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Ⅳ
ニューマテリアルセンター事業
わが国産業界の国際競争力向上に資する観点から、国家施策に沿った事業とし
て金属系新素材の標準化とそれに関連する研究開発を推進してきた
標準化事業に関しては、アジアと一体となった国際標準化に重点を置いてテ
ーマの選定と提案に努める。また金属系新素材標準化のナショナルセンターと
しての社会的使命と責任を果たすべく、過去 26 年間に制定に関与してきた 130
件の JIS、ISO のメンテナンスを継続して行う。
研究開発事業に関しては、ニューマテリアルセンターの特質に鑑み、基本的
にハードを伴う研究開発から、人材等ソフトを活用できる調査研究にシフトす
る。また地域中小企業の技術開発支援のため、国の支援事業に積極的に応募す
る。
<委員会活動>
1.ニューマテリアルセンター運営委員会
(1)
(2)
(3)
運営委員会
運営会員総会
幹事会
<活動内容>
1.標準化事業
(1) 輸送機器用軽量化板材の二軸引張試験方法の国際標準化事業
(経済産業省委託、三菱総研再委託事業)
輸送機器の軽量化用板材料としてはアルミニウム合金、高張力鋼等が使用されているが、
これらは、延性に乏しく成形不良(破断、スプリングバック等)を発生し易い。この難点を
解決するためには、有限要素法を用いた成形シミュレーションにより成形不良を事前予測す
る必要がある。このシミュレーションで成形性を高精度に予測するには、シミュレーション
ソフトウェアに組み込まれる材料モデルの高精度化が必須であり、そのためにはブレス部品
製造時の応力状態に近い2軸引張試験法に基づくデータを得ることが必要である。
軽量化用板材料の適用拡大を促進するために、平成 20 年度~22 年度に NEDO の委託を受
けてこれら材料の2軸応力試験法について標準化の調査研究を実施し、合理的評価試験方法
を開発して JIS 原案と ISO 提案用 WD
(作業原案)を作成した。そして昨年1月に ISO/TC164(金
属の機械試験)/SC2(延性)に NP(新規 PJ)として提案し、承認された。
平成 23 年度からは、経済産業省の委託を受けて引き続き国際標準化を目指すことにし、7
月には ISO/TC164/SC2 の賛否投票において第2ステップの CD(委員会原案)の承認を得た。
平成 24 年度は、DIS(国際規格案)の承認を得るべく取組む。
(2) ポーラス金属の圧縮試験方法の国際標準化事業
(経済産業省委託、三菱総研再委託事業)
自動車の軽量化と衝突安全性を目的に、ポーラス金属を自動車のクラッシュボックスやボ
ンネット等に適用することが検討されている。その為にはポーラス金属について衝撃吸収特
性などの耐衝撃性能を評価する試験方法の開発、標準化が不可欠である。
平成 19 年度~平成 21 年度まで新規に高速圧縮試験方法の標準化調査研究を実施して高速
圧縮試験方法の JIS 骨子を作成した。また、既に JIS に制定した静的圧縮試験方法に関して
は JIS をベースとする ISO/TC164/SC2 に提案し、CD として承認された。
平成 22 年度には NEDO からの委託を受けて、上記高速圧縮試験方法と静的圧縮試験法の国
際標準化に取組んだ結果、高速圧縮試験方法は ISO へ NP 提案し、静的圧縮試験方法は DIS
として承認された。
平成 23 年度は、高速圧縮試験方法については、NP として承認を得、更に次のステップの
CD(委員会原案)案を作成し、承認を目指して取組んだ。また静的圧縮試験方法について、
最終ステップの FDIS(最終国際規格案)として承認され、ポーラス金属関連の ISO 第一号
として制定、発行された。
平成 24 年度は、高速圧縮試験方法について、CD の承認を及び DIS 案の作成を目指して取
組む。
(3) 金属材料の二軸バルジ試験方法
(経済産業省補助事業)
金属板材料、円管および塊材料などの金属材料が、部品成形の過程およびその後の使用中に受
ける任意の塑性変形過程を自在に再現できる材料試験方法(以下、二軸バルジ試験方法)につい
て、アジア諸国と共同で合理的な特性評価試験方法を開発し、その国際標準(ISO)原案を作成
して ISO/TC164(金属の機械試験)/SC2(延性)へ提案する。
本PJの目的は、①二軸引張変形を受ける金属材料の、塑性変形初期から大ひずみ域(数%~
10%ひずみ以上)に至るまでの変形特性を適正に評価できる試験法を開発し、②それをアジア諸
国の試験機関に広めて、その認証能力向上を支援することにある。
平成23年度の経済産業省・アジア基準認証推進事業へ提案し、採択された。早速アジア諸国との
連携体制構築に取り組み、12月には韓国と中国を訪問し各々中心的研究機関である韓国標準化・研
究機構(KRISS)及びハルビン工業大学・上海交通大学とラウンドロビン試験等を通し、連携してI
SO化を推進することで合意し、取り組みを開始した。また、二軸バルジ試験機も開発を完了した。
平成24年度は第2年目に当たり、継続して活動し、二軸バルジ試験方法のISO化のためのデータ収
