NMIJにおける 有機標準液の開発

NMIJにおける
有機標準液の開発
ガス標準CRMと有機標準CRM
具体例の紹介(硫黄標準液)
有機分析科
有機標準第1研究室
北牧 祐子
現在頒布しているNMIJ CRM
(NMIJから頒布委託業者経由で頒布しているもの)
機器校正用
純物質(23)
標準液(13)
臨床検査用(12)
計136種
分析手法の妥当性確認用
環境分析用(12)
食品分析用(8)
化学形態分析用(3)
産業技術総合研究所 計量標準総合センター
認証標準物質一覧表
(2010. 9)
より作成
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ガス標準CRMと有機標準CRM
(校正用)
具体例の紹介(硫黄標準液)
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頒布形態
ガス標準CRMと有機標準CRM
有機標準CRM
ガス標準CRM
液体で供給
【容器】
褐色アンプル瓶
アルミシールバイアル 等
【内容量】
1 mL ~ 30 mL 等
固体で供給
【容器】
褐色スクリュー瓶
褐色アルミシールバイアル 等
【内容量】
200 mg ~ 5 g 等
【生産数(1ロットあたり)】
100本程度 ~ 1000本程度
【容器】
マンガン鋼製
アルミニウム合金製
【内容積】
10 L
(プロパン; 4.7 L, 酸素; 47 L)
【生産数(1ロットあたり)】
4~6本程度
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【開発手順】均質性試験
ガス標準CRMと有機標準CRM
有機標準CRM
ガス標準CRM
CRM原料
小分け
(候補品)
CRM原料
(候補品)
・・・・・
100~1000 本程度
[ビン間差試験]
►小分けされた候補標準物質の試料母集団
から、10本程度抜き取り検査する
►認証書は、1ロットずつ付けられる
►ビン内試験は不問
(固体試料の場合は行うことがある)
抜き取り方法は…
単純ランダムサンプリング
層別サンプリング
系統サンプリング
充填
4~6 本程度
[残圧試験(ビン内試験)]
►全数検査を行う
►認証書は、1本ずつ付けられる
►ビン間試験は不問
実際に行った均質性試験について
方法→認証書の【均質性】に記載
結果→認証値の不確かさに加味
例)CRM 4214-a 認証書 p,p’-DDT, p,p’-DDE, p,p’-DDD, γ-HCH混合標準液
CRM4214-a
認証書より一部抜粋
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【開発手順】
ガス標準CRMと有機標準CRM
特性値の決定法(高純度の場合)
有機標準CRM
►(可能な限り) 一次標準測定法
(凝固点降下法、滴定法)
ガス標準CRM
差数法
►信頼性の確認された分析手法
(差数法、定量NMRなど)
可能な限り、複数の手法を用いて
値を検証する
HPLC (MS, UV, CADなど)
GC (MS, FIDなど)
水分測定
残留溶媒
不揮発性成分 (TG, ICP)
不純物は、
主成分の類似物だけとは限らない!
安定剤
水分
残留溶媒
不純物分析
GC
FTIR
水分測定
微量不純物成分をいかに精確
に測定するか?
各不純物濃度
1 - (Total Impurity)
純度
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【開発手順】
ガス標準CRMと有機標準CRM
有機標準CRM(高純度)の特性値決定法(具体例)
一次標準測定法
トルエン
(CRM4003-a)
差数法
不純物分析
凝固点降下法
HPLC (MS, UV, CAD)
GC (MS, FID)
水分測定
残留溶媒
不揮発性成分 (TG, ICP)
認証値
各不純物濃度
純度(mol/mol)
参考情報
不純物の平均分子量
1 - (Total Impurity)
認証値(物質量分率)
(0.99984 ± 0.00013)
mol/mol
純度(wt/wt)
純度(wt/wt)
一次標準測定法を採用。原理の異なる分析法で値の検証
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【開発手順】
ガス標準CRMと有機標準CRM
特性値の決定法(濃度標準の場合)
有機標準CRM
ガス標準CRM
質量比混合法
質量比混合法
ミニナートバルブ付
アルミシールバイアル
希釈ガス
高純度原料ガス
除電装置
電子天秤
天秤の校正は、メーカーに依頼
(1~2年に1回程度)
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標準物質取扱いの注意点
有機標準CRM
消防法
毒物劇物取締法
労働安全衛生法
ガス標準CRMと有機標準CRM
ガス標準CRM
など
高圧ガス保安法
消防法
毒物劇物取締法
労働安全衛生法
など
主な取扱い注意点は・・・
試料の取り扱い方
・開封条件(温度、湿度など)
・(粉体試料の場合)1回の測定に必要な最小試料量(均質性が確認されている量)
・測定前の注意点(乾燥試料を取扱う際の水分補正方法など)
保管方法
未開封時(保管温度など)と開封後の取扱いなど
開封後の認証値の保証
VOCなどは、開封後の保証はしていないものが多い
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ガス標準CRMと有機標準CRM
(校正用)
具体例の紹介(硫黄標準液)
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硫黄標準液の必要性
具体例の紹介(硫黄標準液)
燃料中に硫黄分が含まれて
いると…
ガソリン中に含まれる硫黄分
(ppm)
燃焼で生成したSOxが
排ガスとなって環境中へ放出
500
500ppm
米国
欧州
日本
400
300ppm
300
10ppm以下
“サルファーフリー”
200
150ppm
酸性雨
100
呼吸器疾患
環境や生物に悪影響を及ぼす!
