座長付ポスターセッション PA1 植込み型ループレコーダが診断に有用だった意識消 失の 1 例 国立病院機構北海道医療センター循環器内科 ○別役徹生,佐藤 実,武藤晴達,玉田 淳, 寺西純一,岡本 洋 であった症例を経験したので報告する。 症例は 65 歳男性。 2007 年 12 月 27 日午前 4 時 にトイレに行き,その後目が覚めてテレビを見て いたが,寝てしまった。その後,足をバタバタさ せている音に横で寝ていた妻が気がついた。眼球 上転し,頬を叩いても反応なく,数十秒でいびき をかいて寝ているようなった。23 分で呼びかけ に反応するようになった。軽い見当識障害あり。 同様の発作が数度あり,当院を紹介された。家族 歴に特記すべきことなし。ECG は正常洞調律で, QT 延長なく,右前胸部での ST 上昇も認めなか った。心エコーで器質的心疾患なく,EPS では, 3 連刺激までで心室頻拍は誘発されず,洞機能も 正 常 だ っ た 。 睡 眠 脳 波 , 脳 MRI , 脳 血 流 シ ン チ,頚部 MRA に特異的な異常を認めず,神経内 科でも診断がつかず,植込み型ループレコーダを 植込んだ。発作時に,妻がアクチベートし,記録 を解析したところ,心電図でリズム異常は認めら れず,強直発作とそれに引き続く間代発作に一致 する筋電図が記録されていたため,強直,間代発 作の診断がついた。植込み型ループレコーダが, 不整脈原性失神の診断及び除外診断だけではな く,間接的ではあるが,てんかんの診断にも有用 PA2 PM, ICD, CRT-D 植込み患者の抑うつ・不安要因 についての検討 群馬県立心臓血管センターリハビリテーション課 ○藤井麻由美,生須義久,木村悠子 群馬県立心臓血管センター循環器内科 内藤滋人,安達 仁 群馬県立心臓血管センター整形外科 有田 覚 【 目 的 】 本 研 究 の 目 的 は , PM, ICD, CRT-D ( Device )植込み患者の Device の違いによる精 神心理機能の傾向と,その関連要因について調 査,検討することである。【対象と方法】当院で Device 植 込 み 術 を 受 け た 198 名 ( PM93 名 , ICD69 名, CRT-D36 名,平均年齢 65.8 歳)を 対象に,郵送法により Hospital Anxiety and Depression scale(HADS)を用いて抑うつと不 安について評価した。加えて, Duru らが作成し た質問紙を用いて Device 植込み後の日常生活と 治療に関する認識について調査した。【結果】ア ン ケ ー ト の 回 収 率 は 87.9 で あ っ た 。 全 体 の 5.7に抑うつ,7.5に不安を認めた。抑うつと 不安について PM, ICD, CRT-D の 3 群で比較し たところ,PM 群は ICD 群と CRT-D 群に比べ不 安を有する患者は有意に少なかった。抑うつは 3 群で有意な差は認められなかった。次に,日常生 活や Device 治療に関する認識については, 3 群 ともに「運動制限」,「身体イメージの変化」,「見 た目の変化」,「日常生活や余暇活動への制約」, 「電池消耗の不安」,「精神面へのサポートの必要 性」について抑うつや不安を有する患者が有意に 多かった。「 Device の誤作動への不安」は ICD 群と CRT-D 群の抑うつや不安を有する患者のみ 有意に多かった。「落ち込み」や「疾患に対する 気がかり」は PM 群と ICD 群の抑うつや不安を 有する患者に有意に多かったが, CRT-D 群は有 意な差は認められなかった。【結語】Device 植込 み患者は Device の種類に関わらず抑うつや不安 を有することがあり,特に ICD 群や CRT-D 群 に多かった。抑うつや不安の要因は様々であり, 個人に必要な知識や関心にそった情報提供,具体 的な許容活動範囲の提示をしていく必要性がある と考えられた。 271 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA3 患者フリーダイアルにおける問い合わせ内容の検討 日本メドトロニック株式会社 CRDM 事業部 ○山下一則,横溝克巳,野川英卓 【背景】平成 7 年 7 月に医療用具登録(トラッキ ング)制度が施行されたことに対応し,当社にお いてはその問い合わせ窓口として患者専用フリー ダイアル( FD )を開設している。最近, FD へ の問い合わせ件数が増加傾向にあるが,内容が必 ずしもトラッキングに関連したものばかりではな い。【目的】問い合わせ件数増加の一因として, デバイス植込み患者の不安・疑問点増加があると 考え,FD への問い合わせ内容を分析することに した【方法】 2009 年 1 月から 12 月までの 1 年 間に FD 担当者に問い合わせられた内容を対象に した。問い合わせ内容分析は,トラッキング関連 の他,電磁波障害( EMI),デバイスフォローア ップ,手術,植込みデバイス等に分類し,詳細を 検討することにした。【結果】 FD には 1 年間に 9094 件(男性 55)の問い合わせがあり,73 PA4 心房細動における脳梗塞再発リスク因子の検討 がペースメーカ(IPG)患者に関するものであっ た。但し,各デバイス毎の総登録患者数比では, ICD, CRT-D 患者に関するものがほぼ同率(9) で IPG, CRT 患者より多かった。問い合わせ分 類では,EMI 関連が最も多く(23),トラッキ ング(21),フォローアップ(12)の順であ った。 EMI 関連の内訳では,日常生活に関連し たものが過半数を占め,検査・治療,無線の順で あった。 EMI 関連の詳細分析における上位 5 項 目としては,一般家電, IH 機器,携帯電話, CT/ MRI,健康器具に関するものであった。【結 論】 FD 問い合わせ内容を分析した結果,最も多 い用件は,これまで医師/医療従事者,業界及び 各企業より口頭,ならびに手帳/パンフレット等 で説明や情報提供されている EMI 関連のもので あった。更なる情報提供を施すことにより植込み 患者の不安・疑問が解消でき,フリーダイアル件 数も減少させられる可能性が示唆された。 た。 CHADS2 スコアの内訳では,再発群は初発 群と比べて糖尿病の合併率が有意に高いが ○山本真由美,渡邉英一,針谷浩人,佐野 幹, (68.4 vs 31.6, P=0.035),心不全(62 vs 奥田健太郎,祖父江嘉洋,内山達司,尾崎行男 38, P=0.32)と高血圧(50 vs 50, P=0.54) には有意差は認めなかった。【結論】NVAF にお ける脳梗塞再発例は初発例に比べて CHADS2 ス コアが有意に高く,また,糖尿病の合併率が高か 【背景】心房細動は脳梗塞発症の重要な危険因子 った。 の一つである。非弁膜症性心房細動(NVAF)に おいて脳梗塞発症リスク評価には CHADS2 スコ アが広く使われ,抗凝固療法施行基準となってい る。しかし, NVAF における脳梗塞再発リスク 因子に関する検討は少ない。【方法】対象は 2009 年 1 月から同年 10 月までの間に当院救急外来を 受診した NVAF 185 症例のうち,脳梗塞の診断 で入院した 37 例(20)である。これを脳梗塞 の既往の有無で 2 群にわけ, CHADS2 スコアを 比較した。心房粗・細動の診断は受診時の 12 誘 導心電図でなされた。【結果】脳梗塞初発群は 20 例(54)で,再発群は 17 人(46)であった。 年齢と性別には有意差は認めなかった。再発群の CHADS2 スコアは初発群と比べて有意に高かっ 藤田保健衛生大学病院循環器内科 272 PA5 両側鎖骨下静脈からのアクセスが困難であったため 外総腸骨静脈から DDD-CLS を挿入した徐脈性の透 析患者の症例―CLS 機能の有効性― 栃木県済生会宇都宮病院心臓血管外科 ○橋詰賢一,高橋隆一,堤 浩二,木村成卓 平塚市民病院心臓血管外科 鈴木 暁 目黒医院 目黒輝雄 日本光電工業株式会社 石川則夫,有江 剛,湯淺 淳 めなかった。一方, DDD-CLS 設定時には Ps が 144 mmHg から 123 mmHg に低下した際にペー シングレートが 8 ppm 増加し Ps が早期に回復し た。【考察】血圧低下に対する心筋収縮力変化が 心筋インピーダンスを変化させ,ペーシングレー トが上昇し血圧を早期に回復させたと考えられ た。徐脈性の透析患者の場合,体動が殆どない透 析中の血圧低下においては加速度センサによる ペーシングレートの増加はないと考えられ CLS 機能付きペースメーカーが有効である可能性が示 唆された。 【背景】徐脈性の透析患者の場合,徐拍も血圧低 下の原因の一つとなり,血圧の回復が遅れ,透析 の継続が困難となる場合がある。【目的】症例は 慢性腎炎(腎動脈硬化症)で維持透析中で 40 台/ 分の洞性徐脈を認める 59 歳女性。心筋収縮力変 化を心筋インピーダンス変化として感知しペーシ ン グ レ ー ト に 反 映 さ せ る CLS ( Closed Loop stimulation)機能付 DDD ペースメーカー(日本 光電( BIOTRONIK ))を両側鎖骨下静脈からの アクセスが困難であったため,左外腸骨静脈より 挿入し,透析中の血圧変化と心拍応答を CLS と 加 速 度 セ ン サ R と で 比 較 検 討 し た 。【 結 果 】 DDDR では,収縮期血圧(Ps)が 150 mmHg か ら 126 mmHg に低下した際にペーシングレート はベーシックレートの 60 ppm のままで増加する ことはなく,収縮期血圧( Ps )の早期回復も認 PA6 EnSite NavX システムの CRT-D 植込み術への応用 東京女子医科大学循環器内科 ○真中哲之,庄田守男,柳下大悟,八代 文, 江島浩一郎,佐藤高栄,中島崇智,萩原誠久 東京女子医科大学放射線科 池田亜希 【背景】両心室同時ペーシング機能付き植え込み 型除細動器(CRT-D)植え込み術では,左室リー ド留置部位がその後の CRT の反応性に大きく関 与することが知られているが,これまでの技術で はリードの三次元的位置情報を視覚的に表示する ことが不可能であった。CARTO システムによる 三次元マッピングを用いて CRT 植え込み症例の 左室伝導を評価している報告はあるが,この方法 では実際のリード留置部位をマップ上に表示する 事はできない。今回我々は CRT-D 植え込み術中 に EnSite NavX システムで実際のリード位置を 表示することの可否及びその有用性について検討 を行った。【方法】 2009 年 9 月から 12 月までに 当院で CRT-D 植え込み術を行った 5 症例(全て 男性,平均 66.8 才,左脚右脚ブロック= 4 1 , 平 均 QRS 幅 180 ms ) で 植 え 込 み 手 術 に NavX を使用した。初めに大腿静脈から挿入した 電極カテーテルを用いて右房及び右室の 3D ジオ メトリ,activation map, voltage map を作成し た。特に QRS 幅が広く左室内伝導遅延が予想さ れた 2 症例では洞調律中及び右室ペーシング中 に左室内のマッピングを行った。さらにこの 2 症例ではジオメトリと 3D MRI 画像の融合を試 みた。植え込み手術はジオメトリ上に立体表示し たリードの先端位置をガイドに行った。1 例では 左室リードを 2 本留置し triple-site pacing を行 った。【結果】全症例で NavX を用いて心腔の解 剖学的位置関係を比較的正確に表示する事が可能 であり,それをガイドにしてリードを留置し得 た。右室リードとの三次元的位置の対比を行いつ つ左室リードを留置したが,左室マッピングを行 った 2 症例ではリード留置部位が右室ペーシン グ時に最も伝導が遅れる部位近傍であることを確 認した。 【結語】NavX は CRT-D 植え込み中の, リード留置部位の三次元的な位置関係及び左室 リード留置部位と伝導遅延部位の位置関係の把握 に有用であると考えられた。 273 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA7 二次性心筋症に合併した心室頻拍に対するカテーテ ル・アブレーションの治療成績―特発性心筋症に 対する治療との比較検討― 筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科 ○山o 浩,夛田 黒木健志,町野 浩,関口幸夫,五十嵐都, 毅,小澤真人,成瀬代士久, 井藤葉子,久賀圭祐,青沼和隆 【目的】非虚血性心疾患( N-ICM)に合併する心 室頻拍( VT )に対し, electro-anatomical mapping system (CARTO system)の導入により血 行動態が不安定な症例に対しても,カテーテル・ アブレーション(RFCA)が施行可能となった。 しかし特発性および二次性心筋症に対する基礎疾 患別の VT-RFCA の治療効果の比較検討は行わ れていない。【対象】 VT-RFCA を施行した NICM29 症例(男性 19 例, 60 ± 12 歳,特発性心 筋症[ P 群]= 13 例, 2 次性心筋症[ S 群]= 16 例)。 P 群は拡張型心筋症= 8 例,肥大型心筋症 PA8 致死的不整脈をきたし ICD 植込みを施行した全身 性アミロイドーシスの剖検例―左室 substrate マ ッピングと病理所見の比較― 駿河台日本大学病院循環器科/日本大学医学部内科 学系循環器内科学分野 ○黒澤毅文,横山勝章,久保地泰仁,小森谷将一, 榎本光信,高世秀仁,松平かがり,今井 高橋直之,杉野敬一,長尾 渡辺紀子,山田 忍, 建,平山篤志, 勉 【症例】82 歳女性。うっ血性心不全増悪に伴い心 室頻拍(VT)および心室細動(VF)が頻回に出 現しニフェカラント投与により VT / VF の抑制 後,心臓超音波検査から左室壁肥厚および拡張障 害を認め,血清免疫電気泳動,胃粘膜および皮膚 生検の病理所見から心アミロイドーシスを伴う全 身性アミロイドーシス(AL type)と診断された。 抗不整脈薬非投与下での心臓電気生理検査(EPS) を施行し洞調律中の CARTO Map において,左 室前壁中隔に電位波高 1.5 mV 以下の低電位領域 274 = 5 例, S 群は不整脈源性右室心筋= 4 ,心サル コイドーシス= 5 ,特発性心室瘤= 3 ,心臓手術 後=3,その他=1 であった。急性期成功は clinical VT の消失と定義し,両群の患者背景を比較 するとともに,慢性期の再発は植込み型除細動器 の作動状況により評価した。( 12.4± 14.9 ヶ月) 【結果】 S 群は P 群に比し,心臓超音波検査にて 有意に左室収縮能は保たれていたが(p<0.05), 左室心内膜側の低電位領域(< 0.5 mV )を全例 に認めた( P < 0.05 )。急性期成功は P 群= 8 例 (62),S 群=16 例(100)であり,P 群にお いて心内膜側に低電位領域を認めない症例におい ては,VT の抑制が困難であった。急性期成功が 得られた 24 例において,経過観察期間中に P 群 では再発を認めず,S 群では 9 例の再発を認めた。 