平成24年度 第 1 回管理運営部会研修会レポート 日 時: 平成24年10月26日(金) 13:20 ~ 17:00 会 場: KKR 山口あさくら・2階 扇翠の間 山口市神田町2-18 参加者: 53施設・80名 (欠席10施設) 《行政説明》 ○「平成24年度介護報酬の改正について」 山口県健康福祉部長寿社会課介護保険班 主査 木下幸徳 氏 平成24年度の介護報酬改定は、平成23年6月に成立した「介護サービスの基盤強化のための介護保 険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う新たな介護サービス等への対応、診療報酬との同時改定に 伴う医療と介護の機能分化・連携の強化などへの対応が求められたものである。また「社会保障・税一 体改革成案」の確実な実施に向けた第一歩であり、「2025年のあるべき医療・介護の姿」を念頭に おいている。こうした状況や、介護職員の処遇改善の確保、賃金、物価の下落傾向、介護事業者の経営 状況、地域包括ケアの推進等を踏まえ、全体で1.2%の介護報酬改定を行うものである。 介護報酬改定率 1.2%のうち、在宅分は1.0%、施設分0.2%である。 1.基本的な視点 高齢者の尊厳保持と自立支援という介護保険の基本理念を一層推進するため、介護サービスの充 実・強化を図るとともに、介護保険制度の持続可能性の観点から、給付の重点化や介護予防・重度 化予防について取り組み、地域包括ケアシステムの基盤強化を図る。高齢者が住み慣れた地域で生 活し続けることを可能にするため、Ⅰ高齢者の自立支援に重点を置いた在宅・居住系サービス。Ⅱ 要介護度が高い高齢者や医療ニーズの高い高齢者に対応した在宅・居住系サービスを提供する。ま た、重度者への対応、在宅復帰、医療ニーズへの対応など、各介護保健施設に求められる機能に応 じたサービス提供の強化を図る。 2.各サービスの、主な報酬・基準の見直しの内容 ① 地域包括ケアシステムの基盤強化 在宅・居住系サービスの機能強化の見直し例として、a 新規の重度療養管理加算、b 通所リハビ リテーションに於ける、リハビリテーションマネジメント加算の、算定要件の見直し。施設の機 能強化の見直し例として、c 介護保健施設サービス費の見直し、d 経口維持加算の見直し、e 在宅 復帰・住宅療養支援機能加算の創設、f 新規の入所前後訪問指導加算、g 口腔機能維持管理加算等 がある。 a 重度療養管理加算は、所要時間1時間以上、2時間未満の利用者以外の者であり、要介護4又 は5に該当する者が、医学的管理のもと、通所リハビリテーションを行った場合に当該加算を算 定する。当該加算を算定する場合にあっては、当該医学的管理の内容等を診療録に記録しておく こと。100単位/日である。 b 通所リハビリテーションに於ける、リハビリテーションマネジメント加算の、算定要件の見直 しは、通所リハビリテーションの機能を明確化し、医療保険からの円滑な移行を促進するため、 短時間の個別リハビリテーションの実施について重点的に評価を行うとともに、長時間のリハビ 1 リテーションについて評価を適正化するもの。所要時間2時間以上3時間未満の場合、新たに単 位数1~5の単位数を指定し、所要時間4時間以上6時間未満の場合と、所要時間6時間以上8 時間未満の場合の単位数を減少させて、基本サービス費の見直しを行った。リハビリテーション マネジメント加算の算定要件の主な変更点は、1 月につき4回以上通所していること。新たに利 用する利用者について、利用開始後1月までの間に利用者の居宅を訪問し、居宅における利用者 の日常生活の状況や家屋の環境を確認した上で、居宅での日常生活能力の維持・向上に資するリ ハビリテーション提供計画を策定することである。 c 介護保健施設サービス費の見直しは、喀痰吸引、経管栄養を実施している利用者の割合、及び 認知症高齢者の日常生活自立度を算定要件とする、 「療養強化型」の新設である。 d 経口維持加算の見直しは、介護保健施設における経口維持の取組みを推進し、栄養ケア・マネ ジメントの充実を図る観点から、歯科医師との連携、言語聴覚士との連携を強化するよう、算定 基準の見直しを行うものである。 