Liaison News No.6 - 富山大学

国立大学法人 富山大学 地域連携推進機構 産学連携部門
Collaboration Division, Organization for Promotion of Regional Collaboration,
University of Toyama
富山大学リエゾンニュース
NO.6
May 2010
〒930-8555富山市五福3190 TEL:076-445-6938 FAX:076-445-6939
URL:http://www3.u-toyama.ac.jp/sangaku/(ホームページがリニューアルされました)
CONTENTS
□ 大学発新情報の紹介
( 1 ) …………… 1
□ 企業からの共同研究便り …………… 6
□ 大学発新技術の紹介
( 2 ) …………… 3
□ トピックス …………………………… 7
□ 新スタッフの紹介 …………………… 5
□ 今後の主な行事 ……………………… 8
大学発新技術の紹介(1)
次世代ディスプレイを目指した有機ELの研究
大学院理工学研究部(工学系)准教授 中 茂樹
生 年 月:1968年2月
略 歴:1992年富山大学大学院電子工学専攻修了,1992年富山大学工学部
助手,2007年富山大学大学院理工学研究部(工学)助教,2008年現職
博士(工学)
専門分野:有機電子デバイス
連 絡 先:Tel 076-445-6731 [email protected]
Ⅰ.はじめに
進化し,まだ見ぬディスプレイを実現するため,研究
かつては「三種の神器」の一つであったブラウン管
開発が進められています。近未来のディスプレイとし
型テレビは家電量販店から姿を消し,液晶やプラズマ
て期待されているものに,有機EL(エレクトロルミ
といった大型かつ薄型テレビが所狭しと並べられてい
ネッセンス)ディスプレイが挙げられます。有機EL
ます。政府のエコポイント制度と2011年7月に控え
は超薄型化,超軽量化,フレキシブル化が可能といっ
るデジタル放送への完全移行に後押しされ,売り上げ
た特徴を持ち,一部携帯電話,携帯音楽プレイヤー,
も好調のようです。一方,昨年大ヒットとなった映画
小型テレビとして実用化されています。また面状発光
「アバター」では3D表示により臨場感あふれる映像
が可能であり,照明としての用途も検討されています。
が人々を魅了し,今年は家電メーカー各社から3Dテ
当研究室では,このような有機ELを始め,有機トラ
レビが発売されると報道されています。また,SFの
ンジスタ,有機太陽電池といった,有機電子デバイス
世界では宇宙船の司令室では,透明な窓硝子に情報が
を中心に研究を行っています。本稿では,最近取り組
表示されたり,壁一面がディスプレイとなったり,現
んでいる有機ELに関するいくつかの研究を紹介しま
状の技術では実現困難なディスプレイが当たり前のよ
す。
うに登場しています。このように,ディスプレイは日々
1
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Ⅱ.両面発光有機ELの開発
Ⅲ.有機ELフロントライトの開発
携帯電話のディスプレイは,そのほとんどが液晶で
近年話題の電子ペーパーなどの非発光型ディスプレ
す。
折りたたみ式端末では2枚の液晶パネルを搭載し,
イは暗所でのフロントライトが不可欠となります。こ
開いた状態と閉じた状態で異なる液晶パネルによって
こで,フロントライトは,表示に邪魔なく被照射物側
表示しています。1枚のパネルでいずれの状態におい
にのみ効率良く光を照射する必要があり,フロントラ
ても表示が可能であれば,携帯電話はより薄型・軽量
イトからの発光が直接に観察者の目に入ると表示のコ
化が可能になります。近年,透明有機ELパネルを用
ントラストは極端に悪化します。また,現状の導光板
いた超薄型の両面発光ディスプレイの可能性が示され
を用いたフロントライトでは,発光面の輝度が不均一,