electrical storm を認めた S 群 4 名に対しては再 度 VT-RFCA を 必 要 と し た 。【 結 論 】 P 群 は RFCA により急性期成功が得られた場合には遠 隔期の良好な成績が示唆された。一方,S 群は高 い急性期成功率を示したが,経過中イベントを繰 り返す可能性が高く積極的な治療介入が必要とさ れた。 ( LVA )を 27 × 19 mm の範囲に認め, Delayed potential が記録された。右室 3 連刺激にて心室 細動のみが誘発され,植込み型除細動器(ICD) 植込み術を施行した。以後ペーシング閾値の低下 や変動はなく経過し,ICD による Fluid status モ ニタリング( OptiVol)において胸腔内インピー ダンスの低下・ ‰uid index の上昇が BNP 値の上 昇(700 前後から 1027 pg/ml),心不全症状の急 性増悪と一致し入院加療となったが, ICD 植え 込み約 7 ヶ月後に心不全死した。剖検心の肉眼 的所見において左室壁の著明な肥厚と左室前壁の 心内膜面および左房心内膜面の色調変化を認め た。ホルマリン固定後の肉眼的所見においても左 室前壁割断面においてアミロイド沈着を示唆する 白色変性を心内膜面に至るまでの貫壁性に認め, 同領域はほぼ CARTO Map における LVA 記録 部位と一致するものと考える。なお組織所見の精 査を継続中である。【結語】心不全および致死的 不整脈を発症し ICD 植え込みを行なった全身性 アミロイドーシス例において,左室心内膜におけ る電気生理学的所見から心室不整脈器質と病理学 的所見を比較検討し報告する。 PA9 再発性の致死的不整脈に対するアミオダロン静注薬 の効果―他剤 III 群薬無効時にアミオダロン静注 薬への切り替えは有効かつ安全か― 近畿大学医学部循環器内科 ○弘田隆省,栗田隆志,元木康一郎,赤岩 譲, 安岡良文,宮崎俊一 III 群の抗不整脈薬はその高い抗不整脈効果と低 い心機能抑制効果のため,致死的心室不整脈(心 室頻拍・心室細動 VT / VF )に対して最も頻回 に選択される。 III 群薬のなかでもアミオダロン ( AMD )は多くのエビデンスを有するが,合併 症リスクのため,他剤(ベプリジル,ソタロー ル,ニフェカラント)が第一選択薬として用いら れる場合も少なくない。今回, AMD 以外の III 群薬に抵抗性を示す VT/VF に対して,緊急的に AMD 静注薬を投与したので報告する。【対象】 AMD 以外の III 群薬投与中に VT / VF を発症し た 4 例(虚血性心疾患 2 例,心サルコイドーシ PA10 致死性心室性不整脈症例の体表面 12 誘導心電図で の QRS 幅と心内 R 波高の経時的変化の検討 新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器学分野 ○保坂幸男,古嶋博司,渡部 裕,和泉大輔, 飯嶋賢一,八木原伸江,真田明子,長谷川奏恵, 相澤義房 新潟大学医学部保健学科 池主雅臣 【背景】致死性心室性頻脈例の一部において QRS 幅や HV 時間の延長などの伝導障害が認められ る。今回, ICD 症例において,体表面 12 誘導心 電図の QRS 幅と心内 R 波高の経時的変化を検討 し た 。【 方 法 】 対 象 は , 当 科 で 2008 年 ま で に ICD 植込み治療を施行し, 12 か月以上の経過観 察ができた 112 例(陳旧性心筋梗塞(OMI)33 例,拡張型心筋症( DCM ) 18 例,肥大型心筋 症( HCM ) 19 例, Brugada 症候群( BS ) 29 例,特発性心室細動(IVF)13 例)で,経過中 に 40 msec 以上の QRS 幅の延長が出現した群と 出現しなかった群の 2 群に分けて,心内 R 波高 の変化を観察した。平均観察期間 56 ± 31 か 月,植込み時平均年齢 59 ± 14 歳。【結果】 40 msec 以上の QRS 幅の延長が出現した症例は 8 / ス 1 例,特発性心室細動 1 例,無効な III 群薬 ニフェカラント 2 例,ソタロール 1 例,べプリ ジル 1 例)である。【方法】頻拍発生時の心電図 所 見 か ら QT 延 長 に よ る torsade de pointes ( TdP)を否定した後,長期的な休薬期間を設け ずに AMD 静注薬へ切り替えた。AMD の急速静 注は 2 例にて行われ(平均 12.5 mg/分),初期投 与量は平均 6.7 mg /分であった。 AMD 投与後は 心電図モニターと 12 誘導心電図記録(投与直後, 1 3 時間後, 24 時間後)にて VT / VF の再発や QT の過剰な延長について監視した。 AMD 投与 後 15 分以上経過し,静注薬継続中に発作が完全 に抑制された場合を有効とした。【結果】投与前 の平均 QTc 時間は 633±104 ms と延長していた。 AMD 静注後の QTc の変化は, 1 3 時間後, 24 時間後にそれぞれ 599 ± 71 ms, 569 ± 122 ms で あり,投与前よりも短縮傾向を示し, TdP もな かった。全例にて AMD 静注により VT/VF が抑 制された。【考察】AMD 静注薬は他の III 群薬が 無効な症例に対しても,QT 延長を増悪させるこ となく安全に投与することができ,致死性不整脈 に対する高い抑制効果が認められた。 112 例(7)(OMI: 2/33 (6), DCM: 1/18 (6), HCM: 1/19 (5), BS: 4/29 (14), IVF: 0/13 (0)であった。40 msec 以上の QRS 幅の 延長が出現した 8 例中,心内 R 波高の著変 ( 200 以上の増加, 50 以上の減少)を認めた 症例は 6 / 8 例( OMI 1 例, DCM 1 例, BS 4 例)で, 2 例では ICD 植込み時 9.0 ± 4.2 mV →最終診察時 21.0 ± 4.2 mV と増加し, 4 例で は ICD 植込み時 10.5 ± 2.6 mV →最終診察時 2.6 ± 1.4 mV と減少した。心内 R 波高の著変し た 6 例では,体表面心電図 II 誘導の波高変化を 認めず(ICD 植込み時0.67± 0.26 mV→最終診 察時 0.60 ± 0.27 mV ),右脚ブロックへ変化し た。 40 msec 以上の QRS 幅の延長が出現しなか った症例は 104 / 112 例( 93 )であり,心内 R 波高は ICD 植込み時 12.5 ± 4.8 mV →最終診察 時 12.3± 5.0 mV であった。心内 R 波高の著変 を認めた症例は 1/104 例(OMI1 例)のみで, ICD 植込み時 12.0 mV →最終診察時 3.5 mV と減少した。【まとめ】 BS において 40 msec 以 上の QRS 幅の延長が最も高率に出現した。QRS 幅の延長が出現した症例では高率に著明な心内 R 波高の変化を認めた。 QRS 幅の延長は心内 R 波 高の変化の予測に有用な可能性がある。 275 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA11 カテコラミン感受性多形性心室頻拍に合併した J wave の特性について 仙台医療センター循環器科 ○篠崎 毅,田丸貴規,山口展寛,尾上紀子, 田中光昭,石塚 豪 カテコラミン感受性多形性心室頻拍(CPVT)に 合併した J wave の特性について詳細な検討を行 ったので報告する。慢性心房細動を有する 47 歳 男性が自衛隊の訓練中に心室細動を発症し,蘇生 に成功した。トレッドミル負荷心電図検査では, 心拍数の増加に伴い非持続性多形性心室頻拍が incessant に出現し,心室細動に移行した。ホル ター心電図において心室性期外収縮( PVC )が 日中に多く出現し,二方向性 PVC も認めた。 NASA と CC5 誘導に J wave を認めた。 J wave 電位高は PR レベル( JPR )と ST 部分の Nadir レベル( JST )から,それぞれ計測した。睡眠時 JST 先行 RR 間隔関係,及び,睡眠時 JPR 先行 RR 間隔関係は覚醒時のそれよりも右下へ変位し PA12 重症心不全既往症例における致死的不整脈イベント 予測因子の検討 北里大学医学部循環器内科 ○岸原 淳,庭野慎一,青山祐也,石川尚子, 村上雅美,桐生典郎,黒川早矢香,深谷英平, 畠山祐子,湯本佳宏,庭野裕恵,和泉 徹 【背景】近年, RA 系抑制薬, b 遮断薬などの心 不全予後改善薬の適用により,心不全の生命予後 は改善されてきた。しかし重症心不全症例におけ る突然死,致死的不整脈イベントは 5~ 8 年間で 20 程度に上り,その予測と管理は臨床的に重 要である。今回我々は,重症心不全患者の初回入 院治療時の諸指標に関して,致死的不整脈イベン ト予測因子としての意義を検討した。【方法】対 象は 2009 年 1 月から 7 月までに当科に NYHA 3 ~4 度の心不全で入院した既往があり,致死的心 室性不整脈( VT / VF )自然発作既往のない連続 60 症例(年齢 73 ± 1 歳,男女= 34 26 )。観 察期間(6 ヶ月以上)中の VT/VF イベントを評 276 ており,それぞれ,y=0.415×(1-1.45e-x/1111 ) ( r = 0.96 ) , y = 0.304 × ( 1 - 0.921e-x/1111 ) ( r = 0.76 )によって良好に近似できた。覚醒時 JST 先行 RR 間隔関係は有意な相関( y = 0.0002x + 0.0656, r = 0.54, p < 0.05 )を認めたが,覚醒時 JPR先行 RR 間隔関係は有意な相関を認めなかっ た。一定の RR 間隔における J wave は覚醒時に 高く,交感神経依存性と考えられるため,CPVT の発症に関連があるかもしれない。 価し,イベント群(VT/VF 群)と非イベント群 (非 VT / VF 群)の間で,初回心不全入院時の各 種血液検査,生理検査所見,内服薬等を比較し た。【結果】観察期間 168 ± 16 日の間に, VT / VF イベントは 5/60 例( 8.3)で認められた。 VT / VF 群と非 VT / VF 群の比較では,退院時 BNP(879±274 vs. 394±55 pg/ml, p=0.048), Cr (3.90±1.8 vs. 1.73±0.21 mg/dl, p=0.031), 洞調律時 QRS 幅(222±71 vs. 119±4.5 msec, p =0.012),心臓超音波における左室駆出率(36.0 ±6.6 vs. 52.0±1.9, p=0.01),スピロノラクト ン内服(0/5 vs. 25/55, p=0.042)に有意差を認 めた。RA 系抑制薬と b 遮断薬は非内服症例が少 なく,差を認めなかった。【結語】重症心不全入 院既往症例の VT/VF イベント例と非イベント例 の比較では,退院時の BNP, Cr, QRS 幅,左室 駆出率,スピロノラクトン内服に有意差を認め, これらの指標が VT/VF イベントの予測因子とし て有用と考えられた。 PA13 除細動が無効であったうっ血性心不全と faintness を伴う心房細動を合併した WPW 症候群に対して カテーテル・アブレーションが奏効した 1 例 松戸市立病院循環器内科 ○堀 泰彦,村山太一,福島賢一 千葉大学医学部循環病態医科学 上田希彦,小室一成 症例は 70 歳男性。以前より WPW 症候群は指摘 されているも,症状がないため経過観察となって いた 。 2010 年 元旦 よ り 労作 時 の 息切 れ を 自覚 し,また動悸を伴ってきたため 1 月 5 日近医を 受診し,心電図にて心房細動を合併した WPW 症候群を示唆する所見であった(心拍数 200210 拍/分)。加療目的に同日当院へ搬送され,うっ血 性心不全を生じていたため,フロセミドとカルぺ リチドの点滴加療が開始された。経胸壁心エコー にて LVEF50 と正常下限であり,また LA 径 50 mm と拡大を認めていた。心房細動の発症が 不明であることと,抗不整脈薬による薬物除細動 が心不全の悪化を来たす可能性もあったため,経 食道超音波にて心腔内血栓がないことを確認し, 電 気 的 除 細 動 ( DC ) を 実 施 し た 。 し か し monophasic 200 J から開始し 360 J を数回行うも 除細動されず,ピルジカイニド点滴の上 biphasic 200 J を行い,洞調律に回復するもすぐに心房細 動調律に戻ってしまった。プロカインアミド持続 点滴,二フェカラント持続点滴( 0.2 mg/kg)に て心拍数は 150 拍/分以下に収まることが多くな るも洞調律に回復はしなかった。第 2 病日にシ ベンゾリン点滴後 DC を試みるも,頻拍は停止し なかった。一過性に 12 誘導心電図波形で四肢下 方誘導,V1 誘導で陽性の P 波を呈する心房頻拍 を呈する所見も認めた。第 3 病日に faintness を 訴えることがあり,薬剤抵抗性のため準緊急的に 副伝導路の離断が必要と判断し,翌日カテーテ ル・アブレーションを実施した。三尖弁輪後中隔 の順行性副伝導路であり,離断に成功した。離断 後左房起源と思われる,経過中に認められた心房 頻拍が続くも,自然に停止し,心不全も改善され た。カテーテル・アブレーションによってのみ頻 拍の停止が可能であり,その後洞調律に回復しえ た貴重な症例と思われ報告する。 PA14 Bystander Kent 束伝導を伴う房室結節回帰性頻拍 の1例 社会保険中央総合病院心臓病センター循環器内科 ○村上 輔,野田 誠,大山明子,山本康人, 吉田誠吾,石橋和世,田代宏徳,薄井宙男, 市川健一郎 東京医科歯科大学医学部循環器内科 磯部光章 kent 伝 導 を 伴 う 非 通 常 型 房 室 結 節 回 帰 性 頻 拍 ( AVNRT )と診断した。また,心房期外刺激な どで順行性 kent ブロックと AH の延長(290 ms) 後に周期 290 ms の房室回帰性頻拍( AVRT)も 誘発された。失神の原因となる頻拍は周期の速い AVRT と推定され,本頻拍に対して A13 / 14 部 位の通電し d 波は消失した。さらに slow pathway の通電後逆行性室房伝導は消失し,頻拍は 誘発されなくなった。本例は innocent bystander kent 伝導を示した稀な AVNRT の症例であり報 告する。 症例は 75 歳男性。主訴は動悸。現病歴では生来 WPW 症候群(II III aVF で陽性,V1 で+/-の d 波)を指摘され稀に動悸を自覚していたが,最 近失神したため EPS となる。逆行性室房伝導は 左前斜位にて 7 時の位置(三尖弁輪部カテの A13/14)にあり,右室刺激時に VAAV パターン で冠静脈洞開口部( CSos )を最早期とする周期 頻拍(AH 45 ms, HA 405 ms) 460ms の long RP′ が誘発され,洞調律時と同様の d 波を伴ってい た。