はじめに コミュニティソーシャルワーカー(CSW)は、援護を必要とする高齢者や障がい者、子育て 中の親などに対して、見守りや課題の発見、相談援助の実施や、必要なサービスあるいは適切 な専門機関へのつなぎといった要援護者の課題解決のための支援をするとともに、地域におけ るセーフティネットを構築することで地域の福祉力を高め、地域福祉の推進を図るために関係 機関・団体などに働きかけるものとして位置づけられています。 本市のCSWの配置事業は平成17年度から取り組んでおり、2中学校区に1名配置している13 名のCSWが、活動拠点である「いきいきネット相談支援センター」で本人や専門機関から受け た相談や、各リージョンセンターで実施している出張相談などについて、地域で福祉活動に関 わっておられる方々とともに個別の支援を行ったり、最適な専門機関へつなぐといった支援を 行っています。近年「無縁社会」といわれる状況のもと、社会問題として取り上げられている 児童虐待や孤独死、ひきこもりなど福祉課題が多様化するなかで、CSWの役割への期待の高ま りから相談件数も年々増加しています。 また、平成21年3月に策定した第3期地域福祉計画におきましても、本市におけるCSWの役 割を明確に位置づけており、この観点から、平成24年度には分野を超えた専門機関や地域の支 援者が一同に会し、制度の狭間にある人の支援などについて意見交換をし、平時から顔の見え る関係をつくることを目的とした「地域福祉ネットワーク推進会議」を社会福祉協議会の地域 担当職員とともに開催しました。 今後も、要援護者に対する個別支援を地域支援に発展させ、要援護者を地域で支えることが できる福祉のネットワーク構築に向けて、CSWが地域担当職員とともに民生委員・児童委員、 校区福祉委員、自治会関係者の方々といった地域の支援者、行政の窓口、こどもや障がい者、 高齢者などの各分野における関係機関との連携を深め、地域の課題解決に取り組んでまいりま す。 最後に、CSWの活動を推進していくうえで、スーパーバイザーとしてご指導いただき、 CSWのスキルアップに多大な貢献をしていただいております、大阪教育大学の新崎国広先生に 心より感謝申し上げますとともに、今後もなお一層、東大阪市の地域福祉の推進においてご協 力を賜りますようお願い申し上げます。 平成25年3月 東大阪市福祉部長 目 次 1.平成24年度 東大阪市コミュニティソーシャルワーカー活動報告書「巻頭言」 東大阪市における地域福祉の推進のための新たな動きとその成果 ……………………… 1 2.コミュニティソーシャルワーカー配置事業の活動について 1)コミュニティソーシャルワーカー連絡会・研究会・連携会の開催について………… 2)地域福祉ネットワークづくり……………………………………………………………… 3)各種研修会への参加について……………………………………………………………… 3 3 4 3.地域の方や専門機関からのメッセージ………………………………………………………… 5 4.相談件数と主な内容について 1)相談者による分類…………………………………………………………………………… 2)援護を必要とする者(要援護者)による分類…………………………………………… 3)援護を必要とする者(要援護者)の年齢区分…………………………………………… 4)相談内容による分類………………………………………………………………………… 5)アウトリーチによる分類…………………………………………………………………… 9 10 11 12 14 5.平成24年度コミュニティソーシャルワーカー支援事例 1)民生委員の見守りにより支援に繋がった事例…………………………………………… 2)認知症と思われる高齢者を専門機関と連携し支援した事例…………………………… 3)ひきこもり状態で生活困窮に陥っている男性を支援した事例………………………… 4)民生委員の見守りと発見から予防的支援ができた事例………………………………… 5)精神疾患を患っているひとり親家庭の母親と子どもたちを支援した事例…………… 6)おひとり暮らしの男性の生活と生きがいづくりを支援した事例……………………… 17 19 21 23 25 27 6.平成24年度いきいきネット相談支援センター一覧…………………………………………… 29 7.いきいきネット相談支援センター福祉の出張相談コーナー………………………………… 30 8.コミュニティソーシャルワーカー配置事業関連資料………………………………………… 31 9.東大阪市コミュニティソーシャルワーカー連絡会会則……………………………………… 33 1 . 平成24年度 東大阪市コミュニティソーシャルワーカー(CSW) 活動報告書「巻頭言」 東大阪市における地域福祉の推進のための新たな動きとその成果 大阪教育大学 新崎国広 1.はじめに 現在、ソーシャルワークを取り巻く環境は、我が国の財政難や自立支援法や介護保険の見直し 等にもみられるように非常に厳しい状況といえます。現在はまさに逆風の時代といっても過言で はありません。このような状況の中でこそ、原点に戻って本来のソーシャルワークの理念を再認 識することが求められます。 東大阪市のコミュニティソーシャルワーカー(以下、CSW)と社会福祉協議会コミュニティ ワーカー(以下、社協地域担当職員)がソーシャルワークの持つ理念や意義を日々の自らの実践 を通して実証的に検証し、その成果を広く市民に啓発していくことが必要不可欠であるといえま す。 なぜなら、従来のような施設福祉サービスに顕著にみられる対象限定型福祉サービスを中心と したソーシャルワークから、現在は地域福祉の推進をめざした市民(地域住民)参画型ソーシャ ルワーク実践の実現のためには、市民(地域住民)の協働・連帯が必要不可欠だからです。 岩間(2006)は「実践を言葉で説明する力」という巻頭言のなかで、「他職種との連携や地域 住民との協働などが強調される近年の実践状況のなかで、ソーシャルワーカーたちが自分たちの 実践を外に向けて正確に説明できなければ、社会的に認められる存在にはなりえず、場合によっ てはソーシャルワークの専門性や業務について周囲からの誤解を招くことになる1」と指摘して います。 CSWと社協地域担当職員は、今後ますます自らの実践を検証し、その成果を世に問うことに よって、民生委員児童委員や校区福祉委員、ボランティア、NPO等の共助の担い手や一般住民 と連帯・協働して地域福祉推進のためのソーシャルアクションにつなげていこうとする姿勢が必 要不可欠であると考えます。 このような点から、東大阪市CSW連絡会は、行政・関係専門機関及び一人でも多くの東大阪市 市民に、CSWの役割やその意義について理解していただくための一つの方法として、2006(平 成18)年度から毎年『CSW活動報告書』を作成してきました。今年度からは、新たに社協地域 担当職員の活動実践報告も併せて作成することになりました。 2.2012(平成24)年度の新たな取り組みと成果 東大阪市における地域福祉推進に向けての今年度の新たな取り組みとして、主に下記の2点が あげられます。 ①CSWと社協地域担当職員の連携強化 社協地域担当職員は、現地域福祉計画のとおり増員され、昨年度からは全地区(リージョン) に1名、計7名の体制となりました。各地区に配置された社協地域担当職員がより機能するため -1- に、昨年度途中より、CSW連絡会・研究会に、社協地域担当職員も参加し、個別支援から地域 支援に向けた支援ネットワークの強化を行ってきました。2012(平成24)年度からは、 CSW・社協地域担当職員の合同会議に発展させ、地域福祉ネットワーク推進会議の開催や、さ らなる地域福祉推進への体制強化のための協働実践を積極的に行っています。 ②三(東・中・西)地域別および、市域全体と地域福祉ネットワーク推進会議の開催 2012(平成24)年度は、懸案であった地域福祉ネットワーク推進会議を、三(東・中・西) 地域別会議を各地区で1回と市域全体会議を開催することができました。地域別会議では、高 齢・障がい・児童分野に関する行政・専門機関による支援ネットワーク構築に向けて「顔の見え る関係づくり」を第1回の目標として開催しました。また、3月17日に開催した全体会議では、 高齢・障がい・児童分野に関する行政・専門機関と、校区福祉委員・民生委員児童委員・自治連 合会の代表者の方が参加していただき、まさに公助と共助の協働実践の意義について熱心に協議 を行いました。