胆のう専門外来 ご案内

胆のう専門外来 ご案内
■ご心配な方は専門外来にご相談ください
232-6195
(日野、金廣)
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腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けられる方のための手術説明書・同意書
胆石症について
胆嚢とは
胆嚢は肝臓の下に尐し埋まってはりついているような袋状の臓器です。形はナスのよ
うな形で大きさは個人差がありますが 5~15cm ぐらいです。
肝臓で作られた消化液の胆汁をたくわえる予備タンクのような働きがあります。胆嚢自
体には胆汁を作る働きはありません。
胆汁は特に脂肪分の消化を助けるはたらきがあり,胆嚢は食事に応じて収縮して,
この胆汁を総胆管を通して十二指腸へ送り出し食物の消化を助けます。
胆石(胆嚢結石・総胆管結石など)とは
胆石とは胆嚢や胆管の中に認められる石のことです。
最初はごみ状のものですが次第に砂状の胆砂となり成長して胆石となります。
胆石にはいろいろな種類があり,コレステロールを主成分にするものや,ビリルビンを
主成分にするもの,それらのまざり合ったもの,カルシウムの沈着をともなうものなどさま
ざまです。
数も胆嚢内に 1 個だけのものから,小さいものが数百個以上あるものまで,大きさも 1
㎜から鶏の卵ぐらいまでさまざまです。
また,場所も胆嚢内だけでなく,総胆管や肝内胆管にも結石をみとめることがありま
す。
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胆石症とは
胆石症とは,胆嚢の収縮する働きが何らかの理由で悪くなり,胆嚢の中で胆汁が結
晶を作ることにより石を作ってしまう病気です。
胆石のある方でも,無症状で経過する方もおられますが,多くの方が症状をあらわし
ます。
胆石症の典型的な症状は上腹部の痛み,特にみぞおちのあたりからやや右寄りに痛
みを感じることが多く,背中や右肩にかけての鈍痛やこった感じがすることもよくありま
す。吐き気や熱が出たりすることもあります。
症状は食事を食べ過ぎた後,特に油物を多く食べた後によくみとめられます。そのた
め胃が悪いと誤解されている方もたくさんおられます。
胆石症の痛みは胆嚢の出口に石がひっかかってふさがれることによっておこりますが,
激しい痛みは行き場の無くなった胆汁の中で細菌が繁殖して化膿することによって胆
嚢が腫れ上がって生じます。
症状がひどいときは激痛となり救急車で運ばれてくる患者さんも多くいます。また胆
嚢の炎症がひどくなって胆嚢が破れて腹膜炎をおこしたり,肝臓側に膿がたまって肝
膿瘍ができたり,炎症が肝臓に及んで肝機能障害を引き起こすこともあります。
なかには胆嚢の出口をすり抜けて総胆管に落下する石もあり。そうした総胆管の結石
が十二指腸にある出口をふさいで胆汁が流れなくなると黄疸になります。また出口が共
通の膵管をふさいで急性膵炎という重篤な病気を併発することもあります。
このため胆石症は良性疾患ではありますが,まれにはこれが原因で命を落とされる方
もおられます。
(胆嚢ポリープについて)
胆嚢ポリープとは胆嚢の中にポリープ(隆起した病変)をみとめる病気です。超音波検査(エ
コー)によって数多く発見されるようになりました。胆嚢ポリープではほとんど症状はありません
が,まれにコレステロールを成分とするコレステロールポリープは,ポリープが壁から胆嚢内に
脱落して胆石症と同じ症状をみとめることがあります。
ほとんどの胆嚢ポリープは,コレステロールポリープか腺腫性ポリープとよばれる良性のポリ
ープで,治療の必要はありません。しかしながら,大きさが 10mm をこえると腺腫性ポリープの一
部が悪性化したり,まれに小さくても悪性の胆嚢癌がみつかることがあります。
したがって,10mm をこえるポリープや,次第に大きさが大きくなったポリープは危険とされ,胆
嚢摘出術をする方がよいと考えられています。エコーや CT を用いても良性・悪性の判断は難
しく,胆嚢を摘出して病理検査(顕微鏡でしらべる)することがいちばん確実な方法です。
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治療法について
胆石症の治療法には,主に 3 つの方法があります。内科的治療法としては飲み薬
(結石溶解剤)により胆石を溶かす方法,もう一つは体外から衝撃波を当てて胆石を砕
く方法(ESWL),そして外科的な手術による方法があります。
薬による治療
体への負担は一番小さいものの,薬で溶ける可能性のある胆石はかなり限られます。
溶ける可能性のある胆石でもその効果はかなり不確実で溶けるにしても長い時間を要
