしませんよ」というのじゃ、受 け入 れ
ていることにはならない。ほかの一 般 の子 どもたちと同 じだけの教 育 効 果 が上 げられないと受 け入 れたことには
ならないのであるということを、12ページの上 の枠 の中 に書 いている。それができたらユニバーサルかなと思 う。
どういう人 たちがどういうことをしていく必 要 があるかということについては、具 体 的 な文 章 に書 けるようなものが
私 には今 ありません。
●片 岡 :今 お二 人 がおっしゃっていたように、私 自 身 は、障 害 者 だから、高 齢 者 だから、どうだからというのじゃ
なくて、その方 の特 徴 、その人 らしさというものを考 えていったときに、そこにそういう気 持 ちでかかわるということ
がバリアフリーにつながっていくのだろうなと。小 さいときから自 分 は一 人 で大 きくなったのではないということで
ある。楽 をしたい楽 をしたいという世 の中 だと思 うが、楽 というのは何 なのかということを考 えていかなくてはいけ
ないと思 うのである。やっぱり中 井 (純 )さんもおっしゃってたように、健 常 者 であっても、人 に助 けられて、手 を
差 し伸 べられて成 長 してきているので、そういうことをみんな意 識 の中 に持 つような方 向 づけができたらいいん
ではないか。自 分 一 人 で大 きくなったのではないということである。そういう認 識 がないと、何 かしようと思 っても、
「こんなしんどい思 いはしたくないわ。楽 をしたいわ」というふうに逃 げていくということは、そもそもユニバーサル
デザインの考 え方 からいうと、逃 げているのではないかと考 えているのである。
●神 谷 :私 もちょっとお休 みさせていただいておりまして、意 見 のほうは出 せなかったんだが、今 、中 井 (純 )さ
んと水 越 さんのお話 を伺 って、私 が持 っている視 点 、私 たちが感 じているような視 点 と全 く違 う、「なるほど!」と
はっとするようなお話 を聞 くことができました。こういうふうな機 会 というのを大 勢 の方 が持 っていただきたいなと
いう気 はします。すごくもったいないような話 を私 たちは聞 かせてもらっているような気 がします。
−9−
●進 行 役 (吉 田 ):私 なりに考 える「心 のユニバーサルデザイン」というのは、障 害 を持 っている人 に対 しての配
慮 、それは中 井 (純 )さんがさっきいったように、健 常 者 であっても、普 段 健 常 者 と思 っている人 でも、いろんな
障 害 、例 えば身 長 が低 いからとか、身 長 が高 いから頭 をぶつけるとか、いろんな障 害 があると思 うが、そういっ
た場 面 に出 くわしたときの配 慮 、もしくはそういう状 況 の中 での助 け合 いや思 いやりの心 、それから、マナーなど
を通 して一 人 一 人 が公 共 の福 祉 を意 識 して取 り組 んでいくことみたいな形 で私 なりにまとめているんである。そ
ういうことを言 うのは簡 単 だが、実 際 にはまち全 体 がそういう雰 囲 気 になっていくためには、やっぱり日 常 的 に
普 段 から何 も考 えていない人 が、例 えば何 かお手 伝 いして差 し上 げるということは難 しいと思 うので、日 常 的 に
そういうことを考 えるような機 会 をつくったりとか、トレーニングをする必 要 があるというふうな形 で意 見 を出 させて
いただいている。
それについて中 井 (純 )さん、どうでしょう。
●中 井 (純 ):私 、これを読 ませていただいたとき、障 害 者 や高 齢 者 というのと健 常 者 が別 の世 界 にいているよ
うな、境 目 があるような、AからBという別 のところに存 在 するような印 象 がある。実 際 に一 般 の方 というのはそう
いう印 象 を持 って生 活 しているが、それをことさら「違 う」と強 調 する必 要 があるような気 がする。それじゃどうなの
と言 われるとわからないが、健 常 者 の方 は、理 解 が全 くないか、関 心 があれば常 に「自 分 が何 かしてあげる側
