巻頭言 ・危機管理 平野敏右安全衛生フォーラム ・新JISマーク表示制度

平成18年10月10日発行(通巻第226号)
226
20 0 6
TIISニュース No.226
226
2006
TIISニュース 2006年10月10日発行
【編集・発行】
社団法人産業安全技術協会
〒350-1321 埼玉県狭山市上広瀬東中原837番地の1
TEL.04-2955-9901 FAX.04-2955-9902
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巻頭言 ................................................................................. 3
・危機管理
平野 敏右
安全衛生フォーラム ........................................................... 4
・新JISマーク表示制度における品質管理
基礎講座 ............................................................................. 7
・保護帽の変遷
谷澤陽太郎
トピックス ....................................................................... 10
・新しい「安全靴・作業靴技術指針」について
・静電気安全指針の改訂について
表 紙:鉱 山 用 保 安 帽
写 真は昭 和 9 年に実 用 新 案 登 録された、
海外だより ....................................................................... 12
・IECExスキーム年次総会出席報告
・中国の煤炭科学研究院(CCRI)と炭坑用防爆構造電気機械器具
分野における技術協力協定を締結
たぶん日本 最 初 の 産 業 用 保 護 帽( 産 業 安
全 技 術 館 所 蔵 )です。俗にカッパ帽と呼ば
れていたそうです。材 質はバルカナイズドフ
ァイバー( V u l c a n i z e d F i b e r )といわれる
もので、紙に薬 液を含 浸させて積 層・硬 化
TIIS紹介 ......................................................................... 15
させたものです。これに漆を塗ってから、型
で抜いてプレスして作られました。軽くて思
・高温・高圧用爆発試験装置
いのほか丈 夫です。頭 部が波 打っていて通
Q&A ............................................................................... 16
・引火性はない(引火点がない)が、爆発性がある(爆発限界が
ある)液状物質の爆発危険性について
気 性がよく、耐 電 性もありました。主として
鉱 山で用いられたようです。
保 護 帽の歴 史、開 発 技 術の変 遷 等につ
いては、本号7頁の基礎講座を参照下さい。
訪問記 ............................................................................... 17
・株式会社パウレック
会員の声 ........................................................................... 18
・ルールを明示し、守らせる
重松開三郎
協会からのお知らせ ......................................................... 19
・酒井眞一当協会元理事・徳山勲男当協会監事が「厚生労働大臣表彰」
において「功績賞」の栄誉
・重松宣雄当協会理事・西郷晄当協会関西支部運営委員に「緑十字賞」
・JABより試験所認定を追加取得
・(独)労働安全衛生総合研究所(旧産業安全研究所)新刊出版物・論文
複写サービスのご案内
・安全見学会のお知らせ
・ハンガリー防爆機器検定機関の J.Hanko所長の講演会が開催されました
・産業安全技術館だより
・大阪産業安全技術館だより
・台湾の防爆検定が10月末よりスタートします
2
ISO9001 認 証 取 得
JQA-QM3877 検 定 部
TIISニュース No.226
巻頭言
危機管理
千葉科学大学学長
東京大学名誉教授
平野 敏右
危機管理が話題になることが多くなった。危機管理の必要性について聞かれると、最近の社会で起こ
っている現象を例に引いて、話をすることにしている。人によっては、危機管理の定義を問題にする人もい
る。そのような人は、多分に、言葉の定義もしないで、
いい加減な話をしているのではないかと、非難をしよう
としているようである。そこで、危機管理の定義を聞かれたときには、定義をしてどうするのですか、
とやんわ
りそらすことにしている。
危機管理という言葉は、
長い間、
専門用語として定義され、
特定の分野で使われてきたが、
最近になって、
いろいろなところで使われるようになってきた。いまや、危機管理という言葉が、専門用語から一般用語に変
化し、
さらにその意味が変化する状況にある流行語である。事典や辞書に記載されているからといって、
そ
の定義が妥当であるとはいえない。
ところで、危機管理の手法を用いなければならないのは、
「そのままにしておいたら危険な状況であると、
認識できたとき」あるいは「危険でもないのに、危険な状況にあると、誤解させられている疑いがあるとき」
である。前者のような状況は、事業所や建設現場で、安全対策を行う動機となるが、後者のような状況にあ
ることも多く、
それに伴う問題には、解決困難なものが多い。
危険な状況にあると判断すれば、事故が起こり発生するはずの損害を軽減する対策を実行しなければ
ならない。
しかし、十分に検討して、事故が起こる確率が著しく低い、
あるいは事故が起きても損害がほと
んど出ないとわかれば、対策は不要となり、対策に掛ける経費を節減できる。後者のような状況にあれば、
確認するのは当然である。
重大な事故が起これば、再発防止のための対策を怠ることはできない。新しい規則や規制ができ、場合
によっては、対策を実行するための新しい組織ができたりする。それらの規則、規制、
あるいは組織の内に
