ホスト系フォント ホスト系と言っても、新宿などで活躍する、カッコいいお兄さんたちが使うフォントではありません。 1970 年代中半から、それまで英数字とカタカナしか扱えなかった、国産コンピュータにいわば技術革 命が起こりました。漢字を含んだ日本語を処理することができるコンピュータシステムが開発され、そ の後の日本のコンピュータ業界に大きな変化をもたらしました。この元となったコンピュータを「ホス トコンピュータ」(現在ではメインフレーム)と言います。 この技術開発の先駆者たちが、日本 IBM・富士通・日本電気・日立製作所などの各社です。フォントの 話ですので、各社の詳細な開発・発展の経緯については簡単に述べますが、ホストコンピュータを最初 に開発したのは日本 IBM で 1964 年に「IBM システム/360」を発表しました。しかしこのシステム はまだ、日本語情報処理機能を備えていませんでした。初めて日本語情報処理を開発したのは富士通で す。富士通は 1979 年に日本語拡張システムを開発、FACOM の名称で販売を開始しました。日本電 気、日立製作所も同時期に日本語情報処理システムを開発し、現在の各社のメイン製品である、 Personal Computer の基盤となっています。 各メーカーとも、システム開発と共に、文字の開発にも取り組んできました。まだ情報交換用漢字符号 系(JIS)が制定される前のこと、各社各様の文字セットを作成しました。 ホストコンピュータを開発した各社は、統一した基準が無かったため独自の文字コードの体系を作りま した。日本 IBM は IBM、富士通は JEF、日本電気は JIPS、日立製作所は KEIS という文字コードで す。この他、三菱電機、UNISYS、DEC も独自の文字コードを制定しました。独自のコードを制定し た各社は、JIS の制定に伴って、自社コードを JIS に割り当て、同定できない(はみ出した)文字を「外 字」として定義しました。従って、ホストコンピュータ各社の文字は、JIS 標準+固有外字で構成され ています。 ここではこのうち、今の PC や JIS のコード体系に影響を与えた文字コードについてご紹介します。 1.富士通・JEF(=Japanese processing Extended Feature) 1977 年から自治体の住民登録システムに漢字を伴うコンピュータが使用され、そのためにシステム+ 漢字の開発が求められて誕生したのが JEF です。JEF は、JEF 拡張文字セットとして次の文字数を備 えています。 漢字: 非漢字: ユーザー定義文字(外字) : 4,034 字 1,048 字 3,102 字 総計 8,184 字で、日本語情報処理システムを運用していました。これが後の OASYS を経て、JIS 文 字セットへと繋がります。 2.日本電気・JIPS(=Japanese Information Processing System) 日本電気は、1979 年に日本語情報処理システムを発表しました。1972 年に発売した、漢字入力装置 と漢字プリンタがベースになっています。JIPS の公表は、最初の JIS 情報交換漢字符号系 JISC6226 が発表された 1 年後ですので、JIPS は JISC6226-1978 をベースに拡張文字(JIPS 固有文字)を割 り当てています。具体的には次の通りです。 1 面 84~94 区 2 面 64~94 区 1,034 字 2,914 字 計 3,948 字を JIPS 固有文字として、JIS に埋め込んだ形で運用されていました。JIPS は搭載する用 途によって、JIPS-J と JIPS-E の二つのバージョンがあります。その後、ワープロの文豪や、ベスト セラーになった PC98 を経て、現在の NEC の PC のフォントの基礎となっています。 http://www.ubique-font.co.jp/ Copyright ©2011 UBIQUE Co., Ltd. All Rights Reserved. 3.日立製作所・KEIS(=Kanji processing Extended Information System code) 日立製作所も、日本電気と同じく 1979 年に日本語情報処理システムを発売します。日立は以前から、 文字の字形・字体及びコードの割り当てを研究しており、JIS の制定にも貢献しました。KEIS は JIS 制定以前より、日立のコンピュータの文字標準でしたが、1978 年の JISC6226 の制定に合わせ、KEIS の文字コードを統合しました。KEIS は JIS をベースに文字コードを割り当てました。次の 3 つのセッ トで構成されています。 基本文字セット 拡張文字セット 1 拡張文字セット 3 JISC6226-1978 の第一水準漢字と非漢字を定義 JISC6226-1978 の第二水準漢字を定義 ベンダー拡張外字 KEIS は 1 バイト文字に EBCDIC(エビスディック=ASCII コードに変わり IBM が定めたマッピング) を併用しているところが特徴です。2 バイトの文字集合は、JISX に定義される標準と変わりません。 4.IBM(=International Business Machine) 日本 IBM は、ホストコンピュータの開発は一番早く、1964 年には「IBM システム/360」を世に出 しています。もちろん JIS 制定の 10 以上前のことです。その後、1971 年にシステム/370 バージョ ンアップし 1979 年に「IBM 漢字情報処理システム」を発表しました。IBM は JIS の漢字情報交換用 符号系の制定に協力し、JIS 制定当初から IBM 外字・388 字はマイクロソフトの標準として搭載され ています。マッピング領域は 115 区からの外字領域のため、日本電気が制定した「NEC 選定 IBM 文 字」として 374 字が 89 区からに割り当てられています。 ホスト系外字は次のようなイメージです。 ホストコンピュータは、官公庁に多く納入され、主に帳票類の作成に使用されました。ホストコンピュ ータから PC が主流になり、導入各社が保有しているデータの PC での互換性が大きな問題です。現在 は変換ソフトや、PC に対応したフォントをリリースしているメーカーが多くあります。 http://www.ubique-font.co.jp/ Copyright ©2011 UBIQUE Co., Ltd. All Rights Reserved.
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