ています。この透明有機ELパネルを表裏から同時に
視野角依存性が大きいといった問題が挙げられます。
表示を見る場合,一方は正常に表示可能ですが,もう
これに対し,有機ELフロントライトは観察者側に遮
一方の面では表示が左右反転することから,2人が対
光層を配置した構造となります。この様な構造では,
面した状態で表示を見ることが不可能となります。ま
発光面の輝度が均一で,視野角依存性が無く,観察者
た,この両面発光有機ELディスプレイは常に両面に
側への漏れ光も無い優れた特長の実現が可能となりま
発光しているため,携帯電話への応用を考えた場合,
す。そのコンセプトを図3に示します。透明補助電極
閉じた状態でも内側へも発光することになり,効率
上に遮光陰極をアレイ状に形成し,上側(観察者側)
の点からも大きなロスとなります。上記の問題点を解
に光を遮り,下側(被照射物側)のみに発光させま
決することが可能なデバイスとして我々はデュアル・
す。図4に,作製した有機ELフロントライトの外観
ドライブ・エミッション(DDE)パネルを開発しま
と発光時の顕微鏡
した。そのコンセプトを図1に示します。このパネル
写真を示します。
はガラスなどの透明な基板上に第1の透明電極を形成
太陽光や室内光と
し,第1の有機EL層,反射電極,第2の有機EL層,
いった外光が有る
第2の透明電極を順次積層することによって,実現さ
場合はデバイスを
れます。第1の有機EL,第2の有機ELから得られ
通って文字が判別
る発光は,それぞれ第1の透明電極,第2の透明電
可能な透明性を持
極を通って得ら
ち,かつ暗所では
第1有機EL
れ,それぞれの
有機ELは独立
第2有機EL
透明電極
透明電極
有機EL層
不透明電極
透明電極
発光
(被照射物側)
図3 有機ELフロントライトのコンセプト
照射物を照らすこ
発光
発光
とで,情報を観察
ことが可能となり
たDDEパネル
ます。
の発光写真を示
基板の両側で独
透明補助電極
な発光により,被
基板上に試作し
します。一枚の
ガラス基板
30μm□の微細
に動 作 し ま す。
図2にフィルム
非発光
(観察者側)
図4 試作した有機ELフロントライト
(左:外観,右:顕微鏡像)
中間電極
図1 両面発光有機ELのコンセプト
表発光(緑)
Ⅳ.おわりに
有機ELなどの有機材料を用いた電子デバイスはよ
立した発光が得
く「寿命が持たないのでは?」と懸念されます。しかし,
られていること
適切に,材料,作製プロセス,封止,等検討すること
がわかります。
で十分実用可能な寿命が示されています。また,それ
裏発光(青)
以上に新材料合成によって多種多様な機能の発現も期
待でき,新しい電子デバイスへの応用も期待されます。
今後も,有機材料を用いた新しい電子デバイスの研究,
図2 試作した両面発光有機EL
2
開発を進めていきたいと考えています。
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大学発新技術の紹介(2)
超音波が支える社会インフラの安全
大学院理工学研究部(工学系)教授 三原 毅
生 年 月:1956年12月
略 歴:1984年 東北大学 助手 工学部,1995年 助教授,1997年 准教授
大学院工学研究科,2003年∼2005年 宇宙科学研究所宇宙推進研究
系助教授 併任,2007年8月∼ 富山大学 現職
賞 等:1983年10月 日本非破壊検査協会 論文賞
1988年 6月 金属研究助成会 金属研究奨励賞,
2009年11月 超音波シンポジウム( USE )論文賞
連 絡 先:Tel 445-6806 [email protected]
超音波計測法
過撮影しかできないため,欠陥の有無の検査には適し
我国は戦後の荒廃から,世界で例がない程一気に復
ているが,欠陥の深さサイズ情報は測定原理から得ら
興を遂げた。その結果,戦後一斉に建設された原子力