は、発生した重大な事故とは無関係であると思われるようなものも含まれていることがある。事故とは関係
が薄いといっても、すべてが無駄であるというわけではない。長い間、熟慮を重ねて、
たまたま重大な事故
が起こった時期を利用しただけであるかもしれない。
しかし、事故とは関係が薄いと思われるものについて
は、確認する努力があってもおかしくないし、提案者は、社会的な認知を得るための説明を怠ってはならな
い。一旦定められた規則や規制あるいは設立してしまった組織は、
それらが不要であるとわかっても、解消
するには多大の労力と時間がかかる。
これからの危機管理においては、
「危険を発見し、妥当な対策を実行する」こととあわせて、
「危機的な
状況を利用しているのではないかという疑念を持ち、
ことにあたる」ことが重要になってくるはずである。妥
当な対策の実施とその根拠の明確化が、危機管理の目標である。危機管理についていえば、今の社会に
おいて、言葉の定義より優先させるべきことは多い。
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TIISニュース No.226
安全衛生フォーラム
◆新JISマーク表示制度における品質管理
とができる。
いずれにしろ、新JISマーク表示制度に参入しよう
[まえがき]
ご承知のように新JIS マーク表示制度は、新しく改
正された工業標準化法により平成17年10月1日から施
品質管理体制などを確立しておく必要がある。
[品質管理体制]
行されているが、この制度の特徴は、従来の国が直
品質管理体制の審査の基準は、次の2本立てとなっ
接工場認定を行う方式から、第三者機関を活用した
ており、登録認証機関へ申請する者は、
(1)又は(2)
認証スキームを導入する方式に改められたことであ
のいずれかを選択することができる。
る。また、第三者機関である認証機関の登録基準も
ISO/IECの定めた国際基準(ISO/IECガイド65)を
採用し、国際的に整合した適合性評価制度へと変更
されている。
したがって、製造業者、加工業者などが製品に新
JISマークを表示しようとするときには、国に登録さ
れた民間認証機関から認証を受けないと表示できな
いことになる。この認証は、製造業者等の製品が試
験によりJIS規格に適合するかどうかを審査するとと
(1) JISマーク省令第2条第1項に定める次の品質管
理体制の基準を満足していること。
1) JISに規定する製造設備又は加工設備を用いて
製造又は加工が行われていること。
2) JISに規定する検査設備を用いて検査が行われ
ていること。
3) JISに規定する検査方法により検査が行われて
いること。
4) 次による品質管理が行われていること。
もに、その製造業者等の製造時の品質管理体制が「日
①主として以下の項目に関する社内規格がJIS規
本工業規格への適合性の認証に関する省令(JISマー
格に基づき整備され、かつ、適切に管理・実
ク省令)」に適合しているかどうかを審査することに
施されていること。
より行われる。また、この新制度においては、国は
・製品の品質、検査及び保管
登録認証機関に対して報告徴収、立入り検査などの
・原材料の品質、検査及び保管
規程が設けられている。また、登録認証機関から認
・製造、加工及び検査の工程ごとの管理項目
証を受けた事業者に対しては、登録認証機関による
及びその管理方法、品質特性及びその検査
認証維持審査などにより管理されることになる。
方法
一方、新JISマーク表示制度においては、登録認証
機関から認証を受けなくても、事業者自身が新JISマ
・作業方法、製造設備又は加工設備及び検査
設備の管理
ーク以外のJIS適合表示を行うことができる。この場
・外注管理
合は、ISO/IEC 17025の要求事項を満足した試験所
・苦情処理
などで試験を実施し、その試験データを基に、製品
がJIS規格に適合していることを自己適合宣言(この
場合、JISマーク又はこれと紛らわしい表示はできな
い)をすることが基本になっている。
なお、新JISマークの表示制度の施行時期は、平成
4
とする製造業者、販売業者等は、社内において次の
②社内規格が適切に見直されており、かつ、就
業者に十分周知されていること。
5) 1)から4)に掲げる事項のほか、次に掲げる
品質保持に必要な技術的生産条件を満たして
いること。
17年10月1日からであるが、旧JISマークは、平成20
①社内標準化及び品質管理の推進が、製造業者、
年9月30日までの3年間は有効となっており、この日
販売業者等の経営指針として確立されており、
までは引き続き現行JISマークを製品等に表示するこ
社内標準化及び品質管理が計画的に実施され
TIISニュース No.226
ていること。
②上記①を適正に行うため、各組織の責任及び
権限が明確に定められ、品質管理責任者を中
心に、各組織間の有機的な連携をとり、問題
点の把握及び解決のための適切な措置が定め
られていること。
に整備されており、かつ、JIS規格に適合した
製品の検査及び保管が社内規格に基づいて適
切に行われていること。
6) 品質管理責任者の選任及び職務が適切であること。
[品質管理責任者]
品質マネジメントシステムのJIS Q 9001では、経
③社内標準化及び品質管理を推進するため、就
営者は工場等の管理層の中から管理責任者を任命し、
業者に対して計画的な教育訓練が行われてお
品質マネジメントシステムのプロセスの確立、実施、
り、工程の一部を外部の者に行わせる場合に
維持、改善などに関して責任及び権限を与えられて
おいても社内標準化及び品質管理に係る技術
いる。また、管理責任者は複数であっても差し支え
的指導を行うこと。
ない。
④品質管理責任者の選任及び職務が適切であること。
(2) JISマーク省令第2条第2項に定める次の品質管
理体制の基準を満足していること。
一方、新JISマーク表示制度においては、法令上品
質管理責任者を選任することが義務付けられており、
この品質管理責任者は品質マネジメントシステムの
1)品質管理体制が、品質マネジメントシステム
管理責任者と同一人であっても差し仕えないが、新
JIS Q 9001の規定に適合していること。
JIS制度では品質管理責任者の資格及び職務が次のよ
JIS Q 9001の概要は、品質マネジメントシステ
うに規定されている。
ムの全体的な事項、品質マネジメントシステム
1) 資格
の構築・運営のための経営者の役割・責任、経