2013(平成25)年度は、両地域福祉ネットワーク推進会議をさらに充実させて いきたいと思います。 3.2013(平成25)年度の地域福祉計画・地域福祉活動計画策定に向けて CSWや社協地域担当職員は積極的にアウトリーチを行い、制度の狭間で困難な状況に陥ってい る方々に対し、従来の制度や法律にとどまらない、幅広い総合的な支援を行うことが求められます。 このような両者の機能を十分に発揮するためには、他職種の専門職との連携協働は不可欠です。 しかし、他の専門職と違い、開発的・創造的・予防的・先駆的機能を特徴とするCSWが当事者 支援を行う際には法的根拠が不明確なケースも出てきます。このため、しっかりとした行政の バックアップがなければ、確固たる責任の根拠が乏しく、他の専門職と協働が困難であるといえ ます。 このような観点から、東大阪市地域福祉計画・地域福祉活動計画では、CSWの役割を明文化 し、東大阪市の地域福祉推進に必要不可欠な専門職であることを明確にしてきました。2013 (平成25)年度は、両計画の策定年度にあたっています。新計画策定にあたっては、より具体的 なCSW・社協地域担当職員の役割の明確化や、地域福祉ネットワーク推進会議の実体化にむけ て、計画を立てていくことが肝要です。 4.おわりに 地域福祉推進のためには、このような専門職による支援ネットワークの構築・強化はもちろん ですが、行政や市民の皆さまの支援がなければ達成は不可能です。今後、東大阪市の地域福祉推 進の為に、ご支援ご協力をお願いしたいと思います。 1 岩間伸之、 「大儀なきソーシャルワークの行く末」『ソーシャルワーク研究Vol.30 No.3通巻119号』、 相川書房、1頁 -2- 2 . コミュニティソーシャルワーカー配置事業の活動について 1 ) コミュニティソーシャルワーカー連絡会・研究会・連携会の開催について 毎月、連絡会・研究会・連携会を開催した。今年度から連絡会・研究会には、コミュニ ティワーカー(社協地域担当職員)が入り、事例検討や情報交換等を行い連携強化を図った。 主に、地域支援を担うコミュニティワーカーが加わることで、地域からの視点に立った個別 支援への意識が強まり、また、地域活動への参加もよりスムーズに行えた。昨年度に引き続 き、大阪教育大学の新崎准教授より指導や助言をいただいた。 2 ) 地域福祉ネットワークづくり 月 日 平成24年 内 容 4 月10日 長瀬東校区の長瀬川ウォーキング「金岡公園ウォーキング、つんく体操」 4 月23日 島之内自治会にてワンコインサポート事業と共同で啓発活動 5月5日 弥刀小学校ちびっこフェスタ「福祉体操」 6月1日 東大阪市校園長会の会議にてCSW配置事業概要説明と啓発 6月8日 旭町自治会館にて「まちかど福祉相談所」にCSW在席 6 月16日 小阪公民分館にて八戸ノ里校区民生委員・児童委員でミニ懇談会を開催 7 月13日 長瀬子育て支援センターにて子育て支援地域連携会議に出席しCSWの啓発活動 7 月17日 長堂公民分館にて長堂校区の気功教室に出席しCSWの啓発活動 7 月27日 あさひっこ「夏の夕べ」に参加 縄手北校区地域教育協議会の会議に出席 8 月10日 社会福祉主事資格認定講習会にて 「CSWからの事例を通して」地域福祉の取り組みについて啓発 8 月25日 金岡中学校区健全育成協議会「金中フェスティバル」 8 月27日 楠根公民分館にて楠根校区民生委員・児童委員で貸付制度の研修会を開催 8 月29日 荒本いきいきサロン「盆踊り」にてCSW啓発活動 8 月31日 孔舎衙校区自治連合会の 「見守りマップ作成勉強会の教材に使うDVD作成について」に参加 9月5日 花園小学校にて「認知症サポーター養成講座」と「CSWの啓発」 9月9日 加納校区にて地域包括支援センター共同で 「気を付けよう!悪徳商法サザエさん一家に忍び寄る魔の手」でコントを実施 9 月10日 善根寺町の住民と「見守りマップ作成の必要性について」の勉強会に参加 9 月10・13日 成和小学校にて校区福祉委員・自治会・COWと「高齢者疑似体験」 11月 3 日 縄手北校区フェスタに参加し防災クイズ・防災カルタ 11月25日 稲田南自治会のふれあい喫茶にてCSWの事業説明と啓発 12月 7 日 角田総合老人センターにて「まちづくり未来塾」でCSWの事業説明と啓発 高井田老人センターにて「まちづくり未来塾」でCSWの事業説明と啓発 12月 8 日 五条老人センターにて「まちづくり未来塾」でCSWの事業説明と啓発 12月17日 五条老人センターにて「東地域・地域福祉ネットワーク会議」を開催 12月18日 北宮校区老人クラブにて地域包括・COW共同にて啓発活動 12月24日 春宮住宅自治会の餅つき大会にてCSWの事業説明と啓発 -3- 平成25年 1 月16日 孔舎衙公民会館にてふれあい勉強会「見守りマップ作成の必要性について」に参加 1 月20日 春宮住宅自治会にて「悪徳商法講座」を開催 1 月26日 角田総合老人センターにて「中地域・地域福祉ネットワーク会議」を開催 1 月29日 高井田老人センターにて「西地域・地域福祉ネットワーク会議」を開催 2月9日 レーベンズラウムにて地域包括・COW共催で独居男性の料理教室」を開催 2 月20日 玉川小学校にて「高齢者疑似体験」 3 月17日 夢広場にて「東大阪全体・地域福祉ネットワーク会議」を開催 3 ) 各種研修会参加について 月 日 平成24年 4 月22日 5 月18日 内 容 石切東自治連合会 防災シンポジウム「東大阪市防災担当課を迎えての防災についてのシンポジウム」 第65回憲法週間 市民のつどい「戦場カメラマン渡部陽一の戦争と平和のおはなし 世界からのメッセージ~希望のある明日のために~」 5 月25日 すこやかセミナー 精神障害と認知症の方が利用できる制度や施設について 7月6日 生活困窮者支援の実際「孤立・社会的排除や要支援刑余者へのサポート」 7 月10日 共生・福祉のまちづくり研修「障害者の社会的支援雇用を考える」 7 月23日 いのちへの支援「大切ないのちを守るために、つながりある地域づくり、自殺対策を考える」 8 月16日 発達障害の接法行為を考える「そのメカニズムを探る、接法知的障害者への支援」 9 月21日 市民福祉講座「地域における孤立を防ぐために~無縁社会からの脱却~」 9 月27日 シニア活動実践塾公開講座「こころを伝えあえるコミュニケーション方法」 9 月28日 市民福祉講座「地域福祉力のアップで孤立を防ぐ」 10月 2 日 発達障害の接法行為を考える②「発達障害の接法行為を考える、かかわりを考える」 10月16日 認知症フォーラム「認知症についての理解」 10月22日 障害者虐待防止法に求めるもの「地域からの相談事例や施設内虐待の事例を通じて、 権利擁護の立場に立った支援のあり方を考える」 10月29・30日 ファシリテーション入門研修「元気になる会議~ホワイトボードミーティングの進め方」 11月 8 日 障害者虐待防止法と権利擁護支援 「東大阪市における障害者虐待防止法への取り組みについて」 11月12日 認知症の予防と安心できる町づくり「認知症についての理解・予防について考える」 11月20日 事業所連絡会研修 「障害のある人を支援する事業所で働くあなたへ~よき支援者を目指して~」 2 月26日 発達障害の子どもについて 「NPOピュアの檜尾氏による発達障害の子供への接し方の紹介等」 3月4日 自殺危機初期介入スキルワーク「自殺する危機のある人に対しての介入方法について学ぶ」 平成25年 ※上記以外にも大阪府社会福祉協議会開催の地域福祉コーディネーター研修やCSWスキルアップ研修等に積 極的に参加を通してCSWのスキルの向上を努めた。 -4- 3 . 地域の方や専門機関からのメッセージ 専門機関からの メッセージ 日頃からCSWさんには大変お世話になっております。 障がいをお持ちの方は福祉サービスだけでは解決できない事が多く、どうすればいいの だろうと頭を抱えたくなる状況でも、即座に地域の方や他の関係機関の方と密着して解 決に繋げていく姿を見て、とても心強く感じると共に学ばせて頂く事も多くあります。 今後も、支援を行っていく上で様々な問題が生じると思いますが、CSWさんと協力・ 連携を行いながら地域支援の発展に努めさせて頂きたいと思います。 