ご 挨 拶 関西工学教育協会高専部会長 和歌山工業高等専門学校長 堀 江 振 一 郎 秋風が吹いてくると、毎年恒例のノーベル賞受賞者発表の続く一週間が、どこか待 ち遠しく感じられます。今年は10月7日から一週間ほどの間に一日一分野ずつ発表さ れ、授賞式は12月10日と聞きます。この高専部会だよりがお手許に届く頃に、日本 人の科学者の受賞の知らせが届いていることを祈っています。また、私はひそかに日本 で研究したアジアの研究者の受賞が出ないかと、留学生を預かるアジア・シンパの校長 として以前から期待しています。 昨年受賞の山中伸弥先生は、神戸大学、大阪市立大学、奈良先端科学技術大学院大 学、京都大学と、近畿4府県にまたがった高等教育機関での研究歴の上に顕彰されたの ですから、関西の自信につながり殊の外うれしく思いました。米国の学界では、インブ リーディング(純血、内部優遇)を避けて、違う研究機関での研究歴を積極的に評価し て、更に高質の研究者集団を形成する賢い習慣があり、これが現在の国力に繋がってい ると思います。関西の4大学で研究を重ねた山中先生の受賞も、この高流動性の妙が高 い成果をもたらす一因だったと言えるかもしれません。 さて、現在の高専本科卒業生は、8月発表の学校基本調査速報で、39%が大学等 へ進学し、中には、半数を超えて進学する高専もあります。各校に専攻科もありますが、 大学工学部に3年生で編入した後、さらに大学院で勉学を続ける高専卒業生も増えてい ます。高専からの進学者は、二つの違った高等教育機関での研究を二十歳前後に若くし て経験した貴重な人材と言えます。また、高専からの大学編入生は、実験技能が実践的 で高いだけでなく、研究・実験プロセスの組立て方にも一味違った力を発揮するという 評価を、時々進学した先の大学関係者から聞き、嬉しく思います。 大学工学部の規模に比べると、高専は一校で60~80人の教員が各府県に散在し、 学校間の人事交流も少ないという状況にあり、イノベーションを生むためには、人的な 流動性を高め、研究テーマや研究資金を外部に広く求めなければなりません。産業界か らも優秀な教員を迎え、また、研究テーマも生産現場での課題、地元の課題に取り組む よう高専は努力しています。経済界に活気が戻るとともに、高専にも高度化に向けた施 設整備が国策として動いている今日、日本企業の産業技術と、関西地区高専7校の連携 協力、さらに、ノーベル賞級の研究を生んでいる関西の大学における研究活動が繋がり、 切磋琢磨し合うことで、次代の技術者が育ち、産業技術の発展が続くものと考えます。 平 成 25 年 度 総 会 だ よ り 平成 年 月 日 月に 阪急タ ーミナ ルビル 階, さつき の間に おいて, 関 西工学教育協会高専部会の総会および 第 回研究 集会が 開催さ れた。 総会で は最 初に部 会長 であ る和歌 山高 専の 堀江振 一郎 校長 挨拶( 写真 1) があり ,続 いて前年 度事業 と決算 報告 、平成 年度 の事業 計画と 予算案 につい て説明 があり ,そ れらに つい て意見 が交 わさ れた。 議論 の中 では, 繰越 金の 適正額 や使 途, 会員の 増加 策等について建設的な意見が出され, 有意義 な意見 交換が なされ た。(写 真2~ 4) また役員の交代について報告があった 。 総会終了 後の研 究集会 では和 歌山高専 の 2% で,日本 のスピ ンエレ クトロ ニクスの 第 一人者の 一人で もある 九州大 学教授の 木村崇 氏によ る, 『磁 石を使 ったグ リーン ナノエ レクト ロニ クス』 のタ イト ルでの 講演 が行 われた 。講 演の 中で木 村氏 は高 専時代 を振 り返っ て, 高専の 良か った ところ や, 自身 の勉強 への 動機 付等に つい て言 及され ,講 演後は活発な意見交換が行われた。 写真 1 挨拶する部会長 ( 和 歌 山 高 専 堀 江 校 長 ) 写真 2 説明の様子 写真 3 審議の様子 写真 報告の様子 − 1 − − 2 − − 3 − − 4 − − 5 − − 6 − − 7 − − 8 − つつある。このように、スピン流の利用は、エレクトロニクス以外の幅広い分野においても様々な貢献 が期待できる。 このような状況の中で、最近、半導体メモリの大手企業と高性能 MRAM の製作技術を有している企 業との合併や業務提携等が相次いで発表されている。今後、高性能ナノスピンデバイスの製品化に向け た開発が本格化し、以前の半導体産業と同様、技術開発競争の激化が進むと考えられ、産業界からも、 スピンデバイスの研究者の必要性が増すと期待している。一方で、スピン流の関連研究は歴史が浅いた め、未解明・未開拓の領域が数多く残されており、新奇物理現象の解明など基礎物理学的に興味深い側 面を持つ点も魅力の一つである。このような分野は、研究者の探究心を掻き立て、浪漫溢れる研究課題 を若い学生に提供できる可能性を持っている。このように、教育的にも、産業的にも、まだまだ伸び代 のあるスピントロニクスに今後も期待して頂きたい。 㻌㻌㻌 㻌㻌㻌㻌 全体の様子㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 説明する木村教授 − 9 − 㻌 平成 㻞㻡 年度㻌 秋季研修セミナー㻌 担当校 明石工業高等専門学校 1.開 催日時 平成 25 年 11 月 29 日(金) 2.開 催場所 阪急ターミナルビル 17F いちょうの間 3.テ ー マ 高専の防災教育 4.基 調講演及び質疑 「高専における防災教育の現状と今後のあり方」 講師:明石工業高等専門学校特命教授 太田 敏一 氏 5.各校事例報告(7高専)及び討論 平成 㻞㻡 年度㻌 見学会㻌 担当校 舞鶴工業高等専門学校 1.開 催日時 平成 26 年 1 月 31 日(金) 2.見 学場所 未定 㻌㻌㻌 㻌㻌㻌㻌 㻌 あ㻌 と㻌 が㻌 き 高専部会だより第 72 号をお届けいたします。内容は、部会長の和歌山工業高専堀江振一郎校長ご挨 拶に続いて、平成 25 年度総会だよりとして、平成 24 年度の事業報告と決算報告、平成 25 年度の事業 計画と予算、及び平成 25 年度の役員等名簿、最後に総会の後に開催されました第 62 回研究集会の概要 となっています。本号の発行にご協力いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。 事務局運営も 2 年目に入りましたが、なかなか難しい部分も多く、悪戦苦闘しております。各校の皆 様にはご迷惑をおかけする部分もございますが、どうぞ、温かく見守っていただきますよう、よろしく お願いいたします。 関西工学教育協会 高専部会 事務局 和歌山工業高等専門学校
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