品質管理責任者は、登録認証機関に係る製品の製
営資源に関する事項、製品の設計・開発・購
造又は加工に必要な技術に関する知識を有し、かつ、
買・サービスなどに関する事項、製品・プロセ
これに関する実務の経験を有する者であって、大学、
スの監視・測定・改善の事項などに関する基本
短期大学、専門学校などの理工系の課程において、
的要求事項を規定している。しかし、ここで注
品質管理に関する科目を修めて卒業しているか、又
意しておく必要があるのは、JIS Q 9001では組
はこれに準ずる標準化及び品質管理に関する科目の
織の品質のマネジメントのシステムに対する適
講習会の課程を修了することにより、標準化及び品
合性を要求しているのに対して、JISマーク制
質管理の知見を有する者である必要がある。学校に
度は、JIS規格への適合性が要求されているた
おける品質管理に関する科目においては、統計学、
め、関係するJIS規格の製品の製造・検査設備、
品質管理、経営工学、生産管理、工場管理などの科
検査方法、製造工程、原材料等がJIS規格に従
目があるが、これらのうち1科目以上で30時間以上
う必要があり、かつ、これらの事項が具体的に
履修しておく必要がある。
社内規格に規定されている必要がある。すなわ
一方、講習会においては、日本規格協会などの
ち、1)のほか次の項目について対応する必要
研修機関において「JIS品質管理責任者セミナー専
がある。
修科コース」などが開催されており、工業標準化
2) JIS規格に規定する製造設備又は加工設備を用
に関する関係法規のほか、「品質概論」、「社内標準
いて製造又は加工が行なわれていること。
化」、「統計的手法」、「統計的工程管理」、「抜取検
3) JIS規格に規定する検査設備を用いて検査が行
査」など標準化及び品質管理に関する知見を得られ
われていること。
4) JIS規格に規定する検査方法により検査が行わ
れていること。
5) JIS規格に従って社内規格が具体的かつ体系的
るようになっている。また、演習や修了試験など
を通して修了証書が発行される。
2) 職務
製造業者等は、製造部門又は加工部門とは独立
5
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した権限を有する品質管理責任者を選任する必要
新JISマーク
がある。品質管理責任者は、工場などの社内標準
及び品質管理を統括するもので、社内標準及び品
(1)鉱工業品
質管理に関する責任体制を明確にすることにより、
経営者が示した品質方針・目標を達成させる必要
があり、次のような職務を行う必要がある。
①社内標準化及び品質管理に関する計画の立案及
び推進
②社内規格の制定、改廃及び管理の統括
(2)加工技術
③登録認証機関の認証に係る製品の品質水準の評価
④各工程における社内標準化及び品質管理に関す
る指導、助言、部門間の調整
⑤工程に生じた異常、苦情等に関する処置及びそ
の対策に関する指導・助言
⑥就業者に対する社内標準及び品質管理に関する
(3)特定側面
教育・訓練の実施
⑦外注管理に関する指導・助言
⑧登録認証機関に係る製品のJISへの適合性の承認
⑨登録認証機関の認証に係る製品の出荷の承認
[おわりに]
新JISマーク表示制度における工場などの品質管理
について、JISマーク省令に基づいて概説したが、基
本的には新JISマークは、主務大臣の登録を受けた第
三者機関の認証を受けて、認証に係る製品、包装、
容器又は送り状に日本工業規格に適合することを表
示するものである。したがって、JIS Q 9001 の品質
マネジメントシステムに適合しているだけでは不十
分で、それらの製品が製造、検査などの設備、工程、
検査方法、原材料などがJIS規格に適合している必要
がある。
当産業安全技術協会もISO/IEC 17025に基づく試
験所認定を安全靴、安全帯などについて取得してい
るが、新JISマークの登録認証機関になるためには
ISO/IEC ガイド65に基づく登録申請を主務大臣に行
う必要がある。また、登録認証機関になった時にも
マーク申請をしてきた企業での製造設備、検査設備、
品質管理体制などを審査するためには、当協会での
品質管理責任者の育成と現場での審査体制の確立が
必要となろう。
6
品質のバラツキの評価
工業製品を製造する場合、それらの製品が規格
どおりの品質を持っているかどうかを判定するこ
とは、製品を市場に出す上で最も重要なことであ
る。工業製品を大量に製造する場合、通常、製品
の品質(物理量、性能など)は、原材料、機械、
作業者などにより、程度の差こそあれバラツクも
のである。このバラツキを評価するためには、一
定数サンプリングした製品の計測値の標準偏差な
どから、工程能力指数(どの程度のバラツキで品
質を実現し得るかの能力)を求めたり、不適合品
の発生率を予測し、製造工程中の製品の品質のバ
ラツキが止むを得ないものなのか、材料や操作の
異常などによる意味のあるものなのかを統計的に
判定する必要がある。品質の良い製品を安定して
製造するためには、今後これらの統計学的な考え
方を取入れた品質管理体制を確立することがます
ます重要になってくるものと思われる。
TIISニュース No.226
◆保護帽の変遷
も、働く人の生命の値段が安くて使用者が払う弁償
株式会社 谷沢製作所
会長 谷澤陽太郎
[はじめに]
金が少ないうちは、事故を防ぐために保護具を使お
うという発想は中々育って来なかったのでしょう。
鉱山、炭鉱用を除いて他の産業での保護具の使用
頭を守る用具は、一般にヘルメットまたは安全帽
は限られていました。それが普及するのは、やはり
と云います。表題の保護帽という言葉は、労働安全
戦後、社会福祉の風潮が強くなってからと云えます。
衛生法(1972年)の中で使われました。一方、日本
保護帽は、1951 年、早くも日本工業規格「保安帽」
工業規格では、初めから保安帽と云っていました。
として制定されました。それから今年(2006年)ま
鉱山用保安帽という名称の流れと思われます。往時
での55年が、わが国の保護帽の表の歴史と云えまし
隆盛を極めた鉱山や炭鉱が、ユーザーとして大半を
ょう。では、それ以前にはどんな保護帽があったの
占めていたからでしょう。ヘルメットと云うと、す
でしょうか。その一つとして残っているのが、本誌
ぐ思いつくのが乗車用安全帽だと思います。そのほ
の表紙を飾っている鉱山用保安帽です。この帽子は
か野球用のヘルメット、それにスキー用とか様々な