だ」と思 っているが、もしも自 分 が何 かをしてあげようと思 ったその行 動 のとり方 を自 分 が逆 にしてもらったとした
とき、「あなたは何 もしなくていいのよ。できないのだから、そこに座 っていなさい。私 がかわりに取 ってきてあげる
から」というように、気 遣 われて気 遣 われて、はれものにさわるような丁 寧 な応 対 を受 けたときに気 持 ちがいいか
どうかとか、自 分 が普 段 そういうふうな応 対 をされていないのに、それじゃ、どうして障 害 者 や高 齢 者 にはわざわ
ざそういう態 度 をとらないといけないと思 うのかとか、そういうところが考 えられたらいいなと思 う。
●進 行 役 (吉 田 ):私 自 身 の考 え方 としては、そういうことがお互 いに自 然 に日 常 生 活 の中 で、ちょっと手 助 け
が必 要 だったり、お手 伝 いが必 要 だったり、インフォメーションが必 要 だったりするような場 面 、場 面 でお互 いに
できるようなトレーニングをする機 会 がやっぱり必 要 ではないかという形 でまとめさせていただいたのである。今
のいわゆるユニバーサルデザインの意 識 づくりというところで、先 ほど中 井 (純 )さんからいただいているご意 見
の中 で、「一 方 通 行 ではない」というところが一 つのキーワードというか、そういうような気 がしますね。
●片 岡 :もともと「健 常 者 だ」とか、「障 害 者 だ」とか、「高 齢 者 だ」とかいうところが心 のバリアではないかなと思 う。
それをなくさないとUDになってこないのではないか、そこから何 とかしていかないといけないのではないかと日
ごろから思 っている。例 えば、さっき背 の低 いとか、高 いとか出 ていたけれども、それはその人 の個 性 であって、
私 がさっき「その人 らしさ」と言 ったのはそういうことである。その人 の持 っている持 ち味 である。それをどう生 かし
ていくかというときに、周 囲 の者 が片 岡 なら片 岡 のためにどういうふうに動 いたらいいのかという、そういうことは
いけない。みんなが同 じように生 活 していけるように、皆 さんが知 らず知 らずに意 識 せず自 然 に行 動 できるよう
なことが何 かできたらいいのではないかなと日 ごろ思 っている。
●中 井 (純 ):15ページだが、《実 践 》で「特 技 発 見 フェア」というのを書 いた。障 害 者 は障 害 者 以 外 の何 物 でも
ないというふうに思 われていて、高 齢 者 は、これまでの経 験 や知 恵 には関 係 なく、ただ年 寄 り・高 齢 者 ということ
だけが取 り上 げられて、それ以 外 の何 物 でもないというふうに思 われがちだが、心 のユニバーサルデザインのと
ころにも書 いたのだが、今 は重 度 の痴 呆 であっても、もともとピアノが弾 けるとか、お習 字 ができるという能 力 が
残 っていたりとか、今 は寝 たきりだけれども、知 識 が豊 富 だとか、そういうのを含 めて「人 」であるよね。それがで
きない部 分 だけ取 り出 して「高 齢 者 」、「障 害 者 」というふうに、できないところを集 められてしまって、それをこと
さら報 道 されたりとかしているので、どんどん注 目 がそこに行 ってしまっている。だから、「あなたはできなくなった
こととかできないこと以 外 にもっとできることがあるんですよ」という当 事 者 に対 しての呼 びかけと、それから、その
関 心 のない他 の人 に対 しても、「この人 は寝 たきりの物 体 じゃなくて、知 恵 もあり、知 能 もあり、知 識 もあるんで
あるよ」ということを広 く知 ってもらっていく中 で、障 害 者 というのは、ただ「障 害 者 」と一 くくりにできない、一 人 一
人 違 う人 間 なんだということを感 じ取 ってもらえると思 うんである。
●小 谷 (人 権 推 進 課 ):今 いろいろ議 論 をお伺 いしておって、難 しいなというのが正 直 なところである。私 自 身