頻拍は His の不応期の時相で加えられた右 室単発刺激で reset されず,以上から bystander 277 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA15 遅伝導路の長さを考慮した遅伝導路アブレーション 部調律が出現した最も後方の通電部位,冠静脈洞 の 1 考察 入口部( CSos )の上縁及び誘発不能となった成 群馬大学大学院医学系研究科臓器病態内科学 功部位までの直線距離で表した。また,コント ○入江忠信,金古善明,中島 忠,齋藤章宏, ロールでの最初の AH jump 時の AH 時間を SP 太田昌樹,加藤寿光,飯島貴史,伊藤敏夫, 伝導時間( SP-c )とし, SP-c を SP-L で除した 間仁田守,倉林正彦 値を SP 伝導速度( SP-v)とした。【成績】 SP-L は Koch-l, SP-c とは相関しなかったが( 16.2 ± 5.6 mm vs 20.2±4.8 mm, 293.9±80.3 ms), SucABL とは有意な正相関を示した( 14.1 ± 5.1 mm, R=0.92, p<0.0001)。成功部位が CSos 上 【目的】解剖学的に遅伝導路( SP )の長さ( SP- 縁から 5 mm 以上離れた 7 例とそれ以外の 14 例 L)には個人差がある。本研究の目的は,通常型 の比較では, SPc に有意差はなかった( 353.0 ± 房室結節回帰性頻拍( AVNRT)に対する SP ア 160.5 ms vs 278.0 ± 51.3 )。 SP-v は, 20.0 ± 18.6 ブレーションにおいて解剖学的・電気生理学的指 mm / sec であった。【結論】 SP の成功部位は, 標により速伝導路からできるだけ離れた成功通電 SP の長さが長いほど後方であった。しかし,SP 部位を予知しうるか検討することである。【方法】 の長さは Koch の三角の大きさや SP の伝導時間 対象は CARTO を用いて stepwise approach によ と関連がないために,解剖学的・電気生理学的指 り SP の 選 択 的 ア ブ レ ー シ ョ ン に 成 功 し た 標から最後方の成功部位を正確に予知することは AVNRT 21 例(男性 9 例, 55.1 ± 15.4 歳)であ できないと考えられた。 SP アブレーションにお る(通電回数 5.3±3.7)。SP-L, Koch 三角の長さ ける stepwise approach は,安全に焼灼を行うた ( Koch-l )及び成功部位( SucABL )を,最早ヒ めの合理的な手法であることがあらためて確認さ ス束電位記録部位からそれぞれ通電中に房室接合 れた。 PA16 CS 入口部付近を最早期とする頻拍に対 してアブ レーションを施行した親子例 鳥取県立中央病院心臓内科 ○菅 敏光,那須博司 【症例 1】 41 歳,女性。主訴動悸。動悸精査にて H21.3.25 に 心 臓 電 気 生 理 検 査 ( EPS ) 施 行 。 Control EPS では心房刺激にて頻拍周期 406 ms の long R P tachycardia を認めた。心室刺激に よ る 逆 伝 導 路 は HB 下 部 領 域 で あ り , parahis pacing にて AVN pattern を示したが,誘発され た頻拍との最早期が異なると判断した。心房頻拍 として,Ensite にて CS 入口部付近の最早期興奮 部位を mapping 後に同部位にて通電。頻拍は停 止するが,その後 jump up 後に slow-fast type の AVNRT も誘発されるため slow pathway 領域も 通電を施行。その後頻拍は誘発されなくなった。 【症例 2】16 歳,女性。症例 1 の子供。以前から 動悸があるとのことで精査目的に H22.1.6 EPS 施行。 Control EPS では逆伝導路は CS 入口部付 278 近に認め, decremental property および parahis pacing に て AVN pattern を 示 し た 。 ISP on oŠ 後に順行性に AH 時間 720 ms の延長を示した 後,頻拍は誘発された。頻拍周期 520 ms で最早 期興奮部位は CS 入口部付近と逆伝導路と同一と 判断し,頻拍中に心室からの単一刺激でのリセッ ト を 認 め な か っ た 。 slow-slow type の AVNRT と診断した。 Slow pathway 領域において洞調律 から通電を施行,その後の心房からの刺激では jump up を認めず,さらに逆伝導路も消失した。 しかしその後,逆伝導路のみ再開したため,心室 pacing 下に再度通電し,その後両方向性伝導は 認めなくなった。母親は心房頻拍と判断したが, 房室結節リエントリー性の要素もあるため,親子 での発症は珍しいと判断し報告した。 PA17 fast-slow 型および slow-slow 型の 2 種類の房室結節 回帰性頻拍を有し,接合部頻拍との鑑別が必要であ った 1 例 武蔵野赤十字病院循環器科 ○岡田寛之,山内康照,前田真吾,田尾 高津妙子,鈴木雅仁,原 進, 信博,川崎まり子, 渡部真吾,服部英二郎,宮本貴庸,尾林 徹 再現性をもって誘発可能であり,頻拍中の心房お よび心室からの頻回刺激で停止可能であることか ら,接合部頻拍よりも slow-slow 型の房室結節回 帰性頻拍であると考えられた。逆行性遅伝導路の 心房最早期興奮を冠静脈洞入口部近傍に認め,同 部に通電を行ったところ 2 種類の房室結節回帰 性頻拍はともに誘発不能となった。心内心電図所 見が接合部頻拍と類似した, slow-slow 型房室結 節回帰性頻拍の 1 例を経験したので報告する。 症例は 34 歳,女性。 2009 年 2 月に受診した健 診の心電図で上室性期外収縮連発を指摘され, 3 月 6 日に近医受診したところ,ホルター心電図 で発作性上室性頻拍が認められ,精査加療目的で 当科紹介された。 7 月 14 日に心臓電気生理検査 およびカテーテル・アブレーション治療を行っ た。心房からのプログラム刺激で頻拍周期約 580 msec の頻拍が誘発され,電気生理学的所見より fast-slow 型の房室結節回帰性頻拍と考えた。さ らに頻拍周期が約 740 msec と著明に延長した頻 拍も誘発された。心内心電図所見より接合部頻拍 の可能性も示唆されたが,心房からの期外刺激で PA18 A V V A パターンでのみ誘発された narrow QRS tachycardia の 1 例 東北厚生年金病院循環器センター循環器科 ○田渕晴名,山中多聞,河部周子,山口 山家 済, 実,中野陽夫,菅原重生,片平美明 東北大学大学院医工学研究科医用イメージング分野 西條芳文 東北大学医学系研究科加齢医学研究所病態計測制御 研究分野 山家智之 症 例 は 62 歳 女 性 。 動 悸 を 伴 う narrow QRS tachycrdia を 認 め , 冠 静 脈 洞 ( CS ), His 束 ( His ),右室心尖部( RV )に電極カテーテルを 留置し,臨床電気生理学的検査,カテーテル・ア ブレーションを施行した。 RV からの連続刺激 (VP)で CS 開口部(CSO)が最早の室房伝導を 認めたが,その伝導は弱く 100 ppm で 2 度とな った。 RV 期外刺激( PVS ) S1 S1 = 700 msec, S1S2=540 msec まで減衰伝導を呈する CSO 最 早の室房伝導を認めたが心房興奮順序に変化なく S1 S2=520 msec 以下で室房ブロックとなった。 CS からの期外刺激( PAS ) S1 S1 = 500 msec, S1 S2 = 330 msec にて Junp up を呈さずに再現 性を持って A V V A パターンでのみ narrow QRS tachycardia が誘発された。頻拍の心房興奮 順序は His 束CSOCS 遠位部の順で,この伝導 はイソプロテレノール投与有無に関わらず VP, PVS で認められない伝導であった。頻拍中 His 束が不応期と考えられる時期での心室単発刺激に より頻拍周期に影響を認めなかった。本頻拍は ATP 5 mg の投与で停止。頻拍中 RV からの連続 刺 激 で 室 房 解 離 の 所 見 は 認 め な か っ た 。 PAS S1 S2 = 320 msec で Junp up 現 象 を 認 め る が Echo は返らなかった。以上 EPS の結果から心房 頻拍,房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT) を念頭に置き,頻拍中の再早期をアブレーション カテーテルで mapping した。頻拍中の再早期は His 束 電 位 検 出 部 位 で 解 剖 学 的 に も retrograd fast pathway の位置と考えられた。同部での通 電は不能と考え,通電は洞調律中の Asp を指標 に行った。通電後頻拍は誘発不能となった。房室 結節の upper common pathway の存在が示唆さ れる症例と考えられ考察を加え報告する。 279 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PP19 慢性心房細動症例における CRT の効果の検討 京都大学医学部附属病院循環器科 ○早野 木村 護,静田 聡,中尾哲史,土井孝浩, 剛 社会保険小倉記念病院循環器科 安藤献児,有田武史,延吉正清 倉敷中央病院循環器内科 藤井理樹 桜橋渡辺病院循環器内科 井上耕一 帝京大学医学部循環器内科 一色高明 背景 心房心室間同期不全,心室内同期不全を有 する心不全患者に心臓再同期療法は有効とされて いる。慢性心房細動の患者に対する心臓再同期療 法は心室内同期不全を改善させても,心房心室間 同期不全の改善がないことにより,responder と はなりにくいと考えられてきた。慢性心房細動患 者に対する心臓再同期療法の効果の評価を行っ た。方法と結果 2004 年 4 月から 2008 年 12 月 までの間, 11 施設で 680 人に対して CRT-P お PP20 当院における心臓再同期療法(CRT)の dp/dt によ る最適化と中長期予後の関連 自治医科大学内科学講座循環器内科学 ○甲谷友幸,三橋武司,籏 義仁,橋本 徹, 中神理恵子,長田 淳,渡部智紀,苅尾七臣 【目的】観血的な dp/ dt 測定による心臓再同期療 法( CRT )の最適化と中長期的予後の関連につ いては十分に明らかにされていない。本研究の目 的は CRT 術前後の dp/dt や心臓超音波検査の指 標と予後の関連を調べることである。【方法】当 院で 2007 年以降に CRT を導入し,CRT 手技中 に観血的に dp / dt の測定が可能であった 27 例 (男性 18 例,年齢 67.3 ± 8.3 歳, CRT-P 3 例, CRT-D 24 例)を対象とした。 CRT 植え込み術 時に,右大腿動脈から pigtail カテーテルを左心 室内に留置し両室ペーシングによる dp / dt の変 化を調べた。植え込み前後に心臓超音波検査を施 行し,左室駆出率( EF )および左室拡張末期径 ( LVEDD )を計測した。死亡および入院を要す る心不全をエンドポイントとして経過観察を行っ た 。【 成 績 】 CRT 前 後 の EF は 有 意 に 増 加 し 280 よび CRT-D の植込みを行った。特殊な適応を除 い た 641 人 中 , EF ≦ 45 で あ り , LVEDV, LVESV, LVEF を植込み前,植込後 6 ヶ月で測 定している症例 445 例を対象とした。慢性心房 細動例は 74 人,非慢性心房細動例は 371 人(発 作 性 心 房 細 動 67 例 , 洞 調 律 304 例 ), 平 均 年 齢72 vs. 68(years)男性74 vs. 68() NYHA IV12 vs. 11()ペースメーカー既 往 53 vs 29 ()糖尿病 30 vs 33 () 血清クレアチニン>1.5(mg/dl)31 vs 26() 虚血性心疾患20 vs. 31()LVEF: 29 vs. 26 ()LVEDV: 201 vs 214 (ml) BNP: 554 vs. 678 (pg/ml)QRS duration: 154 vs. 147 (msec) ( 慢 性 心 房 細 動 例 vs. 非 慢 性 心 房 細 動 例 ,p < 0.05)。 LVEDV が 10以上縮小したのは,慢性 心房細動例で 50,非慢性心房細動例では 58 であった( P = 0.21 )。 LVESV が 15 以上縮小 した症例は 54 と 56 ( P = 0.73 )。 LVEF が 25以上改善を認めたのはそれぞれ 45と 44 ( P = 0.92 )であった。結論 慢性心房細動例で も洞調律例及び発作性心房細動例と同様, responder の割合に有意差は認めなかった。 ( 26.7 ± 10.8 → 35.6 ± 12.1 , p < 0.001 ) , LVEDD は 有 意 に 縮 小 し た ( 67.2 ± 10.2 mm → 63.5±9.2 mm, p=0.042)。CRT 術中の dp/dt の 増加率は EF の変化率と有意な相関がみられたが ( r = 0.47, p = 0.018 ) , LVEDD の縮小度とは有意 な相関は見られなかった。平均 14± 13 か月の追 跡期間中で 6 例のエンドポイントが発生した。 イベント非発生群では LVEDD の縮小度がイベ ント発生群に比べて大きかったが( 5.7± 8.4 mm vs. -2.5±4.6 mm, p=0.034), dp/dt の増加率 (26±24 vs. 18±12, p=0.44)や EF の変化 率(49±50 vs. 25±39, p=0.31)は両群で有 意な差は見られなかった。 Cox 比例ハザードモ デルで解析すると,年齢,性を補正しても LVEDD の縮小はイベント非発生の有意な因子で あった(縮小度 1 mm 毎のイベント発生の odds ratio 0.80, 95信頼区間 0.630.996)。【結論】 CRT 手技の際の dp / dt の増加率は短期的な EF の改善に関連していたが, CRT 植え込み後の心 不全患者の予後を改善させるためには短期的な dp/dt や EF の改善のほかに左室径の縮小などの 臨床的心不全兆候の改善が必要であると考えられ た。 PP21 心臓再同期療法による post-systolic shortening の軽 減とその効果との関連 関西労災病院循環器科 ○田中宣暁,大西俊成,渡部徹也,三嶋 剛, 上松正朗,永田正毅 【背景】薬剤抵抗性重症心不全に対する治療とし て心臓再同期療法(CRT)が行なわれているが, CRT によ り効 果が 得ら れない 症例 があ る。一 方 , 重 度 の 慢 性 心 不 全 症 例 で は post-systolic shortening(PSS)が生じる。本研究では,CRT により PSS を軽減させることが CRT の有用性 に関係するかを検討した。【方法】対象は薬剤抵 抗性心不全にて CRT 施行された連続 8 症例。