1934 年にわが国の実用新案登録がなされています。
スポーツ用のヘルメットがあります。地震など不時
しかし導入元はアメリカでありました。当時から、
の災害時、頭部を守るためヘルメットが利用されま
わが国ではあご紐(一本吊り)が付けられています。
す。最近では、子供用、幼児用のヘルメットが多く
内装は幼稚で、到底安定したかぶり心地とは思えま
出てまいりました。
せん。殻体は、天井とその下の側壁部分に分かれて
この様に、ヘルメット(安全帽)と云っても、
おり、それを組紐でつないでおります。これが紐通
様々な目的で作られ使われています。ここでは、産
し式保安帽の源流なのかも知れません。この帽子の
業用に使われる「保護帽」にしぼって述べることにし
特徴は、軽くて風通しのよいことです。いずれも保
ます。
護帽の歴史を通じて開発者を悩ませてきた問題点で
産業用保護帽は、上記労働安全衛生法に基づいて
ありました。頭に乗せて働く時、それが軽いことは
国の規格と国家検定制度(1976年∼)が設けられ、
とても大事ですし、風通しの良いことも大切でした。
その検定を通らないと国内の生産、販売ができない
ことになっています。現在のところ、その唯一の検
定機関として(社)産業安全技術協会があります。
筆者は、50年近く産業用保護帽に携わって参りま
[MP型の誕生]
軍隊の帽子は普通「鉄か
ぶと」と云いますが、実は
それは二重になっていて、
したので、ここでは、保護帽の技術的進歩について
下にかぶるのが内帽、その
振り返ってみたいと思います。
上に鋼鉄製のおわんを乗せ
[頭部保護の歴史]
ご承知のとおり、頭部を守るというのは最も切実
な問題であります。洋の東西を問わず、かぶとは戦
図1 MP型
て戦場に出ます。
戦後すぐ、占領軍がやって来て、かぶっている帽
子が古くなると、民間に払い下げられました。
場で一番大切な武具でありました。これが一般に産
そのうちのベークライト製内帽を保護帽の形に再
業用として使われるようになったのは、それほど古
生して市場に提供しました(図1)。これがプラスチ
いことではなかった様です。産業革命(18世紀後半)
ック製保護帽の始まりでした。工場は丸焼け、材料
が起こって、動力が人の手を離れると「思わぬ事故」
も入手できない頃です。形がミリタリーポリス形な
が急増してきます。思わぬ事故で死傷者が急増して
ので、俗にMP型と称しました。内装は前の形のまま
7
TIISニュース No.226
新しくして使う場合と、先程書いた紐通し式に作り
直す場合がありました。この場合もあご紐はつけて
いました。
[溝付き帽]
1994年、雨溝付FRP
[あご紐の役割]
製保護帽が開発されま
あご紐がついているのはわが国の保護帽の特徴で、
他の欧米諸国にはついてもオプショナル(欲しければ
した。
雨溝付きは(図4)
図4 溝付帽
つける)であった様です。どうしてこういう要求がわが
帽子の外縁に雨溝が付
国の使用者からあったのか。一つには、内装が幼稚で
いて、降った雨が首のあたりに浸み込むのを防ぎま
それだけでは安定してかぶれなかった。もう一つはあ
す。雨溝はまた、側圧(前出)を丈夫にします。こ
とでも述べますが、墜落した時に頭部を守りたかった
れをFRP (軽量タイプ)で製品化、市場で評価され
のだろうと思います。それには、保護帽が脱げないよ
ました。FRPは、ガラス繊維で補強していますが、
うにあご紐を締めなければなりません。
そのFRPで成型して雨溝の形を作るのが当初は難し
[野球帽の誕生]
いとされておりました(他社資料提供)。
[新しい基材でFRP帽を]
1955∼1957年頃、横幅の
狭い布帽子タイプ(キャッ
ガラス繊維を使わないFRP帽は、2003年に発売さ
プ型)の保護帽の要求が出
て来ました(図2)。鉄鋼業、
れました。FRP帽は、回収して焼却し、熱エネルギ
図2 野球帽型
ーとして利用(いわゆるサーマルリサイクル)する
建設業、荷役業、運送業な
場合、中に入っているガラス繊維が残渣として残り
どからです。はじめ、ベークライト樹脂で検討され
邪魔になります。そこでガラス繊維の替わりに合成
ましたが、それでは側圧(側面から圧迫される時の
繊維を基材としたFRP帽が開発されたのです。合成
強さ)が弱いので、FRP樹脂を採用しました。ここ
繊維はまた、ガラス繊維より軽量で強度が保たれま
に現在の野球帽タイプの保護帽が誕生しました。野
すので、それで作った保護帽は軽量にできます。軽
球帽型は、従来の布帽子に替えて、広く各職場に普
量で環境にやさしい保護帽が生まれたのです(他社
及し、MP型と並んで保護帽の代表的な形の一つとな
資料提供)。
[C.I.帽]
りました(他社資料提供)。
[ポリカーボネート帽]
1989年、世の中はバブル
1960 年、アメリカでポリ
の極、好景気に酔っていま
カーボネート樹脂(PC)が
した。保護帽の世界は、相
開発され、殆ど同時期にわ
8
く用いられるようになりました(他社資料提供)。
図3 ポリカーボネート製
変わらずMP型と野球帽型
図5 C.I.帽
が国でも発売されました。
が主流を占めておりまし
この樹脂は、耐衝撃性が高く、耐熱性、耐電圧性に
た。何かこのマンネリを打破する手段はないものか
も優れていました。これらの性質は、保護帽にとっ
と頭をひねっており、いくつか新しいデザインの型
て最高のモノである、とのことで、このPCによる新
を試作しておりました。そこへ、C.I.(Corporate
しい保護帽が開発されました。
Identity)という流行が始まって来ました。X社から
防衛庁のヘルメットライナーをPCで開発した東京
声がかかり、保護帽、作業服を一新し、X社独自の
帽子株式会社(現 オーベクス㈱)はそれを民生用に
スタイル、色、形(C.I.)の保護帽、作業服を作りた
も導入、広く市場に普及させてまいりました。この
いとの要請を受け、直ちに開発してあった新型の保
保護帽は(図3)の様に、帽体の表面に突起が何もな
護帽を提案致しました。
い形が特徴でした。価格は高目でしたが、品質が認
それ以来、各社で「C.I.帽」が流行になり、新デザイ
められ、電気工事会社、電電公社、国鉄などにも広
ンの帽体新型と、マークネームなどの加工に新しい
TIISニュース No.226
工夫をしてお客様に喜んでいただけました(図5)。
この経験は、それ以後、保護帽の新型デザインの
開発に良い刺激となったと思います。
と云います。墜落の時助かるからと主張すると、「保
護帽で墜落から命を護ることはできないよ」と反論
