社員食堂における地産地消への取組み - PFU - Fujitsu

'Local Food Consumed Locally' at the employee restaurant
西島靖昌 *
松下 一 *
山本利治 **
伊東喜弘 ***
Yasumasa Nishijima
Hajime Matsushita
Toshiji Yamamoto
Yoshihiro Itou
*
**
***
環境推進室
PFU ライフエージェンシー株式会社 ファシリティサービス事業部
PFU ライフエージェンシー株式会社 ダイニングサービス事業部
当社の地球環境保護活動は,製品対応を始めとして,オフィス・工場における省エネ化や廃棄物削減活動,
通勤路や近隣の海岸・干拓地道路の清掃ボランティア活動まで非常に多岐に渡っている.
本論文はその中でも,社員食堂において地域社会と連携して対応している地産地消,食堂廃棄物ゼロエミ
ッションの取組みを紹介するものである.
PFU has been putting a great deal of effort into environmental protection, and has
devised numerous programs to reduce environmental burdens. Yet product design is only
one aspect of this effort. Recently, we have made great efforts towards conserving energy
and reducing waste at office and factories. We are also engaging in volunteer activities to
clean up our commuting routes as well as local beach roads and other roads reclaimed by
drainage.
This paper specifically focuses on two of our activities related to the company cafeteria,
"Consume Local Food" and "Zero Waste Emissions", which are underway in close
collaboration with the local community.
まえがき
1
1.1 世界の環境情勢
に地球環境の負荷低減に貢献し,社会の更なる持続的発
展に寄与していく.
『Green IT Evolution』は,
わずかな気候変動も様々な形で我々の生活に影響を
『Green Product』
(環境に配慮したソリューション・
及ぼす.地球環境への関心は年々高まりを見せ,環境対
プロダクトの提供)
,
『Green Factory』
(事業所の省
応は今や,遵守すべきものから積極的に取り組み貢献す
エネ化推進)
,
『Green Mind』
(社員一人ひとりが主役
ることが企業の使命となってきている.
となった環境行動文化の浸透)を三つの柱として活動し
ている(図−1参照)
.
1.2 当社の取組み
当社の環境活動は,1989 年の省エネ委員会設立に
(1)Green Product
お客様に提供する製品サービス自体の環境取組み
始まり,1 9 9 6 年に環境マネジメントシステム
(市場製品等と比較して環境配慮要素がトップグルー
ISO14001 を認証取得した後は順次対象事業所を拡
プレベルを実現したスーパーグリーン製品や環境配慮ソ
大,現在は全国の営業・保守サービス拠点を含む全事業
リューションの提供拡大)
所全プロセスで環境に配慮した事業推進を行ってい
る
.
参1)
また 2008 年には,
『低炭素社会づくり』の実現に
向けた PFU グループの環境活動の総称を『Green IT
(2)Green Factory
事業に伴って発生する環境影響を低減する取組み
(グリーンファクトリー,グリーンオフィス活動の強
化)
Evolution』と定めた.この活動により,お客様と共
64
PFU Tech. Rev.,20, 1,pp.64-68(05,2009)
社員食堂における‘地産地消’への取組み
自らをグリーン
環境負荷の見える化を図り
更なる省エネ化を推進します
PFU グループのノウハウ,
テクノロジを結集し
ソリューション・プロダクト
を提供します
Green Factory
Green Product
2.2 「地産地消」を通した食の教育
現在食材として,米は石川県産米 100 %を使用して
おり,さらに旬の野菜を中心に毎日 4 ∼ 6 品目の地産
食材を継続的に使用している.
食堂利用者に「地産地消」をより身近に感じてもら
Green Mind
うことを狙いとして,日々使用する地産食材を「本日の
地産地消品」として,現品展示している(図−2参照)
.
すべての事業領域で環境行動文化を浸透し
社員一人ひとりが主役となり,地球環境に貢献します
●図―1 Green IT Evolution 概念●
(Fig.1-Concept of Green IT Evolution)
(3)Green Mind
現品展示に際しては,品名や産地名を記載すると共
に対象品にまつわる謂れや特徴等の「トピックス」を記
載し,利用者に話題提供,地産食材の理解増進を図って
いる(図−2,図−3参照)
.また,来客用弁当として,
加賀・能登産食材のみを使用した「地産地消弁当」の提
環境行動文化の浸透
(社員一人ひとりの環境保護に対する意識を醸成し,
全ての事業領域で地球環境へ貢献)
1.3 「食」を通した環境への取組み
事業活動から生じる環境影響は広範囲にわたる.製
品生産によるものが一般に知られているが,日々の事業
所における開発生産以外の日常活動によるものもある.
当社関係会社である PFU ライフエージェンシー 1
は,PFU 本社,ProDeS センター及び 1 富士通 IT
プロダクツの社員食堂の運営のほか,かほく市外日角に
ランチ弁当専門工場を持ち,金沢市内∼河北郡市∼羽咋
市内への弁当配達サービスを行っている.
