テニスプレーヤーに必要な持久力~ 2011年1月28日 - 菅尾ATC

テニスプレーヤーに必要な持久力
たちかわジュニアテニスアカデミー
ヘッドアスレティックトレーナー
菅尾祐助
2011/1/28
2010 年 12 月にたちかわジュニアテニスアカデミー選抜クラスの選手に配布し
た資料を修正・追加して公開します。今回のテーマは「テニス選手に必要な持
久力」。2010 年、年末から取り組んでいるトレーニングの一つが、スプリント
トレーニングです。テニス選手に必要なランニング系トレーニングは短距
離??それとも長距離??そんな素朴な疑問。しかし非常に的を射た質問に答
えるべく作ったのが今回の資料です。持久力/スタミナと言っても、その種類は
様々。今回はたちかわジュニアテニスアカデミーで取られた、実際のデータを
下にしました。少しでもテニス選手のレベル向上に繋がれば幸いです。
(注):実名を伏せる為、S コーチ・M 選手と修正しました。
ダッシュ系のトレーニングをする時に、13 秒前後のタイムでする事があったと
思います。以前「なんで 13 秒??」という質問を受けたので、実際のデータを
下に解説します。
“持久力”または“スタミナ”と言っても、色々と種類があります。ここで
考えてほしいことが、「テニスプレーヤーに必要な持久力」です。先に答えを
言うと、テニスプレーヤーには「短い時間・距離のダッシュを何回も何回も繰
り返すことが出来る持久力」が必要と考えます!!フルマラソンのような何十
キロも何時間も走る為のスタミナではありません。ただ勘違いしてほしくない
事は、長距離を走る持久力もテニスでは必要ですし、走り込みで鍛えられる
ことも沢山あります。しかし、テニス選手にとっては長距離に比べ、短い距離・
時間を何回も何回もダッシュできる持久力の方がより必要だ、ということです。
S コーチと M 選手が 3 セットマッチをしました。この試合のデータを下に、
テニスプレーヤーに必要な持久力を考えていきます。彼らの試合時間・ポイン
ト数を計測した結果、試合時間が 74 分、トータルポイント数は 149 でした。
計測方法としては、サーブのモーションに入った時からポイントが決まった
瞬間までのタイムを計測しました。要するに実際にプレーをしている時間を計
測したことになります(注:データ上には「プレー時間」と表記します)。
その結果が以下のデータになります。
トータルポイント数
149
試合時間
74 分
プレー時間
30 分 17 秒
このデータから分かる事は、試合開始から終わりまでの半分の時間もプレー
をしていない!!という事です。しかし、S コーチも M 選手も試合終了後は
相当疲れていました。トータル試合時間の半分以下しかプレーをしていないの
にもかかわらず。その日試合をした他の選手も、試合終了後に疲れていた選手
がいました。ではなぜ疲れてしまったのか??ここで考えられる原因の一つが
テニスプレーヤーに必要なスタミナ不足。です。とすれば、スタミナ不足を
改善する為にはトレーニングが必要になります。ここで考えなければいけない
事は、どのようなトレーニングか?です。
次のデータを見てみましょう。
0~9秒
10~19秒
ポイントの秒数
20~29秒
30秒以上
0
20
40
60
80
上記のデータは、ポイントごとの秒数(0~9 秒、10~19 秒、20~29 秒、30 秒
以上)で区別されています。このデータから分かる事は、ほとんどのポイント
(128/149)が 19 秒以内に終わっている、という事です。そして次のデータが、
今回最も重要な点になります。実際のプレー時間は 30 分 14 秒で、これを秒数
にすると 1810 秒。これをトータルポイント数で割ると
1180 秒(プレー時間)÷149(トータルポイント数)=12.15 秒
この 12.15 秒は 1 ポイントの平均プレータイムになります。今まで 13 秒で
ダッシュしてきた秒数に限りなく近い数値です。データとして 1 試合だけで
は足りませんが、少なくとも上記のデータからテニスプレーヤーは 10~15 秒間
のスタミナが最も必要だ!!という事が分かります。
当然の事ながらテニスの上達に伴い、関東や全国、世界のトーナメントなど
レベルが上がれば上がるほど、相手も強くなってきます。強い相手は球も速く、
前後左右とコーナーにボールをコントロールしてきます。それを相手にするに
は相当のスタミナが必要ですし、それがなければ上のレベルの相手に勝つこと
は難しくなります。
スタミナを上げる為には短い距離・時間のダッシュを何回も何回も反復練習
することでしか向上できません。そしてそれはすぐに上がるものでもありませ
ん。上のレベルの相手と同等にプレーし勝利する為には、徹底的に今からトレ
ーニングをする必要があります。
~最後に~
スプリントトレーニングの秒数を 13 秒前後に設定している理由は他にもあり
ます。その一番大きな理由は体の中でスタミナのエネルギーとして使われる
サイクルが短距離・中距離・長距離によって異なるからです。エネルギーに使
われるサイクルの違いに関しての資料は、また別の機会で説明したいと思いま
す。
Yusuke Sugao, MS, ATC.