されます。そのため、かれらの保護帽にあご紐は付
[保護帽の限界]
いていないのです。思想が違うようです。
保護帽は、外から加わる衝撃を吸収して頭部を護
[風通しのよい帽子]
ります。衝撃を吸収するために、帽体が割れたり凹
1997年、緑十字展(保
んだりします。また、内装が伸びて衝撃を吸収する
護具・保護機器の展示会
部分もあります。加わる衝撃力の大部分は保護帽で
で全国産業安全衛生大会
吸収され、残りが脳や首の骨を通じてからだに伝わ
併設)が札幌で開かれま
ってゆきます。いくら保護帽が丈夫でも、首の骨が
した。そこで不思議な小
耐えきれなければ意味がありません。保護帽の役割
間がありました。保護帽の通気穴の面積が国家規格
には、おのずから限界があるのです。
の基準よりずっと大きいのに、条件付で検定に通っ
[ライナー]
図7 飛翔
ているということでした。通気の問題は、長年の課
その限界を広げてくれたの
題だったので、すぐそのアイディアを製品にいたし
が、ライナーというものです。
ました。こうして、通気性について、一つの解決が
普通は発泡スチロールでできて
できました(図7)。
[フェイスシールド付]
おり、これを帽体の内側に貼り
付ける(だからライナーという)
図6 ライナー
保護帽の中に装置を付けて、
と、約1.5倍、衝撃吸収性が向上
フェイスシールドを出し入れ
することがわかりました(図6)。
できる工夫を作ったのは、
1975年の国家規格制定までは、JISに荷役用安全帽
1968年のことです(図8)。狭
というのがあって、トラックなどの荷台で荷上げ荷
い帽体内部を使って装置を設
卸する際、転落しても助かるようにこの帽子をかぶ
けるのは一苦労でした。しかし、当時はまだ出し入
りなさいと指導されておりました。
れがもう一つ円滑でなく、アイディアの提案者から
図8 面板付
[墜落時用]
も採用されませんでした。これが脚光を浴びたのは
これが国家規格では、墜落時用保護帽として生ま
ごく最近の1995年ごろからであります。最近、眼の
れ変わりました。ところで、今でもそうですが、墜
事故の多い現場では、このフェイスシールド付きヘ
落事故は荷上げ荷卸作業ばかりでなく、あらゆる業
ルメットが喜ばれるようになりました。開発という
種で最大の事故原因となっています。それなら一般
のは、早過ぎても駄目だし、遅すぎても駄目の様で
の保護帽を、単に飛来落下物用だけでなく、墜落時
す。それでもコツコツと開発は続けねばなりません。
用兼用にした方がよいではないか、となって、私ど
[終わりに]
もは「飛墜兼用」のキャンペーンを続けてまいりま
労働災害統計を見てみると、墜落・転落災害に次
した。これによって墜落事故による死亡率は大きく
いで転倒による死傷者数が2番目に多いことが分か
減少したと、業界全体として自負しています。とこ
ります。これから私たちは、転倒時のことをもっと
ろが、帽子の中にライナーを入れるとよいことばか
研究しないといけないようであります。
りではありません。通気が悪くなる心配があります。
その克服には更に工夫が必要でした。
[欧州との違い]
欧州に我われの帽子を売り込みに行くと「お前達の
保護帽はライナーが入っていて暑苦しいからイヤだ」
先述しました各社の開発例はホンの一端でありま
す。取り上げた以外の会社からも様々の貴重な開発
が次々と市場に提供されております。
こうして保護帽は、用いる方々のご要望にも応え
ながら、限りなく前進を続けているのです。
9
TIISニュース No.226
トピックス
◆新しい「安全靴・作業靴技術指針」について
見直し、動摩擦抵抗の区分も見直した。
・ 表底のはく離抵抗:新たに、つま先はく離の試験
[指針改定のいきさつ]
独立行政法人労働安全衛生総合研究所(旧労働省
産業安全研究所)が平成3年に公表した「安全靴技術
指針」は、安全靴の安全性、作業性、快適性等に関
する性能の全般的な基準として活用されてきました
が、公表から既に15年が経過し、この間の安全靴の
を追加し、全体はく離と2通りの試験を規定し、
作業ではがれない下限値を規定した。
・ 屈曲性:従来の試験装置の問題点を改良し、試験
方法を変更し、区分も新たに見直した。
・ むれ防止性:試験方法を変更し、区分も新たに設
定した。
技術進歩は目覚ましいものがあります。現在では、
プロテクティブスニーカーなど作業性を重視した安
全靴・作業靴も開発され、安全性能の面でも現在の
技術指針の基準を大きく超えるものが製造されるよ
うになりました。このような情勢から、この度、研
究所は「安全靴技術指針」を「安全靴・作業靴技術
指針」と改称して、内容に大幅な変更を行って新た
に公表しました。
[改定の要旨]
・ 今回の改定では、始めに、安全靴だけでなく作
むれ防止性試験
業靴も含めることとし、指針のタイトルを「安
全靴技術指針」から、新たに「安全靴・作業靴
技術指針」と改める。
・ 現状とそぐわなくなっている性能基準や試験方
・
・ 漏れ防止性:新たに追加した。
・ 表底の静電気帯電防止性能:試験方法等を見直した。
方法に改める。
・ 表底の導電性:新たに追加した。
新しいJIS T 8101に規定された試験方法との整合を
靴の選択については、その内容の充実をはかり、
より活用できるように充実させる。
以上のようなことを主要な検討項目として、指針
の見直しを実施し、新しい指針が作成されました。
特に大きな変更がなされた試験は、次のような試
以上のような変更を行い、新しい「安全靴・作業
靴技術指針」が刊行されました。
この指針が、これからの安全靴や作業靴の開発、
作業現場で有効に活用され、靴に係わる災害の発生
が減少することに役立つことを望んでいます。
なお、当協会は、(財)日本適合性認定協会から
JIS T 8101:1997(安全靴)で規定された3つの性能試
験です。
験について、ISO 17025に従った試験所機関としての
・ つま先の強度:先しん材質の違いによる試験方法
認定を取得しています。また、JIS T 8101:2006へは
の違いをなくし、圧迫試験の方法は現行JIS T
現在移行準備中ですが、興味のある方は、各種試験
8101の試験方法に変更し、つま先の負荷と区分を
について、遠慮なくご相談ください。
見直した。
・ 耐滑性:試験の人工足、潤滑油、滑り速度などを
10
加した。
法等の見直しを行い、有効に活用できる基準や
行い、同じ試験においては同一の試験方法とする。
・
・ 低温耐熱性:高温耐熱性に加え、新たに低温を追
TIISニュース No.226