●図―2 社員食堂の「本日の地産地消品」現品展示●
(Fig.2-Display of "Today's Local Food Consumed Locally" at
the employee restaurant)
この論文では,PFU ライフエージェンシー 1 にお
ける社員食堂の取組みを取り上げる.地域とのつながり
を生かした「地産地消」への取組みから,食を基点とし
た社員への食品安全教育,そして食堂の宿命である食品
廃棄物処理としてバイオディーゼル燃料への取組みな
ど,食の環境チェーンについて述べる.
2
「地産地消」の取り組みについて
2.1 取組みの狙い
食の安全の重視及びフードマイレージ 注1)による環境
対応の観点から,2008 年 4 月より「地産地消」の取
り組みを開始した.
注1)フードマイレージ
1994 年に英国の消費者運動家ティム・ラング氏が提唱した
といわれる考え方(元の用法は,Food Miles)
.
食料の総重量と輸送距離を乗じて数値化したものであり,生
産地から消費地までの距離が短い食べ物を食べることで,輸送
に伴って発生する二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出
量を少なくして,環境への負荷を小さくする.
PFU Tech. Rev.,20, 1,(05,2009)
●図―3 メニューサンプルへの産地,特徴表示●
(Fig.3-Displays indicating the place of production and other
descriptions near the menu samples)
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社員食堂における‘地産地消’への取組み
●表−1 加賀野菜一覧●
供を行った(図−4参照)
.
普通のきゅうり5本分の量があり,別名を
2.3 代表的な地産食材「加賀野菜」
石川県では石川の風土にあった優れた特長,品質を
①太きゅうり
用されている.その中から金沢の代表的な野菜を「加賀
②打木赤皮甘
野菜」注2)として,
「金沢市農産物ブランド協会」参2)が定
栗かぼちゃ
義しており,現在 15 品目が認定されている.
独特の橙色で,円錐栗型をしている.果肉
は水分が多くて粘質.えびす南瓜に負けな
い甘さがある.
「つるまめ」「ダラ豆」とも言う.香りは
③千石豆
独特なもので,煮物,和え物,汁の実など
幅広い用途に使える夏の風物詩.
を取り入れて「加賀野菜炊合せ」を提供した.
表−1に加賀野菜を紹介する.
果肉は厚くやわらかいので,煮たり炒めた
りと,加熱する料理に適している.
有する野菜が多数栽培されており,家庭でも一般的に利
食堂では最初に「地産地消弁当」として「加賀野菜」
「ジャンボきゅうり」とも言う.
裏側が鮮やかな金時色(赤紫色)をしてい
④金時草
るので「金時草」の名が付いた.ゆでると
独特のぬめりが出る.
3
「食堂廃棄物のゼロエミッション」
の取り組み
食堂廃棄物のリサイクル活動としては,本社事業所
名前の通り,へたまで紫色のなすび.実は
⑤へた紫なす
ている.
⑥五郎島金時
に於ける「廃食油のバイオディーゼル燃料(以降,
(さつまい
BDF)化」と「食堂残渣の堆肥化」について述べる.
も)
BDF の処理フローを図−5に示す.
ん
⑧たけのこ
廃食油(てんぷら油など)を BDF に生成している.
BDF 装置の外観を図−6に,装置諸元を表−2に示
す.現在の BDF 生成量は月間 300 リットルで,全量
⑨せり
を自社の事業用車両である灯油配達車,植栽管理トラッ
クの 2 台で再利用している.これにより,化石燃料の
島金時」として全国的にも有名.色の美し
さ,形の良さ,甘みの強さ,どれをとって
も最高級であると好評.
良い食べ物とされている.他県のれんこん
と比べて穴が小さく,石川産の方がずっし
りと重いものになる.
2008 年 4 月より,PFU ライフエージェンシー 1
では自社で運営する社員食堂やランチ工場の厨房からの
中心産地である五郎島の名を冠して「五郎
穴があいていて先がみえることから縁起の
⑦加賀れんこ
3.1 廃食油の BDF 化
柔らかく,皮が薄く,漬け物や煮物に適し
春といえばたけのこというくらい,季節感
あふれる野菜.
全国で栽培されているせりの中でも最も茎
が細く,彩りと独特の香りで評価が高い.
特徴的な太くて短い形.きめが細かく,甘
⑩源助大根
みが強く,肉質が柔らかい.金沢の冬の名
物「大根寿司」に使われるのがこの大根.
⑪金沢一本太
ねぎ
⑫二塚からし
な
「加賀ねぎ」「金沢一本」「金沢太ねぎ」
とも呼ばれる.普通のねぎよりも柔らか
く,寒くなるほど甘みが増す.
独特の強い辛みと鼻を突く香気を備えてお
り,おひたしや漬け物に最適.種はからし
の原料として使われる.
くわいは大きな芽をつけることで,「芽が
⑬くわい
出る=めでたい」と縁起を担いでお正月の
おせち料理に用いられる.
石川県で作られるずいきは,サトイモの
●図―4 地産地消弁当例(来客用)●
(Fig.4-Example of the "local food consumed locally" lunch
box (for guests))
⑭ずいき
一種である「八つ頭(やつがしら)」の葉
柄.皮をむいて茹で,酢の物などにして食
べる.
