暗渠疎水材に使用したホタテ貝殻の劣化状況に関する - 寒地土木研究所

技術資料
暗渠疎水材に使用したホタテ貝殻の劣化状況に関する報告
石田 哲也* 山田 章**
1.はじめに
れるであろう。
②土壌条件、埋設後経過年数、埋設位置、貝殻の左右
暗渠は農耕地土壌の過剰水を速やかに排出して農作
によって劣化程度の発現・進行は異なり、଎Ƚˍに示
物の生育や農作業機械の作業性を確保するために農耕
す概念のように劣化程度の強弱が現れるであろう。
地に施工される排水システムである。地形や土壌の条
件に起因して排水性が良好ではない農耕地では必須の
土地改良工種となっている。暗渠管への通水性を改善
確保維持するために疎水材を用いた施工方法が標準化
してきている。疎水材には微利砂利、砂、浮石、木材
チップ、モミガラ、貝殻など、施工現場で大量・容易・
安価に入手できる様々な資材が用いられている。北海
道の水産業を代表するホタテ養殖が盛んな地域に近接
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した農業地帯ではホタテ貝殻を疎水材として利用する
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ことが多い。日本の土壌は、火山灰を母材とした酸度
註記)二枚貝の貝殻では左右を判別するルールがある。左右
判別の必要性は、貝塚での個体数調査において重要である。す
なわち、出土した貝殻の総数の半数を個体数とすることは正確
性を欠くので、貝殻の左右を判別して、数の多い値を貝塚に埋
没された個体数として採用するためである。ホタテやカキでは
左殻と右殻で、膨らみ具合が顕著に異なるため、判別は容易で
あり、ほぼ平らな殻=左殻、強く膨らんでいる殻=右殻である。
生体が海底に静置している場面では、左殻を上にしている。新
鮮貝殻の載荷強度は左殻>右殻であることから、同程度に溶解
が進んだ場合、左殻のほうが強度を高く保つ=劣化程度が弱い
と仮定している。
の強い土壌が広く分布していることや土壌中の塩類が
降雨の影響で流亡しやすいことから酸性化しやすい。
そのため、酸性に弱い炭酸カルシウムを主要成分とし
ているホタテ貝殻は劣化が進行しやすく耐久性に課題
があるのではないかと危惧されている。特に、泥炭地
からの浸出水は腐植酸の作用で酸性が強いため、泥炭
地を開発造成した農耕地でホタテ貝殻を疎水材として
利用した場合の耐久性の確認が課題となっている。
そこで、土地改良事業で実際にホタテ貝殻を暗渠疎
水材として利用している二つの地区(以下、A地区、
したがって、以下に報告する事業地区での調査にお
B地区と記す)で劣化状況と耐久性の調査を継続して
いても、この仮説の正否が検証できるように実施した。
いる。本調査は継続中であるため、途中経過ではある
が、事業実施地区と関係機関の方々への速やかな情報
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伝達を目的に、
技術資料として整理したので報告する。
当研究チームでの本格的なホタテ貝殻の劣化状況調
査の嚆矢となっている地区であり、1993年度に着工し
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1999年度に完了している。試験圃場の位置、暗渠の標
準断面などの詳細データは宍戸ら1)が報告しているの
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で、既報を参照願いたい。
疎水材として埋設されたホタテ貝殻は、土壌中の酸
本地区での調査は、1997年8月に、重量を計測して
性成分でホタテ貝殻が溶解することで劣化が生じると
番号を記した新鮮貝殻を10枚組でナイロンネット袋に
いう考え方に基づき、以下の仮説をたてて調査を継続
入れ、それらを疎水材貝殻層の中間位置に埋設するも
し、劣化程度の評価を試みている。
のと、附帯明渠の排水に浸るように置くものとで試験
①劣化程度はホタテ貝殻の密度と載荷強度の低下に現
を開始した。その後、1999年10月(約2年後)と2001年
20
寒地土木研究所月報 №666 2008年11月
11月
(約5年後)
に埋設・浸漬した貝殻の一部を回収し
て重量、密度、載荷強度の計測を行った1)2)。なお、
本地区での調査は、埋木チップ疎水材の試験も並行し
て実施したため、以下の3試験区が設置された。
①慣行区:ササ被覆して、掘削土を埋戻した。
②貝殻区:ホタテ貝殻を地表面下40㎝まで投入後、掘
削土を埋め戻した。
③チップ区:ホタテ貝殻を厚さ20㎝で投入後、チップ
を地表面下40㎝まで投入し、掘削土を埋め戻した。
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本地区は2003年度に着工し、ホタテ貝殻を疎水材と
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した暗渠を標準工法としている。
地区内には泥炭層の厚い区域と薄い区域があるた
め、それぞれの区域で、2004年度、2005年度、2006年
度に施工された暗渠の疎水材層の上部・中部・下部の
ホタテ貝殻を約10枚づつ2007年12月に採取した。同時
に、疎水材ホタテ貝殻との性状比較のために、水産加
工場の貝殻堆積場から本地区で使用する予定となって
いる新鮮貝殻も譲り受けた。଎Ƚˎにホタテ貝殻採取