集と試験方法の確立及びISO原案の作成を行い、中国、韓国と連携してISO/TC164/SC2へのNP提案を
推進する。
(4)タービンの遮熱コーティングの特性評価試験方法
(経済産業省補助事業)
火力発電ガスタービンの心臓部である高温部材に必要不可欠な遮熱コーティング(TBC)につい
て、最も重要な熱伝導率測定法とヤング率試験方法を開発し、本試験方法の開発過程でラウンドロ
ビンテスト等を通して、遮熱コーティングの性能を適正に評価できるようにアジア諸国の試験機関
の認証能力向上を支援することを目的とする。個々の特性評価試験方法については、その国際標準
(ISO)原案を作成してISO/TC107(金属及び無機皮膜)へ提案する。
平成23年度は経済産業省・アジア基準認証推進事業へ提案し、採択された。
早速アジア諸国との連携体制構築に取り組み、11月には韓国と中国を訪問し各々中心的研究機関
である韓国物質材料研究開発機構(KIMS)及び上海セラミックス研究所とラウンドロビン試験等を
通し、連携してISO化を推進することで合意し、取り組みを開始した。また、熱伝導率測定法につ
いて、JISをベースにして、各種施策検証を行いISO原案を作成し、ベルリンで2月に開催したISO/T
C107国際会議でNPとして提案した。
平成24年度は第2年目に当たり、継続して活動し、遮熱コーティングの熱伝導率測定法についてN
Pとしての承認、ヤング率試験方法については来年2月に韓国で開催のISO/TC107総会でのNP提案を
目指し、中国、韓国とはラウンドロビン試験等を通して連携し、ISO化を推進する。
また、これまでNEDO委託事業及び経済産業省の国際標準重点事業として取り組んできた遮熱コ
ーティングの健全性評価試験方法(熱衝撃・熱サイクル試験方法)について平成23年度にDIS(国
際標準原案)として承認された。平成24年度はFDISとしての承認、ISO制定を目指して活動する。
尚、温度傾斜場の耐熱試験方法は平成23年12月に遮熱コーティング関連ISOの第一号として制
定、発行され完了した。
2.研究開発事業
(1)長寿命・微細 PCD(コバルト焼結ダイヤモンド)金型部品の開発
(近畿経済産業局受託事業)
携帯電話を始めとする情報家電の発展に伴い、各種電子部品の需要が増加しており、製造に使
用される金型に対して、高精度・微細化や長寿命化の要求が強まっている。PCD(コバルト焼結
ダイヤモンド)は、これらの要求にこたえる材料として有望視されているが、金型エッジ部の健
全性や金型製造時の熱応力による破損などの問題があり実用化に到っていない。PCD 実用化上の
課題解決のため、光励起による研磨法や高精度の放電加工法、熱応力を低減する接合技術などを
開発する。
平成 22 年度の経済産業省・戦略的基盤技術高度化支援事業へ提案し、採択された。平成 24
年度は第 3 年目(最終年度)に当たり、目標達成に向けて活動を行う。
(2)太陽光発電・次世代照明向けガラス用長寿命金型の開発
(近畿経済産業局受託事業)
再生可能エネルギーによる高効率発電、省エネルギーを実現する次世代照明などに不可欠な、鏡
面・複雑形状をもつガラス製品の量産技術開発は、喫緊の課題である。ところが、従来技術では、
金型の高温強度が不足しており、量産化技術は未確立である。そこで、ウェット・ドライの複合技
術による金型材料の改質で、鏡面・微細構造を損なうことなく、量産に耐えうる金型強度を実現す
る技術を開発し、課題の解決を図る。
平成23年度の経済産業省・戦略的基盤技術高度化支援事業へ提案し、採択された。平成24年度は
第2年目に当たり、継続して活動を行う。
3.事業企画・技術交流活動の推進
(1)
新素材関連団体との連携
材料技術振興政策を推進する経済産業省の原局原課の関係者と新材料開発および試験評
価方法の標準化などを推進する下記6団体の代表者が一堂に会する「新素材関連団体連絡
会」に参加し、新材料の開発・利用促進に関する情報の交換を行う。
[新素材関連団体]
(財)金属系材料研究開発センター(JRCM)
(財)化学技術戦略推進機構(JCII)
(財)ファインセラミックスセンター(JFCC)
(社)日本ファインセラミックス協会(JFCA)
(社)ニューガラスフォーラム(NGF)
(財)大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター(NMC)
4.普及・広報活動
NMC 事業活動を通じて得られた成果や最新の技術情報などについては、できるだけ迅速かつ的
確に会員企業の技術者・研究者に提供するために下記事業を展開している。
(1) NMC ニュースレターの発行
NMC の各種事業に関する活動状況と行事予定、新技術・新素材の開発動向に関する情報提供の
媒体として、毎月発行して会員サービスの充実を図っている。
(2) NMC 講演会の開催
国の施策、先端材料、先端技術の紹介を中心に会員企業の関心の高いテーマを取り上げて講演
会を開催する。上期は特別講演会を実施した。
5.学協会事務などの受託
(1)
「日本鉄鋼協会関西支部・日本金属学会関西支部」の事務
日本鉄鋼協会・日本金属学会関西支部の事務を受託して、支部運営ならびに材料セミナー
などの支部事業を支援する。