◆静電気安全指針の改訂について
独立行政法人労働安全衛生総合研究所(旧労働省
産業安全研究所)が刊行した静電気安全指針は、
トを行うことが努力義務化されたため、それを実行
するためにリスクアセスメントが必要になりました。
そこで静電気安全指針でも、リスクアセスメント
1977年に初版を発行、1988年に改訂を経て、産業界
を行うために必要な情報を追加し、分かり易い構成
における静電気災害を防止するという役目を、現在
で編集することを目的に改訂が行われました。
においても担っております。
構成としては、旧指針において本文中に記載され
1988年の改訂版は、発行から18年が経過し、新し
ていた基準値や管理指標のほとんどを、本文の後に
い知見の導入、規格等の国際化の流れとの整合性等
ある「静電気安全対策の補足」に移動し、本文では
から、内容の見直しが図られることとなりました。
考え方や検討方法の解説に重点が置かれています。
見直しに当たっては、静電気安全指針改訂原案審議
また、便宜上容認してきた日本独特の用語の使用
委員会による審議を経て、この度発行の運びとなり
方法は、国際化が進み、海外の協力会社との意志疎
ましたので、2006年改訂版の概要をお伝え致します。
通の妨げになることから、修正することに致しまし
今回の改訂に強い影響を及ぼしたニーズとしては、
た。例えば、「誘導帯電」がそれに当たり、旧指針で
日本で長年行われてきた規定遵守型の対策から、欧
は「絶縁された導体の近傍に帯電物体があると
米で行われているリスク低減型の対策への変更が挙
き、・・・によって、帯電したのと等価な状態にな
げられます。このことは、本年4月に改正された労働
る現象」と説明されています。しかし、海外ではこ
安全衛生法に以下の条文が追加されたことにも対応
の状態を単に「静電誘導により、導体中の電荷が分
しています。
離された状態」と呼んでおり、誘導帯電とは「静電
労働安全衛生法改正条文の抜粋
誘導により導体内で分離した電荷の内の一方が失わ
(事業者の行うべき調査等)
第二十八条の二
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、
設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行
れて導体が帯電する現象」を指しています。このこ
とは、米国防火協会規格のNFPA77などで、確認す
ることができます(誘導帯電の英訳は、induced
charge)。
動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、そ
更に、付録の物性表などは、極力最新のデータに
の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定
差し替え、リスクアセスメントで使用し易いように
による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防
改訂されました。例えば、液体の導電率や誘電率の
止するため必要な措置を講ずるように努めなければならな
表では、導電性液体、半導電性液体および絶縁性液
い。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有
体に分けて記載しています。
する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずる
旧指針を長年利用されてきた安全管理者などは、
おそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造
構成が大きく変わった改訂版に最初は戸惑いを覚え
業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限
るかも知れません。しかし、この改訂版は、長い間、
る。
災害防止に貢献してきた旧指針と大きく変わるもの
2
ではありませんので、一日でも早く改訂版に馴染み、
厚生労働大臣は、前条第一項及び第三項に定めるもの
のほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を
リスクマネージメントに役立てて頂けることを願っ
図るため必要な指針を公表するものとする。
ております。
3
厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその
団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。
なお、旧指針を用いて安全管理を実行している管
理者が、改訂版へ切り替えるときのお役に立てれば
と考え、近い内に講習会を計画しておりますので、
条文の内容から分かるように、各企業は作業者
ご活用頂ければ幸いです。
(労働者)を災害から守るためにリスクマネージメン
11
TIISニュース No.226
海外だより
◆IECExスキーム年次総会出席報告
今年のIECExスキーム年次総会は10月4日から8日
・ISO/IECガイド65でExMCに加入が求められ保険
の最小補償額の審議
までの5日間の日程で中国(上海)で開催された。日
・CABから報告されたIECExマークの承認
本からはIECExスキーム国内審議委員会の富田委員
・会計報告、予算承認
長、角谷副委員長、秋山委員と事務局である当協会
・来年の総会開催(米国、デンバー)
の林と小金の5名が出席した。今年の年次総会は
CNCAとCQMの主催であった。
総会の日程は以下のとおりであった。
9月4日
9月5日
9月6日
9月7日、8日
ExTAG*1 トレーニングワークショップ
ExTAG ミーティング
インダストリーシンポジウム
ExMC*2 ミーティング
IECExマーク
*1
ExTAGはTest & Assessment Groupの略、
*2
ExMCはManagement Committeの略
IECExスキームは電気機器(製造者の品質管理を
含む)から修理・保守へとその範囲を拡大しつつあ
例年どおりExTAGトレーニングワークショップで
り、将来的には防爆産業全体をカバーすること目標
は最新の運用規則・関連手順を紹介し、試験・評価
としている。また、現在IECExスキームの理念であ
の整合化を目的としているが、今年はセッション1と
る1回の試験・評価、1つの認証を受け入れているの
セッション2からなり、セッション2はExTL又は