れない。構造部材の健全性を定量的に保証するには,
発電を含む発電機器,プラント,橋梁,高層ビル・・・
どうしても2次元の欠陥サイズの定量計測が不可欠で
が今,一斉に設計寿命を迎えつつある。建設時には,
あり,強度保証が不要な場合も,安価で手軽だが,最
古くなれば新しく建て直せば良いと皆が信じていた
新の機器を使えば精度も高い超音波法は,材料評価技
が,不幸にして現在はそんな経済状態では無い。古
術の中核になってきている。
い構造物を劣化したまま放置すれば,悲惨な事故が起
こることは歴史から明らかであり,また最近の韓国や
研究室の保有技術・装置
米国のビルや橋梁の崩落事故も他山の石とする必要が
超音波探傷は,山彦と同じ原理で短い超音波パルス
ある。構造物の強度は設計時に精密に計算されている
を“ヤッホー”と構造物に入射し,反射して帰ってき
が,経年劣化すると微細な欠陥が必ず発生し,応力の
た小さな“ヤッホー”から,材料の中の状態を測定す
集中により局所的にき裂として成長する。現在,構造
る方法である。人間の耳に聞こえない高周波である超
物寿命評価の最大の問題は,き裂の計測技術にある。
音波は,直進性が高く光のように線として送受信でき
材料内部の欠陥は,設計等と異なり予測が困難な上,
るとして,簡単な原理で固体内の計測に利用される。
外部からは見えないため,全く問題無い様に見えて深
大学の仕事は,最新の計測手法の研究であり,新し
刻な破壊が進行している場合もある。これらの構造物
い計測システムの開発や,センサーの試作・開発も進
を,
設計寿命を超えて安心して利用し続けるためには,
めている。現在,2000年代に入って原子力発電機器
我々が健康を維持するために定期的に人間ドックを受
でようやく実機探傷適用が本格化したフェイズドアレ
診し問題があれば治療を受ける様に,構造部材も連続
イ計測や,2000年以降に新しく閉口き裂の検査やき
的な健全性の“検査”を行い,問題があれば部材の補
裂の性情計測技術として注目を集めている非線型超音
修や交換を適切に行う技術を確立する必要がある。
波計測等,あるいはコンクリート構造物や複合材料の
材料の中の欠陥を“検査”する方法は,医療の検査
計測で不可欠な低周波超音波などが研究対象である。
同様,X線法と超音波法が使われてきた。従来は,X
例えば,フェイズドアレイ技術は,医療用では早く
線法が検査の主役であり,今も法律はX線法を優先的
から広く利用され,図1左に示すように胎児の表情ま
に扱う。X線法は,検診でもなじみがある様に,全体
で表現可能になったが,工業用の計測は物理的な制約
を見通せる良い方法だが,工業的には1方向からの透
から,格段に難易度が高く実用が遅れていた。図1
3
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の右に鋼平板の2個の欠陥を計測した例を示す。実用
我々が開発した非線型超音波とフェイズドアレイ計測
の広がりと共に,計測システム,材料特性,アレイ特
を組み合わせた非線型超音波映像装置( SPACE )に
性等が計測の定量性に及ぼす影響が改めて問われてい
よる結果で,
( a )にf/2の周波数成分のみの音響
る。図2に示した非線型超音波計測は,閉じたき裂に
映像を示す。き裂先端からの反射エコーが線形計測の
超音波を入射しても十分な反射を生じないため,( b )
( b )に比べ,明確であり有効性が確認できる。
の音響像の様にき裂先端からの反射エ
コーは微弱で,き裂の過小評価が懸念さ
れている。通常より10倍程度大変位の
超音波を入力すると,き裂面でたたき合
いが起こり入力した周波数f以外の超音
波がき裂で発生する現象が発見された。
これが最近注目されている非線型超音波
であり,従来法で計測が困難なき裂の計
測等に適用が期待されている。図2は,
図1 フェイズドアレイ手法による医療,工業応用例
非線型超音波画像( SPACEフェイズドアレイ技術との組み合わせ)
サブハーモニック画像