ちょっと今 思 っているのは、先 ほど中 井 (純 )さんがおっしゃっていました、「健 常 者 」と「障 害 者 」という何 かそう
いう垣 根 みたいな言 葉 遣 いということだが、そういう発 想 ではなしに、ユニバーサルというのは「だれもが」というこ
とであるので、市 民 全 部 がそういうことだというふうなとらえ方 が必 要 なのかなと。「障 害 者 」「健 常 者 」というので
−10−
はなしに、「みんなだれもが」というとらえ方 をしていくというまずは基 本 的 な発 想 が必 要 なのかなというふうに、
話 を聞 いていまして、そういうふうに思 いました。
それから後 は、議 論 にはなかったんだが、特 にこのチームの「くらしづくり・意 識 づくり」ともう一 つのチーム「ま
ちづくり・ものづくり」との関 係 になってくると思 う。ものづくりといっても、何 もかも物 でカバーできませんので、そ
の辺 は意 識 なりくらしの中 で、ある意 味 でソフト面 でカバーしていくような形 も全 体 の中 で必 要 になってくるだろ
うと、具 体 にどうのこうのではないんだが、そんなことをちょっと感 じました。
●河 野 (市 民 参 画 推 進 局 ):障 害 を持 った方 とそうでない方 を分 けて考 えるというのじゃなくて、意 識 をつくって
いくというやり方 をどうしたらいいのかということで私 もちょっと考 えた。そういう意 味 では、日 常 生 活 の中 で基 本
的 にユニバーサルデザインのそういう啓 発 という部 分 は非 常 に大 事 と思 うが、それ以 外 に、一 人 一 人 の人 が気
配 りというか、そういう気 持 ちを持 って接 するという、まずそこから始 めることが大 事 かなということで、何 かスロー
ガン的 に一 つユニバーサルデザインを意 識 するようなフレーズをPRしていくようなことでね、今 まで無 意 識 の状
態 のところに対 して、意 識 してお互 いに気 配 りし合 うような環 境 をつくっていくのが大 事 かなと思 っている。
●今 のご議 論 をお聞 きしていて、確 かに中 井 (純 )さんがおっしゃっていることは、出 来 上 がり型 としては多 分 そ
うだろうなと思 っている。吉 田 さんがおっしゃっているのは、まさにそれに到 達 するために具 体 的 に我 々はどう行
動 したらいいんだろうかという、その方 法 論 を出 してくださっている。それは大 変 大 切 だと思 う。到 達 するところ
は、確 かに中 井 (純 )さんのおっしゃっることで、そこへみんな目 指 して、そういう気 持 ちになろうよということで、
そうならないといけないなというのは頭 でわかっている。それじゃ、具 体 的 に日 々の行 動 の中 で我 々はどうしたら
いいんだというところについて、吉 田 さんは、具 体 的 に、何 かをしても「ありがとう」と言 われなくても腹 を立 てない、
それは当 たり前 だと、そういう意 識 になろうよということで実 践 していこうよということ、その辺 のことを発 表 の場 で
言 っていくことが非 常 に大 切 ではないかなという感 じがする。
理 想 型 は、まさに中 井 (純 )さんのおっしゃっていることで、みんな頭 ではわかっている。わかっているんだけ
れども、具 体 的 に何 をするか。今 はまだそうなっていないわけで、確 かに垣 根 はあるわけである。我 々の意 識 の
中 にある。それを取 り払 うために具 体 的 にどうするかみたいなところに具 体 的 な提 案 が要 ると思 う。そういうこと
をほかにもあったら、いろいろと出 して、発 表 してアピールしていくみたいなことがあってもいいのかと思 う。
●田 中 座 長 :余 り抽 象 的 に言 ってしまうと、「何 かどこかで聞 いたぞ」で終 わってしまうので、「例 えば」ということ
で具 体 例 を一 つか二 つでも示 されるほうが、聞 いておられる方 もわかりやすいかなと思 うので、そういうまとめ方