e 在宅復帰・住宅療養支援機能加算は、算定開始月前月のなるべく15日までに、届け出が必要 である。介護保健施設サービス費又はユニット型介護保険施設サービス費についてのみ、算定可 能。在宅復帰支援型の施設としての機能を強化する観点から、在宅復帰の状況及びベッドの回転 率を指標とし、機能に応じた報酬体系への見直しを行うものである。21単位/日である。 f 新規の入所前後訪問指導加算は、入所期間が1月を超えると見込まれる者の入所予定日前30 日以内又は入所後7日以内に当該者が退所後生活する居宅を訪問し、退所を目的とした施設サー ビス計画の策定及び診療方針の決定を行った場合に、入所中1回を限度として算定する。当該者 が退所後にその居宅でなく、他の社会福祉施設等に入所する場合であって、当該入所者の同意を 得て、当該社会福祉施設等を訪問し、退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療方針の 決定を行った場合も、同様に算定する。1人につき1回を限度とし、460単位/回である。 g 口腔機能維持管理加算とは介護保健施設において、Ⅰ歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、 入所者の口腔ケアを月4回以上行う場合。Ⅱ口腔機能維持管理体制加算を算定している場合に、 評価するものである。但し口腔ケアを歯科医師本人が行う場合は、当該加算の対象とならない。 又協力歯科医療機関に属する歯科衛生士でも算定可である。110単位/月である。 ② 医療と介護の役割分担・連携強化 医療ニーズの高い高齢者に対し、医療・介護を切れ目なく提供するという観点から、医療と介護 の役割分担を明確化し、連携を強化することが必要である。このため、Ⅰ在宅生活時の医療機能 の強化に向けた、新サービスの創設及び訪問看護、リハビリテーションの充実並びに看取りへの 対応強化。Ⅱ介護保健施設における医療ニーズへの対応。Ⅲ入退院時における医療機関と介護サ ービス事業者との連携促進を進める。また、これらを実現するために、看護職員等医療関係職種 をはじめ必要な人材確保策を講じることが必要である。見直し例として a ターミナルケア加算算 定要件の見直し。b 新規の所定疾患施設療養費。c 新規の地域連携診療計画情報提供加算がある。 a ターミナルケア加算算定要件の見直しは、看取りの対応を強化する観点から、ターミナルケア 加算の算定要件の緩和を行うものである。死亡日以前4~30日にターミナルケアを行った場合 は、160単位/ 日。 死亡日前日及び前々日にターミナルケアを行った場合は、820単位/ 日。死亡日にターミナルケアを行った場合は、1650単位/ 日。更に入所している施設又は 当該入所者の居宅において、死亡した場合であることという要件を削除した。 2 b 新規の所定疾患施設療養費は、入所者の医療ニーズに適切に対応する観点から、肺炎や尿路感 染症などの疾病を発症した場合における施設内での対応について評価を行うものである。所定疾 患施設療養費(新規)は 300 単位/日である。算定要件は以下の3点である。Ⅰ肺炎、尿路感染 症又は帯状疱疹について、投薬、検査、注射、処置等を行った場合。Ⅱ同一の利用者について1 月に1回を限度として算定する。Ⅲ1回につき連続する7日間を限度として算定する。 c 新規の地域連携診療計画情報提供加算は、診療報酬の地域連携診療計画管理料又は地域連携診 療計画退院時指導料を算定して保険医療機関を退院した入所者に対して、当該保険医療機関が地 域連携診療計画に基づいて作成した診療計画に基づき、入所者の治療等を行い、入所者の同意を 得た上で、退院した日の属する月の翌月までに、地域連携診療計画管理料を算定する病院に診療 情報を文書により提供した場合、1人につき 1 回を限度として算定したものである。300単位 /回。 ③ 認知症に相応しいサービスの提供 認知症の人が可能な限り住み慣れた地域で生活を続けていくため、小規模多機能型居宅介護、認 知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護 療養型医療施設において必要な見直しを行う。見直し例として、新規の認知症行動・心理症状緊 急対応加算がある。これは認知症行動・心理症状への対応強化を図るため,認知症の症状が悪化 し,在宅での対応が困難となった場合の受入れ及び在宅復帰を目指したケアについて評価したも のである。医師が認知症の行動・心理症状が認められるため在宅での生活が困難であり、緊急に 介護保健施設サービスが適当であると判断した者に対し、介護保健施設サービスを行った場合に は、入所した日から起算して 7 日を限度として、1 日につき所定単位数200を加算する。 ④ 地域包括ケアシステムを支える介護人材の確保 これまで介護職員処遇改善交付金を創設したりして介護職員の処遇改善を行ってきたが、今回の 改定に於いて「介護職員処遇改善加算」を創設して、事業者における処遇改善を評価する。地域 間の人件費の格差も考慮する。介護職員処遇改善加算は、介護職員処遇改善交付金相当分を介護 報酬に円滑に移行するため、例外的かつ経過的な取扱いとして、平成 27 年 3 月 31 日までの間、 設けられたもの。 (1月あたりの総単位数) × (サービス別加算率。老健1.5%) 。 算定要件は、以下の基準のいずれにも適合すること。 Ⅰ介護職員の賃金(退職手当を除く)の改善に要する費用の見込額が、介護職員処遇改善加算 の算定見込額を上回る賃金改善に関する計画を策定し、当該計画に基づき適切な措置を講じてい ること。Ⅱ賃金改善に関する計画並びに当該計画に係る実施期間及び実施方法その他の介護職 員の処遇改善の計画等を記載した介護職員処遇改善計画書を作成し、全ての職員に周知している こと。Ⅲ介護職員処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること。Ⅳ事業年度ごとに 介護職員の処遇改善に関する実績を報告すること。Ⅴ算定日が属する月の前12月間において、 労働基準法、労働者災害補償保険法、最低賃金法、労働安全衛生法、雇用保険法、その他の労働 に関する法令に違反し、罰金以上の刑に処せられていないこと。Ⅵ労働保険料の納付が適正に行 われていること。Ⅶ以下のいずれかの基準に該当していること。 (一)介護職員の任用の際にお ける職責又は職務内容等の要件を定め、書面をもって、全ての介護職員に周知していること。 (二) 介護職員の資質の向上の支援に関する計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会 を確保するとともに、全ての介護職員に周知していること。Ⅷ平成20年10月から届出の日の 3 属する月の前月までに実施した介護職員の処遇改善の内容(賃金改善に関するものを除く。)及 び当該介護職員の処遇改善に要した費用を全ての介護職員に周知していること。 4 ○「介護保険法に基づく実地指導の結果から見た留意点」 山口県健康福祉部指導監査室 主査 佐藤浩昭 氏 1.平成23年度介護保険法に基づく実地指導の結果 (1)実施数 11施設 (2)指導事項及びその内容 ①趣旨及び基本方針 基本方針 療養室以外の場所で、長時間にわたってサービス提供が行われていた。 2件 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(以下基準省令という)第1 条の二 2介護老人保健施設は、入所者の意思及び人格を尊重し、常に入所者の立場に立って 介護保健施設サービスの提供に努めなければならない。に違反。 ②人員に関する基準 従業員の員数 薬剤師の勤務実態が、ほとんどなかった。 1件 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について(以下解釈通知とい う)第2。人員に関する基準二 薬剤師 薬剤師の員数については、入所者の数を300で除 した数以上が標準であること。に違反。 ③運営に関する基準 ア内容及び手続の説明及び同意 重要事項説明書の記載内容の不備。 9件 ・従業員の員数が、実態と異なっていた。 ・苦情申し立て先としての保険者(市町)及び国保連の所在地と、電話番号の記載がなかっ た。 ・国保連の連絡先が苦情相談窓口専用電話番号(083-995-1010)に、なってい なかった。 基準省令第5条。介護老人保健施設は、介護保健施設サービスの提供の開始に際し、あらか じめ、入所申込者又はその家族に対し、第25条に規定する運営規程の概要、従業者の勤務 の体制、その他の入所申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書 を交付して説明を行い、当該提供の開始について入所申込者の同意を得なければならない。 及び解釈通知第4。運営に関する基準1に違反。 イサービス提供の記録 被保険者証に入退所の記録がなかった。 1件 基準省令第9条1。介護老人保健施設は、入所に際しては入所の年月日並びに入所している 介護保険施設の種類及び名称を、退所に際しては退所の年月日を、当該者の被保険者証に記 載しなければならない。に違反。 ウ介護保健施設サービスの取扱方針 身体拘束を行う場合の手続きの不備他 4件 ・身体的拘束を行う際の同意や、日々の記録が不十分であった。 5 ・複数の職員で身体的拘束の必要性について検討されているが、限られた職種のもの参加で あり、施設全体としての判断が行われていなかった。 基準省令第13条4。緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者の行動を制限 する行為(以下身体的拘束等という)を行ってはならない。5。身体的拘束等を行う場合に は、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を、記録 しなければならない。及び解釈通知第4運営に関する基準11(1) (2)に違反。 エ施設サービス計画の作成 作成の遅れ他 3件 ・新規入所者について1か月間も、施設サービス計画が作成されていなかった。 ・施設サービス計画の原案を利用者又はその家族に説明し同意を得て交付しているが、施設 介護計画を交付した後に、サービス担当者会議を開催していた。 基準省令第14条6。計画担当介護支援専門員は、サービス担当者会議の開催、担当者に対 する照会等により、当該施設サービス計画の原案の内容について、担当者から専門的な見地 からの意見を求めるものとする。及び解釈通知第4運営に関する基準12施設サービス計画 の作成(6)に違反。 オ機能訓練 リハビリテーション実施計画について、施設サービス計画の中に包括して記載していたが、必 要な項目が不足していた。 1件 基準省令第17条。介護老人保健施設は、入所者の心身の諸機能の維持回復を図り、日常生 活の自立を助けるため理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを、計画的に行 わなければならない。及び解釈通知第4運営に関する基準15に違反。 カ運営規定 従業員の員数の記載内容の不備他 7件 ・従業員の員数が実態と異なっていた。 ・薬剤師の職種及び職務内容の、記載がなかった。 ・特別な療養室の提供を行ったことに伴い、必要となる費用の額の記載がなかった。 基準省令第25条。介護老人保健施設は、次に掲げる施設の運営についての重要事項に関す る規定を、定めておかねばならない。二従業員の職種、員数及び職務の内容。四入所者に対 する介護保健施設サービスの内容及び利用料、その他の費用の額。に違反。 キ勤務体制の確保等 勤務表の作成の不備 11件 ・職種、常勤・非常勤の別、専従・兼務の別及び兼務の職種について、記載がなかった。 ・医師及び薬剤師の勤務表の作成が、なかった。 基準省令第26条1。介護老人保健施設は入所者に対し、適切な介護老人保健施設サービス を提供できるよう、従業者の勤務の体制を定めておかなければならない。及び解釈通知第4運 営に関する基準23(1)に違反。 