廃棄物埋立地における高密度電気探査の適用事例

全地連「技術 e-フォーラム 2003」さいたま
廃棄物埋立地における高密度電気探査の適用事例
【26】
1.
大成基礎設計㈱
江中
泰久
大成基礎設計㈱
○荒平
義生
はじめに
土壌汚染調査では対策の検討に先立ち,3 次元的分
布状況を把握することが求められる。調査では表層土
3
丘陵
2
壌・表層ガス分析およびボーリング調査が用いられる
1'
が,これらの調査で得られる情報は点の情報である。
1
ボーリング調査は汚染の分布状況を直接的に確認する
高密度電気探査測
線
谷
ことが出来る最も有効な方法であるが,経済性や効率
性の点から制約されることが多い。ボーリング調査を
2'
3'
効率的に行うためには,3 次元的な汚染の分布状況を
0m
50m
安価で簡便に把握する方法の開発が課題であり,物理
図-2 高密度電気探査測線略図
探査の手法の適用が期待されている。しかしながら,
その適用可能な条件等が十分に整理されていないのが
4.
現状である。
本文は廃棄物埋立土の 3 次元的分布状況を把握する
ために実施した高密度電気探査の適用事例を紹介した
調査結果
(1)
3 次元的分布状況
廃棄物埋立土の性状は,ボーリング調査により直接
的に確認されるまで,まったく不明であった。テスト
ものである。
測線における探査結果等から,廃棄物埋立土の比抵抗
2.
値はおよそ 250~350Ω・m と推定したが,その後のボ
地形・地質概要
調査地は丘陵地に位置する谷斜面である。当地では
ーリングとトレンチ掘削の結果より,埋立物と埋立状
廃棄物を埋立・覆土して造成しており,現在はその上
況が明らかとなり,高密度電気探査の比抵抗値をさら
に建築物や道路等の構造物が建設され,複雑な地形を
に低く修正した。これらの結果を総合解析し,以下の
呈している。
ことが判明した。
地質構成は,洪積世の礫質土が主に丘陵を形成して
調査結果は以下のとおりである。また,高密度電気
おり,谷部には崩積土が分布している。
探査の結果を図-3 に示す。
3.
・ 廃棄物埋立土は全体的にシルト化した性状を呈し,
調査のながれ
調査のながれは,図-1 の調査フローに示す。高密
度電気探査の測線は,図-2 に示す。
比較的低い抵抗値を示した。
・ 地山は全体的に粘土質砂礫主体からなり,比較的高
い抵抗値を示した。表層部の高比抵抗値は転圧され
ヒアリング等調査・空中写真判読(時系列)
・地形改変・埋立状況の概要把握
・高密度電気探査の調査立案
高密度電気探査
た盛土や改良地盤と判断されることから,廃棄物埋
立土は地山と明瞭な比抵抗値のコントラストが得
られ,全体的な 3 次元的分布状況が把握できた。
・ 地山の比抵抗値は,粘性土含有の強弱や含水状態に
・廃棄物埋立土の 3 次元的分布の概要把握
・ボーリング位置の選定
ボーリング調査・トレンチ掘削
・廃棄物埋立土の性状把握
・分布の確認
廃棄物埋立土の 3 次元的分布の把握
空中写真判読(実体視)
よって幅が大きく,廃棄物埋立土とのコントラスト
が明瞭に表れないところがある。
・ 廃棄物の土性,層厚の薄さ,覆土との混在状況等に
よっては,比抵抗値に相対的な違いを検出すること
が困難な場合がある。
・ 結果は探査測線の取り方にも左右される。丘陵から
谷へと地形を横断する測線については,比較的地盤
状況を反映した結果が得られたが,地形上の境界線
に沿った測線は地層と平行なため解析結果が明瞭
埋立土量の推定
図-1 調査フロー
に表れない傾向にあり,構造物の影響を受けている
可能性がある。
全地連「技術 e-フォーラム 2003」さいたま
30
3-3’
2-2’
30
(m)
15
高さ
高さ
(m)
15
0
0
0
距離
25
(m)
50
0
距離
35
(m)
70
Wc
廃棄物埋立土(粘性土)
Wg
廃棄物埋立土(礫質土)
30
1-1’
B
盛土(礫質土)
Tr
段丘層(粘性土/礫質土)
B(盛土)
(m)
30
高さ
Wc(廃棄埋立土)
Tr(段丘層)
0
0
50
距離
150
100
(m)
図-3 高密度電気探査結果
(2)
土量の推定
廃棄物埋立土の土量の推定は,以下の方法で行った。
染物質の種類や物理的・化学的性質を事前に把握する
ことが重要である。
また,探査で得られた比抵抗値は,地形・地山状況,
・ 実体視鏡を使用した空中写真判読により,地形改変
人工物,廃棄物の層厚や性状によっては幅が大きく,
前の地表面形状を把握し,特定年代における地表面
影響を受けやすいことも判明し,探査結果の評価につ
に露出している廃棄物の土量を試算した。
いては,現地・資料等調査およびボーリング調査によ
・ 廃棄物埋立土の平面分布範囲をグリッドで囲い,廃
る直接確認と総合解析が重要な判断材料となる。
棄物底面と地表面との比高差と面積から各グリッ
ドの容積を算出し,その総和を全土量とした。
6.
おわりに
今後もさらに事例を重ね,物理探査技術が土壌地下
5.
まとめ
今回の調査では,高密度電気探査により,廃棄物埋
水汚染調査において有効な手法となり得るよう検討し
ていきたい。
立土の 3 次元的分布の概略を把握し,ボーリング調
査・トレンチ掘削を効率よく行うことができた。
高密度電気探査は廃棄物埋立土の 3 次元的分布状況
の把握に適用できるが,適用にあたっては調査手法の
選定段階や一次解析の早い段階において,埋立物や汚
《参考文献》
1) [財]災害科学研究所 トンネル調査研究会編:地盤
の可視化と探査技術,2003.5.