もあるのかなと。余 り掘 り下 げて詳 しく言 う必 要 はなくて、わかる程 度 に具 体 例 を出 してあげるのがいい。
●水 越 :吉 田 さんの書 いておられる、「感 謝 されなくても腹 を立 てない」というところへ付 け加 えていただきたいこ
とがある。「障 害 者 は何 にもできないから、してあげる」というのは大 変 間 違 いである。私 と初 めて接 触 される方
は、私 がどんな力 を発 揮 できるかご存 じないわけである。それを「目 が見 えないから何 もできないだろうから、し
てあげよう」とのっけからこう思 って私 に接 触 される。それは、私 は一 人 歩 きをして、大 体 日 常 一 人 で外 へ出 る
のが基 本 だったが、「この人 には何 ができるんだろうか」と。私 に初 めて出 会 われた方 は私 をご存 じないんだか
ら、「何 もできない」と思 ってかかられたら、これは大 いに間 違 いである。だから、「この人 は何 ができるんだろう
か」と、考 え方 の基 本 としてそこから出 発 してくだされば、腹 はお立 ちにならないと思 う。
●中 井 (純 ):水 越 さんがおっしゃったように、私 自 身 も、ボランティアの勉 強 をするところで、ある程 度 意 識 が高
くて障 害 者 ボランティアをやっていこうと勉 強 をしている人 から、車 いすに乗 っているというだけで、今 、水 越 さ
んがおっしゃられたような対 応 を受 けます。だから、一 般 のまちの中 で、意 識 すらない人 、ちょっと私 は何 か役
に立 たなくちゃいけないと思 っている人 、ここで話 し合 って出 されている意 見 にまだまだ到 達 していないのであ
る。その方 に殊 さら意 識 をさせるといったらおかしいが、殊 さら「高 齢 者 」、「障 害 者 」という言 葉 を使 って表 現 を
すると、さっき言 ったみたいに、「違 うんだ!」「やっぱり私 とは違 う、特 別 に違 う人 なのね!」という印 象 を植 えつ
けてしまうような気 がする。ここから発 信 をする受 け手 は、今 どのぐらいの認 識 のところで受 ける人 なのかなという
のを、もっと意 識 が低 いと思 っていいのではないかと思 う。逆 に、差 別 心 に満 ち満 ちているぐらいのところに基
準 を置 いたほうがいいのではないか。
●水 越 :私 もそう思 う。具 体 例 を挙 げると、私 が通 勤 用 の定 期 券 を自 動 改 札 機 に入 れようとしている、それを逆
さまに入 れようとしているんである。そしたら、後 ろから来 た人 が、何 にも言 わんと、私 の手 をつかんで、ぐっと後
ろに引 っ張 るんである。「何 するの!」と私 はむちゃくちゃ腹 が立 ちます。そしたら、その人 が言 うのに、「定 期 券 、
−11−
反 対 やあ!」と。これは順 列 組 み合 わせで4通 りの入 れ方 がある。表 向 きのこっち向 きと反 対 向 き、裏 向 きのこ
っち向 きと反 対 向 き、どれで入 れても機 械 は読 み取 ります。出 すときは当 たり前 の方 向 に出 してくれるんである。
目 の見 える人 は、定 期 券 をちゃんと機 械 が好 きそうな方 向 に向 けて入 れてはるから、それしか入 らないと思 って
はったんである。ところが、私 は幸 いにも見 えないから、4通 りのどの方 向 でも勝 手 に入 れているわけである。
「いやあ!いけてる。入 った」と。その人 は、私 の知 っていることの4分 の1しか物 を知 らなかったわけである。そう
いうようなことが日 常 あるわけである。であるから、今 まさに中 井 (純 )さんがおっしゃったことである。
そのときに、もしも私 が盲 人 じゃなかったら、逆 さまに定 期 券 を入 れようとしているのを後 ろから見 ながら、「あ
の人 、定 期 券 を逆 さまに入 れるわ。見 といたろ」と思 ったかもしれない。相 手 が盲 人 だったら何 をしてもいいのか
と、それは失 礼 ではないか。そういうことが目 の見 えない者 に対 しては普 通 にできる。感 謝 されないことに腹 立