ク掲示 掲示している重要事項の内容の不備 9件 ・苦情受付窓口である保険者(市町)及び国保連の所在地と電話番号が、掲示されていなか 6 った。 ・現状の内容と異なる重要事項が、掲示されていた。 基準省令第31条。介護老人保健施設は、当該介護老人保健施設の見やすい場所に、運営規 定の概要、従業員の勤務の体制、協力病院、利用料その他のサービスの選択に資すると認め られる重要事項を、掲示しなければならない。に違反。 ケ秘密保持等 入所者の同意の不備他 2件 ・サービス担当者会議等において入所者又はその家族の個人情報を用いる場合に、重要事項 説明書等により包括同意を得ているとのことであったが、文面からは同意が読み取れなか った。 ・従業員から守秘義務に係る誓約書を提出する等の、必要な措置が講じられていなかった。 基準省令第32条2。介護老人保健施設は従業員であったものが、正当な理由がなくその業 務上知り得た入所者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなけれ ばならない。3。介護老人保健施設は居宅介護支援事業者等に対して、入所者に関する情報 を提供する際には、あらかじめ文書により入所者の同意を得ておかなければならない。及び 解釈通知第4。運営に関する基準27(2)に違反。 ④変更の届出 ア開設許可等の変更 実態に応じて平面図の変更許可を、受けていなかった。 3件 介護保険法第94条2。当該介護老人保健施設の入所定員その他、厚生労働省令で定める事 項しようとするときも、前項と同様(都道府県知事の許可)とする。及び介護保険法施行規 則第136条2に違反。 (3)介護給付費の算定に関する事項に係る留意点 ①介護給付費の算定 ア介護保健施設サービス費が、過誤調整により自主返還となった例 ・国の定める者に該当しない入所者に多床室の報酬単価で、介護報酬が算定されていた。 イ夜勤職員配置加算 ・1日平均夜勤職員数について、暦月ごとに計算がなされていなかった。 ウ短期集中リハビリテーション実施加算 ・祝日等のためリハビリテーション職種が配置できなかったという施設の理由により、1週に つき概ね3日以上の集中リハビリテーションが、提供されていなかった。 エ認知症ケア加算 ・固定した介護職員又は看護職員以外の職員が、配置されていた。 オ退所時情報提供加算 ・主治の医師に対して、情報提供を行わずに、加算を算定していた。 カ退所前連携加算 ・連携を行った日及び連携の内容の要点に関する記録が、残されていなかった。 キ栄養マネジメント加算 ・モニタリングの記録の内容が、担当管理栄養士のコメントのみであり、身体計測、栄養状 7 況の改善状況、栄養補給等の記録がなかった。 ・栄養ケア計画に変更があった場合に、サイン等により入所者又は家族の同意を得ていなかっ た。また栄養ケア計画の見直しの結果、変更がない場合にも利用者又は家族の同意を得た記 録が、残されていなかった。 ク経口維持加算で過誤調整による自主返還となった例 ・造影撮影により誤嚥が認められないものについても、当該加算を算定していた。 ケ療養食加算 ・医師による食事せんの発行が、明確でないものがあった。 ・過誤調整による自主返還となった例として、減塩食の塩分総量が6.0グラム以上となって いる日についても、当該加算を算定していた。 コサービス提供体制強化加算 ・算定要件である職員の割合の算出に当たっては、常勤換算方法により算出した前年度(3月 を除く)の平均を用いることとされているが、その割合が算出されていなかった。 2.会計検査院「平成22年度決算検査報告」における、不適切に支払われた介護給付費の概要 会計検査院が行った実地検査の結果、平成15年度から22年度までの間における介護給付費の支払 いについて、44,300件、1億3,847万円が適切ではないと認められた。 具体的には介護報酬の算定に当たり介護老人保健施設において、医師の判断によらず事業所の都合で 個室を利用した場合において、多床室の単位数により介護給付費を請求していたものが、187件。 49万円であった。 