JIS K 2301
「燃料ガス及び天然ガス-分析・試験方法」
全硫黄・硫化水素
100ppm
0
2000
80ppm
50ppm
2002
2004
ガソリン・軽油・バイオ燃料(日本)
<10 ppm
(ppm = mg/kg)
排ガスのクリーン化
排ガス処理装置の性能を充分に発揮
2008
2010
(year)
石油連盟HP資料を参考に作成;http://www.paj.gr.jp/eco/sulphur_free/
高純度原料
自動車燃料中の硫黄分低減化の動き
2006
S
サルファーフリー
対応
希釈溶媒
トルエン
チオフェン
CRM 4217-a
燃料中硫黄分分析用標準液
高濃度
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硫黄標準液の開発スキーム
原料(チオフェン)の選定・
純度/硫黄分評価
具体例の紹介(硫黄標準液)
希釈溶媒(トルエン)中の硫黄分評価
紫外蛍光法
凝固点降下法 (一次標準測定法)
GC (MS, FID, FPD)
KF
ICP-MS
原料(Thiophene)純度決定法
濃度調製
校正された天秤を使用する
小分け
凝固点降下法
不純物分析
GC-MS, FID, FPD
KF
均質性試験
各不純物濃度
純度(mol/mol)
特性値・不確かさ決定
不純物の
平均分子量
純度(wt/wt)
1(Total Impurity)
原料中の硫黄分
希釈溶媒中の硫黄分
天秤
均質性
調製ばらつき
短期安定性
純度(wt/wt)
認証・頒布
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硫黄標準液の開発スキーム
S
具体例の紹介(硫黄標準液)
チオフェンの純度は
(99.78 ± 0.028) %
(不確かさは、標準不確かさ)
一段希釈
約8000 mg/kg
原料中の総硫黄分
= チオフェンの純度 x チオフェンの硫黄含有率
+ ∑各不純物成分の硫黄分
Thiophene
GC/MSによる定性
(不純物が何かを推定する)
↓
標品を用いて定性結果の確認、定量
(GC-FID, GC-FPD)
↓
各不純物成分の硫黄分を算出
↓
チオフェン中の総硫黄分を決定
GC-FPD
二段希釈
約800 mg/kg
褐色アンプル瓶
10 mL
小分け
三段希釈
約8 mg/kg
0
10
20
原料中に含まれている硫黄含有不純物
原料チオフェン中の総硫黄分
(38.09 ± 0.011) %
30
40
Time / min
277本
180本→頒布用
97本 →管理用
(不確かさは、標準不確かさ)
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標準液の原料および希釈溶媒中の硫黄分評価
希釈溶媒中の硫黄分評価
具体例の紹介(硫黄標準液)
燃焼‐紫外蛍光検出器
希釈溶媒を選定するさいには・・・
目的成分が含まれていない、あるいは含まれていても調製
濃度に対して十分低い濃度であること。
三菱化学アナリテック
株式会社
調製濃度に大きく影響する場合は、適切に評価し認証値お
よび不確かさに加味する必要がある。
質量比混合法の注意点
紫外蛍光法
高純度硫黄化合物について
高純度硫黄化合物
中の全硫黄分の見
積もり
調製時について
精確なひょう量
使用器具の汚染
など・・・
希釈溶媒について
希釈溶媒中の微量
硫黄分の精確な
見積もり
S-compounds → SO2
SO2 + hu1 → SO2 *
SO2* → SO2 + hu2
濃縮装置
試料注入
燃焼管
T&R
紫外蛍光
検出器
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標準液の原料および希釈溶媒中の硫黄分評価
具体例の紹介(硫黄標準液)
希釈溶媒中の硫黄分評価
標準添加法
12000000
10000000
8000000
Signal
測定中
常に見られる
バックグラウンド
6000000
4000000