てないとさっきおっしゃいましたけれども、まさに一 方 通 行 であるよね。健 常 者 は障 害 者 に対 して何 をしても許 さ
れるのかと。
●田 中 座 長 :別 の言 い方 をすると、その人 は、水 越 さんが大 変 な間 違 いをすると思 った。その人 が間 違 ってい
るが、でも、善 意 の気 持 ちでとっさにされたんではないかと。
●水 越 :そうである。では、善 意 の気 持 ちだったら何 をしてもいいのか。
●田 中 座 長 :いや、何 をしてもいいとかいうのでなくて、その人 の選 択 肢 として、とっさのことでそういう行 動 に出
てしまったということである。突 然 ということで、それを受 けたほうの気 持 ち、受 けられた水 越 さんの気 持 ちもわか
るが、その人 がとっさにやったこともやっぱり理 解 してあげるということも……。
●水 越 :命 にかかわるようなことなら、とっさが必 要 である。
●田 中 座 長 :いや、命 にかかわるか、致 命 的 になるかというね、ユニバーサルのデザインとして、自 動 改 札 機 は
どの方 向 でも入 るとか、間 違 っても爆 発 するとかいったことがないということがわかっていればいいが、その方 に
とっては、自 分 の基 準 からそういうことを判 断 されたわけである。逆 に、おっしゃるとおり、その方 の認 知 度 、理
解 度 がまだまだ低 いということで、おっしゃっていることはわかるが、それを水 越 さんが今 度 は逆 に許 して、水 越
さんが「ありがとう」と言 ってあげたほうがもっといいかなと僕 は思 いましたけれども。
●水 越 :そしたら、何 でも受 け入 れなければならない。
●田 中 座 長 :いやいや、そういうのではなくて……。
●中 井 (純 ):その場 合 に、「ありがとう」と言 ってしまえば、その人 はいいことをしたと思 う。
●水 越 :そうである。
●田 中 座 長 :いや、違 う。日 本 人 は、何 かをしてもらって、まず「サンキュー」なんである。だけど、「サンキュー。
バッド」なんである。そういう会 話 ができない。最 初 の一 発 で、「いい」とか、「悪 い」とか、「何 言 っとる」とかいう話
になってしまうが、やっぱり自 分 に対 してだれかが思 いを持 ってくれたということに対 して、まず「サンキュー」と言
うべきだと思 う。例 えば、「席 をかわりましょうか」と言 われたときに、「結 構 である」じゃなくて、「ありがとう。だけど、
私 は結 構 である」という、こういう会 話 ができるのが大 人 の社 会 というか、やさしい本 当 の社 会 だと思 うが、「私 、
結 構 である」と言 われたら、かわりましょうかと言 った者 は、バツが悪 い。「あなたの親 切 に対 しては感 謝 します。
だけど、私 は今 は必 要 ない。」とはっきり言 えばいいわけであって、そういうフランクな関 係 をもっとつくるべきと
思 うのである。
●水 越 :それは健 常 者 と障 害 者 の立 場 の水 掛 け論 である。
●健 常 者 として歩 いていたときには、今 の田 中 先 生 の発 言 に賛 成 である。車 いすに乗 った瞬 間 に「自 分 とは
違 う世 界 の人 間 や」という対 応 をされた経 験 のある者 からすると、水 越 さんのおっしゃっていることもすごくよくわ
かる
●田 中 座 長 :それをしないとユニバーサルデザインはできない。ずっとそういう気 持 ちを持 ったままになってしま
う。
●垣 根 がずっとできたままになっちゃうので、それを取 っていくためには、今 みたいなときにどうやっていったら
いいのかと。
●具 体 的 にというところを……。それは、もしかしたら、お互 いに分 かり合 えないのかもしれない。もしかしたらよ、
分 かり合 おうとする努 力 というのが、その立 場 のそのときになってみなければ、私 は中 井 (純 )さんではないし…
…。
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●中 井 (純 ):健 常 者 が隣 にいて、車 いすが横 にいたら、健 常 者 と自 分 は仲 間 やと思 う。車 いすは異 質 のもの