はオーストラリアとニュージーランドの2カ国だけで
ExMCの代表以外の参加は許可されていない。セッ
ある。このようにスキームを完全に受け入れる国が
ション1では本安の評価方法等のプレゼンテーション
今後増えるとは考え難い。今回の総会では国内規格
が行われた。
制定に携わるReguratorと呼ばれる人が何名か出席し
ExTAGミーティングには25カ国から83名の出席者
ていたがスキームとしてはそのような人たちを取り
があった。日本は昨年IECExスキームに加盟したが、
込んで進展を試みているのではないかと感じられた。
試験機関(ExTL)と認証機関(ExCB)として認め
反面インダストリーセミナーではIECExスキームと
られていないためExTAGミーティングにはオブザー
ATEXとの違いについてプレゼンテーションが行わ
バとして参加した。主な議題は以下のとおり。
れ、両者の隔たりは依然大きいことを実感した。
・IECExホームページのアップデート情報
・各ワーキンググループからの報告
ExMCミーティングの出席者は23カ国、77名であ
った。主要な議題は以下のとおり。
・Agius氏(現Secretary)が次期Secretaryとして承
認された
・インドが26番目の加盟国として承認された。
・ExCBとExTLとして各2機関が新たに承認された
・IEC03「修理及びオーバーホールを行う設備の認
証手順」関係の手順書の審議
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IECExスキーム年次総会(上海)
TIISニュース No.226
◆中国の煤炭科学研究院(CCRI)と炭坑用
防爆構造電気機械器具分野における技術協
力協定を締結
1.技術協力協定に関する文書の取り交わし
平成18年8月17日、当協会防爆電気試験部永石部長
が中国上海市にある煤炭科学研究院上海分院に出向
き、炭坑用防爆構造電気機械器具分野における技術
協力に関する協定文書を取り交わした。
この「技術協力に関する協定文書」の目的は、日本
協定調印文書交換のため煤炭科学研究院上海分院を訪問した永石部長
から中国向け炭坑用防爆電気機器の輸出に際し、炭
4.検定の手続き
坑で使用する電気機器は、中国の炭坑用防爆検定を
①申請時に必要な書類
受検する必要があるが、この受検手続等の効率化を
Ⅰ)検定申請書(2通)
はかることである。この協定の締結により、今後中
Ⅱ)営業許可書
国に炭坑用防爆検定の申請をする場合、当協会
Ⅲ)製品の規格(防爆規格、一般規格)
(TIIS)発行の認定合格証と試験結果書が添付されて
Ⅳ)図面
いれば、試験結果書に記載された試験項目について
Ⅴ)技術資料(計算資料等も含む)
は、試験が省略されることになる。
Ⅵ)製品の写真
2.検定申請の概要
Ⅶ)TIISの認定合格証と試験結果書
次に、中国での炭坑用防爆構造電気機器の検定に
ついて概要を紹介する。
中国における炭坑用製品(電気機器に限らない)
Ⅷ)その他関連資料
Ⅸ)供試品
②申請は、一般には、上記2(検定申請の概要)で説
の検定制度は、1990年より開始され、国家安全生産
明したように炭坑用製品検定所(北京市)に申請
監督管理局下で、炭坑用製品検定所(事務所は北京
し、所定の審査の後に試験のために全国に3ヶ所あ
市)が検定申請を受付け、審査、認定を行う。
る試験所に送られる。今までは、日本から申請す
ただし、実際の試験は国家安全生産監督管理局
る場合、北京市と試験所のある場所の2ヶ所を訪問
(国家炭坑安全観察局)に認可された試験機関(現在、
しなければならなかったが、今回の協定により、
煤炭科学研究院上海分院電気防爆検定所を含め全国
TIISの認定合格証を有する製造者は、煤炭科学研
に3ケ所)が行うことになる。
究院上海分院試験センター電気防爆検定所に申請
3.検定合格証書の種類
することでよいこととなった。その後は、ここよ
検定には、ロットに対するものと型式試験に対す
るものとがあり、それぞれに合格証書が発行される。
ロット検定は、主に輸入品に対して行なわれ、限られ
た数に対し合格証書が発行されるものであり、日本から
の輸出がある度に、数量を定め検定申請が必要となる。
り北京の炭坑用製品検定所に送られ、所定の審査
の後、指定された試験所(日本からの申請の場合、
上海の電気防爆検定所)に送られる。従って、申
請手続きは、大幅に簡略化され、便利になった。
5.適用規格
従来、日本の製品は、全てロット検定で行なわれ
原則は、IEC60079シリーズを採用したGB3876(炭
ていたが、協定締結後は国内製造者と同様に、型式
坑内爆発性雰囲気中で使用される電気設備)という
検定の申請ができるようになる。型式検定は、我が
規格及び機器毎に規定された規格であるが、現実に
国のやり方と基本的には同じであり、3年毎に更新手
は、IECとかなり異なる点がある。
続きが必要となる(ただし、製造を希望する場合)。
以下に主な異なる点を示す。
13
TIISニュース No.226
①防爆性能に加え、電気機器としての電気性能が試
また、規格で提出の必要があると規定された材料
験される。従って、対象となる電気機器が、一般
に対しては、ミルシートの提出が求められる。合格
規格(防爆の規格でなく)に適合しているか否か
証の有効期間は3年であり、有効期間が過ぎる前に更
が審査される。
新の手続きが必要となる。
②独立した端子箱が必要とされる。
7.申込先の住所、機関名及び担当者
③本体―端子箱間の導線引込構造は、スタッド式が
①住 所:№.520 Lu Ding Road Shanghai
原則とされる。
④坑内で使用される場所毎に、電気機器の材料にそ
れぞれ制限がある。
⑤坑内での使用方法の特徴としては、重負荷で始動
②機関名:Test Center of Shanghai Branch
Central Coal Mining Research Institute China
National Center of Quality Supervision and
Testing for Coal Cutting Machine Shanghai
頻度が多い、使用場所の環境が悪い等があり、こ
Electric Explosion Proof Approval Department
れらに対応できる構造が求められる。
Ministry of Coal Industry
⑥坑内では、固定使用されるものは限られ、比較的
③担当者:Yang Yue Hai(羊 躍海)
