平成23年度 第三セクター等点検評価委員会 点検評価報告書 平成24年2月29日 はじめに 本報告書は、平成23年度第三セクター等点検評価委員会において、糸満市が主に 出資する3団体の経営状況等について点検評価を行い、その結果について取りまとめ たものです。 国は、自治体が抱える第三セクターの経営状態を第3者の視点で明らかにすること で、当該セクターの財務悪化等が自治体に与える財政的影響を最小限に抑え、又はこ れを未然に防ぐことを目的として、自治体自らが早期にその情報を入手し、かかる対 策を講じる機会として活用していくために、当委員会のような外部組織による点検評 価作業を行うよう各自治体に対し求めています。 当委員会は、そうした背景の下、平成23年11月17日付けで糸満市長から委嘱 を受けて発足し、同月から2月にかけて合計4回の委員会を開き、平成21年度第三 セクター等点検評価委員会(以下、 「前回委員会」という。)が用いた手法に倣い、点 検作業を行いました。 その結果、前回委員会の指摘事項について、しっかり対応されている部分とその取 組が未だ十分とは言えないものそれぞれが認められるとともに、一部には昨年発生し た東日本大震災の影響等も見受けられるなど、従前からの継続課題に加え、新たな課 題も認められました。 今回の委員会においては、見えた課題に対し糸満市及び第三セクターが具体的な対 策を講じていくことこそが重要との認識から、市及び第3セクターそれぞれが今後取 り組むべき経営課題等について所見としてまとめることとしました。本報告書がそう した具体的な行動へとつながっていくことを強く望みます。 また、今後の当委員会の機能を十分に発揮していくためにも、できる限り各セクタ ーの決算後、早期に点検評価を実施し、委員会の意見が速やかに経営対策等に活かさ れていくよう委員会の設置(運営)時期等についてもご配慮くださいますようお願い 申し上げます。 平成24年2月29日 第三セクター等点検評価委員会 委 員 長 大 城 英 孝 1 点検評価対象団体 市の出資等額が25%以上の法人(市の保有割合) ・糸満市土地開発公社(100%) ・財団法人糸満市公共施設管理センター(100%) ・糸満観光農園株式会社(50%) 2 経営評価書 平成19年度委員会が用いた点検評価手法であるが、前回委員会(平成21年度)同様に、 各項目の状況の変化を比較・対比できる観点から、以下の各項目について第三セクターが作成 する経営評価書(自己評価)について、一部の団体を除き、その点検を行った。 (1)視点及び指標 (1)目的適合性 (2)計画性 (3)組織運営 (4)財政健全性 ①事業の意義 ②事業の効果 ③市民(顧客)の満足度の把握 ④目標達成度 ①経営基本方針の策定 ②中長期経営計画の策定 ③年次事業計画の策定 ④計画と実績の差異分析 ①人員構成 ②職員 ③業務チェック機能 ④情報の公開性 ①流動比率 ②負債比率 ③自己資本比率 ④借入金依存度 (2)経営評価の判定基準(自己評価の仕方) ア 各視点における評価指標の評点数の合計により判定し、4段階(A、B、C、D)で評 価。 イ 各視点における評価指標ごとに25満点とし、4つで100点満点。 ウ 従って、4つの視点の総評価は400点満点。 ※( )は合計値 A 80(320)点以上 経営健全が担保されている。 B 80(320)点未満 60(240)点以上 ある程度経営健全性が担保されている。 C 60(240)点未満 40(160)点以上 経営改善を要する。 D 40(160)点未満 抜本的な改善又は統廃合の検討を要する。 ※今回の経営評価書(自己評価)の提出対象は、糸満市土地開発公社及び糸満観光農園株式会社。 1 3 リスクコントロールマトリックス(RCM)評価 RCMとは、経営が曝されているリスクをどのようにコントロールしているのか、その リスクをヘッジするためにどのような取組を行っているのかといったものをマトリックス にまとめ、各個別の経営上のリスクを性質別、期間別(短期的・長期的) 、優先度、プライ オリティの差、といった様々なレベルや緊急度の違い浮き彫りにしていき、セクター自身 が、その対策を講じていくために作成するものである。 RCMでは、そうして整理した各リスクに対する取組がどのように為されてきたかを客 観的に把握できることから、前回委員会に引き続き、今回も本手法を採用することとした。 今回は、新たに、 「リスクの顕在化の有無」と「その発生時期」について項目を新設(改 良)した上で、各リスクについて、重要度を3段階(A~C)で付け、それぞれリスクに 対する取組が「十分できている」 、 「一部できている」、「不十分」の3段階で評価すること で合計点を配点した。 (達成度満点は100点(%)) ただし、今回の委員会においては、セクター側の自己評価のみとし、委員会による評価は実 施しないこととした。 ※今回のRCM表の提出対象団体は糸満観光農園株式会社のみ。 ○リスク重要度の設定 重要度 参考指標 A 非常に重要。 (5 点) 経営上、緊急に対処を要するもの B 必要 (3 点) C (1 点) 説明等 左記の指標設定は、リスクの重要性、 優先性といった認識に基づき判断。 必要であるが直ちに経営に影響を 与えるものではないもの ※リスクの重要度の設定は、セクター 自身によるもの(自己評価)と委員 会等(第三者評価)によるもの双方 で行う。 ○リスクに対する対応等の評価 評価配点 A (満点) 参考指標 説明等 リスクに対する対応が具体的になされて いるか、どうかで判断する。 取組十分。 懸念なし。 ・第 3 者から見て、「取り組んでいること」 が確認できること。(可視化されているか) B (満点の 50%) 取組んでいるが不十分。 一部懸念あり。 C (0 点) 取組不十分。大いに懸念あり。 ・取組内容が一般的に「有効」なものと判 断(認定)できること。 ・リスクが顕在化しこれが現在も続いてい る場合はCとなる。 ○リスク対応達成度(0~100%) 重要度係数 〔1、3、5 点(3 段階)〕 各項目の達成度 の合計値 × ÷ 対応の評価 〔0、50、100%(3 段階)〕 各項目の重要度係数 (最大値)の合計 (満点値) 2 = 各項目の達成度 = リスク対応達成度 (0~100%で表示) <RCM表の様式例> リスクコントロールマトリックス表(経営管理) 評価:取組に対して懸念なし=1点、一部懸念あり=0.5点、取組不十分=0点 リスクの認識 担当部 (組織) 大分類 中分類 小分類 リスクの内容 1 2 3 4 5 リスクの顕在化が 経営に与える影響 6 平成 実際にH 21-22年度ま でにリスク の顕在化が生じ たかど うか、記入。(実際に起こ っ たか) 重要度(問題解決のプライオリティ)=A(5点)、B(3点)、C(1点)※リスク発生率も考慮すること。 リスクの 顕在化 (有無) 左記が 「有」の場合 22 重要度 リスクへの対応( H2 1 - 2 2 年度) 実績 ※実際にリスクの顕在化が生じた場合は、その内容とその対応実績につい 評価 発生時期 て記入すること。 (a) (b) 8 9 10 11 7 年度 セクター自己評価 評点 (a)×(b) 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 合計 10 0.0 件 0.0 リスク対応達成度 4 点検評価結果の公表 糸満市ホームページへ掲載し、公表すること。 5 点検評価作業 今回の点検評価は、各団体の課題に応じて点検項目を絞り込むとともに、前回委員会(平 成21年度)の指摘事項への対応状況を主に、団体ごとにそれぞれが作成する資料や直接聴 取を行うかどうかなどの要否を判断しつつ、点検評価作業を実施した。 ○点検評価作業実施状況 糸満市土地開発 公社 糸満市公共施設 管理センター 糸満観光農園株 式会社 【○:実施済、×:不要(実施しない) 】 ① ② 前回委員会 指摘への対 応状況 経営 評価書 (自己評価) ③ ④ ⑤ RCM 表 直接 聴聞 現場 視察 備考 ○ ○ × × × ・①②資料 ・決算書 ・土地処分状況資料等 ・各種パンフレット等 ○ × × × × ・①資料 ・決算書 ○ ・①②③資料 ・決算書 ・その他経営改善の取組に関 する資料 ・各種パンフレット等 ○ ○ ○ 3 ○ 6 点検評価結果(総合所見) 今回の点検評価は、前回委員会(平成21年度)における点検評価作業に倣って行い、各 団体について前回委員会の指摘に対する対応状況を中心とした現状把握と、各団体における 課題等の整理を行った。 今回の委員会においては、見えた課題に対し糸満市及び第三セクターが具体的な対策を講 じていくことこそが重要との認識から、市及び第3セクターそれぞれが今後取り組むべき経 営課題等について、以下のとおり所見としてまとめることとした。 総合所見 (1)糸満市土地開発公社 対 象 総合所見 ・ 前回委員会の指摘事項については、それぞれ対応していることが確認できた。 ・ 無借金経営であり、財務上は健全ではあるが、今年度(平成 23 年度)決算に ついては厳しい状況(経常赤字)も予想されるなど、早期に対策を講じる必要 がある。 ・ その原因の一つとして、東日本大震災の影響等(埋立地の敬遠ムード、分譲 地区への小学校移転開校の効果が表れていない点など)も考えると、次年度以 セ ク タ ー 側 降、同社の営業状況が著しく好転することは想定し難い。 ・ そのため、国道331号バイパスの開通による効果を見極める時期を明確に 設定するとともに、その次のアクションを起こすための経営上のトリガーポイ ※ ント を早期に定めておくことが重要。 ※ トリガーポイント リスク・マネジメントにおいて「発生時対策」を発動するポイントのこと。上記の場合、 リスクが生じてから対策を考えるのではなく、具体的な対策(行動計画)とその発動要件(条 件・時期等)を事前に準備し、即応できるようにしておくことを指す。 ・ 市 側 経営状況の逐次把握し、同社組織のあり方ついて具体的な検討に着手するこ と。 ・ 経営状況に応じた組織見直しが実施できるような市としての政策を事前に用 意しておくことが望ましい。 4 総合所見 (2)財団法人糸満市公共施設管理センター 対 象 セ ク タ ー 側 総合所見 ・ 前回委員会同様、特に指摘することはない。引き続き、法人解散(平成24 年度末)に向け、法人としての準備をしっかりと行うこと。 ・ 前回委員会同様、特に指摘することはない。引き続き、法人解散に向け、市 市 としての準備をしっかりと行うこと。 ・ 同法人の解散を見据え、現在、同法人が管理している施設の管理手法(指定 側 管理)の在り方についても、より効率的かつ行政サービスを向上させていく視 点で取り組んでいくことが望まれる。 5 総合所見 (3)糸満観光農園株式会社 対 象 総合所見 ・ 非常に多くの問題が山積しており、前回委員会時よりも課題は増大している。 ・ 現在、同社は個別の課題に一つひとつ対応できる状況ではない。 ・ セ ク タ ー 側 多くの個別問題があるものの、特に現時点において重要視される課題とその 対応策について以下のとおり整理する。 (現状・課題) ・ 一部の取組については成果も出ている点は確認できるが、根本的課題の解 決には至っておらず、事業性の欠如が継続している状態にあり、経営的危機 に直面している。 ・ 財務面においても緊急的な対応(資金的手当)を要する状態にある。 ・ 根本的課題の解決のために必要な組織体制が整備できていない。現在の体 制は不十分である。 ・ 課題は経営アドバイザー会議(平成21年度)でも示されているが、その 後これまでの解決に向けた取組は不十分である。 (課題への対応) ・ 事業性の欠如の解消が最重要。具体的な事業案を積み上げたアクションプ ラン(事業計画)を策定すべき。 ・ 上記アクションプランを策定するためには、専門家等を含めた再生チームの 編成が必要である。 ・ 上記と併せて、資金的手当の必要性について、至急、市及び関係機関と協 議等対応すべき。 ・ ・ 新年度を前に、上記「再生チーム」の設置に向けた取組みを強化すべき。 市としての営業協力・支援体制が不十分であるため、市職員を始め、市全体 を挙げて観光農園を支援していく気風作りが必要。 前回委員会報告書で述べられている「第三セクター経営破たんの主な原因※」 を踏まえた上で、市は同社の在り方を含め、早急にその対策と具体的な行動を ・ 市 側 取らなければならない状態・時期に置かれていることを十分認識すること。 ・ また、市としての同社への関与は本来必要最小限とすべきであり、現在の役 員体制は迅速性・責任の明確性に欠ける点がある。この点については、今後、 分社化等を含め同社法人としてのあり方について、出来る限り早期にその方向 性について政策的選択肢を準備しておく必要がある ※ 前回委員会報告内容「第三セクター経営破たんの主な原因」は次ページに再掲。 ・ 市 ・ セ ク タ ー 共 通 市・セクターともに事業再生に向けての更なる取組みの強化が求められる。 ・ 同社の設立経緯やコンセプトなど十分共感できる部分は多いものの、市及び同社 のこれまでの取組姿勢や具体的取組内容は不十分と言わざるを得ない。 ・ 同社の経営は非常に厳しい状況にあるが、現時点において事業再生を諦めるのは 時期尚早であり、事業再生に向けた具体的取組を行うべき余地は大いにあるものと 思われる。 6 H21 年度委員会報告書より引用 平成21年度委員会における糸満観光農園㈱に対する意見(H22.3.26) 非常に多くの問題が山積している。 今回の点検評価作業では、経営改善に向けた取組も行われていること自体は確認でき たが、その取組もまだ途中段階であり、具体的な経営改善計画はまだ策定されていない 状況である。 いずれにせよ緊急を要する経営状況にあることは明らかであり、前回委員会の指摘に あるとおり、抜本的な経営改善計画の策定とその計画に基づく具体的な取組を、それぞ れ期限を定めた上で、早急に行う必要がある。 (なお、一定の取組がなされた段階で、別途改めて点検評価等も行うべき) 前回(H19 年度)委員会指摘事項 ①行政と同社の役割分担を明確にすること ②新たな経営計画の策定 ③第三セクターとしての機能を十分に発揮できる体制の構築(市も含め) 次に今回のRCM表で確認された未対応事項についても、具体的な対応策を含め、早 急に検討すべき。上記経営改善計画とリンクさせながら定期的なRCMによる自己点検 を行うとともに、その点検精度を高めていくよう市とともに努力することを求める。 (所見に対する補足) 近年、経営破たんする第三セクターが目立つが、その原因としては、慶応義塾大学法 科大学院教授の中島氏の研究からも、以下のような点が挙げられているので、ここに引 用しておきたい。 この点については、市としてしっかり認識するとともに、糸満観光農園(株)を経営破 たんに陥らせないための対策作りの参考とされたい。 ○第三セクターの経営破たんの主な原因 ①当初の事業計画の見通しの立て方が甘く、採算性に無理があるにも拘わらず、 損失補償や補助金、無利子融資制度をあてにした安易な設立形態・経緯にある こと ②事業の進行に応じた事業計画の修正・変更が遅れがちであること ③官民の寄合所帯であることによる無責任な体制になっていること ④そもそも低収益事業を担うため、公共・公益的目的を達成できれば、経営状況 は赤字であっても構わないという安易な考え方から収益力増強に向けた経営努 力が不足がちであること ⑤地方議会等の圧力から地域貢献と称して割高の地域内原材料を購入させられ、 過大な従業員を抱えるなど、地域内の利害関係が排除しにくいこと ⑥上記のような状況にありながらも、情報開示やアカウンタビリティが不十分で あり、経営状況を内部や外部からチェックする機能が十分働いていないこと 7 7 点検評価委員会の開催状況(平成23年11月~平成24年2月) (1)第1回委員会 ・日 ・場 時:平成23年11月17日(木)16:00-17:20 所:市役所3F 会議室(3-b) ・出席委員(■出席、□欠席) ■委員長 大城 英孝 ■委員 佐藤 仁哉 ■委員 玉城 勲 ■委員 兼島 景孝 ■委員 金城 徹 ・次第 (1)委嘱通知書交付 (2)委員、事務局紹介 (3)委員長互選 (4)委員会の概要等の説明(事務局) (5)委員会審議 ・今後の委員会審議の方法・評価方法等について ・次回委員会までに必要な作業の確認 (2)第2回委員会 ・日 時:平成24年1月10日(火) 15:00-17:00 ・場 所:糸満市観光農園 会議室 ・出席委員(■出席、□欠席) ■委員長 大城 英孝 ■委員 佐藤 仁哉 ■委員 玉城 勲 ■委員 兼島 景孝 ■委員 金城 徹 ・関係者出席 経済観光部商工観光課(副参事 仲吉正弘) 、 糸満観光農園(株)代表取締役専務 玉城 樹 ・次第 (1)第1回委員会審議内容の確認 (2)点検評価作業(糸満観光農園株式会社) ・現場視察 ・経営状況等ヒアリング ・質疑応答 (3)事務調整 (3)第3回委員会 ・日 時:平成24年1月25日(水)10:00-12:00 ・場 所:市役所4F 糸満市土地開発公社会議室 ・出席委員(■出席、□欠席) 8 □委員長 大城 英孝 ■委員 佐藤 仁哉 ■委員 金城 徹 ■委員 玉城 勲 ■委員 兼島 景孝(委員長代理) ・次第 (1)点検評価作業 ・糸満市土地開発公社の経営状況について ・財団法人公共施設管理センターの経営状況について ・糸満観光農園株式会社の経営状況について ・各セクターに対する意見等の整理 (2)次 回 委 員 会 日 程 の 確 認 (4)第4回委員会 ・日 ・場 時:平成24年2月29日(水)15:00-16:40 所:市役所3F 会議室(3-b) ・出席委員(■出席、□欠席) ■委員長 大城 英孝 ■委員 佐藤 仁哉 ■委員 玉城 勲 ■委員 兼島 景孝 ■委員 金城 徹 ・次第 (1)第1~3回までの意見等の要点整理(確認) (2)平成 23 年度点検報告書(案)について取りまとめ ※委員会終了後、市長へ報告書提出 平成23年度 第三セクター等点検評価委員会委員 氏 名 おおしろ えいこう 大城 英孝 さとう まさや 佐藤 仁哉 きんじょう とおる 金城 徹 たましろ いさお 玉城 勲 かねしま けいこう 兼島 景孝 職名 委員長 委員 職業等 任 期 元市役所職員 おきなわ地域戦略研究所 代表 平成 23 年 11 月 17 日 法務博士 から 委員 元金融機関(監査部)職員 平成 24 年 3 月 31 日 委員 総務部長 委員 企画開発部長 まで 事務局:糸満市 企画開発部 行政経営課 9
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