平成21年度事業報告 1.はじめに 平成21年度の経済動向は、いわゆるサブプライムローン問題の後遺症の中で個人消 費、公共投資も低調に推移し景気回復の見通しもたたない中で、福祉輸送をとりまく事 業環境は益々厳しさを増したものとなった。 そういう中にあって、公共輸送機関の一翼を担うべく業界の仲間は、各地でその事業 責任を果たすべき必死の努力を展開してきた。 今後の一層の業界の発展を期すためには、青ナンバー事業者が大同団結して、更に国 民から信頼される事業運営を推進していくことが大切である。 以下事業報告を行うこととするが、その前に全福協が置かれている状況等について若 干振り返ってみる。 2.全福協がかかえる問題(福祉輸送事業の不採算と会費負担) 当協会の会員は、創立以微増、横這いそして微減状態という形で推移し、この数年は 減少傾向が顕著になっている。 その要因としては、福祉輸送事業の不採算性、会費負担の問題、景気の動向等があげ られる。 全福協は会費収入を主たる財源とした財団法人(特例財団法人)であり会費収入は維 持されなければならない。 しかし、昨今の厳しい事業環境の中にあって、全福協と全タク連という2つの協会に 加盟する事業者がかかえている会費負担というジレンマを解消するために、平成21年 度から、それまで均等割会費と車両割会費の二本だてになっていた会費を均等割会費の みとし会費負担の軽減を図った。 3.長期借入金の借り入れ そしてその減額分を補うために事務局経費を始め諸経費の大幅な削減を図った。 平成21年6月の第14回理事会及び第12回評議員会において基本財産の一部を担 保に供し長期借入金を借り入れることについて承認をいただいていたが、平成21年度 基本財産の一部を担保に供し長期借入金を借り入れることになった。 (1)組織の強化・活性化と財政基盤の確立について ① はじめに 全福協にとって組織の強化及び財政基盤の確立は、絶えず追求されなければならな い課題である。 平成21年度における組織の強化・活性化と財政基盤の確立に向けて取り組んでき た事業は次の通りである。 ア.会員拡大事業…「一社声かけ運動」 イ.福祉輸送サービス補償事業…保険事業の取組 ウ.福祉輸送サービス情報提供事業…ホームページによる情報提供 エ.教育宣伝事業…会報「全福協四季報」の発行による情報提供 オ.事業研修会や親睦研修会の実施…勉強会や親睦交流 更に、減少傾向にある会員の定着をはかることを主眼に、平成 21 年度は厳しい財政 事情でもあったが会費の軽減を図ることとし、それまで均等割会費と車両割会費の二 本だてであったものを均等割会費のみとした。 しかし、会員の減少を食い止めることはできなかった。 (第4号議案参照) ② 福祉限定事業者の組織化について 「福祉限定事業者」が、現在では5,000とも6,000とも謂われるほどに増 加している。 しかし、これまでも様々な働きかけしてきたがほとんど組織化されてこなかった状 況にある。 その中で、東京支部また大阪支部においてはそれぞれが開設した「福祉タクシー配 車センター」を通して、それぞれ約30事業者が会員または準会員として登録されて いる。 これらのことは限定事業者組織化の大きなヒントとなるものと考える。 ③ 正副会長会議の開催について 全福協組織の要である会長・副会長の皆さんには、社業をこなしながらの協会活動 をお願いしている。多忙の上にも多忙である。 そういう中にあって日常的な協会運営については、その折々に開催する「正副会長 会議」の場で諸問題を議論しつつ執行させていただいた。 (2)輸送形態別部会活動の活性化について 協会組織を大きく育てるためには、輸送形態別に組織された部会活動の活性化も大 きな課題の一つである。しかし平成 21 年度は部会の開催ができなかった。 その原因として考えられることは、1つは会員事業者の参加が減少したこと、2つ は各社1名程度の出席では5つの部会へのかかわり方が難しいことなどがあげられる と思うが、これらを打開し活性化を図るためには今後一層の努力が必要である。 ※現在設置している部会は次の通りである。 1.福祉輸送部会 2.介護移送部会 3.福祉バス部会 4.民間救急部会 5.