するという欠点があります。また,うまく胆石が溶けた場合でも胆石を作る胆嚢(病的胆
嚢)は残るために再発の可能性はかなり高く,溶解剤を長期間飲み続けなければなり
ません。
衝撃波による治療(ESWL)
この方法はもともと尿管の結石の除去を目的として開発された方法です。胆嚢は尿
管と異なり砕いた石が自然に排出されないため,そのための処置が必要になること,ま
た治療中に胆嚢炎や急性膵炎などの重篤な合併症が発生することがわかり,石が破
壊できる成功率も当初期待されたほどではなく,現在ではほとんど行われなくなってし
まいました。
この方法も適応になる結石の種類がかなり限られており,病的胆嚢がそのまま残って
いるためほとんどが再発します。また,この方法は健康保険の適用に制約があり多くの
場合保険が使えないため,かなり高額な自己負担がかかるという欠点もあります。
外科的治療(胆嚢摘出術)
手術による治療法は病気の胆嚢を胆石とともに摘出することで,確実に 1 回の手術
で胆石症を根治できる方法です。胆石症は胆嚢の病気ですから,胆嚢を開いて胆石
だけ取り出すだけでは病気の胆嚢を残すことになり,胆石が再発する危険が高く根本
的な治療にはなりません。ですから,胆石の入った胆嚢を切除する方法が胆石症の標
準的治療として広く世界中で行なわれています。
日本では毎年 20 万人の胆石症の患者さんが胆嚢の摘出手術を受けておられます。
手術方法について
以前に行なわれていた胆嚢摘出手術は,お臍の上もしくは右上腹部の肋骨の下を
10 cm~15 cm 開腹し,胆嚢を直接見ながら(直視下に)摘出する方法でした。しかし,
当院では外科開設時から腹腔鏡による胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)を導入し,
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ほとんどの胆石症の患者さんにこの手術を行っております。
腹腔鏡による胆嚢摘出術には多くの利点があり,すべての患者さんにこの手術をし
てさし上げたいのですが,中には以前に行われていたように開腹手術がふさわしい患
者さんもいます。(腹腔鏡による胆嚢摘出術については後で詳しく述べます)。
開腹手術の手術創
腹腔鏡下手術の手術創
胆嚢は無くても大丈夫?
胆嚢の働きは胆汁の貯蔵にあります。胆汁は特に脂肪の消化に欠かせない消化液
です。これは肝臓で作られており,胆嚢は単なるその貯蔵庫です。取らずにすむので
あれば,それにこしたことはありませんが,これがなくなっても胆汁は肝臓で作られてい
ますので,胆汁の分泌には大きな問題はありません。(胆嚢を持たない動物もいます)
また胆石の説明でお話したように,胆嚢の働きが悪くなっていることが原因となってい
ますから,胆嚢が無くなっても胆石のあった時の状況と大きく変わらないといえるでしょ
う。もちろん胆嚢が無くなってしばらくの間,油っこいものを食べると下痢をすることなど
は起こりえます。しかし経験上ほとんどの患者さんが、手術後も変わりがないと言われ
ております。
逆に、それまでの食後の痛みや右肩の痛みがなくなって調子が良くなったと言われ
る方もたくさんおられます。
腹腔鏡手術とは?
最近の技術革新,特に内視鏡の進歩は目を見はるものがあります。先端に CCD カ
メラのついた高性能内視鏡も開発されています。医療技術の進歩のおかげで,これま
で開腹して行なっていた胆嚢切除手術を,開腹しないで行なうことができるようになりま
した。
この方法は,おなかに開けた小さな穴から中に内視鏡(腹腔鏡)を入れ,おなかの中
を二酸化炭素のガスでふくらませて,テレビモニターでおなかの中を見ながら手術を
行ないます。
手術は全身麻酔で行ないます。
お臍の下のカメラを入れる穴以外に,電気メスや鉗子などの手術器具を使うための 3
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ヶ所の小さな穴を通して,普通の手術と同じように安全に胆嚢を切除します。切除した
胆嚢は,中にある石と一緒にお臍の下にある傷から取り出します。
もちろん,手術に絶対ということはあり得ませんので,手術前の検査でこの方法が可
能と診断された場合でも,高度な胆嚢の癒着や出血などの理由で,腹腔鏡下での手
術が不可能となり,開腹による普通の手術に切り替わる可能性もあります。その可能性
については手術前に十分ご承知していただく必要があります。
腹腔鏡手術の利点
◎
◎
◎
◎
腹腔鏡手術による傷は小さく,術後の痛みが開腹術に比べて少ない。
手術後、腸の運動の回復が早いので,手術翌日の昼からは食事ができます。
術後順調に経過すれば手術後,約 5 日で退院できます。
傷が小さいため,特に女性にとっては,美容上の利点があります。
腹腔鏡手術ができる条件は?