専門機関からの メッセージ 子どもたちを取り巻く環境は、大変厳しいものがあって、学校だけで指導できうるも のではなくなったと年々強く感じています。本校の児童の場合においても、CSWさん が児童本人や児童の家族への関わりを通して貴重な情報を学校に提供していただいたの で早急に対応できて感謝しています。また、学校からもCSWさんに子どもの状況を逐 次お知らせし、子どもの生活実態、学校での様子等を統合的に把握できるべく連携を深 めたいと考えています。 地域の方からの メッセージ 住民の8割が高齢者という地域で、民生委員を受けることになり、家族関係も多様化 し近隣関係も希薄になる中で、何を如何すればいいのか解らず不安でしたが、先輩から 「専門知識の有るCSWの方がおられるから安心して」とアドバイスを受けて、相談を 受けるごとにCSWの方に同席していただきお世話になっております。相談者の話を冷 静に聴き、問題点を柔軟に、且つ迅速に、対応して下さること、また難問に対しても 「何か他に方法がないか調べてみます」と前向きに言って下さる事、深く感謝しており ます。高齢者の支援の食事会や地域の行事などに、参加協力しておられる姿を見るたび に、地域の把握、人との繋がりを重点に置いたCSWさんの活動を、これからも良い手 本として見習っていきたいと思います。 -5- 専門機関からの メッセージ 私はボランティア・市民活動センターで、ボランティアのきっかけづくりや活動の啓 発、定着支援等を行っています。CSWさんが支援されている“制度の狭間”や、“社会 資源がないことで困っている人”、 “地域の中で孤立している人”がいる一方で、ボラン ティアセンターには「人の役に立ちたい」という思いを持った人がたくさん来所されま す。両者が上手くつながるよう、CSWさんと連携しながら、「支える仕組み」と「参加 する仕組み」を充実させ、地域に根ざしたボランティア活動の推進を行っていきたいと 思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 専門機関からの メッセージ ここ近年、少子高齢化や都市の近代化に伴い、ご近所同士の人間関係などが希薄化し ている。地域包括支援センターが地域の相談窓口として設置されているが、地域全体を 網羅しているわけでない。近くに地域包括があってもまだCSWの方たちに相談されるこ とが多い。特に介護保険などが適応されない方々、例えば、65歳未満の方などは把握で きていない。地域全体で哀婉していく中で民生委員や自治会などと協力しながら支援体 制作りしていくうえでCSWの役割は重要だと、特に感じている。 専門機関からの メッセージ いきいきネット相談支援センターの事業も、大阪府社会福祉協議会の社会貢献事業も、 ともに平成16年度からスタートし、相談者に身近に寄り添い、一緒に解決に向けて取り 組んでこの4月には10年目を迎えます。社会貢献事業は緊急的な対応を迫られることが 多く、いきいきネットのCSWさんとともに、アウトリーチ手法で一緒に訪問し協議す ることで、切れ目ない支援の流れができ相談者の問題解決に向けて対応できてきたと思 います。今後も交流会等を通じてお互いの連携を深めていきましょう。 地域の方からの メッセージ はじめてお会いしてから幾日たつでしょうか?困っている人の声を聴いて下さり、ま た私たち、地域の見守りをしている者にも声をかけてくださり、本当に感謝しています。 私たちが、悩んだとき・困った時に相談すると、励ましの言葉をかけてくださったり、 アドバイスいただけたり、本当に助かっています。引き続き地域住民として、見守りし ながら、元気になってもらうように応援していきますが、何かあったときは、相談させ てくださいね。お世話かけますが、頼りにしていますよ。 -6- 地域の方からの メッセージ 私たちの周囲は、地方のように人間関係に粘りがあり、人と人との繋がりが多くある 一面もありますが、都会のような砂漠の砂のようなサラサラとした、まったく繋がりの ない人間関係にも見え、それが危機感すらない無防備なように見える時があります。当 面、こうした難しい課題に立ち向かうには、行政だけでは対処できず、無理な面があり、 私たち民生委員・児童委員は一緒になって日本の伝統的な社会である「人と人との助け 合いの社会」すなわち、親子、兄弟、家族、先輩、後輩といったことを崩さず、絆を大 切に高齢者とその家族を支援させていただいています。が、それでも尚、手の届かない 難しい局面の時はCSWの皆さんに「きめ細やかなアドバイスと思いやり」の協力を何 度となく借りて経験を積み、やがて積み重ねていくなかで、高齢者の皆さんが笑顔とな り、元気を取り戻して頂けるものと信じています。 地域の方からの メッセージ 長年、地域の自治会の役員や、民生委員をしていますが、近年の高齢者介護に対する 施策の複雑化に対して、理解ができない言葉が多く、ついていけないように思っていま す。まず、福祉用語の難しさ!制度は大変立派ですが、その内容が理解できないのは、 勉強不足だと思っています。色々な相談に対して、CSWさんと一緒に内容を教えても らいながら、少しずつ前進しております。専門機関の人にも相談していますが、わかり やすい言葉で理解しやすいように言ってくださっていますが、やはりCSWさんに頼っ ています。地域に何が必要で、今後地域で何を取り組んでいこうか、CSWさんと相談 して実行に移したいと思います。 専門機関からの メッセージ CSWはそれぞれが住民に身近な地域の相談窓口として、ていねいでキメの細かい相 談対応をしていただいています。それに加え、身近な地域にある様々なつながりのまと め役としての機能を持ち、「顔の見える」関係を地域の方々と作ってくださっていて、 地域の方々同士や、医療職・福祉職と地域の方々をつなぐ橋渡し役になっていただいて います。様々な医療職・福祉職が活動をするようになればなるほど、CSWの役割はま すます重いものになっていきますので、これからもより一層のご活躍を期待しています。 -7- 地域の方からの メッセージ 最初は私が参加している地域の活動に、「見慣れない人がいるなあ」程度の認識でし た。特に何をするわけでもなく、活動をニコニコしながら見学をしたり、時には一緒に なって体操や勉強をしたり。そのうち雑談をするようになり、その時にようやくこの人 はCSWという地域の福祉相談員なんだとわかりました。「もっとアピールしたら良いの に」との思いもありますが、こうして自然に地域に馴染んでいくことも大事なのかなと 思っています。 地域の方からの メッセージ 日頃は、地域のお世話をする活動をさせて頂いています。最近では、いろいろな不安 や悩みを抱えている人が増え、どう対処すれば良いのか、どの様な解決方法があるのか、 その方の生命は大丈夫かと本当に戸惑うことがありました。そんな時にCSWの方に連 絡をとり助けて頂きました。何回も本人さんと快く面談され的確に判断され、そのお姿 に信頼性があり、そのお宅に上がらせてもらう事すら大変だという様子から、短期間で 本人さんにとって最高の解決をして下さり、本当にありがとうございました。 地域の方からの メッセージ 最近の少子高齢化社会が進む中で、私達、民生委員活動において、高齢者について多 種多様な相談を受ける時や、困難な問題に直面した場合にも相談にのっていただき、又、 ひとり暮らし高齢者の安否確認の訪問で、倒れている人を発見した場合においても CSWさんが、敏速な対処をして一命を救うことが出来ました。日頃、地域での民生委 員活動において、CSWさんには、気軽に相談にのっていただき、緊急事態に対しても 速やかに対処していただいています。これからも、CSWさんの益々のご活躍をお願い いたします。 -8- 4 . 