超 音波診断装置は東芝社製 Aplio を用い,心尖部ア プローチ(長軸断面,四腔断面,二腔断面)によ り弁輪部および心尖部と弁輪部の中間部におい て,組織ドプラ法による収縮末期から Displacement のピーク時相のずれ( DT )を計測した。 CRT 術前,術後急性期( 1 週間)に DT を計測 PP22 心臓再同期療法における冠循環動態と心筋微小血管 抵抗の急性効果の検討 神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科分 野不整脈先端治療学部門 ○伊藤光哲,吉田明弘,武居明日美,福沢公二, 高見 薫,熊谷寛之,田中聡子,高見 充, 今村公威,松本竜童,平田健一 【背景】心臓再同期療法は重症心不全患者の心機 能と予後を改善することが知られているが,両室 ペーシングにおける冠動脈の循環動態への影響は 明らかにはされていない。【方法】冠動脈に有意 狭窄がなく,冠動脈インターベンションをされた ことがない非虚血性心筋症の患者 9 人(年齢 63 ± 9 歳,男性 7 人,女性 2 人, NHYA 3.1 ± 0.3, QRS 幅 172 ± 22 ms ,駆出率 31 ± 10 )におい て,左前下降枝の動脈血流速度( APV )と動脈 内圧をデュアルセンサーガイドワイアー( ComboWireTM )を用いて測定した。冠細小動脈を最 大限に拡張させるアデノシン三リン酸( ATP ) を冠動脈内に投与することで,右室ペーシングと し, CRT の効果を改善群と非改善群に分けて評 価した。改善群は術後慢性期(3 カ月)に収縮末 期容量( ESV )が 15 以上減少したものと定義 した。【結果】4 症例(50)に ESV の改善を認 めた。改善群ではすべての症例で DT は減少し, 251±36 ms から 159±67 ms となり(p<0.05), PSS が有意に減少した。非改善群ではすべての 症 例 で DT は 増 加 し て お り , 203 ± 88 ms か ら 226 ± 85 ms で( p = NS ), PSS の減少を認めな か っ た 。【 結 論 】 CRT に よ る PSS の 軽 減 は , CRT の効果と関連する。 両室ペーシングにおける冠血流予備能(coronary ‰ow reserve: CFR)・最大血管拡張時微小血管抵 抗指標(Hypereremic Microvascular Resistance: HMR 最大血管拡張時の冠動脈内圧/ ATP 負荷 時 APV)を求めた。【結果】両室ペーシングは右 室ペーシングよりも安静時 APV を有意に増加さ せ(24.9±10.1 cm/s vs 32.4±14.4 cm/s, p= 0.02 ), HMR は減少する傾向を認めた( 2.01 ± 0.63 CPU vs 1.91±0.52 CPU, p=0.06)。右室 ペ ー シ ン グ と 両 室 ペ ー シ ン グ に お い て CFR ・ ATP 負荷時 APV には有意な変化を認めなかっ た。【結論】心臓再同期療法は冠循環動態と微小 血管抵抗を改善する可能性が示唆された。 281 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PP23 当院における心臓再同期療法の予後の検討 日本赤十字社和歌山医療センター循環器内科 ○北田雅彦,湯月洋介 2003 年 2 月から 2009 年 11 月まで当院にて施行 した心臓再同期療法(以下 CRT)37 症例の臨床 背景と予後につき後ろ向きに検討した。当院では 原則として EF35 以下 QRS 幅が広く NYHA3 度以上で内科的治療に抵抗する心不全患者に対し CRT 植え込 み術 を施 行して きた 。対 象期間 中 CRT-P 23 例 CRT-D 16 例(うち 2 例は CRTP からの upgrade)で男性 22 例 女性 15 例 平 均 年 齢 は 66.9 ± 9.3 歳 平 均 follow up 期 間 は 27.9 ± 19.6 ヶ月であった。基礎疾患は虚血性心 疾患 14 例 非虚血性心疾患 23 例であった。植 え込み時の NYHA は 3.0±0.8 QRS 幅は 148.3± 28.6 ms リ ズ ム は 洞 調 律 18 例 心 房 細 動 9 例 ペースメーカーリズムは 13 例であった。BNP は 術前 640.5 ± 520.6 pg / ml であった。基礎疾患で は虚血性心疾患 14 例 非虚血性心疾患 23 例で PP24 CRT の術前評価における MDCT による冠状静脈画 像と心筋 SPECT の fusion 画像の有用性についての 検討 市立大村市民病院心臓血管病センター循環器科 ○安岡千枝,吉田尚広,谷岡芳人 市立大村市民病院心臓血管病センター心臓血管外科 炊江秀幸 長崎大学病院循環器内科 池田聡司 【背景】心臓再同期療法( CRT )の Non responder の原因のひとつとして左室側壁心筋の viability 低下が挙げられるが,心筋血流シンチグラフ ィー( SPECT )はその術前の評価法の一つとし て用いられる。しかし,実際の手技において,左 室リード位置は冠静脈走行により限定されるため, SPECT 像のみの情報は限定的である。一方,64 列多検出器 CT(MDCT)による冠状動脈像と心 筋 SPECT の fusion 画像は心筋虚血診断・治療 に活用されつつある。そこで, MDCT により冠 状静脈像を撮影し,心筋 SPECT との Fusion 画 像を作成することにより,左室リードの標的冠状 静脈決定を 3 次元的に評価できるか検討した。 282 あった。術後 618 ヶ月における NYHA は 2.4± 1.0 QRS 幅 は 136.4 ± 24.3 ms BNP は 516.4 ± 583.4 pg / ml と低下認めた。術後の EF EDV に ついては有意差認めなかった。生存率は 1 年生 存率 81.5 2 年生存率は 71 であった。死亡 は 14 例で虚血性心疾患が 9 例 非虚血性心疾患 が 5 例で死亡原因については心不全死 8 例 不 整脈による突然死 1 例 術後死 3 例 非心臓死 2 例であった。生存例 23 例と死亡例 14 例につい て検討を行ったが臨床背景に明らかな有意所見は 認めなかったが術前の BNP D-DIMER Cr ESV で有意な傾向があった。 【使用装置】 CT GE 横河メディカルシステム の Light Speed VCT と ガ ン マ カ メ ラ MilleniumVG 。 解 析 に は CT の workstation の Advantage Workstation ( AW ) 4.4 を 用 い た 。 【方法】慢性心不全の診断にて CRT 移植予定の 患 者 5 名 に 対 し , MDCT によ る 冠 状 静 脈 撮 影 と,安静 201Tl 心筋 SPECT を施行。 AW4.4 上 で心機能解析ソフト Card IQ fusion ( GE )にて 3D fusion 画 像 の 再 構 成 を 行 っ た 。【 結 果 】 MDCT で描出された冠状静脈画像は,左室リー ド 留 置 の 目 標 血 管 ( Lateral cardac vein, Posterior lateral vein)の有無,分布について示し,術 中のバルーン充満冠静脈造影の結果と比較しても 相違はなかった。SPECT との fusion 画像は,冠 状静脈の走行と心筋の Viability の良好な部位の 位置関係を視覚的に描出した。左室リードの目標 血管の中での位置(深さなど)にも情報を与え, リードの選定にも有用であった。心筋の viability の保たれた位置では術中のペーシング閾値が良好 である傾向が見られた。【結論】冠状静脈 CT 像/ SPECT の fusion 画像は,冠状静脈と viability を 有する心筋の位置を明瞭に描出し, CRT の術前 の左室リード位置の目標設定に有用であることが 考えられた。 PP25 心房細動アブレーション後の再発例に対する 2nd session についての検討 倉敷中央病院循環器内科 ○田坂浩嗣,藤井理樹,岡本陽地,楠瀬真奈, 門田一繁,光藤和明 倉敷中央病院臨床検査科 高橋勝行,小室拓也,福島基弘,木山綾子 倉敷中央病院 CE サービス室 三宅弘之,平井雪江,朝原康介 【目的】心房細動アブレーション後の再発例に対 する 2nd session については様々なアプローチが 試みられている。当院にて 2nd session を施行し た症例について,その再発形式および予後につい て検討を行った。【対象】2005 年 12 月から 2009 年 9 月まで初回アブレーションを施行した 238 例のうち,2nd session を行った 46 例を対象にし た。【結果】内訳は発作性 35 例,持続性 11 例で あった。初回アブレーション方法は,肺静脈隔離 法 29 例(拡大隔離 11 例), stepwise 法 10 例, Box 法 7 例であり,11 例に CTI ブロックを作成 PP26 心房細動に対するカテーテル・アブレーション治療 後の慢性期再発の頻度と関連する因子 桜橋渡辺病院心臓・血管センター循環器内科 ○伊東範尚,井上耕一,黒飛俊哉,木村竜介, 豊島優子,岩倉克臣,岡村篤徳,小山靖史, 伊達基郎,樋口義治,永井宏幸,今井道生, 小澤牧人,岡崎由典,澁谷真彦,大宮茂幹, 森澤大祐,高木 崇,藤井謙司 【背景】発作性や慢性心房細動に対するカテーテ ル・アブレーション( CA )治療後, 1 年以上頻 脈性不整脈を認めなかった症例において,1 年以 上経過してから初めて頻脈性不整脈の再発を認め ることがある。術後 1 年以上経過してからの初 回再発頻度を明らかにすると共に,再発に関連す る因子について検討した。【方法】心房細動に対 し CA 施行した 350 症例中,術後 1 年以上にわ たって頻脈性不整脈の再発を認めなかった連続 221 症例(男性 168 例,平均年齢 62 ± 8 歳,発 作性心房細動 78 )を対象とし,術後 1 年以上 した。 2nd session までの平均期間は 7 ヵ月であ り,再発形式は心房細動 28 例,通常型心房粗動 4 例,左房起源心房頻拍 6 例,僧帽弁輪部心房粗 動 6 例,それ以外の左房起源心房粗動 4 例,右 房起源心房頻拍 3 例であった。 2nd session の方 法は,肺静脈隔離法 33 例,上大静脈隔離法 9 例, CTI ブロック 9 例,僧帽弁峡部焼灼 7 例, Box 法 5 例, CFAE 焼灼 4 例であった。結果は, 44 例中 34 例( 77.3 )が成功であったが, 9 例に 再発を認めた。 9 例中 6 例に 3rd session を施行 し,その再発形式は心房細動 3 例,左房起源心 房粗動 3 例であった。 3rd session の方法は,肺 静脈隔離法 5 例,僧帽弁峡部焼灼 2 例, CFAE 焼灼 1 例であったが, 3 例に再発を認め, 2 例は 変化なしであった。【結語】当院での 2nd session 症例においては,再発形式として心房細動が 28 例,その他左房起源心房頻拍および心房粗動が計 16 例であった。2nd session の成績は 77.3が成 功であったが,再発例に対する 3rd session の成 績は不良であった。このようにアブレーション抵 抗性の難治性心房粗細動に対する治療戦略は今後 の課題であると思われた。 経過してから初めて頻脈性不整脈の再発を認めた 群(再発群)と再発を認めなかった群(非再発群) に分け,臨床的背景,心エコー, MDCT にて計 測した左房容積などについて検討した。平均追跡 期間は 1148±457 日。【結果】術後 1 年以上経過 してから初めて心房細動が再発した症例は 23 例 (10)であった。年齢,性別,術前の hsCRP, 血清 Creatinine,罹病期間,慢性心房細動の比率 (38 vs. 25, p=0.104)には両群間で有意差を 認めなかったが,再発群で高血圧症の有病率が高 値であった(54 vs. 33, p<0.05)。術前心エ コーでの LVDd, LVDs, LVEF, e′velocity, E/e′ 比,左房径等の計測値は両群間で差を認めなかっ たが,術前 MDCT における左房容積は再発群で 有意に高値であった(収縮末期126±66 ml vs. 79±33 ml, p<0.05,拡張末期 109±64 ml vs. 56 ± 34 ml, p = 0.05 )。【結論 】心房細動 に対する CA 施行後の経過が良好であっても,10の症例 において 1 年以上経過してから初めて頻脈性不 整脈の再発を認める。このような再発は高血圧症 例や左房容積拡大症例に多く,長期的な経過観察 を要すると考えられる。 283 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PP27 肺 静 脈 隔 離 後 の noncontact mapping に よ る com- plex fractionated atrial electrograms の評価につい て 神戸大学大学院医学研究科内科学講座 循環器内科分野不整脈先端治療学部門 ○今村公威,吉田明弘,武居明日美,高見 高見 薫, 充,伊藤光哲,松本竜童,平田健一 【背景】肺静脈隔離術は,心房細動を根治するに は十分ではない。complex fractionated atrial electrograms( CFAE )が,追加の治療部位とし て知られてきている。【方法】 42 症例(発作性 40 例,持続性 15 例)に対して肺静脈隔離を施行 した後に,イソプロテレノール負荷,高頻拍ペー シングによって心房細動の誘発を行った。心房細 動が誘発され,持続した場合,noncontact mapping system(Ensite 3000)を使用して,CFAE のマッピングを行った。それぞれの分裂電位は, contact bipolar で , 5 秒 間 記 録 し , 評 価 し た 。 CFAE 領域は, cycle length ( CL )が 120 ms 未 PP28 イリゲーションカテーテルを用いた右心耳起源心房 頻拍の至適なアブレーション方法の検討について 広島大学病院循環器内科 ○徳山丈仁,中野由紀子,梶原賢太,西楽顕典, 槙田祐子,小田 登,木原康樹 右心耳起源心房頻拍( AT )はその解剖学的構造 によりコンベンショナルなカテーテル・アブレー ションでは根治が困難な症例もある。イリゲーシ ョンカテーテルはその問題を解決できると考えら れるが,通電条件についての十分な検討はなされ て い な い 。 そ こ で 右 心 耳 起 源 AT の 至 適 ア ブ レーション方法を検討した。当院で経験した右心 耳 起 源 AT は 4 例 で コ ン ベ ン シ ョ ナ ル な ア ブ レーションカテーテルでの根治 2 例とイリゲー ションカテーテルでの根治 2 例であった。コン ベンショナルなシステムでは平均通電回数 6 回,平均出力 13 W ,平均最大出力 20 W ,平均 温度 54 ° C ,平均合計通電時間 202 秒であった。 