部位断面模式図を示した。
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渠管の閉塞も危惧されている。北川3)はホタテ貝殻疎
水材層への土砂混入は極めてわずかであることを報告
しており、我々の調査でもそのことを確認している。
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しかし、局部的に多量の土砂や異物の混入が認められ
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た。これは、覆土や暗渠溝の側壁から微細な土粒子が
土層中を移動する浸透水の動きに乗って侵入してきた
ものではなく、貝殻を投入する作業中に溝の側壁や掘
ここで、本地区でのホタテ貝殻疎水材暗渠の施工状
削土が崩落して生じた可能性が高い。したがって、現
況を紹介する。
場作業員に注意を促し、適正な作業を遂行するように
暗渠用バケットを装着した油圧ショベルで暗渠管埋
指示することでホタテ貝殻疎水材層への土砂混入は避
設溝を掘削し、掘削土は溝に沿わせて仮置される。暗
けられると考えられた。
渠管を敷設した後、ホタテ貝殻を積載した投入機装着
不整地運搬車
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で貝殻を所定の深さまで投入し
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ていく。貝殻層の表面を敷均し整形後(଎Ƚː)
、湿地
A地区での調査項目は回収したホタテ貝殻の重量・
ブルドーザで掘削土を埋め戻す。
載荷強度・密度である。回収したホタテ貝殻を水洗い
ホタテ貝殻を疎水材として利用した場合、間隙率が
して汚れを落とし、通風乾燥機(105℃、24hr)で乾燥
大きいことから、土砂の混入と混入した土砂による暗
させた後、重量を計測し、載荷強度試験を行い、破砕
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された破片を数個まとめて重量と水銀置換法による体
線データで荷重に換算することができ、この荷重値を
積を求め密度を計算した。
載荷強度とした。
B地区では、
埋設前の個別の重量が未知であるため、
重量の経年変化は調査できない。また、密度は載荷強
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度試験で破砕された破片を用いるのではなく、破砕前
の全体殻で計測した。
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以下に試験状況を図示して詳述する。
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଎Ƚˎに示したような断面掘削によりホタテ貝殻を
଎Ƚ˓にホタテ貝殻の平均重量の経年変化を残存率
任意に採取し、前処理(水洗、通風乾燥、右殻と左殻
(=回収時の重量と埋設時の重量の百分率)で示した。
に分別)
はA地区での処理と同様に行った。
平均値の算出に用いた試料数は埋設時は20枚、2年後
①重量:電子天秤で重量を計り、密度の計算に用いた。
回収時は5枚、5年後回収時の暗渠疎水材は3枚、明
②密度:水銀を満たしたアクリル容器(15×15×5㎝)
渠浸漬は5枚である。
の中に秤量した貝殻を完全に沈め、溢れた水銀の重量
明渠に浸漬しておいた貝殻の重量は2年経過で約
を秤り、水銀の比重13.54g/㎤で除して水銀の体積と
70%に減量し、5年経過では60%程度の重量しか残っ
した。水銀の体積は沈めた貝殻の体積と等しいとみな
ていない。一方、暗渠疎水材では経過年数による減量
し、貝殻の重量との比で貝殻の密度とした
(଎Ƚˑ)。
はきわめて少なく、5年経過しても98%以上の残存率
③載荷強度:଎Ƚ˒に計測状況を示した。試験器具は
であった。
木屋製作所製の砕土性測定器 SPAD-604型
(Max500kg)
で、リングのたわみ量をダイヤルゲージで計測する。
100
ダイヤルゲージには最大値で計測針が停止するストッ
80
プ機能が付加しているので、貝殻に亀裂が生じて破壊
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଎Ƚ˔に密度の経年変化を示した。
2年程度の経過年数では密度が大きく低下すること
はなかったが、5年経過では、明渠浸漬で約20%、暗
渠疎水材でも約15%の密度の低下があった。
貝殻の左右による差異はなかった。
固形物の溶解が、表面や端から欠け落ちるように進
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22
行する場合、残存している固形物の密度は元の固形物
の密度と同じでなければならない。しかし、明渠に浸
漬した貝殻では、重量で40%の減少、体積で26%の減
少であった。そのために密度も約2.6から2.1に低下し
た。このことは、体積の減少量以上に重量が減少した
ことを意味しており、貝殻内部から溶出が進行してい
ることを示している。
寒地土木研究所月報 №666 2008年11月
一方、暗渠疎水材のホタテ貝殻では、重量の減少は
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約1%とわずかでありながら、密度は約12%も低下し