相談件数と主な内容について 1 )相談者による分類 相 談 者 1 本人 2 親族 3 近隣の方・知人 4 公的機関 5 民生児童委員/校区福祉委員 6 福祉施設/介護事業所 7 学校関係者 8 当事者団体の方 9 その他 合 計 平成18年度 人数 割合% 平成23年度 人数 割合% 平成24年度 人数 割合% 91 31.4% 68 23.4% 23 7.9% 28 9.7% 29 10.0% 32 11.0% 9 3.1% 8 2.8% 2 0.7% 290 100.0% 183 20.2% 207 20.3% 121 13.4% 113 11.1% 62 6.8% 70 6.9% 68 7.5% 119 11.7% 224 24.7% 254 24.9% 210 23.2% 211 20.7% 12 1.3% 16 1.6% 1 0.1% 5 0.5% 25 2.8% 24 2.4% 906 100.0% 1019 100.0% 本人 親族 近隣の方・知人 公的機関 民生児童委員/校区福祉委員 福祉施設/介護事業所 学校関係者 当事者団体の方 その他 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 (人) 相談者の分野では、直接本人や親族からの相談に比べて、近隣や民生委員児童委員や校区福祉委員と いった共助からの相談経路が多いのが、CSWの特徴である。特に民生委員児童委員や校区福祉委員か らの相談依頼は、平成18年度に比べると3.5倍も増加している。これは、CSWが共助と公助のつなぎ 役(コーディネーター)として、機能していることを証明している。 また、平成18年度当初に比べ、福祉施設や介護事業所からの相談も約2倍に増加していることを証明し ている。これは、CSWが他の専門職との支援ネットワークが、少しずつ形成されていることがうかが える。 -9- 2 )援護を必要とする者(要援護者)による分類 平成18年度 人数 割合% 要援護者 1 ひとり暮らしの高齢者 2 高齢者のみからなる世帯 3 その他の高齢者 4 身体障がい者 5 知的障がい者 6 精神障がい者 7 子育て中の親 8 児童 9 生活困窮者 10 難病の方 11 その他 平成23年度 人数 割合% 24.5% 11.0% 12.1% 8.3% 21.4% 3.1% 9.0% 2.1% 71 32 35 24 62 9 26 6 330 100 122 29 69 98 56 14 44 14 30 906 3.1% 9 5.5% 16 290 100.0% 合 計 高齢者 36.4% 359 11.0% 122 13.5% 129 3.2% 30 7.6% 61 10.8% 144 6.2% 45 1.5% 15 4.9% 67 1.5% 19 3.3% 28 100.0% 1019 a 障がい者 d e g 子育て中の親 平成24年度 人数 割合% 35. 2% 12. 0% 12. 7% 2. 9% 6. 0% 14. 1% 4. 4% 1. 5% 6. 6% 1. 9% 2. 7% 100. 0% c b f h 生活困窮者 難病の方 その他 0 40 80 120 160 200 240 280 320 360 400 440 480 520 560 600 640 (人) a…ひとり暮らし b…高齢者のみの世帯 c…その他の高齢者 d…身体 e…知的 f…精神 g…子育て中の親 h…児童 要援護者を高齢者・障がい者・児童といった分類別で見ると、高齢者が59.9%と過半数を占めて いる。 また、分野別で特徴的なのは、精神障がい者支援の増加である。 平成18年度と平成24年度を比較すると、16倍という急激に増加していることがわかる。 精神科の病院や精神保健福祉士(PSW)との連携強化が火急の課題であると言える。 -10- 3 )援護を必要とする者(要援護者)の年齢区分 年齢区分 1 20歳未満 2 20~30歳代 3 40~50歳代 4 60~70歳代 5 80歳以上 6 不明 平成18年度 人数 割合% 合 計 平成23年度 人数 割合% 6.6% 19 79 27.2% 39 13.4% 105 36.2% 43 14.8% 1.7% 5 290 100.0% 平成24年度 人数 割合% 3.9% 2. 7% 35 28 9.4% 9. 3% 85 95 1% 187 20.4% 235 23. 0% 408 45.0% 418 41. 4% 156 17.2% 187 18. 3.9% 5. 5% 35 56 0% 906 100.0% 1019 100. 20歳未満 3% 不明 6% 20~30歳代 9% 80歳以上 18% 20歳未満 20~30歳代 40~50歳代 23% 40~50歳代 60~70歳代 60~70歳代 41% 80歳以上 不明 -11- 4 )相談内容による分類 相 談 内 容 件数 平成18年度 平成23年度 平成24年度 90 1 介護保険に関すること 2017 1860 0 2 障害者自立支援制度に関すること 1860 1321 86 3 子育て・子どもの教育に関すること 1298 379 80 4 生活保護制度に関すること 1298 1807 39 5 年金制度に関すること 523 686 123 6 健康・医療に関すること 4864 5350 30 7 経済的援助に関すること 795 805 48 8 財産管理に関すること 1058 1128 2 9 消費者問題に関すること 100 327 43 10 身の回りの世話に関すること 2568 3104 24 11 就労に関すること 703 656 0 -12- 1000 2000 3000 4000 5000 6000 (件) 80 12 施設入所に関すること 1032 955 16 13 DV・虐待に関すること 313 251 3 14 ホームレスに関すること 32 27 121 15 地域活動・ボランティアに関すること 535 361 134 16 その他の福祉制度に関すること 1432 1471 0 17 近隣トラブル 774 772 0 18 家族関係 1828 2185 身の上相談 19 (生活に関する身近な相談) 57 1652 1822 113 20 その他 209 203 1089 0 合 計 24357 1000 2000 3000 4000 5000 6000 (件) 25470 相談内容に関しては、今年度の総数は、昨年度に比べても1,113件、(1.1倍)増加している。 開始当初の平成18年度に比べると、何と24,381件、約23.4倍と大幅に増加している。 これは、CSWが支援するケースが、複合問題化していることを物語っている。 このことからも、高齢、障がい・児童といった分野を超えた支援ネットワークの構築が、必要不 可欠であることがあきらかである。 -13- 5 - 1 )アウトリーチによる分類 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 アウトリーチ 民生委員・児童委員会 校区福祉委員会 企画運営委員会 自治会 老人クラブ ボランティアグループ 公民分館 福祉事務所 保健センター・保健所 平成18年度 件数 割合% 55 17.0% 9.9% 32 42 13.0% 58 17.9% 8・9以外の行政機関 高齢者関係事業所 障害者関係事業所 学校 保育所/幼稚園 医療機関 その他 合 計 72 22.2% 7.7% 25 6.2% 20 6.2% 20 0.0% 0 324 100.0% 平成23年度 件数 割合% 平成24年度 件数 割合% 289 21.1% 387 17. 3% 149 10.9% 150 6. 7% 0.9% 13 7% 37 1. 3.2% 44 5% 78 3. 139 10.1% 188 8. 4% 3.5% 48 0% 22 1. 6.4% 88 7% 82 3. 4.4% 146 6. 60 5% 4.2% 58 3% 95 4. 3.1% 112 5. 43 0% 185 13.5% 396 17. 7% 8.4% 226 10. 115 1% 4.2% 57 5% 78 3. 0.7% 10 9% 43 1. 2.3% 32 0% 89 4. 3.1% 103 4. 42 6% 1372 100.0% 2232 100. 0% 民生委員・児童委員会 校区福祉委員会 企画運営委員会 自治会 老人クラブ ボランティアグループ 公民分館 福祉事務所 保健センター・保健所 8・9以外の行政機関 高齢者関係事業所 障害者関係事業所 学校 保育所/幼稚園 医療機関 その他 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400 (件) アウトリーチ総数では、6年前の平成18年度に比べ、1,908件、約7倍増加している。 アウトリーチ先の関係諸機関の分流には、大きな変化は見られなかった。 -14- 5 - 2 )アウトリーチの目的 1 2 3 4 5 6 7 8 9 平成22年度 平成23年度 平成24年度 アウトリーチの目的 CSW啓発 会議の開催 研修会の開催 VGの組織化支援 当事者組織化支援 サークル組織化支援 地域活動支援 他職種との連携強化 その他 合 計 472 35 41 101 3 8 300 539 9 1508 383 31 38 85 7 7 410 534 0 1495 686 76 27 41 27 27 567 935 44 2430 ※VG=ボランティアグループ 今項目で顕著なのは、H22年度に比べ「地域活動支援」が267件、約2倍に増加している点や、 「多職種との連携強化」が、396件、約1.7倍に増加している点である。 CSWが、地域福祉コーディネーターの役割を担っていることがうかがえる。 また、件数としては、少ないが「当事者組織化」や「サークル組織化」といったセルフヘルプ活 動への支援も大幅に増加している。 5 - 3 )ネットワークづくり 1 2 3 平成22年度 平成23年度 平成24年度 ネットワークづくり 連絡調整 ケースカンファレンス アウトリーチ 合 計 3868 573 509 4950 4657 637 402 5696 5889 973 919 7781 ※ネットワークづくりとは要援護者への支援をスムーズに行うために他機関の専門職や 地域住民などを交えたケース検討会議そして、連携を深めるための報告や連絡である。 ネットワークづくりにおいても、順調に増加していることがわかる。 イメージ図 CSW (コミュニティソーシャルワーカー) 地域住民 相談 行政機関 民生委員・児童委員 保健所・保健センター 地域包括支援センター 医療関係者 日常生活自立支援事業 介護サービス事業者 -15- 5.平成24年度コミュニティソーシャルワーカー支援事例 1)民生委員の見守りにより支援に繋がった事例 2)認知症と思われる高齢者を専門機関と連携し支援した事例 3)ひきこもり状態で生活困窮に陥っている男性を支援した事例 4)民生委員の見守りと発見から予防的支援ができた事例 5)精神疾患を患っているひとり親家庭の母親と子どもたちを支援した事例 6)おひとり暮らしの男性の生活と生きがいづくりを支援した事例 平成25年3月17日(日) F リージョンセンター 「夢広場」 分野を超えて課題解決へ 平成24年9月28日(金) 社協 地域における孤立を防ぐために -16- 1)民生委員の見守りにより支援に繋がった事例 【相談概要】 【支援後のエコマップ】 民生委員から担当地区の住民のAさんから 「年金を担保に、お金を借りるため保証人 病院の相談員 になってほしい」と頼まれ断ったが、Aさん は「持病もあり、心配なので関わってあげ てほしい」と、CSWへ連絡が入った事例。 Aさん CSW 民生委員 【事例概要】 ・Aさんは、60代、妻とは離婚し一人暮らし。 ・仕事は、古くなった電化製品の回収をしているが、生活費になるほどの収入はない。 ・息子は居るらしいが、音信不通。 ・持病があるが、受診するお金がないので通院も出来ていない。 ・3年前にも、年金担保で銀行からお金を借り、同じ頃、自己破産もしている。 ・家賃の支払いも2年分ほど未払い。電気、ガスも止められると支払う。 ・仕事上、軽トラックで移動、自宅には夜にしか戻らない。 -17- 【CSWの対応】 ○月×日 ×+2日 ×+9日 ×+14日 ×+16日 ×+20日 ×+149日 ×+151日 ×+158日 ×+174日 ×+204日 ×+207日 民生委員より相談が入る。 民生委員とCSWでAさんの自宅を訪問、生活状況を伺う。お金を借りずに、 生活していく方法をCSWと一緒に考えましょうと話をするが、Aさんに「今 ないのに、借りるしかない」と聞き入れてもらえない。 民生委員より、年金担保でお金を借りたらしいと報告がある。民生委員と情報 は共有する。 Aさんに電話で連絡。体調が悪く食べ物もないとのことで、食料を確保し持参 する。 受診を勧めるがお金がないので拒否される。年金担保で借りたお金で未払い分 の家賃を少し支払い、他の借金に充てたようで、もう残っていない。 体調が気になるのでAさんに連絡するが「大丈夫」と言われるだけで支援につ いては拒否。 Aさんより軽トラックが止まってしまい、助けて欲しいとCSWに連絡。 生活を立て直す必要があることをAさんに説明するが、「解ってます」と言わ れるだけで聞く耳を持ってもらえない。民生委員は見守りを続けてくださり、 CSWも何度か連絡するが、「大丈夫」と言われるだけで支援に繋ぐことができ ない。 民生委員よりAさんが、救急入院したとの連絡があり、民生委員とCSWが病 院へ面会に行く。入院に必要な物は、民生委員が用意してくれる。CSWは負 担額減額の手続きする。 Aさんの入院先の病院のMSWよりCSWに連絡が入り病状の報告、緊急手術し たこと。今後、身体障害者手帳の申請が必要なことの説明を受ける。身体障害 者手帳の手続きについてはCSWで代行する。CSWが書類を福祉事務所に取り に行き、入院先に預ける。 入院先へAさんに面会。退院時の支払いの事もあるので、Aさんに生活保護の 申請についてCSWが話をするが、Aさんは申請を拒否。 民生委員、付き添いにてAさん退院。振り込まれたばかりの年金で病院の支払 いされる。 Aさんより病院の診断書が出来たとの連絡。 CSW同行にて福祉事務所で身体障害者手帳の申請をする。 【考察】 生活困窮は、未だ解決はしていないが、民生委員の普段からの見守りで発見ができ、救急 入院に際しても敏速に対応してもらい、支援を勧められたと思われる。今はまだ、支援の途 中であるが、少しずつAさんの生活が立て直していけるように、民生委員とCSWが一緒に見 守っていきたいと思う。 地域での民生委員の見守りがAさんのような方の発見に繋がり、支援に向けての第1歩と なった。 今後も民生委員との連携が大切であると考える。 【スーパーバイザーからのコメント】 他者からの支援を拒否されるセルフネグレクトのケースが、深刻な問題になっています。 本事例のように、民生委員による見守りや継続支援(共助)とCSWの積極的なアウトリー チとAさんの気持ちに寄り添った穏やかな支援が、有効である好例です。Aさんの固く閉ざさ れた心を開き、Aさん自らが自分自身の将来を真剣に考える機会になることを祈ります。 ※セルフネグレクト:居成人が通常の生活を維持するために必要な行為を行う意欲・能力を喪失し、自己の 健康・安全を損なうこと。必要な食事をとらず、医療を拒否し、不衛生な環境で生活を続け、家族や周囲か ら孤立し、孤独死に至る場合がある。防止するためには、地域社会による見守りなどの取り組みが必要とさ れる。自己放任。(デジタル大辞泉) -18- 2)認知症と思われる高齢者を専門機関と連携し支援した事例 【相談概要】 【支援後のエコマップ】 Aさん本人からCSWに電話が入り、「私、 お金や宝石などを入れていたカバンを盗ら れて警察にも行ったんやけど何もしてもら えずこのまま泣き寝入りせんなあかんの? お宅は何をしてくれはるところですか?」 と相談を受ける。 Aさん 居宅支援 事業所 地域包括 支援センター CSW 病院 【事例概要】 ・Aさんは、70代後半で内縁の夫と二人暮らし。 ・Aさんは高血圧により近くの内科でお薬を処方してもらっているが、他に疾患はないとの こと。 ・内縁の夫は週3回人工透析を受けている。 ・Aさんは人と付き合うことが苦手で必要な外出以外は殆ど家に居ることが多い。 ・Aさんの訴えは金品を盗られたことに尽きるが、記憶が曖昧で内容が変わることもあり何 回かお会いして話を聞かせてもらい、自宅に訪問させていただくうちに認知症状が出てき ているのではないかと感じ、地域包括支援センターに状況を伝え協働依頼する。認知症で あるのか、もし認知症であるならば今後の支援に向けてどのように関わっていけばいいの かと関係機関と何回も話し合いの場を持ちながら協働し支援を行っている。 -19- 【CSWの対応】 ○月×日 ×+3日 ×+12日 ×+25日 ×+44日 ×+82日 ×+130日 ×+132日 ×+165日 Aさん本人から電話が入り、「お金や宝石を盗られた、警察にも行ったが取り 合ってもらえず何かしてもらえるのか」と相談あり。