希釈溶媒トルエン中の硫黄分
(30.0 ± 3.4) mg/kg
2000000
(不確かさは、標準不確かさ)
0
0
200
400
600
800
Time / s
-50.0
-30.0
-10.0
10.0
30.0
50.0
-2000000
S add. conc. / mg/kg
高純度原料
S
希釈溶媒
CRM 4217-a
トルエン
チオフェン
(38.09 ± 0.01)
%
(30.0 ± 3.4)
mg/kg
原料中の硫黄分
希釈溶媒中の硫黄分
天秤
均質性
調製ばらつき
短期安定性
燃料中硫黄分分析用標準液
-高濃度-
規制値付近
(7.81 ± 0.14) mg/kg
(不確かさは、拡張不確かさ)
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硫黄標準液シリーズ
校正用標準液
具体例の紹介(硫黄標準液)
サルファーフリーなクリーン燃料のために!
New !
CRM 4217-a
Sulfur
(7.81 ± 0.14)mg/kg
CRM 4215-a
Sulfur
(0.98 ± 0.02) mg/kg
RM 4216-a
Sulfur
(19 ± 5) mg/kg
調製(質量比混合法)
調製(質量比混合法)
測定(標準添加法)
2007年頒布開始
2009年頒布開始
2011年頒布開始予定
妥当性確認用標準液(組成標準液)
イメージ
CRM 8301-a
バイオエタノール
(開発中)
原料;米
メタノール、硫黄、銅を添加
(規制値からその1/10の間)
認証;成分(メタノール、硫黄、銅、水)
燃焼-UVFL
燃焼-IC(検討中)
2011年度認証予定
イメージ
CRM 8302-a
バイオディーゼル
(計画中)
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炭素14測定用エタノール標準物質
具体例の紹介(エネルギー関連)
バイオエタノール(バイオETBE) 輸入目標(石油業界)
►H21年度 20万kL
(総額約200億円、関税6.2億円+ガソリン税46億円分の免税に相当)
►H22年度目標は84万kLに拡大!
※ガソリンの関税は20%
光合成
採掘
14C
なし
バイオETBE
CO2
(含14C)
バイオエタノールと石油系ガスのイソブテンから合成
ガソリン中エタノール分析用
バイオマス度測定校正用
CRM 4001-b
エタノール
(開発中)
精製
合成
C14は
参考値(参考情報)
非関税
バイオ
エタ
ノール
加工
水際検査
合成
エタ
ノール
ガソ
リン
14C なし
バイオ
エタ
ノール
含14C
ガソ
リン
輸入
合成
エタ
関税 ノール
配合
バイオ燃料の
普及
(ガス原料用)高純度有機標準液シリーズ
具体例の紹介(ガス原料)
NMIJ CRM 4054-a
NMIJ CRM 4055-a
アセトアルデヒド
スチレン
Acetaldehyde
Styrene
◆ 認証値(質量分率)
(99.8 ± 0.5) %
◆ 認証値(質量分率)
(99.9 ± 0.5) %
◆ 内容量
10 mL
◆ 特性値決定法
滴定法(差数法)
◆ 内容量
10 mL
◆ 特性値決定法
差数法(揮発成分は凝固点降下法)
NMIJ CRM 4000シリーズ
NMIJ CRM 4040-b
VOCs
アクリロニトリル
(キシレン、エチルベンゼンなど)
Acrylonitrile
◆ 認証値(モル分率)
◆ 内容量
5~15 mL
◆ 特性値決定法
凝固点降下法(差数法)
◆ 認証値(質量分率)
(0.9997 ± 0.0010) kg/kg
◆ 内容量
10 mL
◆ 特性値決定法
凝固点降下法および差数法
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NMIJにおける
有機標準液の開発
ご清聴
ありがとうございました
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