限定事業者部会 (3)教育研修事業の推進について 全福協は、任意団体時代に始まり公益法人化された後も、親睦旅行と勉強会を兼ね た「総会・事業者研修会」を、毎年会員所在地において持ち回り開催してきた。 この「総会・事業者研修会」の優れた点を更に発展させるため、平成21年度から、 1つは事業者・指導者の育成強化と福祉輸送に係る事業研修を目的とする「事業研修 会」に、もう1つは主に懇親を目的とする「親睦研修会」に分割して開催することと した。 ① 事業研修会について 平成21年度「事業研修会」は、11月12日に東京において、①医療系民間救急 事業について ②子育て事業の推進についてを課題として開催したが、平成21年度 は残念ながら1回しか開催できなかった。 今後一層充実していく必要がある。 ② 親睦研修会について 平成21年度「親睦研修会」は、22日から24日まで、米沢市、蔵王、山寺、仙 台・松島などを巡る東北コースで開催された。 季節はちょうど秋まっただ中ということで、錦織なす紅葉の東北路を堪能する旅と なった。参加者は総勢28名。 ③ ケア輸送サービス従事者研修の実施 ケア輸送サービス従事者研修(以下「ケア研修」という。 )は、タクシードライバー のケア輸送技術の向上を図るため、厚生労働省(当時は厚生省)が開発したカリキュ ラムを活用して、平成13年度から始められた。 しかしこのケア研修は、様々な問題点が指摘されており、特にタクシー運転者の受 講者減少がこの数年続き、最近ではバリアフリー新法に対応した研修カリキュラムの 創設など新たな対応が迫られている。 ○ケア輸送サービス従事者研修の実施状況(修了者数) 年度 開催回数 13 1 14 16 15 19 20 21 計 4 3 86 修了者数 37 590 427 615 570 405 96 116 144 3000 同対前年 (%) 71.1 23.7 120.8 124.1 - 内二種免 37 590 427 265 210 156 58 88 120 1951 同対前年 (%) - 72.4 74.3 37.2 151.7 136.4 - 内一種免 - - - 350 360 249 38 28 24 1049 144.0 62.1 16 18 3 72.4 19 17 11 - 13 16 92.7 79.2 ※13年度は試行。 ④ 東京タクシーセンター研修業務の受託と推進 高齢者、障害者等がタクシーを利用した際に必要な介助等の初歩的な知識を運転者 に研修させるため、 (財)東京タクシーセンター(運転者研修所)から依頼された研修 業務について、引き続き受託した。 (4)教育宣伝活動の推進について ① 全福協四季報を発行 会員への情報提供を目的に「全福協四季報」発行している。今後一層の充実を図る ためにも会員の皆さまの投稿をお願いしたい。 ② ホームページの充実 更に、福祉輸送サービスに関連する資料、情報等の提供についてホームページを開 設している。 (5)調査研究事業の取組について ○ 高齢者・障害者等の交通安全や福祉輸送全国ネットワーク整備を目的とした調査 研究事業の取組について 車いすに依存せざるを得ない高齢者・障害者等の交通安全を図るための事業や高齢 者・障害者の外出を支援し、安全で安心な旅行や移動ができる移動支援のための全国 ネットワーク整備を要望する事業などの立ち上げが課題となっている。 (6)当面する課題への対応について ① 民間救急事業等の取組み 福祉輸送事業の中で民間救急といわれる分野の輸送も魅力的な事業分野である。 今後、民間救急業務従事者のレベルアップを図るため、 「民間救急部会」を中心に講 習会や経験交流会等の開催や民間救急業務に関する調査研究等をすすめる。 ② 福祉輸送事業に対する減税措置等 平成21年度の要望事項 ア.福祉輸送サービス事業に対する消費税等の非課税 イ.福祉車両に係る自動車税の減免 ③ 福祉輸送普及促進モデル事業と車両補助 この、 「福祉輸送普及促進モデル事業補助」は、地方自治体による財源措置があって 初めて動き出すことになるので地方自治体に対する働きかけが大切であり、その面で は中長期的視点での取組みが大切である。 ④ 運営協議会への対応について これまで運営協議会に委員として参加されている方々は引き続き、またこれから設置 されるであろう運営協議会に対しては地元タクシー協会及び当該自治体と密接に連携 をとりながら積極的に参加していただいた。 ⑤ 道路交通法等による交通規制等の強化について 自動車という運搬手段を用いて事業を行う福祉輸送事業者は、道路交通法等の交通 法規の改正が、時によっては事業の死活問題につながることがある。 これまでも全福協は、道路交通法等の改正により取締り規制が強化されたりする場 合には、交通規制緩和等に向けて警察庁等に対して要請を行ってきた。 今後もこのような課題がある場合には機会をとらえてよりよい方向で解決策が見い だせるよう努力することが大切である。 (7)行政への対応について ◎ 各種委員会への参加 平成21年度、国土交通省が設置した各種委員会等に次の通り委員を派遣し対応し た。 1. 「地域のニーズに応じたバス・タクシーに係るバリアフリー車両の開発」検討会( 「バ リアフリー車両開発検討会」) ・高齢者・障害者等の円滑な移動手段に適したバス・タクシー車両の開発をめざし た検討会。 ・委 員 名 水田 誠(副会長) ※全タク連委員として川村泰利副会長が出席。 ※平成21年度の調査を受けて平成22年度の検討会へ引き継がれる予定。 2.自家用有償旅客運送フォローアップ検討会(有償運送フォローアップ「本検討会」 ) ・平成18年度に改正された道路運送法のフォローアップをすすめるための検討委 員会 ・委 員 名 川村泰利、佐藤雅一、水田 誠(以上副会長) 3.バリアフリーネットワーク会議 ・関係者が一同に会し、バリアフリーの現状や課題を共有し意見を交換するための 国土交通省主催による会議。(年1回程度開催) ・委 員 名 川村泰利(副会長) 4.東京運輸支局バリアフリーネットワーク会議 ・都内における関係者が一同に会し、バリアフリーの現状や課題を共有し意見を交 換するための東京運輸支局主催による会議。 (年1回程度開催) ・委 員 名 水田 誠(副会長) 高柳 茂(専務理事) (8)バリアフリー新法への対応等について ① バリアフリー新法への対応-ユニバーサルデザインタクシー等の開発検討 バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の施 行(平成18年12月20日)に伴って国が示した福祉タクシー整備の目標数は、平 成22年度までに1万8千台とされているが、平成21年度段階の数値は、その目標 にはほど遠い数値(10,742台)となっている。 一方、地域のニーズに応え、低コストのバリアフリー車両(ユニバーサルデザイン タクシー等)の実現を図るべく国土交通省は、利用者、自動車メーカーそしてタクシ ー、バスの交通事業者と連携して検討会(地域のニーズに応じたバス・タクシーに係 るバリアフリー車両の開発検討会/委員長:鎌田実(東京大学 高齢社会総合研究機 構長)/会議の開催状況については(7)行政への対応について参照)を立ち上げ、 平成19年度以来精力的に検討をすすめてきた。 平成21年度の検討会において、トヨタ及び日産によるモデル車両の試作車が提示 され、また10月に開催された東京モーターショーにも展示されるなどして多くの注 目を集めた。 平成 22 年度も引き続き検討会が開催される予定となっている。 ② ケア輸送サービス従事者研修の見直しとバリアフリー新法対応研修の創設 ケア輸送サービス従事者研修の見直しについては、平成20年秋から研修の共同主 催団体である全タク連、シルバーサービス振興会の3者協議がスタートし、20年度 中に2回の協議が行われたが、平成21年度は具体的進展がなかった。 今後の検討の方向としては、国土交通省がすすめているユニバーサルデザインタク シー等の開発にあわせてバリアフリー時代に対応したタクシー運転者が最低限必要と する基本的な研修カリキュラムの開発がきっきゅうの課題となっているところからを 新たに立ち上げる方向で、平成21年度はその準備を行った。平成 22 年度中に成案を 得るようにすすめたい。
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