284 満と定義した。 CFAE 分布は, 8 つの領域( antrum, posterior wall, anterior wall, roof, septum, mitral ithmus, left atrial appendage, coronary sinus )に分けて,評価した。【結果】 15 症例(発 作性 6 例,持続性 9 例)に CFAE mapping を行 うことができた。計 35 の CFAE が観察され,分 布はそれぞれ anterior wall (13/15, 87), atrial appendage (7/15, 47), septum (5/15, 33), coronary sinus (5/15, 33)であった。9±5 ヶ 月の観察期間中に 15 症例中 6 症例(発作性 3 症 例,持続性 3 症例)で心房細動の再発を認めた。 CFAE の数は,再発例で平均 2.3 個,非再発例で 平均 2.3 個であった。CFAE の平均の CL は,再 発例で 65.6 ms,非再発例で 58.3 ms であった。 【結語】CFAE は,肺静脈隔離後は anterior, atrial appendage に多く認め,これらは,アブレー ションの標的となると考えられる。 イリゲーションカテーテルを使用した 1 例は 41 歳男性で頻脈誘発性心筋症を合併し心不全であっ た。初回は 4 mm Navistar を使用し AT は停止 したが,最大 16 W ( 62 ° C, Imp 16 Q 低下)まで しか出力は上がらず,合計 505 秒通電した。再 発し 2nd session 施行, 4 mm Navistar で停止し たが出力は 9 W(62° C)までで 8 mm tip に変更, 最大 24 W ( 62 ° C, Imp 10 Q 低下)で合計 99 秒 通電した。再度再発し 3rd session でイリゲーシ ョンカテーテルを使用。10 W から出力を上げ 25 W ( 34 ° C ) で 1.5 秒 後に AT 停 止 , 最 大 30 W ( 35 ° C, Imp 12 Q 低下)で合計 270 秒通電した。 もう 1 例は 44 歳女性でコンベンショナルなカ テーテル・アブレーションで根治できず頻脈誘発 性心筋症も合併していた。10 W から出力をあげ 20 W(35° C)で 2.6 秒後に AT 停止,最大 30 W ( 35 ° C, Imp 13 Q 低下)で通電した。いずれも通 電中は局所電位の減高なく, Imp を指標に,低 出力から徐々に出力をあげ,短時間の通電を繰り 返した。イリゲーションカテーテルでは右心耳起 源 AT でも安全に 30 W の出力で十分に根治可能 であった。 PP29 拡大肺静脈隔離術後における肺静脈狭窄の検討― イ リ ゲ ー シ ョ ン カ テ ー テ ル と 通 常 型 4 mm-tip カ テーテルとの比較― 名古屋第二赤十字病院循環器内科 ○山本崇之,吉田幸彦,古澤健司,森田純生, 金村則良,三好亜弥,吉田路加,滝川正晃, 井上夏夫,立松 康,七里 守,平山治雄 名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学 因田恭也,鈴木博彦,吉田直樹,嶋野祐之, 辻 幸臣,山田 拓,室原豊明 名古屋大学医学部保健学科 平井真理 【背景】心房細動に対する肺静脈隔離術において, 肺静脈狭窄は重篤な合併症の一つである。イリ ゲーションカテーテルは通常型のカテーテルと比 してより深い焼却領域を実現するとの報告がある が,その術後肺静脈狭窄についてはいまだ明らか でない。【方法】当院において 2009 年 2 月から 2009 年 11 月までに拡大肺静脈隔離術を受けた連 PP30 単純胸部 CT 検査を用いての左房形態の評価―造 影剤なしで左房形態の 3D 評価は可能か― 岡山ハートクリニック内科 ○山地博介,川村比呂志,村上 充,日名一誠 【背景】 AF に対する根治療法としての ablation はほぼ確立された手技である。しかし AF ablation 自体は未だ技術的には challenging であり, 左房の解剖学的情報は必須である。しかし腎機能 障害例や造影剤アレルギー例では造影 CT による 術前左房評価が困難である。【目的】今回造影剤 を使用せずに単純 CT から左房の解剖学的情報が 得られるかを検討した。【対象・方法】当院で AF ablation を実施した連続 50 例が対象。平均 年齢 63 ± 8 歳,女性 18 名, CAF 12 例。 64 列 MDCT を用いて ECG 非同期で単純・造影 CT 撮 像。 2 名の技師で単純 CT からの 3D image と造 影 CT からの 3D image を別々に構築した。【結 果】造影 CT では肺静脈の構造は, 50 例中 left common trunk PV が 5 名,right common trunk PV が 1 名,right middle PV(RMPV)が 2 名, それ以外は分枝異常は認めず。単純 CT からの 続 84 症例を,イリゲーションカテーテルのグ ル ー プ ( ITC グ ル ー プ 54 症 例 ) と 通 常 型 4 mm-tip カテーテルのグループ(STC グループ 30 症例)に分けて比較検討を行った。ITC グルー プでは 30 ~ 35 W で通電を行い, STC グループ では温度コントロールで最大 55 度での通電を行 った。 ICE カテーテルを用いて,手技前後での 肺静脈の Vessel area, Lumen area 及び Intima 【結果】 area の変化率について比較検討を行った。 両群で患者背景及び手技成功率については違いを 認めなかった。 ITC グループでは STC グループ と比して有意に通電エネルギーが大きかったが (32584±11440 J vs 25983±9504 J; p=0.02), Vessel area 及び Lumen area の縮小率はより小 さかった(-8.7 vs -23.6, p=0.001 and - 8.2 vs - 19.3 , p = 0.011 )。【 結 論 】 イ リ ゲーションカテーテルによる拡大肺静脈隔離術 は,より高い通電エネルギーにも関わらず急性期 の肺静脈狭窄はより少ない。 3D image でも造影 CT と全く同様の所見が得ら れ,一致率は 100であり左房の解剖学的情報を 得るには単純 CT でも十分であった。【結論】腎 機能障害例や造影剤アレルギーを有する症例で は,単純 CT から構築した肺静脈 3D image で左 房の解剖学的情報を得るには十分であった。 285 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PP31 Ensite system により緩徐伝導路を左心耳基部に同 定した心房頻拍の 1 症例 国立病院機構名古屋医療センター循環器内科 ○鈴木智理,富田保志 壁を上行するリエントリー回路を認めた。線状焼 灼部位から左心房前壁僧房弁輪まで線状焼灼を追 加施行し,頻拍の停止及び両方向性ブロックを確 認した。以降いかなる頻拍も誘発不可能となっ た。稀な心房頻拍回路を Ensite system により同 定しカテーテル・アブレーションに成功した症例 であり報告する。 症例は 66 歳男性。緻密層形成不全,慢性心不全 のため 2006 年より内服加療中。 2009 年 2 月肺 水腫を伴う心房頻拍が持続し, Ensite system 使 用下に高周波カテーテル・アブレーションを施行 した。 Multielectrode array を左心耳に留置し左 心房 geometry を作成。心房頻拍( AT1 周期 234 ms ) は 持 続 し て お り , Virtual activation map では左心耳基部右側に緩徐伝導路を認め左 心耳基部周囲を時計方向に旋回するマクロリエン トリー性頻拍と考えられた。緩徐伝導路に対し高 周波アブレーションを施行中に AT1 の停止を認 め,緩徐伝導路全体に対して線状焼灼を施行し た。その後異なる周期の心房頻拍( AT2 周期 353 ms )が誘発された。 AT2 に対する Virtual activation map では僧房弁輪側壁側から左心房前 PP32 ATP 感受性心房頻拍 2 症例の activation map およ び voltage map の検討 大分大学医学部循環器内科 ○近藤秀和,橋尚彦,岡田憲広,脇坂 収, 油布邦夫,中川幹子,犀川哲典 大分大学医学部総合内科学第一 原 政英,吉松博信 【目的】高齢女性に発症した右房および左房起源 の ATP 感 受 性 心 房 頻 拍 2 症 例 を 経 験 し た 。 CARTO システムを用いたマッピングにて頻拍の focus 近 傍 に お け る voltage map と isochronal map を検討しえたので報告する。【症例 1】77 歳 頻拍で,P 波の極性は下壁誘導で 女性。long RP′ 陰性, V1 では陽性から陰性の 2 相性を示し, I, aVL 誘導では陽性であった。高位右房からの期 外刺激で再現性をもって頻拍が誘発され,心房最 早期興奮部位は His 束であった。 ATP 急速投与 (5 mg)で AA 間隔および AH 間隔は徐々に延 286 長し頻拍は停止した。 Activation map は His 束 のやや上方の心室寄りからの focal pattern であ り , focus 近 傍 で 伝 導 遅 延 が 認 め ら れ た 。 Voltage map で伝導遅延部位に一致して low voltage (0.5 mV 未満)が認められた。頻拍は高周波アブ レーションで根治できた。【症例 2】87 歳女性。 頻拍で,P 波の極性は下壁誘導で陰性, long RP′ V1 で陰性から陽性の 2 相性を示し,I, aVL 誘導 では陰性であった。軽度の心不全を合併してい た。プログラム刺激にて容易に頻拍が誘発され, CS 遠位と CS 近位がほぼ同着で最早期興奮部位 であった。 ATP 急速投与( 5 mg )で A A 間隔 の延長を認めず頻拍は停止した。Activation map で頻拍は僧帽弁輪前壁のやや中隔よりからの focal pattern であり, focus 近傍で伝導遅延が認め られた。Voltage map で伝導遅延部位に一致して low voltage( 0.5 mV 未満)が認められた。頻拍 は高周波アブレーションで根治できた。【結語】 2 症 例 と も に 頻 拍 の focus 近 傍 に low voltage zone を認め,この箇所は伝導遅延を呈していた。 ATP による頻拍停止および本頻拍の機序解明に つながる所見と考え報告する。 PP33 高位右房起源の ATP 感受性心房頻拍と AVNRT を 頻拍は CS プログラム刺激でも誘発できた。心房 合併した 1 例 早期刺激にて連結期と return cycle は 2 つの不連 続性の逆相関を示した。 AT は ATP 10 mg にて NTT 東日本関東病院循環器内科 ○渡 雄至,野村秀仁,河田絵梨紗,松下匡史郎, 徐拍化を認め,AH の延長を認めず AT は停止し, 小金井博士,遠藤悟郎,山崎正雄,大西 哲 ATP 感受性心房頻拍と診断した。 AT は HRA 領域の中隔側よりマッピングを行い通電したが無 効であった。高位右房側壁の sinus node 領域の 通電で頻拍は停止した。 AVNRT は M2 領域の 症例は 47 歳女性。元々 20 歳台後半より動悸発 通電にて成功した。 ATP 感受性リエントリー性 作を認めていた。今回動悸を主訴に救急受診さ 心房頻拍は房室結節の fast pathway 近傍の中隔 れ , 心 電 図 上 心 拍 数 186 bpm の narrow QRS および slow pathway の近傍に存在することも多 tachycardia を認めた。 V1 で pseudo r 第 2 第 3 いが,本例は高位右房側壁(洞結節近傍)に起源 aVF 誘導で ST 低下を認め, AVNRT の可能性 を有する点で特異であり, sinus node reentry と を 考 え EPS , ア ブ レ ー シ ョ ン 入 院 と な っ た 。 の異同に関して興味ある症例と考えられた。また, EPS にて, PAC を契機に HRA を再早期興奮部 AT と AVNRT の double tachycardia を 有 す る 位とする AT が誘発された。 AT の周期は 300 点でも稀な症例であると考え報告した。 480 ms と大きく変動し,脈拍が遅いと long RP tachycardia の 心電 図波 形を 示し た 。更 に PAC にて AT から周期 330 ms の His A を再早期とす る slow-fast AVNRT が 誘 発 さ れ た 。 ま た , AVNRT か ら RV burst 刺 激 で AVNRT は 停 止 し,AT への移行が認められた。これら二種類の PP34 再発した異所性心房頻拍に irrigation catheter が有 効であった 1 例 愛知医科大学医学部循環器内科 ○伊藤良隆,岩 亨,鈴木靖司,加藤 勲, 伊藤隆之 症例は 41 才女性。妊娠中に頻拍を指摘され当科 紹介された。心電図で II, III, aVF 陰性の P 波を 呈する異所性心房頻拍と診断した。 2009 年 6 月 に心臓電気生理学的検査を施行したところ頻拍中 の心房最早期興奮部位は分界稜下端であり,同部 で 低 電 位 の fractionated potential が 記 録 さ れ た。同部に 4 mm tip および 8 mm tip アブレー ションカテーテルで通電を行い一時的に頻拍は抑 制されたが根治に至らなかった為, 2010 年 1 月 に再アブレーションを施行した。頻拍中の心房最 早期興奮部位および電位は前回と同様に記録され, electroanatomical mapping では分界稜下端より 同心円状に興奮が伝播した。 3.5 mm tip の irrigation catheter を用い 30 W で通電を行ったとこ ろ通電中に頻拍の acceleration が認められ,通電 を停止すると cool down 現象を伴い頻拍は停止 した。更に通電を追加したところ頻拍は acceleration を呈した後に停止し以後再発を認めなかっ た。分界稜近傍の通電では壁厚が厚いことから心 内膜側からの焼灼が困難な症例があり既存のアブ レーションカテーテルでは治療困難な症例が存在 する。本症例では irrigation catheter による通電 が頻拍の根治に有効であったと考えられたため報 告する。 287 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PP35 発作性心房細動に対する肺静脈電気的隔離術後に胃 蠕動障害をきたした 1 例 岐阜県立多治見病院循環器内科 ○矢島和裕,稲垣尚彦,河宮俊樹,藤巻哲夫, 堀部秀樹,日比野剛,横井 清 名古屋市立東部医療センター東市民病院循環器内科 村上善正 薬剤抵抗性で症状の強い発作性心房細動に対する 肺静脈隔離アブレーションは現在広く行われてい る。