事業の趣旨を説明し後日 面談することとなる。 自宅への訪問はあまり受け入れにくそうなので外で面談する。お金や宝石、羽 布団、衣類などを盗られたと訴えられる。話を聞く中で気になる点があり、今 後もお伺いして様子を見ていくこととする。 自宅へ訪問。何とか家の中に入れてもらう。夫に挨拶し、訪問に来た理由を説 明する。部屋の中は殆ど掃除していない様子。夫も人工透析を受けておられる とのことだが、食事面も気にしていない様子。地域包括支援センターに協働依 頼する。 地域包括支援センターの方と訪問。Aさんにいろいろ聞き取りをする。お金を 盗られたことや、夫の病気のことなど記憶が曖昧で介護保険の認定申請をAさ んに話してみると了承され、かかりつけの医院に意見書の依頼のため通院同行 させていただく。 介護保険認定調査のため地域包括支援センターの相談員とCSWが同席する。 Aさんの認定結果がでたことで夫と面談し日常生活を送るにあたり問題がない のかどうか聞き取りする。Aさんの物忘れがあることは自覚しているものの何 も困っていないと言われる。夫の病状を主治医から伺うと「いつ心筋梗塞を起 こしてもおかしくない状態であり、本人はいつ死んでもいいと言っているため 治療方針がきまらない」とのこと。 担当者会議を行う。Aさん夫婦の今後の支援と役割分担について話し合う。 夫の病状も悪く、Aさんも認知症があるだろうとの見解で、①今後二人が生活 していくうえで支障をきたすこと、②Aさんが認知症であるならば服薬が必要 であるが、きちんと服薬ができるのか、③当人以外の家族の支援を求めること はできるのかなどを話し合う。 Aさんの弟にお会いし、状況を伝え、必要時の協力の了解をいただく。 認知症外来専門病院に検査のため同行する。夫も付き添いしていただく。 検査の結果、アルツハイマー型の認知症で、今のところは軽度であるとのこと だが、服薬も勧められる。検査結果と処方箋をかかりつけ医師に送っていただ く。 服薬について今後見守りや管理も必要であることなどAさんと相談していく。 【考察】 相談を受け、関わっていく中で本人の病気や、夫の病気のことがわかってきた。二人は現 状を認識していないことも多いが、二人の生活を送っておられる。関係機関もそんな二人に 対してこのままできるだけ長く現状維持しながら、生活を送っていただけるように話し合い を何度も持ちながら支援している。 【スーパーバイザーからのコメント】 本事例は、直接本人(当事者)から相談があった事例です。本事例で注目したいのは、次 の2点です。まず、Aさんからの主訴は「ものを取られた。」という内容でしたが、面談を通 して認知症である可能性や訪問時にAさんだけでなく内縁の夫にも支援が必要であるとの的 確なアセスメントをおこない、ファミリーサポート(家族支援)を行っています。また、 「自 宅への訪問はあまり受け入れにくそうなので外で面談する」といった配慮を行うことで、A さん本人とのラポール(信頼関係)形成にもつながっています。アウトリーチの際にはこの ような的確なアセスメントと、状況に合わせた配慮が重要であることを示す好例です。 -20- 3)ひきこもり状態で生活困窮に陥っている男性を支援した事例 【相談概要】 【支援後のエコマップ】 最初は、近隣の大家さんから民生委員に 相談が入り、民生委員から地域包括支援セ ンターに相談があり、地域包括支援セン ターからCSWに相談があった事例。 最初の大家さんからの相談の概要は、「ひ とり暮らしの男性宅の電気が夜に点いてい ないのが、心配なので訪問してほしい」で あった。 Aさん 福祉事務所 CSW 大家さん 地域包括 支援センター 民生委員 【事例概要】 ・近隣の大家さんがAさんを見かけたところ、やせ細っていて歩く姿もゆっくりで弱々しい 様子であった。 ・Aさんは、50代前半で両親が他界されてから1人暮らし。 ・Aさんには兄弟が二人いるが、現在は疎遠状態となっており連絡もとっていない。 ・Aさんさんは非常におとなしい性格で人と付き合うことが苦手で引きこもりとなってい る。 ・Aさんは30年近く両親と住まれていたので、大家さんはAさんの幼少の頃から良く知って いた。 -21- 【CSWの対応】 ○月×日 ×+1日 ×+2日 ×+4日 X+8日 X+15日 X+16日 地域包括支援センターから「ひとり暮らしの男性宅が夜になっても電気がつい ていないのが心配なので訪問してほしい」と相談が入る。但し、Aさん宅には 電話がなく近隣の大家さんに連絡をとってほしいとのことであった。 大家さん宅を訪問。Aさんは幼少の頃から引きこもりであり、両親が亡くなり 1人暮らし。大家さんは、Aさん宅の電気が点いていないので気になって、Aさ ん宅を訪ねると、電気は止められているとのことであり、晩ご飯も食べていな かったので、大家さんが食事を提供されたとのこと。CSWは、大家さんと一 緒にAさん宅を訪問した。呼びかけをするが応答がなかったので、翌日に訪問 することになる。 大家さんと一緒にAさん宅を訪問。Aさんは勤めていたが、不景気で収入がな くなり、今は電気も止められている。また、幼少の頃から引きこもりであり、 兄弟とも疎遠となっている。Aさんに専門機関、関係機関につなぐことへの了 承をいただく。 福祉事務所にAさんの状況を説明する。「近いうちに訪問をさせていただきま す」と返答があった。 Aさんに福祉事務所のワーカーが訪問することになったことを伝える。 大家さんが直接Aさんの弟さんに連絡をとり、事情を聞かれた弟さんが電気代 の支払いをし食料差し入れた。Aさんから電気もつくことになり、食料もある ので、今のところは何とか生活を維持できるとのことであった。 大家さんにも弟さんに連絡をしていただいたお礼を伝える。 Aさんから福祉事務所のワーカーが来られたことを確認する。 福祉事務所にAさんについて確認する。Aさんが非常に痩せているおり、体調 の悪化を防ぐ為に、早期に生活保護を受給できるように手続きをとるとのこと であった。 Aさんに生活保護の受給が決まったことを伝える。Aさんも安心された様子 で、「体調が回復すればできるだけ早く仕事を探して、これ以上みなさんに迷 惑をかけないようにします」とCSWに話してくださった。 大家さんにAさんが何とか生計が維持できることを伝えると大家さんも安心し た様子であった。 【考察】 近隣の方の気づきが、きっかけとなって民生委員、地域包括支援センター、CSWへと相談 が入ったケースで、大家さんがAさんのことを幼い頃からよく知っていたこと、大人しい性 格や引きこもりがちであったことを分かっていたことが、今回の支援につながった大きな要 因となっている。また、大家さんがAさんの大人しい性格を見抜いて、気転を利かして弟さ んに連絡をするなど、Aさんにとって、非常に大切な存在となっている。 【スーパーバイザーからのコメント】 本事例も、大家さんという共助の支援者の存在がなければ、うまく支援につながらなかっ た事例です。 共助・近助の強み(ストレングス)である「発見(近隣で起こっている問題に気づくこと ができる)・継続的な見守り」を活かすためには、共助・近助と公助であるCSW&COWや他 の関係諸機関との協働連携が不可欠であることを示した好例です。本事例では、CSWにつな いだ地域包括支援センターにも、今後は地域包括ケアとして、今回のようなケースにも関 わっていただければさらによりよい実践になると思います -22- 4)民生委員の見守りと発見から予防的支援ができた事例 【相談概要】 【支援後のエコマップ】 地域住民から民生委員に「体調が悪そう な方がいるのですぐにでも入院させてほし い」と相談が入ったと、社会福祉協議会地 域担当職員(COW・コミュニティワー カー)に連絡が入った。その地域担当職員 を通じてCSWに連絡が入った。 民生委員 病院の相談員 保健センター 保健師・PSW Aさん Bさん CSW COW 【事例概要】 ・(母)Aさん(80代)→自営業をしていたが廃業した。受け答えはしっかりしているが訪問 時は一人で立ち上がることができないほど弱っていた。 ・(子)Bさん(60代)→近隣の住民の方はほとんど姿を見たことがないとのこと。 -23- 【CSWの対応】 ○月×日 ×+13日 ×+62日 ×+123日 CSWは、連絡を受け民生委員さんと訪問する。Aさんは、訪問時は一人で立 ち上がることが出来なくて体調がすぐれない様子であった。