線形周波数画像
図2 非線型超音波映像システムによる疲労き裂の評価
超音波伝搬に特化した有限要素法
光弾性法による可視化実験
( FEM )によるシミュレーション解析
図3 フェイズドアレイ伝搬音場の実験とFEM解析
4
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全ての超音波計測は,超音波の直進性という単純な
光弾性超音波可視化法を開発・改良してきた。図3右
物理に基づいて測定・評価が行われるが,固体内の超
図に,光弾性可視化法による工業用フェイズドアレイ
音波の伝搬,特に圧延組織等の異方性や溶接部等の不
計測の音場観察例を示す。フェイズドアレイを用いた
均一性を持つ工業部材中での超音波伝搬は,きわめて
電子走査による伝搬音場の影響を,設計縦波附随する
複雑である。例え単純な探傷であっても,部材中での
横波に分けて詳細に評価することが出来る。同じ条件
超音波伝搬挙動を明確に把握できていないと,思わぬ
の音場を,最近開発された超音波伝搬に特化したFE
経路でエコーを受信したり,逆に受信できるはずのエ
Mで解析した例を図3右に示す。この解析コードは,
コーが受信できない場合も多く,まして測定に定量性
開発から関わり現在も改良に携わっているが,超音波
を求める場合は,詳細な超音波伝搬の把握が不可欠で
伝搬解析に特化し,比較的短い解析時間で高精度解析
ある。
が期待できる。FEMの進化によって,両輪である光
超音波伝搬の解析には,各種シミュレーション法が
弾性実験システムも比較に耐える高精度画像の取得が
今も活発に提案・研究されているが,裏を返せば,こ
求められ,現在取り組んでいる。これら伝搬解析の高
と超音波伝搬の解析については,今も決定版の工学的
精度化は,既存の計測・最新の計測に関わらず,超音
解析手法が無いことを意味する。我々は,固体内での
波計測の測定精度の確保に直結するため,基盤技術と
複雑な超音波の伝搬を,ガラスモデル中で観察できる
してなお一段の高精度化が期待されている。
新スタッフの紹介
地域連携推進機構産学連携部門 産学官連携コーティネーター 梶 護 経 歴:昭和47年3月 富山大学工学部生産機械工学科卒,同年4月 三協アルミ
ニウム工業(株)入社∼平成22年3月 三協立山アルミ(株)退社,その間,
ビル用サッシ・カーテンウォールの開発,性能評価,市場調査,商品・
技術開発企画業務に携わる
趣 味:読書,スポーツ観戦,そば打ち
連 絡 先:Tel 076-445-6393 Fax 076-445-6939 [email protected]
富山大学を卒業以来,38年振りに産学官連携コー
行わせていただき,多大な成果を収めることが出来ま
ディネーターとして本学に戻って参りました。久し振
したことにつきまして,深く感謝致しております。
りにキャンパス内を歩きますと,学園紛争真っ盛りの
4月から大学に席を移しましたが,ユーザーである
学生時代を過ごした者にとりましては,時代の変化を
企業目線を大事にしながら,大学のシーズ技術をモノ
つくづくと感じさせられます。
づくりに活用していただけるようマッチング活動を行
大学を卒業以来,本年3月まで一貫して三協アルミ
いたいと思っています。幸いにも,産学連携部門には
(株)の技術開発本部に在籍し,ビル用サッシ・カー
経験豊な先任のコーディネーターの皆様が居られます
テンウォールの開発や商品試験,商品・技術開発企画
ので,心強く思いながら新たなスタートを切ることが
を担当してきました。同業他社との厳しい競争の中で,
出来ました。
ユーザーニーズを把握し差別化新技術の導入・コスト
明るく,楽しく,粘り強く結果を追求するをモットー
パフォーマンスを追求しながら継続して新商品を産み
に,産学官連携に取り組んでいきたいと思っておりま
出す苦しみを嫌と言うほど味わって参りました。
すので宜しくお願い致します。
会社に在籍中は,本学の先生方と多くの共同研究を
5
