ラオス 村の学校便り 第 6号 ラオス 村の学校便り ラオス コミュニティ・イニシアティブによる初等教育 改善プロジェクト フェーズ 2(CIEDII) 2013 年 5 月 30 日 第6号 *今日は 5 年生の最終試験。みんな真剣です。 教育分析・教育開発計画TOTを開催 学校運営研修が一段落し、今月から来月に か け て 県 教 育 ・ ス ポ ー ツ 局 (Provincial Education and Sports Service: PES)と郡教 育 ・ ス ポ ー ツ 事 務 所 ( District Education and Sports Bureau: DEB)のトレーナーを 対象に、教育分析・教育開発計画研修(教 育分析TOT)を開催しています。 この研修では、PES・DEB が、1. 各学校の 教育問題を正しく分析することにより現状を把握 し、2. 分析結果を反映させた県・郡教育開発 計画を策定し、学校の抱える教育問題を解決 することを目的としています。 第1回目の教育分析TOTは、5月 2124 日にかけて、チャンパサック県とセコン県の PES・DEB トレーナーを対象に行われました。 県・郡教育開発計画を改善するため、 PES・ DEB 内のあらゆるセクションを含む、全てのトレー ナーに参加してもらいました。その後、各郡にて教 育統計の分析を基に、2013-2014 年のプロジ ェクトの重点校を選定しました。2 回目教育分 析TOTは 6 月 10-13 日にサワンナケート県 とサラワン県を対象に行います。 従来は、国レベルの後、県レベルの年次教育 セミナー、その後、郡レベル、とトップダウンの方式 で情報伝達型の会議が開かれてきました。しかし、 一昨年から成果に基づくボトムアップのマネジメン トを進めるべく、国レベルの前に県レベル会議が 開かれるようになってきています。 とはいえ、「成果に基づくマネジメント (Result-based management)」の理論 的なレクチャーを聞いても、急に仕事の仕方や発 想が変わるわけではありません。そのため、これま での PES や DEB の教育開発計画は、第 1 章 の今年度報告のところでは「私たちはとてもがんば りました。しかし、予算が不足して活動が十分に 実施できませんでした」、第 2 章の来年度計画 では「あらゆるところが問題なので、あらゆる課題 に予算の範囲内で取り組みます」という書きぶり で、気持ちはとてもよくわかるのですが、問題分析 を欠く抽象的な内容に終始していました。 MoES としても、PES・DEB の教育開発計画 が問題を的確に表していないことを課題として認 識しており、この度 CIED II で教育分析 TOT を実施することとなったのです。 教育開発計画と教育統計の現状 第一回教育分析 TOT(CPS) 教育開発計画は、教育・スポーツ省 (Ministry of Education and Sports: MoES ) 、 PES 、 DEB のそれぞれのレベルで毎年この時期に(5 月下旬から 7 月上旬にかけて)作られます。ラ オスの学校年度は 9 月 1 日から新年度で、そ れに間に合うよう、6 月末に例年、国レベルの全 国年次教育セミナーが開かれています。 TOT では目的や用語の定義、教育分析から 計画立案の流れをざっと説明した後、まずは各 県、郡の教育統計を見つめることから始めました。 各 PES・DEB は毎年教育開発計画を策定し ていますが、ともすると、昨年度のものから数字だ けを機械的に入れ替えるだけで、その数字が意 味するものについてだんだん感覚を失っていくこと も稀ではありません。まず、各県、各郡内で、まだ 学校に来ていない 6~10 才の子どもは果たして 何人なのか、純就学率(NER)だけを見ると改 善しているように見えるけれども、未就学児童は 決して少なくないことを、改めて感じてもらいます。 次は教育統計から明らかになった問題を分析 します。チャンパサック県とセコン県の 2 県 5 郡で は、中退率と落第率の高さが中心問題です。そ れを PCM 手法で原因を分析していきます。ここ では「表面的ではなく、深く問題を分析することに よって、私たちは学校により的確な問題解決方 法を示唆することができる」、「各学校の本当の 原因は何かを導き出すのがトレーナーの役割。だ からこそ、私たちは考え付く限りの可能性を想定 しておかなければならない」と言って、がんばって問 題分析をしてもらいました。 次のステップは学校レベルの解決策に対して、 「それを郡が、県がいかにサポートできるか」という 郡・県レベルの対応策の検討です。その検討が できたのち、その結果を教育開発計画フォーマッ トに入れることによって、学校の抱える教育問題 ラオス 村の学校便り の解決に寄与する郡・県の教育開発計画ができ ます。 多くの郡で問題として上がったのが、落第率の 高さに関しては、教員が授業計画を立てていな い、子どもが見て触って活動のできる教材を十分 準備していない、理解の遅れている子どものサポ ートをしていない、複式学級のため指導が不十 分になっている、教室・教員不足、就学前教育 を受けていないこと、などなど。その解決策として は教員研修と、校内研修がきちんとなされるよう に DEB としてモニタリングすること、教員配置の 改善、就学前クラスの開設と教員配置が挙げら れました。中退率の高さに関しては、父母の教 育に対する意識の低さや、家庭の貧困、村内の 学校が不完全小学校(5 年生までそろっていな い、いわば分校)であるため遠い村の高学年に 進級できないなど。