受診をすすめて、 入院の紹介状をすぐに書いてもらい入院することが出来た。 Aさんは介護保険制度を利用していなかった。Aさんは制度の利用を断ってい たが制度なしでは到底生活できる様子ではなかったので丁寧に説明しAさんの 了承を得たうえで、地域包括支援センターへ連絡し制度の申請をする。 Aさんの入院が決まり安心していたところ民生委員さんより連絡が入る。「Bさ んの状態が悪そうだ」とのこと。民生委員・関係機関・CSWで訪問するが、 Bさんは立ち上がれない状態で意識朦朧であった。すぐに救急車を呼び、母と 同じ病院に入院することになった。 病院は同時に2人を退院させるつもりであったが、Aさんは検査で病気が見つ かり退院は見送られた。その後Bさんの病状も安定し退院せざるをえなくなり Bさんのみ退院することとなった。 Bさんの退院にあたり、家の中が以前に店をしていた時の棚などがあふれか えっていて住みにくい状況にあったため、他地区のCSWに協力してもらい片 付けをおこなった。また、障がい者自立支援制度の利用が早くても1か月以上 かかるとのことなので、関係機関とケース会議を開き関係機関の見守りと配食 サービスで様子を見ていくこととなった。 その後母Aさんが病院で亡くなり、Bさんは一人暮らしとなった。 Bさんの障がい者自立支援の1回目のサービス利用が決まり生活が安定してい くと思っていた矢先、配食を取りに出て来ないのを不審に思った業者が亡く なっているBさんを発見した。 【考察】 Aさんは人の世話になりたくないという意識が高く、体調が悪いのにも関わらず、自ら SOSを発することはありませんでした。しかし、地域住民の方がAさんの様子をキャッチし、 様々な機関に相談されたことでCSWへの相談につながりました。Bさんも民生委員さんの見 守りや連絡がなければ、どうなっていたかわからないケースでした。Bさんが一人で生活を していくうえで、障がい者自立支援制度につながるまでどうするか多くの関係機関で議論し、 見守りを重ねようやく制度につながったところで亡くなられていました。 この事例に関して、日ごろの見守りに加え通院、お見舞い、関係機関への連絡などここに は書ききれない支援をしてくださった民生委員さんにあらためて感謝の言葉を伝えたいとお もいます。 【スーパーバイザーからのコメント】 本事例では、結果としてBさんは一人で亡くなっておられたが、孤立死のケースではない。 最初の地域担当職員への連絡から二人の入院までの過程においては、近隣の人々が、支援の 必要なAさんとBさんの世帯を心配し、専門職に声かけをしたり、見守りを行うなど、地域の 福祉力が豊かであることが推察できる -24- 5)精神疾患を患っているひとり親家庭の 母親と子どもたちを支援した事例 【相談概要】 【支援後のエコマップ】 民生委員からCSWに「ひとり親家庭の母 親Aさんが精神不安定で入院になるかもしれ ない…」と相談が入る。Aさんと関わるな か、福祉委員から「Aさんが入院され、子ど もだけ(Bさん・Cさん)で生活をしてい る。」と連絡があった。 CSW 福祉委員 CW 民生委員 Cさん 学校 家庭児童 相談所 Bさん 学校 Aさん・Bさん Cさん 子ども家庭 センター 【事例概要】 ・精神的な疾患のある母親Aさんと子どもBさん(10代後半)とCさん(10代前半)のひと り親家庭。 ・Aさん家族は転居してきて日も浅く、近隣住民との交流があまりなかった。 ・以前からAさんは精神病院へ入退院され、子ども達は施設で生活をしていた経過があり、 入所に関して良く思っていなかった。 ・Aさんは精神科病院に入院され、子ども達だけで生活しており、関係者は困惑した。 Aさんの病状の把握や退院の見込みまで早急に子どもへ寄り添いながらCSWをはじめ、学 校、民生委員、福祉委員でBさんCさんの支援を行うことにした。 ・Cさんの生活のしづらさや不安の訴えにより各専門機関が集まりケース会議を行い、Cさん の思いを確認しながら、Aさんに理解をもとめ支援したケースである。 -25- 【CSWの対応】 ○月×日 ×+9日 ×+13日 ×+20日 ×+72日 ×+75日 ×+77日 ×+78日 ×+89日 ×+107日 ×+119日 民生委員からAさんが精神病院へ入院するかもしれないと相談があり自宅へ訪 問する。 体調不良で主治医に相談するので入院が決まれば、相談の連絡をするとのこと であった。 福祉委員からAさんが入院された後、Cさんが風邪で高熱のため、救急病院へ 連れて行ったと連絡が入る。 自宅へ訪問してAさんの不在のなか、Bさん、Cさんに寄り添いながら不安や 困りごとを聴き、家事負担の軽減を図るためにCSWが見守り訪問することを 伝え、関係づくりに努めた。 個別ケース会議を開催して学校、民生委員、福祉委員、CSWが協力して、A さんが落ち着かれるまで子どもたちの支援を役割分担する。(見守り支援、食 事支援、家事支援等を行い、母親の状況が掴めた時点で、支援の再検討を行う 方向) Cさんから生活のしづらさや不安の訴えがあり、学校と情報共有を図る。 Aさんの退院の目途がつかずケース会議を開催して、Cさんの一時保護入所を 検討する。 Cさんが施設入所を希望していると、学校より確認の連絡がCSWにある。 家庭児童相談員とCSWとでCさんの気持ちを再度確認し、Aさんの病院へ面会 に行く。 CさんをAさんが退院するまで一時保護入所することの説明や退院後の在宅 サービス利用の相談をするが、Aさんは、受け入れできず頑なに拒否された。 子ども家庭センターの判断により、Cさんは一時保護入所決定で保護される。 家族の働きかけによりCさんは、自宅で生活をされることになる。 個別ケース会議を開催し、関係機関でBさん、Cさんの生活の状況と今後の検 討を行う。 Aさんが退院され、家族での生活が始まる。 【考察】 Aさんは精神的な病気を抱えながら、一人で子育てをしてこられ、病状の悪化時は子ども たちを施設入所という形で手放し、手元に戻すまでの苦労があり、さまざまな支援を拒否し たと思われる。Aさんに落ち着いていただくことを最優先に考え、子ども達に寄り添いながら、 安心して生活ができるよう、学校はじめ、民生委員、福祉委員の協力のもと、細かい援助を 継続的に行った。Aさんが受け入れてくれたこと、Bさん、Cさんが大人たちを信用してくれ たことで支援の輪が広がった。学校、地域の方の支援がとてもありがたいと感じた。また、 子ども達の情報を共有しながら、各専門機関が集まり個別ケース会議を開催し、支援の方向 の検討を行ったケースだった。この家族には今後も地域の方や関係者と一緒に見守りをして いくことが必要と思われる 【スーパーバイザーからのコメント】 本事例は、精神疾患がある母親の支援と、二人の子ども達の支援を、CSWと児童福祉のソー シャルワーカーといった公助(専門職)と、民生委員・福祉委員といった人々が、協力して支援 ネットワークを形成していった好例である。母親の不在で、一時は自ら一時保護所への入所 を希望したCさんも、家族の働きかけにより、自宅での生活に戻ることができた。Aさんも退 院され家族水入らずの生活に戻ることができた。 CSWも考察で述べているとおり、今後も、必要なときに適切な支援が受けられるように見 守りを継続していくことが必要だと思われる。 -26- 6)おひとり暮らしの男性の生活と生きがいづくりを支援した事例 【相談概要】 【支援後のエコマップ】 民生委員より「ホームレスになるかもし れない人がいる。どうしたらいいか。」と CSWに相談が入る。 社会福祉協議会 コミュニティワーカー 地域包括 支援センター CSW 福祉事務所 民生委員 Aさん 【事例概要】 ・Aさん。60代男性。 ・聴覚障害6級の障害者手帳を所持。日雇いの仕事をしながら、日払いの寮で生活をしてい る。 ・耳が聞こえにくいため、働きにくくなり、一ヶ月仕事がない状態である。寮費も滞納して おり、出なくてはいけない。 -27- 【CSWの対応】 ○月×日 ×+6日 ×+60日 ×+180日 ×+3年 訪問して話を聴く。今の住所では日払いの寮費のため、住所とは認められず、 生活保護を受給することができない。東大阪市の離職者に対する市営住宅の一 時入居の制度(六ヶ月)を申請することにする。 東大阪市の市営住宅に入居。生活保護の申請も受理される。生活保護費が出る までの食料支援を大阪府社会福祉協議会の社会貢献事業で対応してもらう。新 しい住まいで自炊をしながら生活をされる。 