しかし,左房後壁への高周波通電は周辺組織 への障害を及ぼす可能性がある。今回われわれ は,肺静脈隔離アブレーションにて胃蠕動障害を きたした一例を経験したので報告する。症例は, 50 歳男性。器質的心疾患はなく薬剤抵抗性で症 候性の発作性心房細動に対して,propofol 静脈麻 酔下に肺静脈隔離術を施行した。リング状カテー テルを肺静脈入口部に留置し肺静脈電位をモニ ターリングし,透視画像下に 8 mm チップアブ レーションカテーテルを用いて,同側上下肺静脈 PP36 肺静脈隔離術中の急性脈拍変動の頻度と特徴と臨床 的意義 名古屋第二赤十字病院循環器センター ○滝川正晃,吉田幸彦,前田眞勇輔,古澤健司, 森田純生,三好亜弥,金村則良,吉田路加, 山本崇之,井上夏夫,立松 康,七里 守, 平山治雄 【背景】過去の報告において,心房細動に対する アブレーションは脈拍上昇を伴う迷走神経除神経 を来たすと言われているが,肺静脈隔離術中の急 性期の脈拍変動の頻度と臨床的意義に関してはわ かってないことが多い。今回の研究の目的は,肺 静脈隔離術中の脈拍の変動と特徴,そしてその臨 床的意義に関して検討することである。【方法】 2006 2009 年に当院にて肺静脈隔離術を施行し た連続 222 例の発作性心房細動患者のうち 150 例( 60 ± 11 歳,男性 111 例)が肺静脈隔離術中 に洞調律で経過した。隔離は上下肺静脈を一括し 288 周囲を入口部から 0.5~2 cm ほど離して電気的隔 離した。左房後壁には 35 W ,前壁には 40 W で 45 秒間ポイント・バイ・ポイントで通電し,食 道の前では 25 W で 20 秒間通電した。後壁通電 時に強い痛みが生じたが, penazocine で改善し た。通電時間は左肺静脈周囲に 2526 秒,右肺静 脈周囲に 1333 秒であった。手技中は特に問題は 生じなかったが,2 日後,嘔吐と心窩部痛が出現 し,食事がとれなくなった。腹部レントゲンでは 胃の拡張がみられ,上部消化管内視鏡では胃蠕動 の停止と大量の未消化物の胃内貯留がみられた。 上部消化管内に潰瘍や出血はみられなかった。絶 食,胃管および高カロリー栄養にて 1 ヶ月後, 症状は軽度改善し,流動食を開始し退院となった。 2 ヶ月後,上部消化管内視鏡にて胃蠕動の動きが みられた。8 ヶ月後,症状は改善し,上部消化管 内視鏡でも胃蠕動の正常化がみられた。現在まで のところ,心房細動の再発はない。肺静脈隔離ア ブレーション治療後胃蠕動障害を認めた患者で, 長期の経過観察で症状改善をみた一例を経験し た。左房後壁に対する高周波通電は,十分な注意 が必要と考えられた。 て行われ,左肺静脈・右肺静脈の順に施行され た。洞調律中の脈拍は左肺静脈隔離術前,左肺静 脈隔離術後(右肺静脈隔離術前),右肺静脈隔離 術後に計測された。洞調律の脈拍の 20 以上の 変動を有意な脈拍変動と定義し,この変動の臨床 的意義に関して検討した。【結果】左肺静脈隔離 術後,脈拍は 8 例( 5.3 )で有意に上昇し, 16 例(10.6)で有意に減少した。右肺静脈隔離術 後 , 脈 拍 は , 26 例 ( 17.3 ) で 上 昇 し , 1 例 ( 0.6)で減少した。平均 492 ± 375 日の経過観 察において,心房細動は 34 例( 22.7 )で再発 した。多変量解析では,心房細動再発と有意な関 連性があったのは,隔離術中の有意な脈拍変動 (HR 0.61, 95Cl 0.370.94, p=0.024)と初発 か ら の 心 房 細 動 の 持 続 期 間 ( HR 1.08 / 1 yr increase, 95Cl 1.011.16, p=0.034)であった。 脈拍の増加,あるいは減少は,単独ではいずれも 心房細動の再発と有意な関連は認めなかった。 【結論】有意な脈拍変動は拡大肺静脈隔離術中に しばしば生じる。 20 以上の脈拍変動と初発か らの心房細動持続期間は,心房細動の再発と有意 に関連する。 PA37 右室ペーシングから CRT への upgrade 例における 左室内興奮伝播過程と予後との関連についての検討 東京女子医科大学循環器内科 ○松山優子,志賀 剛,庄田守男,萩原誠久 東京都保険医療公社荏原病院循環器内科 仁禮 隆 【背景】心不全を合併した右室ペーシング例にお いては CRT への upgrade が行われるが, CRT の有効性の予測は困難である。本研究の目的は, 右室ペーシングから CRT へ upgrade した心不全 例において,体表面心電図を用いて左室内興奮伝 導時間の評価による予後予測について検討するこ とである。【対象】対象はペースメーカまたは ICD による右室ペーシングから CRT へ upgrade した 6 症例である。【方法】右室ペーシング時お よ び CRT 後 に 体 表 面 87 誘 導 心 電 図 を 記 録 し た。各誘導の心室内興奮到達時間( VAT QRS 開始時から QRS 波の一次微分値の最小値までの 時間)を測定し VATmap を作成した。VATmap において胸骨左縁から背部までを左室を反映する 領域として,同範囲内における興奮到達の最遅延 時間-最速時間( Tmax - Tmin )を算出した。 左室中隔側を反映する部位での興奮到達時間を Ts ,左室自由壁を反映する部位での興奮到達時 間を Tf とし,両者の差の絶対値(Ts-Tf)を算 出した。【結果】 CRT 有効は 4 例,無効は 2 例 であった。右室ペーシング時の QRS 幅, Tmax - Tmin ,( Ts - Tf )においては有効例と無効例 に差はなかった。CRT 後は QRS 幅および Tmax - Tmin においては有効例,無効例間に差はなか った。(Ts-Tf)は,有効例においては全例右室 ペーシングに比べて 11 から 50 ms 短縮し, 30 ms 以下(6~30 ms)となった。これに対して無 効 例 で は 2 例 と も 4 ~ 5 ms 延 長 し 50 ms 以 上 (50~ 52 ms)となった。【結語】体表面電位図を 用いた検討において,左室中隔側と自由壁との興 奮到達時間の差が大きい症例は CRT が無効であ ることが示唆された。 PA38 Brugada 型心電図のリスク層別化における Wavelet 変換心電図の有用性 日本医科大学内科学循環器・肝臓・老年・総合病態 部門 ○植竹俊介,小原俊彦,村田広茂,林 坪井一平,山本哲平,堀江 格,林 洋史, 明聡, 宮内靖史,平山悦之,加藤貴雄,水野杏一 日本医科大学北総病院循環器センター 淀川顕司 久我山病院内科 高山英男 【背景】 Brugada 型心電図のリスク層別化には, 有用な方法がない。体表面心電図において時間周 波数解析の有用性が報告されているが,Brugada 型心電図における検討は十分ではない。【方法】 対象は, 2007 年から 2009 年までに Brugada 型 心電図と診断された 15 例(女性 1 例, 49± 20 歳)である。 Brugada 症候群の診断基準を満た した 4 例( BS 群)と満たさなかった 11 例(非 BS 群 ) に 分 け て 比 較 し た 。 高 分 解 能 心 電 計 ( sampling = 10 kHz )を用いて, V1, V2 誘導を 記録し任意の QRS 波( 300 ms )を抽出した。 Wavelet 変換( Gabor 関数)を用いて, QRS 波 の周波数成分(40200 Hz)を評価した。【結果】 検 査 時 の 心 電図 は , BS 群で I 型 2 例, II 型 2 例,非 BS 群で II 型 7 例, III 型 4 例であった。 その他のベースライン特性は差を認めなかった。 BS 群では,非 BS 群に比べ 80 Hz 以上の周波数 成分のパワー値が増高する傾向にあった。特に, BS 群では,120150 Hz の高周波数成分が 80 Hz を超える“高周波数成分の低周波数成分からの逸 脱”を認めた。 V1 誘導の“逸脱”は, BS 群 4 例(100)に認め,非 BS 群では 1 例(9)に 認めるのみであった。( P<0.05)同様に, V2 誘 導 で も BS 群 で 3 例 ( 75 ), 非 BS 群 で 1 例 (9)に“逸脱”を認めた。(P<0.05) V1 誘導 における“逸脱”を検査陽性とすると Brugada 症候群検出における Wavelet 心電図の感度,特 異度,陽性的中率,陰性的中率はそれぞれ, 80, 100, 100, 91であった。【結語】今回 は少数例の検討であるが,高周波数成分を評価す ることで, Brugada 型心電図のリスク層別化に 有用である可能性が示唆された。 289 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA39 WPW 症候群における早期再分極の意義 富山大学医学部第二内科 ○水牧功一,西田邦洋,阪部優夫,岩本譲太郎, 中谷洋介,山口由明,常田孝幸,坂本 有, 藤木 明,井上 博 5)に比較し早期再分極を認める頻度が多く心 室の早期興奮(早期脱分極)と関連していたが, 臨床的な不整脈との関連は明らかではなかった。 【目的】左側胸部誘導や下壁誘導で J 波を認める 特発性心室細動例が報告されているが,同様の J 波は健常者や WPW 症候群でも認められその意 義については不明の点が多い。今回,WPW 症候 群における早期再分極の意義について検討した。 【方法】顕性 WPW 症候群 85 例(男性 51 例)を 対象に,安静時 12 誘導心電図で早期再分極の有 無をカテーテル・アブレーション前後で検討し た。複数副伝導路例は除外した。早期再分極は J 波の 1 m 以上の上昇,もしくは QRS 終末の slurring や nocth と定義した。【結果】 1 )早期再分 極は左側副伝導路 29 / 50 例,右側 10 / 25 例,中 隔側 7/10 例で,全て陽性のデルタ波を示す誘導 に認められた。 2 )早期再分極陽性例は陰性例に 比 べ 年 齢 が 低 く ( 37 ± 17 vs 47 ± 12 歳 , p < 0.05),男性例が多かった(男性33/50 vs 16/ 31, p<0.05)。3)早期再分極陽性例と陰性例で 副伝導路の順行性有効不応期(280±36 vs 305± 60 msec ),右室有効不応期( 265 ± 31 vs 275 ± 28 msec )は有意差はなく,また pseudo VT や 失神の頻度も両群で有意な差はなかった。 4)ア ブレーションによる D 波消失後, 30 / 77 例で早 期再分極が消失したが 40 例は早期再分極が残存 し,また 7 例では新たに早期再分極が出現し た。【総括】顕性 WPW 症候群では,健常者(2 PA40 ベクトル合成 187 チャネル心電計による心室再分極 T wave current alternance 二次元機能図の開発と 臨床応用 岩手医科大学歯学部歯科内科学科 ○中居賢司 東京女子医科大学循環器内科 鈴木 敦,志賀 剛,庄田守男,萩原誠久 早稲田大学理工学術院 笠貫 宏 【目的】独自に開発したベクトル合成 187 チャネ ル高分解能心電計( DREAM-ECG)は, MasonLikar 誘導を用いて 12 誘導心電図,心拍変動解 析, XYZ 加算心電図による心室遅延電位の検出 が可能である。今回, DREAM-ECG より求めた 電 流 分 布 よ り , RTend dispersion map と T wave current alternance ( TWCA ) の 再 分 極 二 次元機能図を考案して臨床的意義を検証した。 【対象と方法】健常者( CONT ) 20 例, QT 延長 症候群(LQT)11 例を対象とした。LQT は視覚 的 TWCA 陰 性 9 例 ( LQT G 1 ) と 視 覚 的 290 TWCA 陽性 2 例(LQT G2)の 2 群に分類した。 187 ch 電流分布図での R 波より T 波までの時間 の差分として RTend dispersion を求めた。さら に 187 ch 電流分布図で type A と type B の波形 の電流密度比率(A-B/A×100)として TWCA を 求め て, TWCA 二次 元機 能図 を 作成 した 。 【成績】 LQT の QTc 間隔は,健常群に比べて高 値であった(515±60 ms in LQT G1, 600±27 ms LQT G2 vs 415±19 in CONT)。LQ の RTend dispersion は,健常群に比べて高値であ った(48±19 ms in LQT G1, 65±30 ms in LQT G2 vs 24±10 ms in CONT, P<0.01)であった。 また, LQT の TWCA 値は,健常群比べて高値 であった(2.1±1.2 in LQT G1, 32.3±6.9 in LQT G2 vs 0.5±0.2 in CONT)。視覚上明 ら か な T wave alternance を 呈 し た 例 で の TWCA は 39 と高値であり, RT dispersion の 空間分布と関連した。【結論】 DREAM-ECG で は , RTend dispersion map お よ び TWCA map の再分極二次元機能図の同時解析が可能であり, LQT 症例での TWCA 不均一分布の存在を示し た。 PA41 遅延電位の診断に心磁図が有用であった不整脈源性 右室心筋症の症例 筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学循 環器内科 ○井藤葉子,村越伸行,夛田 浩,関口幸夫, 成瀬代士久,五十嵐都,山o 遠藤秀晃,常岡秀和,町野 浩,小澤真人, 毅,青沼和隆 茨城県立中央病院循環器内科 吉田健太郎 症例は 18 歳女性。幼少期より心雑音を指摘され 自覚症状ないため経過観察していた。 13 歳の時 に中学校の学校検診にて心電図上不完全右脚ブロ ックを指摘され,精査目的に前医を受診し心房中 隔欠損症を認めパッチ閉鎖術を行った。同年 11 月心不全にて入院中に心室頻拍を認めたため 2004 年 11 月電気生理検査を行った。右室流出路 起源の心室頻拍が誘発されたため最早期部位に対 し通電し,誘発不能となった。しかし退院後も心 室頻拍の再発を認め, 2005 年 3 月に電気生理検 PA42 320 列 MDCT による心房細動治療後の左房容積, 左房駆出率の評価―心房細動カテーテル・アブ レーションと Maze 手術後の左房機能評価― 天理よろづ相談所病院循環器内科 ○吉谷和泰,貝谷和昭,花澤康司,本岡眞琴, 中川義久 【背景および目的】当院では 2008 年 10 月より 320 列 MDCT が稼働し,アーチファクトの少な い撮像が可能となった。これにより心房細動患者 のカテーテル・アブレーションや Maze 術後の心 房機能の評価を行った。