やと思 う。なぜそこに線 ができるかということであるよね。そしたら、私 というか、例 えば、藤 林 さんがいらして、隣
には車 いすに乗 っている女 の人 と、反 対 側 の隣 には車 いすに乗 ってない男 の人 とがいた場 合 、どっち側 がグ
ループ分 けができるかといったら、どっちもできない。ところが、無 意 識 に「健 常 者 」というグループをつくってし
まう。そこのところがなぜかというのがわからないと、キーワードが出 てこない。
●水 越 :私 の日 常 の体 験 をもう一 つ言 わせてもらうと、今 、社 交 ダンスに凝 っており、健 常 者 がやってる500円
パーティーという、500円 出 したらだれでも踊 れるダンススポットが神 戸 にはいっぱいある。そこに私 は一 人 で行
く。中 に入 って、腰 掛 けのところに自 分 が荷 物 を置 ける場 所 に行 くまで白 状 を持 って入 る。それは「私 は視 覚
障 害 者 である。一 人 で来 ているので、よろしく」というあいさつのつもりである。「踊 りましょう」と来 てくださる。そし
たら、見 えないんだから上 手 であるはずがないと、まずそこから始 まるんである。その方 が想 像 されていたより私
がもうちょっとましな踊 り手 だということがわかると、その方 は機 嫌 が悪 い。「なぜそんな踊 れるの」と。以 上 である。
これが私 の日 常 的 な体 験 である。
それにもめげず私 はちょこちょこそういうところへ行 く。「私 は視 覚 障 害 者 である」ということを私 は生 きている
限 りアピールしたい。それがよく知 っていただくことの手 がかりだと思 う。私 の住 んでいる家 のお隣 の家 の人 は、
そういう具 合 に私 を理 解 していてくださる。私 が要 求 しなくても、私 が必 要 とするだけ隣 の中 学 生 の男 の子 は手
伝 ってくれる。手 伝 ったことを、何 も特 別 なことをしたと彼 は思 っていないのである。当 たり前 の水 が飲 みたいか
ら水 を飲 んだぐらいの気 持 ちでそれができる。
障 害 者 が自 分 の障 害 の種 類 と程 度 を自 分 の意 思 ではっきりと社 会 に示 せるようになることが第 一 歩 だと私
は思 う。だけど、それが障 害 者 だけに一 方 的 に押 しつけられるのじゃなく、それをそういう形 で受 けとめられる人
たちが増 えていってくれればいいと思 う。
●田 中 座 長 :今 の話 を聞 いていて、整 理 しないといけないことは。「する」ことと「される」ことの両 方 における意
味 というか、行 動 と意 識 、それをちゃんと整 理 しなければいけないと思 う。お互 いに他 者 の存 在 についての実
態 をちゃんと理 解 する。「わかる」ということは一 体 どういうことなのかもう一 度 整 理 する必 要 があると思 う。
●中 井 (純 ):先 ほどから出 ている、違 いをわかってもらうために出 ていかないといけないと。それでも、例 えば、
男 の人 が女 の人 が出 産 する気 持 ちがわからないのと同 じように、すべての状 態 のすべてをわかれと言 っても、
それを理 解 しようと努 力 しても、できないことのほうが多 いと思 う。だから、「わからない」という前 提 で、「それはわ
からないもの」という前 提 に戻 らないといけないのと違 うかなというのが一 つ。
それから、この会 議 が開 かれていること自 体 がそうなんだが、障 害 者 が隔 離 されて、隠 されていた障 害 者 が
まちの中 に出 てきているので、バリアフリーとか、ユニバーサルデザインとか言 われて、それを急 ぎすぎて、「何
か特 別 なことをしないといけないのと違 うか」という印 象 というか、そういうように一 般 健 常 者 はせき立 てられてい
るのではないかと思 う。障 害 のある人 を見 たら、何 かわからへんけど、走 っていって、近 づいていって、「何 か手