その解決策は、村教育開発 委 員 会 ( Village Education Development Committee: VEDC)への 研修と、DEB によるモニタリング、不完全小学校 の完全小学校化、教員不足の地域には教員配 置が挙げられました。 第6号 は VEDC 研修を、教員の指導技術に関しては 指導法研修を実施することにしています。特に問 題を抱えている学校を重点校として選び、トレー ナー研修をした後、重点校への研修を行います。 その重点校を今回の会議の中で、PES・DEB と 一緒に選びました。 各郡の教育開発計画では、来年度の目標値 を、純就学率(NER)、純入学率(NIR)、 留年率、中退率、進級率、5 年生残存率、初 等教育修了率などについて設定しています(目 標値の設定の仕方も TOT で指導しました)。 その目標値に対して、NER や中退率について大 幅な改善が必要な学校を CIED II が支援する VEDC 研修に参加してもらうこととし、それらの学 校よりは状況は良いもののまだまだ改善の必要 な学校(目標値に満たない学校)を政府独自 の財源で同様に研修を実施するよう、促しました。 また、留年率が目標値よりも大幅に高い学校を CIED II が支援する指導法研修に参加しても らうこととし、CIED II の予算で支援できる範囲 からは漏れるものの、未だ改善が必要な学校は 政府独自財源で同様に指導法研修を実施して もらうことにしました。 実は CIED II が支援できる重点校は、今年 は 1 郡一律 10 校としているため、問題を抱え る学校のうちのほんのわずかな数にすぎません。 例えばチャンパサック県チャンパサック郡には郡全 体で 70 校ありますが、DEB が算定した NER 目標値 98%に満たない学校が 17 校、2013 -14 年度の目標中退率 4.5%を上回る学校 が 33 校もあるのです(実はこの統計を正しく計 算できるようになるまでにも長い道のりがありまし た…)。そのため、「CIED II だけに頼っているよ うでは、目標は達成できませんし、トレーナー研 修はしますから、政府財源で同様の研修を他の 学校にもしてはどうでしょう」と提案し、郡としての 計画を立ててもらいます。このように、教育統計 の分析から目標値を設定し、問題分析から導き 出した解決策を郡・県教育開発計画に策定す る、ということを、丁寧に、着実に進めていくことに よって、まだ時間はかかるでしょうが、きちんと問題 に対応する DEB になってほしいと思うのです。 学校運営WSも継続中 ラオス正月明けの 4 月下旬には 10 郡の不完 全校に対して PES・DEB トレーナーが教育質基 準(Education Quality Standard: EQS)を達 成するための学校運営ワークショップ(学校運営 研修)を開催しました。これで対象郡全ての小 学校 735 校に学校運営研修をしたことになりま す。(ラマム郡のフェーズ 1 対象校を除く) 不完全校を取り巻く状況は完全校と異なるた め、不完全校に合わせた研修スタイルを考えなが ら実施する必要がありました。例えば教育統計に 関しては、完全校の校長先生は教育統計研修 を受講しており、自分の学校の NER、NIR、留 年率、中退率などの統計を少なからず把握して います。一方不完全校(分校)の学校長は統 計研修もなく、完全校(本校)に教育統計の 基になる生徒数を報告するにとどまっています。で すが、本研修では「皆さんの学校ではどの教育指 標に問題がありますか?」から始まってしまうので、 今回は教育指標の計算の仕方も紹介しながら 進めていく必要がありました。 その他には、完全校と比較すると学校の環境 の不備や生徒数が少なくなるため、一概に教育 指標(割合)や教育質基準(EQS)の点数 のみで学校の評価や問題を見つけようとするのは 危険なことが分かりました。生徒数 10 人の学校 では 1 人が留年しただけで留年率は 10%にな ってしまいますから。割合だけに振り回されずに本 当に学校の抱えている問題は留年率なのかを検 討する必要があるわけです。 また不完全校の問題分析では、複式学級や 教室・教員の不足(生徒数が少ないが故に) などの教育の質に関する問題、また、学校が遠く なることで不完全校から完全校に進級できなくな るというアクセスの問題が指摘されました。特にチ ャンパサック県のコーン郡では中洲の島々に不完 全校があるため、完全校への進学を断念する生 徒が多いことが高い退学率の原因になっているよ うです。今回の研修を通じて、トレーナーも私自 身も不完全校の抱える問題を改めて認識するこ とになりました。 連絡先 Community Initiative for Education Development Project Phase2 (CIEDII) ■教育・スポーツ省内事務所(ヴィエンチャン) 各 郡 へ の 個 別 指 導 と 2013-14 年 CIEDII 重点校の選定 TOT では、グループワークを中心に進めるもの の、全部の郡の教育開発計画の詳細をチェック することができません。そのため、TOT の後、各 郡を回って個別指導をしてきました。 そして、CIED II では、各郡・県が、学校の問 題に対応できるよう、コミュニティの理解に関して 岩品雅子(チーフ・アドバイザー) Email:[email protected] ■チャンパサック県教育・スポーツ局(パクセー) 舘野直子(業務調整) Email:[email protected]
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