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企業からの共同研究便り
弥陀ヶ原における健康増進プログラムの研究開発
株式会社あるぺん村・立山荘 日下
紘一
〒930-1412 立山町弥陀ヶ原
TEL 076-442-3535
当社は富山県立山町に本社,立山あるぺん村,ある
富山大学との共同研究の中で,立山荘の役割として,
ぺん村ツーリスト,寿し工房大辻,黒部市に黒部ある
中高年の方でも無理なく散策できるコースの設定,長
ぺん村,富山市に鱒ずし販売所を持つ観光関連会社で
期滞在の方にはガイドが付かなくても気軽に出歩ける
す。立山・黒部の両あるぺん村は道の駅の役割を果た
絵図の作成などをすることにしました。
し,立山や黒部峡谷を訪れる観光客の憩いの場所と
富山大学とは人間発達科学部の鳥海清司教授とご相
なっています。シーズン中は富山・黒部から立山の室
談し,同教授の指導の下,弥陀ヶ原に設定した2つの
堂までのバスの運行も行っています。
コースを中高年の男女15名に実際に散策して貰い,
幸いなことに,平成20年度より富山県立山荘の指
心拍数等のデータを取りました。その結果,平均的体
定管理者となることが出来ましたので,これを機会に
力の人には松尾峠コースが最適と判断され,私たち
大切に温めていた弥陀ヶ原の再発見に取り掛かること
が考えているプログラムをそのまま実行に移して差し
にしました。
支えない結論を得ました。しかし,体力に大きな差が
立山荘(標高1940m)を観光だけでなく健康増
ある中高年齢者を対象とする時にはそれぞれに適した
進・スポーツ・文化の拠点として県民のみならず広く
コースが必要であると考え,目下,散策に際してはモ
国内外の人々に利用してもらおうと考え,第一段階と
ニターを身に付けて貰い,その計測データーを提供す
して専属のガイドを置き,スノーシュウ・かんじき・
るサービスの付加や心肺機能の向上だけでなく心身の
歩くスキーの無料貸し出しを始めました。折良く北陸
癒し(弥陀ヶ原セラピー)をも加味したいくつかのプ
銀行立山支店から富山大学の地域連携推進機構の紹介
ログラムを考案しているところです。
を受け,共同研究契約を締結し,
「弥陀ヶ原に於ける
健康増進プログラムの研究開発」をスタートさせまし
た。
%VO2max
[%]
110
a
b
90
70
50
c
30
d
10
0
50
100
150
運動時間
[min]
松尾峠散策時の被験者4名の心拍数と運動強度
6
松尾峠の散策風景
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トピックス
平成21年度基盤技術研修 ―材料・評価コース― が開講される
平成22年2月15日(月),16日(火)に平成21
は平成22年度に同じ内容で再度研修会を開催する予
年度基盤技術研修 材料・評価コース「機械構造用材
定です。
料の疲労強度設計と破損解析」が大学院理工学研究部
(工学系)小熊規泰教授によって工学部研究室で開か
れました。材料の疲労現象に関する知識を深めると共
に,破壊力学の視点から構造材を長期間安全に使用す
る技術について講義と実習が行われました。疲労破壊,
破壊力学,疲労試験法,信頼性設計についての講義と
疲労試験,S-N曲線作成とフラクトグラフィについて
実習がありました。地元企業の機械器具製造業を中心
に若手技術者8名の受講があり盛況でした。本コー
スには募集人数を大幅に超過した受講希望があったた
め,受講できなかった方々並びに新たに希望する方に
平成21年度第6回,平成22年度第1回イブニング技術交流サロンが開催される
2月5日(金)16時から平成21年度6回イブニ
な痛め止め成分に焦点を当てた話題でした。本ヘビ毒
ング技術交流サロンがボルファーととやま(富山市)
の薬理効果はモルヒネよりも強力で,経口による一回
で開催されました。大学有未公開特許の紹介には和漢