今後はこのような事態を招くことがないよう、事業者等に対する必要な助言及び適切な援助を行い、 介護保険事業の運営が健全且つ円満に行われるよう、取り組まれたい。 8 《特別講演》 ○「移りゆく命を舞いながら」 医療法人仁和会 白枝内科クリニック 副院長 石橋 典子 先生 ◎命の仕舞い方 ・今の70代以上のお年寄りは戦中戦後の苦難の時代を生き、日本を復興された功労者。その方々 が仕舞の時期にある。その功労者がただ年齢別に、分類されている。そしてその方々にどれだ け金がかかるか、受け皿をどうするかしか論議されていない。お荷物扱いである。 ・能の中に仕舞という演目がある。仕舞とは華燭を全て捨てた、人間本来の振舞いを指す。30 数年かかって石橋先生が気付かされた認知症への認識は、病気じゃなくて人間の素の姿に近付 いた方達の、高尚な生きる舞台の装置である。 ・嘗ては呆けたら御終い。呆ける位だったら癌になって死んだ方がましと思考された。精神病院 が居場所とされ、紐でがんじがらめにされオシメを強要された。オシメを取り外す方には、ツ ナギと鍵が強制された。排尿5回分まで、大丈夫と言われていた。これはまさに無いよりはあ った方がいいから、社協からメガネを借りてきて、かけさせられるようなもの。度のあってい ないメガネが使えるか?度があっていないからいらつき、徘徊や暴言を誘発する。道具の適正 性を、考慮していない。 ・1995年にNHKで放映された小山のおうちの通所者、吉田昭善氏と佐藤安子氏の様子を、 45分に亘り上映。小山のおうちとは1993年に精神科のエスポアール出雲クリニックに併 設された、石橋先生が実質的に運営された認知症デイケア施設。収拾癖のある老人についての 内容。老人は使えるものを捨てない。昔の人は殆ど塵を出さなかった。決してお年寄りは腐っ たものをポケットには入れない。使えるものを収拾している。塵処理に莫大な出費をして、塵 じゃないものを捨てている私達の方が問題ではないか。お年寄りに、無駄はない。学ぶことば かりである。 ・1週間前に亡くなられた、30数年認知症患われた方がいる。亡くなる当日夜もデイサービス で食事をされ、仏壇の見える自室のベッドで、息子夫婦と孫に囲まれながら、大往生された方 がいる。今こういう方も増えてきている。こういう時代がやっと到来した。 ・著書に「仕舞としての呆け 認知症の人から学んだことば」中央法規出版社刊。インターネッ トで配信されている「認知症フォーラムドットコム」の「認知症ケアの来た道」の中で、認知 症への取組みと思いを語られている。 9 〈感想〉 平成24年度介護報酬の改正の主眼は、高齢者の尊厳保持と自立支援である。基本的な視点は1 地域包括ケアシステムの基盤強化、2医療と介護の役割分担・連携強化、3認知症にふさわしい サービスの提供で、2025年のあるべき医療・介護の姿を実現するための第一歩であることを 念頭におき、介護サービス提供体制の効率化・重点化と機能強化に向けて必要な措置を講じると いう改変であった。高齢者を主体に置いたその姿勢は、今後も継続、発展していって欲しい。 介護保険法に基づく実地指導の結果から見た留意点では、法令違反の施設の多さと内容に、遺憾 の意を懐いた。現場、法令、監査の調和があってこそ、高齢者の尊厳保持と自立支援は叶い、真 の高齢化社会が到来するという思いに駆られた。 「移りゆく命を舞いながら」と題された特別講演は、認知症に対する通念を根底から覆す内容で あった。認知症は病気ではなく、人生を仕舞う最後の舞台装置であると認識させられた。お年寄 りの行動に無駄はない。近視の人は、メガネをかければ困らない。認知症でもピントの合った補 助があれば、生き生きと過ごせるという石橋先生の信念は、今後の高齢化社会の指針となると確 信できた。 この度の管理運営部会研修会は、現場、法令、監査の三つの観点から有意義な説明や講演をいた だき、今後の道標を示していただいたと、感謝しています。 〈作成者〉 介護老人保健施設 ひまわりの苑 10 多田浩志
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