伝 いましょうか」と言 わないといけないのと違 うかとか。だけど、そんな特 別 なことじゃなくて、物 を落 としたら、「物
が落 ちましたよ」とか、ハンカチを拾 う程 度 のことであるよ。もっと肩 の力 を抜 いて、そんな特 別 にせんでいいん
やというところが言 えたらいいなと今 、思 った。
●進 行 役 (吉 田 ):やはりよく理 解 をするということが大 切 だと思 う。水 越 さんのお隣 の家 にいる中 学 生 もそうだ
と思 うが、その子 は自 然 にできているかもしれないが、まちで視 覚 障 害 者 の方 に出 会 って、その方 に何 かお手
伝 い差 し上 げる機 会 があった場 合 に、どういうふうなお手 伝 いの方 法 がいいのか、どういうふうな声 かけの仕 方
がいいのかということも、やはり普 段 からよく認 識 をしていないと、とっさのときにはできない部 分 というのがあると
思 う。
●水 越 :隣 の奥 さんや隣 の中 学 生 のように世 の中 の人 全 員 がなってくれる、そういう状 態 を迎 えるためには、今
どういう手 段 をとればいいかと、それが論 点 である。それには、障 害 者 と健 常 者 が接 触 できる場 面 をたくさんつ
くること以 外 にないと思 う。そのためには、障 害 者 がもっと自 由 にいろんなところへ、要 するに社 会 参 加 ができる
状 態 をつくることである。例 えば、支 援 費 のガイドヘルパーさんが朝 の9時 から夕 方 の5時 までしか活 動 されな
いというようなことでは、それはとてもできることではないし、音 響 信 号 機 が夕 方 の6時 で切 れてしまうということは、
私 の外 出 をものすごく制 限 しているということである。例 えば、夕 方 からのコンサートなんて行 けませんよね。そ
の私 が土 曜 日 に発 送 させてもらった文 章 であるが、その中 で、「文 化 施 設 」というのが脇 のほうに書 いてあって、
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矢 印 で引 っ張 ってあったと思 うが、「文 化 施 設 」あるいは「スポーツ施 設 」というものがその中 に書 き込 めなかっ
たほど私 は文 化 的 に貧 弱 な日 常 生 活 をしているのだなと後 で思 って、我 ながら笑 ってしまいました。そういう状
態 では、心 のユニバーサルデザインなんていうことはほど遠 いことなんである。
私 、「情 報 」について書 いてくれと言 われたので、《情 報 》視 覚 障 害 者 を中 心 としてというところからその文 章 を
書 いていったわけだが、心 のユニバーサルができていれば、「私 にもたくさんの情 報 をください」なんて言 わなく
てもよくなるわけである。
●田 中 座 長 :それじゃ、それぞれのグループで発 表 者 の方 が決 まったそうなので、ちょっと報 告 していただけま
すか。
●まちづくり・ものづくりチーム進 行 役 (岩 崎 ):まちづくり・ものづくりのほうはお二 人 、このメモでは順 番 が「まち
づくり」、その次 に「ものづくり」となっているが、発 表 の順 序 を変 えて「ものづくり」ということから発 表 して、そいつ
を具 体 的 にまちの中 で展 開 していくという形 でまちづくりのお話 をしていただく、発 表 しようということで、「ものづ
くり」を私 岩 崎 が、「まちづくり」を佐 藤 さんが発 表 することになった。
●くらしづくり・意 識 づくりチーム進 行 役 (吉 田 ):くらしづくり・意 識 づくりのほうだが、一 応 「くらしづくり」につきま
しては、私 吉 田 が発 表 させていただきます。「意 識 づくり」につきましては、本 日 欠 席 いただいているんだが、泥
さんのほうにお願 いしたいということだが、ご本 人 さんがいらっしゃらないので、もし断 られた場 合 は中 井 (純 )さ
んのほうでしていただけるということである。
以上
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