方法および対象患者対 象は 320 列 MDCT でカテーテル・アブレーショ ン術後(通常アブレーション後 3 ヶ月から一年) に心臓 CT を撮像している心房細動患者(発作性 16 例,持続性 11 例)と Maze 術後患者 9 例。心 周期の 10 ごとに取り出した CT のデータをも とに,CT 値による左房全体の選択を三次元的に 行い,左房容積測定と左房駆出率( EF )の計算 を行った。アブレーションのストラテジーは発作 性心房細動例( Paf 群)では主に肺静脈隔離術 ( PVI )を行い,持続性心房細動例( PerAf 群) 査を行い,右室流出路および右室下壁起源の心室 頻拍が誘発されたため,通電したものの無効であ った。その後,アンカロン,メインテートの内服 で症状なく経過していたが, 2006 年頃より再び 心室頻拍が出現するようになった。 2009 年 8 月 からは 2 4 回/月の心室頻拍発作とカルディオ バージョンを繰り返したため,根治目的にて 2009 年 12 月 7 日当科紹介入院となった。著明 な右室拡大,心電図上の e 波より不整脈源性右室 心筋症と診断した。心磁図では高位右室に遅延電 位を認めた。本症例は心磁図にて遅延電位を認 め,特徴的なアローマップパターンを示した。心 磁図の遅延電位は心電図上の e 波を反映している としているものと考えられ,不整脈源性右室心筋 症の遅延電位の検出に有用である。 においては PVI を行い症例によって CFAE アブ レーションや線状アブレーションを追加した。 Maze 群では 3 例のみ左心耳の縫縮術が行われて 【結果】 おり,残り 6 例では左心耳は温存された。 Paf 群, PerAf 群, Maze 群の 3 群の術後の心房 拡張期容積は 89.59±10.5 ml, 129.7±17.1 ml, 121.4 ± 18.0 ml で有意に Paf 群が小さかった。 (p=0.0484)Maze 群と PerAf 群の二群間には有 意差はなかった。( p = 0.3272 )また, Paf 群, PerAf 群, Maze 群の 3 群の術後の左房 EF はそ れぞれ 37.1±1.75, 28.1±2.2, 17.1±2.3で Maze 術群が有意に低下していた( p < 0.001 )。 また,Paf 群と PerAf 群,PerAf 群と Maze 術群 の 2 群間比較も有意差を認めた。( p = 0.0052, p =0.0033)考察Maze 群は PerAf 群に比べて心 房の容積がさほど大きくないにもかかわらず,著 明に心房機能が低下していた。その原因として術 前にすでに心房筋の強い変性があった可能性と, 手術侵襲そのものによる心筋障害の可能性が考え られた。 【結語】320 列 MDCT は,カテーテル・ アブレーションや Maze 術後の心房機能の客観的 評価のために有用な tool と考えられた。 291 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA43 包括的心臓リハビリテーションによる心疾患患者の TWA の改善効果について 東海大学医学部付属八王子病院循環器内科 ○中村真理,二階堂暁,小林義典 【背景】 TWA は低左心機能患者,とくに虚血性 心疾患患者の心臓突然死の有用な予測因子である とされている。しかし,心臓リハビリテーション (CR)を行った患者の TWA 値の長期経過の報告 例はまだない。【方法】当院 CR 外来を受診した 連続 918 ケース( 126 症例,男性 109 名,女 性 17 名,平均齢 67.2 ± 10.5 歳)について解 析を行った。基礎疾患としては虚血性心疾患が 101 例,拡張型心筋症が 13 例,心臓弁膜症術後 が 5 例,などであった。すべての症例において, CR 導入時とその約 4 カ月後に心肺運動負荷試験 ( CPX ) が 施 行 さ れ , そ の 際 に 全 例 Time Domain 方式を用いて TWA を測定した。この際 の運動耐容能と TWA 値についての比較検討を 行った。【結果】全症例においては TWA 値およ PA44 320 列 CT を用いた 2 相撮像による左房内血栓の検 出 天理よろづ相談所病院循環器内科 ○本岡眞琴,貝谷和昭,吉谷和泰,花澤康司, 西賀雅隆,中島誠子,山尾一哉,坂本二郎, 三宅 誠,近藤博和,泉 知里,中川義久 【目的】現在のところ,心房細動のアブレーショ ン前に左房内血栓の有無を評価する目的で経食道 エ コ ー が 施 行 さ れ て い る 。 し か し CARTOmerge を用いるのであれば造影 CT 検査は必須 であり,その際の画像を利用して左房内血栓の有 無が評価できれば TEE は必須ではなくなる。左 房内血栓は CT 上造影欠損として描出されるが, 遅い血流もタイミングによっては造影欠損とな り,血栓と紛らわしいことがある。320 列 CT で は,1 心拍で心臓全体を撮像できるために,数秒 間隔で心臓を連続的に撮像することが可能とな り,遅い血流と血栓の鑑別に有用ではないかと考 え,遅い血流と血栓の鑑別能につき 64 列 CT と 292 び AT レベル・peak レベルにおける VO2 ともに CR 前 後 で 有 意 な 変 化 は 認 め ら れ な か っ た (TWA: 23.5±12.0 to 23.7±12.7 mV, p= 0.931)。しかし,低左心機能症例において TWA 値 は CR 後 に 有 意 な 改 善 を 示 し た ( LVEF ≦ 40: n=11, 31.3±15.9 to 19.2±8.2 mV, p= 【結論】包括的 CR によって TWA 値は, 0.036)。 特に低左心機能症例において有意な改善を示し た。このことから心臓突然死のハイリスク患者の 不整脈惹起性が CR によって改善させ得ることが 示唆された。 比較した。【方法】76 名の心房細動アブレーショ ン前の患者を対象とした。42 名(男性 29 名,平 均 62.8 ± 9.1 歳)は 64 列 CT を用いて評価した ( Group A )。また 34 名(男性 18 名,平均 63.5 ± 8.8 歳 ) は 320 列 CT を 用 い て 評 価 し た (Group B)。Group B については,冠動脈の撮像 タイミングと,それより 4 秒後の 2 相を撮像し, 1 相目のみを評価した場合と,両時相の画像を評 価した場合とを比較した。 【結果】Group A では, 22 名の患者で血栓と遅い血流の区別ができなか った。また,Group B では,1 相目のみの画像で は 13 名の患者で区別ができなかったが( 50.0 ,両時相の画像で評価すると, vs. 38.2, p=0.41) 4 名のみ区別不可能となった(38.2 vs. 11.8, p < 0.05 )。【結論】 320 列 CT で左房を 2 度撮像 することにより,左房内血栓と遅い血流の鑑別が 容易となることが示唆された。左房内血栓を有す る症例の蓄積により,今後も本方法の有用性につ き検討していく必要があると考える。 PA45 拡張型心筋症における late potential の変動は心室 頻拍出現の予測に有用か 福島県立医科大学医学部循環器・血液内科学講座 ○神山美之,鈴木 均,山田慎哉,金城貴士, 上北洋徳,竹石恭知 【背景】心室頻拍( VT )の発生には日内変動が あるとされているが,その発生機序に関しては不 明な点も多い。今回我々は拡張型心筋症において ホルター心電計を用いて 24 時間の Late Potential( LP )を測定し, VT 出現との関連性につい て検討した。【方法】対象は 5 連発以上の VT を 有する拡張型心筋症 13 例(平均年齢 64±7 歳)。 胸部 XYZ 誘導(フランク誘導)の心電図を高解 像度で記録し 10 分毎に LP ( f QRSd, RMS40, LAS40 )を測定した。 LP の日内変動の指標は 6 時間ごと{早朝( 0 6 時),午前( 6 12 時),午 後( 12 18 時)と夜間( 18 24 時)}に測定した 計測値の最大値から最小値を引いたものとした。 各時間帯での LP 測定値と VT の発生について比 PA46 心筋梗塞発症後における心室性不整脈と TWA の関 連性の検討 横浜南共済病院循環器内科 ○浅野充寿,山分規義,大坂友希,島田博史, 村井典史,鈴木秀俊,鈴木 篤,清水雅人, 藤井洋之,西崎光弘 東京都立広尾病院循環器科 櫻田春水 東京医科歯科大学医学部循環器内科 磯部光章 東京医科歯科大学 平岡昌和 較検討した。【結果】 210 回の VT が認められた が,早朝に多い傾向が認められた(早朝 35 , 午前 23,午後 18,夜間 24 , P< 0.05)。さ らに LP と VT 発生の日内変動はほぼ一致した ( f QRSd 早朝 15.3 msec ,午前 12.1 msec ,午 後 6.0 msec ,夜 間 8.2 msec, LAS40 早朝 16.0 msec ,午前 6.5 msec ,午後 3.7 msec ,夜間 6.3 msec, RMS40 早朝 8.5 mV ,午前 5.3 mV ,午後 2.0 mV ,夜間 4.2 mV, P < 0.05 )。【結論】拡張型 心筋症において LP の日内変動と VT の出現には 関連性が認められた。 LP の日内変動の計測は VT 出現の予測に有用であることが示唆された。 TWA 測定時期と TWA 陽性率とを比較検討し た。【結果】心室性不整脈は A 群の 8 例中 6 例 で心筋梗塞発症 1 週間以内に出現した。ホル ター心電図施行時期は 1 週間以内 A 群 2 例, B 群 27 例であった。また TWA 陽性は A 群におい て 6 例(75)。B 群は 2 例(4)であった(P <0.001)。【結論】心室性不整脈の出現と TWA 陽性との関連が強く認められた。心筋梗塞発症後 における心室性不整脈の出現は 1 週間以内に多 く認められた。しかしながら TWA 陽性例は 1 週間以降でも有意に多く認められ,心筋の electrical instability は 1 週間以降も残存すると考え られた。 【背景/目的】 TWA は心室性不整脈の risk 評価 に有用である。今回我々は心筋梗塞発症後急性期 における心室性不整脈と TWA の関連性につい て検討した。【対象/方法】心筋梗塞発症後 8 週 間以内にホルター心電図を施行しえた 62 例(男 性 53 例 , 平 均 年 齢 63 ± 18 ) を 対 象 と し , MMA 法による TWA を測定した。その間心室 性不整脈出現例した群( A 群 n = 8 )と非出現群 ( B 群 n = 54 )との 2 群に分け,それぞれの群の 293 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA47 Brugada 症候群における心室性不整脈予測因子とし ての HRT, TWA の有用性 広島大学病院循環器内科 ○槙田祐子,中野由紀子,小田 登,西楽顕典, 梶原賢太,徳山丈仁,濱田麻紀,木原康樹 【背景】 Heart rate turbulence ( HRT )は,自律 神経活動異常を反映する指標の一つであり,心筋 梗塞患者のみならず,拡張型心筋症患者において も有用な予知指標と報告されている。また T wave alternans ( TWA )は心室再分極過程の異 常を示唆し,心室性不整脈イベントのリスク予測 に有用であるとされている。今回われわれは Brugada 症候群における HRT と TWA の有用性 を検討した。方法と【結果】 Holter 心電図記録 を行った 23 例の Brugada 症候群患者(平均年齢 49.9±16.4 歳,spontaneous Type 1 Brugada ECG n=16突然死の家族歴 n=8失神歴 n= 9心室細動の既往 n=5)を対象とした。尚,誘 導 は CM5 を V5, NASA を V2 に相 当す るよ う PA48 高血圧に伴う発作性心房細動の P 波加算平均心電図 装 着 し た 。 解 析 に は MARS system ( GE Healthcare )を用い, HRT のパラメーターであ る turbulence onset ( TO ) と turbulence slope (TS),同時に modiˆed moving average(MMA) method による TWA が自動測定された。 HRT は,TO>0と TS<2.5 ms/RR を共に満たす場 合,陽性とした。 HRT は 9 例で測定不能で,測 定可能であった 14 例中 2 例で HRT 陽性であっ た。しかし,心室細動の既往のある患者では,全 例 HRT 陰性であった。MMA-TWA については, V2 の TWA が心室細動の既往のある患者で有意 に高かった(63.0±14.6 vs. 46.1±15.5 mV, p= 0.04)。【結語】Brugada 症候群患者における心室 性不整脈の予測因子として, HRT の有用性は乏 しかった。しかし,MMA-TWA については,心 室細動の既往のある患者で有意に高く,ブルガダ 症候群における心室細動ハイリスク群の選定に有 用である可能性が示唆された。 洞調律間で FPD(140±22 ms vs 130±18 ms, P =ns), LP20/FPD (0.016±0.07 mV/ms vs 0.020 ○宗次裕美,丹野 郁,大沼善正,菊地美和, ±0.012 mV/ms, P=ns)。CHF 非合併例のうち, 伊藤啓之,小貫龍也,三好史人,河村光晴, HT 合併例では, Paf ,洞調律間で FPD ( 135 ± 浅野 拓,小林洋一 20 ms vs 125±13 ms, P<0.01), LP20/FPD (0.018±0.011 mV/ms vs 0.02±0.013 mV/ms, P = ns )。 非 高 血 圧 合 併 例 で は Paf , 洞 調 律 間 で FPD(134±18 ms vs 125±19 ms, P<0.01), 【目的】 P 波加算平均心電図( P-SAE )で記録さ LP20 / FPD ( 0.017 ± 0.010 mV / ms vs 0.021 ± れる心房遅延電位は心房細動の病理的特徴である 0.013 mV/ms, P<0.01)。【結語】CHF 合併例で 心筋線維化の指標として注目されている。高血圧 は,Paf,洞調律間で FPD, LP20/FPD 共に有意 (HT),心不全(CHF)は心房細動の誘発因子で 差は認められなかった。 CHF 非合併例のうち, あり,心房負荷を伴う。今回 CHF, HT を伴う発 HT 非合併例では LP20 / FPD は Paf ,洞調律間 作性心房細動( Paf)について検討した。【方法】 で有意差を認められたが,HT 合併例では有意差 1003 例(男 689 例,女 314 例)について,フィ を認められなかった。HT では Paf の基質が異な ルター化 P 波持続時間( FPD )及びその終末部 る可能性がある。 20 msec 間の RMS 電位(LP20)を記録し LP20/ FPD を心房遅延電位評価指標として算出した。 