「することがなくてつらい。仕事がしたい。」というお話だったので、シルバー 人材センターを紹介する。しかし、説明会も聞こえないということで登録には 至らない。ボランティアなども紹介するが、居場所作りにはつながらなかっ た。 市営住宅の入居期限がきれたので引越しをする。 その後も数ヶ月に一回訪問し、体調の相談に対して病院を紹介したり、生活保 護の相談を聞いたりしながら関わりを続ける。しかし、何もすることがない日 日に対しては、取り組めるものを見つけることがなかなかできなかった。 地域包括支援センターと社会福祉協議会のコミュニティワーカー(地域担当職 員)とCSWと協働でお一人暮らしの男性のお食事会を開催。Aさんは調理の仕 事もされていたと聞いていたので、何か一品を作ってもらえないかと相談した ところ、快く引き受けて下さった。打ち合わせの段階から参加してもらい、 「かす汁」を作ってくださることになる。当日は買い物から参加。手際よく調 理する姿はとてもいきいきとされていた。 【考察】 生活保護の申請を支援し、生活の場を確保できても、仕事を失ってしまい、「やること」を 失った喪失感、「やること」のない生活の虚しさをなかなか埋めることができず、悩んできま した。見守り訪問を続けることの意味もよくわからないまま続けてきました。今回、地域で専 門機関と協働で取り組みを開催することができ、Aさんがいきいきと調理する姿を初めて見る ことができました。人から必要とされる場所、自分の力を発揮できる場所の大切さを感じまし た。難しい課題ではあるのですが、このような機会をこれからも地域の中で作っていきたいと 考えています。 【スーパーバイザーからのコメント】 本事例は、CSWが地域包括支援センターと社協の地域担当職員(コミュニティワーカー) と協働して、Aさんの生きがいづくりを支援できた事例である。生活保護を受給して住む場所 もでき、衣食住が確保され生活が安定しただけでは、Aさんが地域の中で生き生きと自分らし く生活することにつながらない場合がある。本事例がまさにそういった事例である。そのとき に、Aさんの料理が得意という特技(ストレングス)を利用して、Aさんの生きがいがある生 活支援につながれている。CSWが、単に衣食住の確保に留まらず、より積極的な生きがいづ くりの支援につないだ好例である。 -28- 6. 平成24年度 いきいきネット相談支援センター(CSW配置施設)一覧 東大阪市が委託したCSWの活動拠点となる「いきいきネット相談支援センター」は、次 のとおりです。 担当中学校区 担当リージョン区 ① A ② B ③ B ④ C ⑤ C ⑥ D ⑦ D 孔舎衙 施 設 名 社会福祉法人 所 在 地 仁風会 日下町4-1-42 石 切 相談支援センタービオスの丘 縄手北 枚 岡 縄手南 東大阪市社会福祉協議会 東大阪市立五条老人センター 社会福祉法人 角田2-3-8 072-963-2020 社会福祉法人 とうふく 青山会 西岩田町4-9-8 意岐部 街かどデイハウス 荒本1-1-24 (分室) 若 江 すずめの学校 社会福祉法人 東大阪市社会福祉協議会 東大阪市立 ⑧ E 高井田 高井田老人センター ⑨ F 小 阪 俊 徳 新喜多 社会福祉法人 ひびき福祉会 アクティビティセンターひびき 社会福祉法人 ⑫ G ⑬ G 金 岡 太平寺 弥 刀 NPO法人 東大阪市社会福祉協議会 ヒューマンライツ・ながせ21 蛇草障害者作業所「パオ」 社会福祉法人 真優福祉会 長 瀬 社会福祉法人 インクルーシヴライフ協会 「蓮」 高井田元町1-2-13 長瀬町3-6-8 近江堂2-6-30 上小阪 弥刀さつき保育園 柏 田 高井田元町1-2-13 中小阪5-14-23 東大阪市立 ⑩ F 長 栄 高井田老人センター ⑪ G 072-962-8265 東大阪市社会福祉協議会 英 田 楠 根 072-986-9003 072-986-7592 東大阪市立 角田総合老人センター 盾津東 花 園 072-986-0294 五条町9-45 盾 津 玉 川 F A X 072-986-7673 社会福祉法人 縄 手 池 島 専用電話 柏田西3-9-2 -29- 06-6789-7400 06-6789-7271 06-6781-2002 06-6781-2002 06-6789-7206 06-6789-9174 06-6732-1127 06-6725-6522 06-6789-7206 06-6789-9174 06-6729-2825 06-6729-9346 06-6730-8780 06-6730-8790 06-6725-2754 06-6736-5105 7 .いきいきネット相談支援センター 福祉の出張相談コーナー 福祉サービスについての疑問や質問、身近なことで困っていることはありませんか? 様々な機関と連携し、みなさんのご不安をサポートします。 私たちCSW(コミニュティソーシャルワーカー)は、「見守り・発見・相談からサービスへのつな ぎ」をする役割を担っています。 リージョン区 相談日(毎月) *但し1月を除く 市民プラザ名 A 日下リージョンセンター「ゆうゆうプラザ」 第3水曜日 B 四条リージョンセンター「やまなみプラザ」 第1火曜日 C 中鴻池リージョンセンター「グリーンパル」 第1金曜日 D 若江岩田駅前リージョンセンター「くすのきプラザ」 第1月曜日 E 楠根リージョンセンター「ももの広場」 第3木曜日 F 布施駅前リージョンセンター「夢広場」 第1水曜日 G 近江堂リージョンセンター「はすの広場」 第1木曜日 ※13 : 30~16 : 00 ※祝日の場合は翌日になります。(中鴻池リージョンセンターを除く) ※1月はお休みとさせていただきます。 ※東大阪市からの委託を受けており安心して相談ください。もちろんプライバシーは厳守します。 ■ 事業についての問い合わせ先 東大阪市健康福祉局福祉部健康福祉企画課 ■ いきいきネット相談支援センターの調整役 東大阪市社会福祉協議会 -30- TEL 06-4309-3181 FAX 06-4309-3815 TEL 06-6789-7204 FAX 06-6789-2924 8 .コミュニティソーシャルワーカー配置事業関連資料 東大阪ふくしだより 平成24年10月1日号 No.97(切り抜き) 地域福祉情報誌「うえすと・さいど」平成24年10月号 (切り抜き) -31- 東大阪市政だより 平成24年 4月1日号 No.994 (切り抜き) 東大阪市政だより 平成24年 9月1日号 No.1004 11月1日号 No.1008 平成25年 3月1日号 No.1015 (切り抜き) 東大阪市政だより 平成24年 5月15日号 No. 997 7月15日号 No.1001 9月15日号 No.1005 11月15日号 No.1009 平成25年 3月15日号 No.1016 (切り抜き) -32- 9 .東大阪市コミュニティソーシャルワーカー連絡会会則 (目 的) 第 1 条 東大阪市コミュニティソーシャルワーカー配置事業により、中学校区単位にある施設等 に配置されたコミュニティソーシャルワーカー(以下「CSW」という)が、実施要項に 定める目的達成のためにCSW連絡会(以下「この会」という)を設置する。 (会 則) 第 2 条 この会は、CSW配置事業により設置されたCSW、市担当課及び社協等の職員を会員 として構成するものとする。 (活動内容) 第 3 条 この会は、次に掲げる活動を行うものとする。 ( 1 )CSW相互間の円滑な情報交換と交流を行う。 ( 2 )CSWの資質向上のための研修を実施する。 ( 3 )その他目的達成のための必要な活動を行う。 (会 議) 第 4 条 この会の会議は、原則として毎月開催するものとする。また「研究会」と称し、随時第 3 条( 2 )の目的のための会議を行う。 (事務局) 第 5 条 この会の事務局は、社会福祉法人東大阪市社会福祉協議会内に置く。 (経 費) 第 6 条 この会にかかる経費は、市からの委託料(活動費)の一部をもって充てる。 (その他) 第 7 条 この会則に定めない事項は、この会でその都度協議するものとする。 附 則 この会則は、平成19年 4 月 1 日から施行する。 -33-
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