腹腔鏡で行なう手術は,この方法でできるかどうかの条件があります。胆石症では全
ての方にこの方法が適応になるわけではありません。
どの方法で手術をするかを決めるために,総胆管・胆嚢管の検査(MRCP 検査),超
音波検査,CT を行なっています。事前に判断が困難な場合には手術の最初にカメラ
で中を除いてみてから判断することもあります。
その結果,胆嚢の炎症がきわめて強い人にはこの手術は行ないません。胆嚢炎がひ
どく、壁が腐って穿孔(破れている)していた場合や何度も胆嚢炎を繰り返して胆嚢の
壁が硬く厚く石のようになっている(陶器様胆嚢)場合,胆嚢周囲に腸管が高度に癒着
している場合です。
それ以外にも重度の肥満で内臓脂肪が非常に多い場合や,胆管や血管の走行に
異常が生まれつきある場合などがあります。
また,これまでにお臍より上で開腹手術(胃癌,胃潰瘍,十二指腸潰瘍など)を受け
たことのある人は,広範囲に癒着があるために腹腔鏡手術は難しいです。
胆嚢だけでなく総胆管にも結石のある患者さんで,内視鏡的(胃カメラ)に十二指腸
側から石が取れなかった方も開腹手術で行っております。
この手術は全身麻酔で行ないますので,心臓,肺,肝臓,腎臓などの検査も行ない
ますが,検査の結果,全身麻酔に耐えられるということも,もちろん条件になります。
われわれのこれまでの経験から,手術をしなくてはならない胆石症の 90%以上の人
は,この方法で手術ができると考えています。(他施設では 70~80%)
しかし開腹手術が病気を治療するという観点で決して劣るわけではないので、方針と
しては、腹腔鏡手術を行なうことで危険が予想されるならば、安全性を優先して開腹手
術を行ないます。
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手術の安全性
手術は危険が全くないわけではありません。しかしながら手術を勧められるということ
は,胆石症や胆嚢ポリープの病気のある胆嚢を残すことの危険性の方が,手術の危険
性にくらべてはるかに大きいことをご理解下さい。
手術の危険性は他のおなかの手術と比較したとき,虫垂炎の手術に比べると危険
性は高いといえますが,胃や大腸や肝臓など他のおなかの手術に比べると安全といえ
ます。
手術に伴って起きる合併症は他の開腹手術とほぼ同様で,特別その頻度が高いと
はいえませんが以下のようなものがあります。(重症合併症の頻度は 1%以下)
術中合併症 : 出血,胆管損傷,消化管損傷,皮下気腫など
術後合併症 : 術後出血,術後胆汁瘻,癒着性腸閉塞,胆管狭窄,
急性膵炎,黄疸,創感染,創部神経痛,腹腔内膿瘍など
問題が起きないように治療には最善を尽くしますが,不幸にして合併症が起きた場
合には全力で対処いたします。さまざまな合併症に関して対応できる準備はしておりま
す。
術後の経過
稀に手術中に胆嚢内の胆石が総胆管に脱落することがあります,多くの場合,
十二指腸へ自然排石されますが,運悪く総胆管内に遺残したときには内視鏡的処
置によって術後に採石する必要が生じます。
手術が順調にいけば,前にも説明したように手術の翌日から食事がはじまり,2~3
日でシャワーも浴びられるようになります。手術後 5 日前後で退院できます。
これまでこの手術を受けられた多くの方は,手術後 1 週間から 10 日ぐらいで職場に
復帰されています。
しかし,前にも述べましたが,腹腔鏡での手術を予定していても,手術中の判断で開
腹手術に切り替わる可能性もあります。また回復にも個人差がありますので,必ずしも
5 日前後で退院できるとは限りません。その点については事前に十分にご理解してい
ただいたうえで手術を受けていただきたいと思います。
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腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けられる方のための手術説明書・同意書
説明・記載日
年
月
日
説明者
同席者
私は,以上の内容の説明を受け,その必要性と予想される危険性や合併症などを理
解し,納得しました。よって手術の実施に同意します。また実施中において緊急の処
置を行う必要性が生じた場合,適宜その処置をうけることについても同意します。
平成
患者
氏名
未成年,患者本人が自署不可能な場合以下にもご記入ください
親族,代理人 (患者との続柄)
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氏名
年
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