【結果】 CHF のうち, HT 合併例では Paf ,洞調 律間で FPD(140±16 ms vs 130±16 ms, P= ns), LP20/FPD (0.027±0.010 mV/ms vs 0.021± 0.013 mV/ms, P=ns)。HT 非合併例では Paf, 昭和大学医学部内科学講座循環器内科学部門 294 PA49 Inappropriate sinus tachycardia に 対 し EnSite system を用いて sinus node modiˆcation を施行した 1 例 心臓血管研究所付属病院循環器内科 ○増田慶太,大塚崇之,榎本典浩,朝田一生, 庄司正昭,山下武志,相良耕一,澤田 準, 相澤忠範 症例62 歳女性。35 歳時に右乳癌切除術,41 歳 時に肺腫瘍に対して右中葉切除術を施行した既往 がある。 2004 年 3 月頃から心拍数 120 ~ 130 /分 程度の動悸感を伴う洞性頻脈が持続するようにな り前医通院していたが,薬剤によるコントロール が困難であった。洞性頻脈の原因として,甲状腺 やカテコラミンなどのホルモン異常はなく,心エ コー上も異常所見なし,肺切除術に伴う迷走神経 損傷が疑われたが手術記録から断定的なことは言 えず,その他明らかな原因は不明であった。心電 図上では II, III, aVF で陽性 P 波であり,Inappropriate sinus tachycardia(IST)が疑われた。 PA50 嚥下を契機に出現する食道近接起源の心房頻拍にカ テーテル・アブレーションを施行し,慢性期に消失 した 1 例 新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器学分野 ○八木原伸江,長谷川奏恵,和泉大輔,渡部 裕, 保坂幸男,古嶋博司,相澤義房 新潟大学医学部保健学科 池主雅臣 症例 32 歳男性。 10 60 分持続する動悸のため 近医を受診した。ホルター心電図で心房期外収縮 (PAC)が多発しており,ピルジカイニドが処方 された。その後も食事中などに動悸発作を自覚す るためベラパミルが追加されたが,動悸は消失し なかった。再検されたホルター心電図では, 200 240 拍/分の心房頻拍( AT )が認められた ため,当科を紹介されカテーテル治療目的に入院 した。 12 誘導心電図でも PAC が頻発しており (右下方軸, V1 陽性),症状を伴う連発も頻回に 本人からアブレーション(RFCA)の希望があっ たことから当院紹介となり,治療によってペース メーカが必要になるリスクについて十分理解が得 ら れ た 上 で 2009 年 12 月 RFCA を 施 行 し た 。 EnSite system を用いて右房内のマッピングを行 い,高位右房の Earliest activation site(EA)と, その近傍の前方に位置する Breakout site( BO) を同定した。BO に対してまず通電を施行したと ころ, BO は EA の下方へ移動したが心拍数に変 化はみられなかった。続いて,EA に対して通電 を施行したところ,心拍数は 70 台へと低下し, 下位右房からの異所性心房調律へと変化した。心 房からの Overdrive suppression test では著明な PP 間隔の延長は認めなかった。治療後も異所性 心房調律は維持され,症状の著明な改善が得られ た。【結語】 IST に対し EnSite system を用いて sinus node modiˆcation を施行した 1 例を経験し たので報告する。 認められた。 PAC の最早期興奮部位は右上肺静 脈開口部に認められたため,右上肺静脈の隔離術 を施行した。しかし,隔離後のエピネフリン負荷 で 異 な る 波 形 の PAC と AT が 頻 発 し た 。 CARTO マッピングを施行したところ,隔離した 右上肺静脈と離れた左房後壁の食道前面を最早期 とすることが確認された。氷の嚥下負荷で容易に 同様の PAC が誘発された。食道に近接し,通電 中の疼痛が強かったため低出力(1720 W, 42 度) での 2 回通電(20 秒)に留めて治療を終了した。 術後も PAC が頻発したためビソプロロールとベ プリジルの内服を開始した。食事を契機とする動 悸はその後も継続していたが 5 ヶ月後からしだ いに改善し,同時期のホルター心電図では総心拍 数 125499 /日, PAC3 拍/日に著減した。退院 1 ヶ月後と 5 ヶ月後の心電図で心拍数 66 → 89/分, PQ 143 → 137 ms, QRS 103 → 93 ms, QT/QTc 382/402 → 336/410 ms であった。心房細動のカ テーテル・アブレーションでは術後早期に再発が あっても,しだいに消失する症例が報告されてい る。本例でも類似した治療効果が見られたものと 思われる。 295 J Arrhythmia Vol 26 (Suppl) 2010 PA51 ワーファリンによる抗凝固療法中の心房細動症例に おいて,D ダイマーのカットオフ値 0.5 mg/ml は, 左心耳血栓の鑑別に有用か 三重大学大学院医学系研究科循環器内科学 ○杉浦伸也,藤井英太郎,千賀通晴,中村真潮, 宮原眞敏,伊藤正明 三重大学大学院医学系研究科臨床検査医学 土肥 薫 【背景】心房細動(AF)の合併症である血栓塞栓 症の予防には,ワーファリンによる抗凝固療法の 有効性が確立されているが,十分な抗凝固療法を 行っていても,経食道心エコー検査( TEE )に て左心耳血栓の存在する例がある。 D ダイマー のカットオフ値 0.5 mg/ml は,静脈血栓の鑑別に 有用であると報告されている。【目的】ワーファ リンによる抗凝固療法中の AF 症例において,D ダイマーのカットオフ値 0.5 mg/ml が左心耳血栓 の予見に有用かどうかを検討した。【対象】当院 にて AF に対するカテーテル・アブレーション ( ABL ) 目 的 に て , 術 前 TEE を 施 行 し た 連 続 156 例 ( 平 均 年 齢 67 歳 , 発 作 性 AF 107 例 PA52 発作性心房細動( AF )に対するアプリンジンの長 期予防効果―多変量解析による検討― 岩手医科大学医学部循環器・腎・内分泌内科分野 ○橘 英明,小松 隆,佐藤嘉洋,椚田房紀, 小沢真人,中村元行 【背景】2008 年日本循環器学会ガイドラインによ れば,塩酸アプリンジン(Apr)は基礎心疾患を 合併した発作性心房細動( AF)に対する再発予 防を目的とした第一選択薬として,また,アップ ストリーム療法の併用も同時に推奨されている。 【目的ならびに方法】対象は発作性心房細動の第 一選択薬として Apr ( 40 ~ 60 mg /日)が選択さ れた発作性心房細動 112 例(男性 81 例,女性 31 例,年齢 68 ± 11 歳)であり,平均観察期間 63 ± 36 ヵ月における再発予防効果ならびに,ロ ジスチック回帰分析法による多変量解析により再 発ならびに慢性化規定因子を検討した。再発の定 義 は 心 電 図 上 で Apr 内 服 後 に AF を 認 め た 場 合,慢性化の定義は Apr 内服後にも 6 ヶ月以上 洞調律維持を認めなかった場合とした。【結果】 (1)観察期間 1 ケ月,3 ケ月,6 ケ月,12 ケ月目 296 ( 69 ), 持 続 性 AF 49 例 ( 31 ))。【 方 法 】 ABL 施行 2 か月以上前から PT-INR 1.6 3.0 と なるように,ワーファリンによる抗凝固療法を施 行した。 ABL 直前に TEE を施行し,左心耳血 栓の有無につき精査した。同時に D ダイマー値 の測定を行った。【結果】156 例中 20 例に左心耳 血栓を認め( I 群), 136 例で認めなかった( II 群)。性別, PT-INR 値に両群で差はなかった。 年齢( 67 ± 12 歳 vs 61 ± 12 歳, p < 0.05 ),持続 性 AF(p<0.005),左房径(44±5 mm vs 40±7 mm, P<0.005),左室駆出率(58±13 vs 64± 9, P<0.05), BNP 値(210.1±224.5 vs 113.3± 190.8 pg/ml; p<0.05),D ダイマー値(0.59± 0.73 vs 0.16±0.20 m/ml; p<0.001),左心耳血流 速度(39±16 cm/s vs 53±16 cm/s; p<0.05), CHADS2 score (2±1 vs. 1±1, P<0.005)に両群 で有意差を認めた。ロジスティック回帰分析では, D ダイマー値と左心耳血流速度が左心耳血栓の 独立した危険因子であったが,I 群 20 例中 15 例 ( 75 )は, D ダイマー値 0.5 mg / ml 未満であっ た。【結語】ワーファリンによる抗凝固療法中の AF 症 例 で は , D ダ イ マ ー の カ ッ ト オ フ 値 0.5 mg/ml による左心耳血栓の検出は困難である。 の 非 再 発 率 は , 基 礎 心 疾 患 ( + ) 群 が 81 , 67, 63, 56, 56,基礎心疾患(-)群が 76, 60, 52, 41, 34であり,有意に基礎 心疾患(+)群が高率であった( P = 0.0361 )。 ( 2 )観察期間 1 ケ月, 3 ケ月, 6 ケ月, 9 ケ月, 12 ケ月目の非再発率は,レニン・アンジオテン シン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬(+) 群が 86, 74, 66, 66, 63, RAAS 阻害薬 (-)群が 75, 58, 53, 43, 36であり, RAAS 阻害薬(+)群が有意に高率であった(P = 0.0134 )。( 3 ) Apr の独立した再発規定因子 (オッズ比 95 信頼区間, P 値)は,混合型の 発症(8.16; 2.7124.5, P=0.001),RAAS 阻害 薬(0.23; 0.070.74, P=0.014)ならびに基礎心 疾患(0.28; 0.090.85, P=0.025)であった。一 方,Apr の独立した慢性化規定因子は,混合型の 発症(15.2; 2.25102.2, P=0.005),基礎心疾患 (0.117; 0.020.58, P=0.009)ならびに病歴期間 (1.037; 1.011.07, P=0.010)であった。【結語】 基礎心疾患を合併した発作性 AF に対する Apr の薬剤選択ならびにアップストリーム併用療法は 妥当な治療戦略であることが示された。 PA53 心房細動に対するカテーテル・アブレーションと薬 物療法の費用対効果の検討 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科 ○中村啓二郎,野呂眞人,伊藤尚志,榎本善成, 久次米真吾,沼田綾香,熊谷賢太,中江 坂田隆夫,杉 武, 薫 済生会横浜市東部病院循環器内科 森山明義,酒井 毅 【背景】近年,心房細動に対してカテーテル・ア ブレーション( RF )による電気的肺動脈隔離術 が広く行なわれ,心房細動基質修飾を目的とした complex fractionated electrogram(CFAE)ガイ ド下 RF,左心房内線上 RF なども施行されるよ うになった。しかし,高齢者症例数の増大や再発 例に対する再治療といった問題が残存し,その費 用対効果は明らかでない。【目的】 RF と薬物療 法との治療選択において費用対効果を検討するこ と。【方法】1)RF をマッピングシステムとデフ レクタブルシース等の高額な器材を用いて行なわ れた RF , 2 )マッピングシステムを使用せず, 電極カテーテルなど低額な器材を用いて行なわれ た RF , 3 )レートコントロール群(ジゴキシン +カルベジロール), 4 )リズムコントロール群 (pピルジカイニド,bベプリジル,p+bピ ルジカイニド+ベプリジル)に対して経費を検討 した。【結果】高額 RF 群では 1 回の医療費は, 1.285.400 円であり,低額 RF 群はでの 1 回の医 療費は 1.007.400 円,レートコントロールでの月 額の医療費は通院費と INR 検査,再診料を含め 約 3.890 円 , リ ズ ム コ ン ト ロ ー ル で は , p が 10.190 円, b が 11.390 円, p + b が 20.390 円で あった。レートコントロールでは 10 年後も低額 RF より安価であり,リズムコントロールでは低 額 RF と約 6 年,高額 RF と約 10 年で同額とな った。【考案】一回の低額 RF により心房細動が 抑制されれば,予後が 6 年以上である場合に RF が最も効果的と考えられた。 RF と薬物療法との 選択においては,費用対効果を省みることも重要 であると考えられた。 PA54 Noncontact mapping に よ り 心 房 細 動 の “ Second Factor”は描出可能か 横浜市立みなと赤十字病院心臓病センター内科 ○杉山浩二,畔上幸司,青柳秀史,前田峰孝, 沖重 薫 【背景・目的】心房細動(AF)発生における肺静 脈伝導の重要性が論議慣れる中,AF 成立に関与 する要因となる心房筋不整脈基質の重要性も再考 されつつある。伝導速度の低下や不応期の延長, 局所電位の減高など,AF の成立に好条件となる 不整脈基質を“Second Factror”と呼ぶが,これ らの要因を臨床的に評価する手法は一般に煩雑で 長時間を要する。今回,EnSite を用いた noncontact mapping をにより,“ Second Factror ”を示 唆する現象が描出が可能か否かを検討した。【方 法】対象は弧発性 AF 30 例(発作性 20 例,持続 性 10 例)。 EnSite カテーテルを左房内に留置し 洞調律中の左房興奮を isopotential map によりマ ッピングした。【結果】左房興奮は右上肺静脈前 方に開始したが,それ以降の興奮様式は 2 種類 のパターンに大別された。すなわち,( A ) peak voltage 領域(白色)が初期 10 ms で大きさを増 し,次の 10 ms で速やかに左方に移動,左心耳 に向け breakout するもの,( B )幅広い volatge 移行帯に辺縁を囲まれた小さな peak voltage 領 域(2.9±1.1 vs. 4.7±1.6 cm2, p 0.01)が異方向 伝導を示しながら緩徐に(0.9±0.3 vs. 1.4±0.6 mm/ms, p 0.05)左方に移動,左心耳で breakout するもの,の 2 パターンがみられた。各パター ンの頻度は AF の種類(発作性と持続性)により 異なり,持続性 AF 群で( B)パターンが多かっ た(70 vs. 20, p 0.008)。【考案】noncontact mapping により描出される左房興奮パターンは 発作性 AF と持続性 AF とで異なり,持続性 AF 患者における左房不整脈基質の存在を知る簡便な 指標となる可能性が示唆された。 297
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