15番目の加賀野菜に認定された.葉に切
⑮金沢春菊
注2)
「加賀野菜」
1945 年以前から栽培され,現在も主として金沢で栽培され
ている野菜である.
66
れ込みが少なく,葉肉が厚く,柔らかい.
くせがないのが特徴.
(写真提供:金沢市農産物ブランド協会殿)
(解説提供:丸果石川中央青果 ! 殿参3))
PFU Tech. Rev.,20, 1,(05,2009)
社員食堂における‘地産地消’への取組み
使用を削減し,カーボンニュートラル 注3)として二酸化
を BDF に切り替えることで,1 リットル当たり約 38
炭素の排出量を削減している.
円のコスト安となり,年間 137 000 円の燃料費削減
が図れた.
3.2 BDF の特徴
(3)改善課題
軽油と同等の走行性ではあるが,燃費比較では 3 割
(1)環境影響軽減効果
硫黄酸化物(SOX)
,黒鉛などの排気ガスによる大気
ほどダウンしており,分析データによる生成工程の見直
し改善が今後の課題である.
汚染や人体への影響が軽減できる.
生成された BDF の分析結果は,硫黄分 0.0003 未
図−7は BDF の生成状態を,図−8は BDF で走
満質量%である(軽油の規格 0.001 未満質量%)
.
また,BDF の燃料消費に伴う二酸化炭素排出量はゼ
●表−2 小型 BDF 製造装置の諸元●
ロカウントとして扱われる(カーボンニュートラル)た
め,現状の軽油使用量年間 3 600 リットルでは,二酸
型 式
TBF-50 型(50 L タイプ)
化炭素約 9.4 トンの削減に相当する.
生成容量
30 ∼ 50 リットル/回
処理時間
常温時 10 時間で生成
外形寸法
W 900 mm × L 850 mm × H 1 630 mm
重 量
約 250 kg
電気容量
AC 100 V(50 / 60 Hz)
触媒装置
電動式攪拌装置内蔵
(2)経費削減効果
廃食油の処分費年間 421 000 円が削減され,しか
も,軽油(103 円/リットル,2008 年 12 月時点)
本社事業所内
PFU 本社食堂
ProDeS 食堂
FJIT 食堂
収
集
運
搬
BDF
社有車 2 台
グリセリン
堆肥と配合し
肥料化
生成前
生成後
PFU 本社
BDF を生成
ランチ工場
●図―5 BDF 処理フロー●
(Fig.5-BDF flow)
●図―7 BDF 生成状態●
(Fig.7-BDF creation)
●図―6 BDF 装置概観●
(Fig.6-External view of the BDF machine)
注3)カーボンニュートラル
ライフサイクルの中で CO2 排出量と吸収量が差し引きゼロカ
ウントを意味する.植物の成長過程における光合成による CO2
吸収量は植物の焼却による CO2 排出量と相殺されるため,廃食
用油を燃料として使用して発生する CO 2 は,地球大気中の
CO2 を増加させない.
PFU Tech. Rev.,20, 1,(05,2009)
●図―8 BDF で走行しているトラック●
(Fig.8-Truck powered by BDF)
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社員食堂における‘地産地消’への取組み
行しているトラックを示す.
生ゴミ処理機
機できれいな マ
ル に
み処理
生ご
なり
は
U
ま
とれた野菜は
F
し
P
3.3 食堂残渣(生ごみ)の堆肥化
た 1999 年 10 月より,
「生ごみ処理機」を導入し,
.
た
社員食堂へ
廃棄物の減量・再利用の促進がクローズアップされ
畑へ
社員食堂から出る食堂生ごみを焼却方式から堆肥化へ変
更した.
有機肥料化
残飯
生成した堆肥は,当社遊休地に農園(エコファーム)
を耕作し,肥料として再利用し,収穫できた有機野菜を
社員食堂で使用する自社内リサイクルを構築した
生ゴミとして
一時保管
(図−9参照)
.
(1)堆肥の用途
生ゴミ処理機
従来は業者廃却
自社エコファームでの使用のほか金沢近郊の有機野
菜農家,学校などに提供している.2007 年度の堆肥
●図―9 生ゴミのリサイクル●
(Fig.9-Recycling garbage)
生産実績は 4 トンであった.
(2)直近での収穫野菜
これまでに大根,小松菜,薩摩芋,南瓜などを作っ
ている.2007 年度の大根生産実績は 445 kg であり,
形成に当社グループを挙げて今後も取り組んで行きた
い.
2009 年度は主に大根,茄子,胡瓜を作る予定として
いる.
4
むすび
当社グループの事業範囲は今後も拡大していくが,
参考文献
参1)2008 年 PFU 環境報告書
http://www.pfu.fujitsu.com/eco/report.html
参2)金沢市農産物ブランド協会ホームページ
http://www.kanazawa-kagayasai.com/brand/
参3)丸果石川中央青果 1 ホームページ
http://www.maruka-ishikawa.co.jp/
様々な視点で地球環境の負荷低減に努め,循環型社会の
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PFU Tech. Rev.,20, 1,(05,2009)