の投与で3∼5日間効果を持続,モルヒネとは異なり
医薬学総合研究所 山本 武 助教による「抗ヘリコバク
耐性・精神依存性がないなどの画期的なものというこ
ター・ピロリ剤」
(特願2009-072162 )の紹介が
とでした。作用物質の精製,構造解析,合成に成功し
ありました。
カマラ
(クスノハガシワの果皮腺毛),メー
ています。後者からは最近,本来なら有償で提供され
ス(ニクズクの仮種皮)
,ニゲラシード(セイヨウク
るべき技術や作品が誰もが無償で自由に利用できる例
ロタネソウの種子)及びウメノキゴケ(地衣類)の含
を取り上げ,高い付加価値を見込める技術を無償で提
水エタノール抽出物が抗ヘリコバクター・ピロリ菌の
供する理由をその技術の周辺領域で収益につながる仕
抗菌剤として有効であり,カマラの含水エタノール抽
組みが構築してあることが紹介されました。本サロン
出物及びカマラなどに含有するロトレリンなどが耐性
には学外から12名の参加がありました。
のピロリ菌に有効であることから,胃・十二指腸潰瘍,
胃炎,胃癌,胃悪性リンパ腫の予防と病状改善のため
の食品・飲料の添加材として有用なことが紹介されま
した。続いて,同所紺野勝弘客員准教授により「ヘビ
毒変じて薬となす」,経済学部 内田康郎教授により「無
償の技術がもたらすビジネスモデル」と題する話題提
供がありました。前者では毒から薬を生み出すために
毒を追いかけて日本からブラジルへ渡り歩いた経験の
中から,ブラジル産ガラガラヘビから見い出した強力
7
国立大学法人 富山大学 地域連携推進機構 産学連携部門
4月9日(金)16時から平成22年度第1回同サロ
いる2足歩行型ロボットの動きの特徴が,組み込まれ
ンがカナルパークホテル富山(富山市)で開催されま
ているプログラムに由来するものであり,人が深く意
した。大学の事業紹介では城石昭弘研究員より富山大
識することのない身体の動きをロボットで再現するこ
学産学連携人材育成事業―“プロフェッショナルエン
との困難さとその解決案をわかりやすく紹介されまし
ジニアコース”と“インダストリアルエンジニアコー
た。学外から13名の参加がありました。
ス”―の平成22年度開講について紹介がありました。
受講申込み状況の紹介とさらなる受講者の増員に向け
たPRが行われました。その後,大学院理工学研究部
(工学系)渡辺大輔講師による「計算空力音響学によ
る空力騒音発生機構の解明と抑制手法」と同戸田英樹
講師による「ロボットの運動制御と人間の運動制御の
間にあるもの」と題する話題提供がありました。前者
はルーバー状構造体から発生する空力音の発生メカニ
ズムと増幅機構の解明について理論解析に基づいた説
明が行われました。計算機シミュレーションが中心で
いささか専門家向けの内容になってしまいましたが,
熱心な技術紹介でした。後者では,日本が得意として
今後の主な行事
行 事
場 所
カナルパークホテル
第2回イブニング
富山
技術交流サロン*
(富山市牛島11-1 )
開催日時
内 容
・大学有特許の紹介
・「富山の生物多様性を
持続的に活用するために」
6月4日(金)
16時00分∼18時00分
大学院理工学研究部(理学系)
准教授 山崎裕治
・「燃焼現象の解明と燃焼技術の将来」
大学院理工学研究部(工学系)
教授 手崎 衆
・大学有特許の紹介
カナルパークホテル
第3回イブニング
富山
技術交流サロン*
(富山市牛島11-1 )
8月6日(金)
16時00分∼18時00分
・「地域との連携において,
デザインができること」
芸術文化学部 准教授 矢口忠憲
・「製品開発の組織と人材マネジメント」
経済学部 教授 馬 駿
コラボフェスタ
2010
富山大学黒田講堂他
9月上旬
(富山市五福3190 )
詳細未定
*:参加には担当者( Tel.076-445-6938 )までご連絡戴き,事前申込が必要です。
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