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た。計算上は、体積が増加したということを意味する
ȁນȽˍに密度の平均値(5試料の分析値の平均)を示
が、
目視観察では体積増加の徴候は認められなかった。
した。土壌条件、埋設位置、埋設後経過年数、貝殻の
暗渠疎水材ホタテ貝殻の密度と重量の経年変化の関係
左右といった要因に関わりなく、疎水材から採取した
は、継続して調査検討を進める。
ホタテ貝殻は、新鮮貝殻と同じレベルの値であった。
このことは、A地区の調査でも、2年程度の経過年数
3
では密度に大きな変化は認められなかったことと一致
している。
(g/cm3)
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ȁ଎Ƚ˕に載荷強度の経年変化を示した。新鮮貝殻で
ນȽˎに載荷強度の差異を示した。最大で94kgf、
は、右殻の方が左殻よりも強度が低い。しかし、2年
最低で32kgf とバラツキが非常に大きいが、2.1に
経過後には、その差異は消失してしまい、5年経過後
記述した仮定を立証できるような明らかな傾向は認め
には、
明渠に浸漬したホタテ貝殻は新鮮物の20%程度、
られなかった。また、新鮮貝殻の強度はA地区での調
暗渠疎水材であっても約50%程度の強度に低下してい
査結果に比べると明らかに小さな値であったが、トラ
ることが示された。このことは、農作業機械の踏圧に
クターの地耐力に照らせば充分な強度であり、疎水材
よる踏み抜きを危惧させるが、土地改良事業計画設計
としての利用に問題はないと考えられる。
基準「暗渠排水」平成12年11月では、空気用タイヤ装
着のトラクターの地耐力は約3.8kgf/㎠とされているの
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で、5年経過時点でもホタテ貝殻疎水材は充分な強度
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を保っていると考えられる。
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北川は、稚内の泥炭草地に施工され15年を経過した
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ホタテ貝殻疎水材暗渠を調査し、疎水材断面に変化が
ᥧᷯ⇹᳓᧚ᏀᲖ
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ないことと、貝殻の表面の顕微鏡観察で、ホタテ貝殻
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寒地土木研究所月報 №666 2008年11月
からのカルシウムの溶出は表面のみであることから、
23
耐用年数は15年以上と考えられる3)と述べている。貝
的な再考察を行うこととしたい。
殻の表面や端から順次溶解していくだけであれば、残
なお、「北海道立農業試験場報告 第113号 圃場の
存しているホタテ貝殻の密度と新鮮な貝殻の密度に差
総合的な排水改良技術の確立に関する研究 平成19年
異は生じないが、A地区の調査結果では約5年の経過
3月 北海道立中央農業試験場」3)は技術吏員、北川
年数で疎水材ホタテ貝殻の密度が低下してきているこ
巌氏(現在は農業工学研究所に勤務)の学位論文を登載
とが示された。暗渠疎水材として使用されているホタ
した資料である。各種の疎水材に関する知見が豊富で、
テ貝殻の載荷強度の低下は、農作業機械による暗渠上
ホタテ貝殻疎水材に関する調査結果も報告されてお
部の踏み抜きだけではなく、自重による暗渠埋設ライ
り、執務の参考にされることをお薦めする。
ンの陥没などの誘因になると考えられる。
A地区では暗渠からの排水の水質分析を行い、カル
४ࣉ໲ࡃ
シウムが高濃度で検出されたことから、貝殻のカルシ
ウム成分の溶出を確認している。暗渠疎水材として埋
1)宍戸信貞、森川俊次、中村和正、岡本隆、石渡輝
設されたホタテ貝殻のカルシウム成分が溶出している
夫:暗渠排水の疎水材として用いた貝殻および埋
ことに間違いはないが、約5年以内の経過年数ではト
木チップの効果と耐久性、開発土木研究所月報
ラクターによる踏み抜きを危惧するほど載荷強度は低
No.574、pp18-28、2001
下していないことが両地区の調査結果から示された。
2)小野学、小野寺康浩、石渡輝夫:泥炭土壌におけ
本調査では、埋設後の経過年数が5年以内と短期間
る疎水材暗渠排水の5年目の性状変化、日本土壌
での結果しか得られていないので、暗渠疎水材に利用
肥 料 学 会 福 岡 大 会 講 演 要 旨 集 第50集、pp183、
されたホタテ貝殻の劣化程度を結論づけるのは早計で
2004
ある。今年度にはA地区で、埋設後10年を経過したホ
3)北海道立中央農業試験場:北海道立農業試験場報
タテ貝殻の性状調査を予定しており、その調査結果や
告第113号 圃場の総合的な排水改良技術の確立
貝殻の成分分析、暗渠排水水質分析結果を含め、総合
に関する研究、pp.34-35、2007
24
石田 哲也*
山田 章**
寒地土木研究所
寒地農業基盤研究グループ
資源保全チーム
主任研究員
寒地土木研究所
寒地農業基盤研究グループ
資源保全チーム
研究員
寒地土木研究所月報 №666 2008年11月