頻繁に移動して使用されるので、重量物(例えば
FAX: +86-021-62643338
変圧器及び給電保護継電器類)はソリの上に乗せ
TEL: +86-021-62640971
たまま使用されるのが一般的である。
6.検定合格証の交付及び有効期間
+86-52816659-2023
e-mail: [email protected]
検定合格証を得た製品の出荷の際には、出荷検査を
し、その記録を後で報告することが求められる。
14
なお、申請手順をフローで示すと以下のようである。
TIISニュース No.226
TIIS紹介
◆高温・高圧用爆発試験装置
して良好な結果を得ることができました。
当協会では、高温・高圧下における可燃性ガス・
蒸気の爆発特性試験をより安全に、より効率良く実
施するために、この度、新しい高温高圧用爆発試験
装置を導入いたしました。新しい試験装置の概要を
紹介いたします。
今回新たに導入された試験装置は、SUS316L製2L
球状爆発容器(図1参照)及びこれを収納する高温恒
温槽(図2参照)より成っています。新しい装置の特
色は、耐圧力を30MPにまで高めたため、初圧2MPa
までの試験ができるようになったことと、高温槽で
測定できる上限温度が200℃となったことです。更に、
爆発容器の材質をSUS316Lにしたことにより耐酸素
図1 2R球形高圧爆発容器用油圧クランプ装置
性が向上しています。また、万一爆発容器内部の爆
発により、生成ガスがフランジ等の隙間から恒温槽
内に噴出し、恒温槽内で2次爆発が生じたときには、
恒温槽背面の爆発放散板が作動して内部の過圧力を
屋外へ安全に放散することができるようになってい
ます。
新装置では容器下部殻の側面にノコ歯ネジが切っ
てあり、上部殻を合わせた後、袋ナット形状のロッ
クリングを被せて手で軽く締め付け、次に締付治具
を用いて油圧ユニットにより所定のトルクで増し締
めを行うことにより、最大30MPaまでの耐圧能力を
確認しています。このメカニズムにより、従来のボ
図2 高圧爆発容器を高温恒温槽へ格納した状況
ルト締め付け方式に比べ、爆発容器締め付けの時間
と労力が大幅に改善されました。
産業界では高効率化等のため、高温高圧条件でプ
ロセスを稼働させるケースが増えています。高温・高
圧下における安全操業のための基礎データとして次
のような爆発特性の測定が可能です。
1. 爆発上・下限界
2. 爆発限界酸素濃度
3. 3成分系の爆発濃度範囲の測定
4. 爆発圧力特性( KG値、図3参照)
既に本装置を使用し、高温・高圧下における爆発限
界酸素濃度の測定を2件実施しましたが、円滑に進捗
図3 爆発圧力波形の記録例
15
TIISニュース No.226
Q&A
◆引火性はない(引火点がない)が、爆発性
これらの物質は、一般に引火点が測定されないの
がある(爆発限界がある)液状物質の爆発
で、消防法上は危険物とは見なされないようです。
危険性について
しかしながら、爆発性混合気を形成しうるので、危
険場所となることがあり、そこでは防爆電気機器を
Q1:塩化メチレンを使用しています。塩化メチレン
使用しなければなりません。
が漏洩する恐れのある場所では、防爆電気機器を使
わねばなりませんか?
Q2:火災の危険性がないのに爆発の危険性があると
A1:塩化メチレンを含む下表の物質は何れもハロゲ
はどういうことでしょうか?
ン化物であり、一部は代替フロンとして用いられて
A2:引火点は火災の危険性を評価するのに用いら
います。これらの物質は、空気中で持続拡散燃焼が
れ、爆発限界は爆発防止に利用されます。火災の危
不可能であり、引火点も測定できません(火災の危
険性を判定するための引火点試験器には、一般に、
険性はない)。しかし、ガス・蒸気の空気との予混合
低温(∼90℃)用の密閉型と、それより高温用の開
気において、上方火炎伝播は可能です(爆発限界が
放型の二通りがあります。
ある)。従って爆発の危険性は存在します。また、引
同じ物質に対して両方で測定した場合、密閉式の
火点は測定されるが、燃焼点(5秒以上拡散燃焼が継
方が開放式より数℃から10℃程度低い値を示します。
続する)が測定されないもの(アルコール/水 混合
これは、開放式では液面上の蒸気が逸散しやすく、
物などに見られる)についても、火災の危険性はな
液面付近でその温度での飽和蒸気濃度に達しにくい
いが爆発の危険性があるといえます。このような物
からです。いずれにしても引火の有無は測定器カッ
質を一般に「難燃性物質」と呼んでいます。
プ液面上の狭い空間で、火炎が下方及び水平方向へ
伝播するか否かで判定しています。引火点が測定さ
引火点が測定されない可燃性物質の例
れなければ、その物質は拡散燃焼しないことが知ら
爆発範囲
物質名
れており、火災の危険性はないものとされています。
一方、爆発限界の測定では内径50mm以上の空間
化学式
で、火炎が上方へ伝播する限界の蒸気濃度を測定し
vol.%
塩化メチレン
CH2Cl2
14.1∼20.8
1,1,1-トリクロロ
エタン
CH3 CCl3
8.0∼14.7
1,1,2-トリクロロ
エタン
CH2Cl CHCl2
ています。火炎は狭い空間では伝播しにくく、下方
伝播より上方伝播の方が容易です。難燃性物質と呼
ばれるものは、火炎が予混合気中を上方向へは伝播
するが、下方へはの伝播しないという性質を有して
7.9∼14.6
いるものです。従って、引火点は測定されないが、
爆発限界は測定されるということになります。
16
トリクロロエチレン
CHCl=CCl2
7.9∼45
ペンタフルオロプロ
パノール
CF3CF2CH2OH
11∼22
HCFC-141b
CH3CCl2F
9.0∼15.4
このような物質は表に示したように、ハロゲン化
炭化水素によく見られます。
TIISニュース No.226
訪問記
◆株式会社パウレック
た、プロセッシング技術の向上と国際交流を目的に、
〒664-0831兵庫県伊丹市北伊丹8-121-1
内外のエンジニアを対象に、製剤技術に関する国際
URL:http://www.powrex.co.jp
セミナを約20年前から毎年開催されているとのこと
粉体の乾燥・造粒、粒体の表面加工等、粉粒体の
であった。
製造・加工等のプロセッシング技術では、業界のト
このように、パウレックは、単に、粉粒体のプロ
ップレベルにある「株式会社パウレック」(写真1)を
セッシング機器の開発、製造のみならず、プロセッ
訪問した。
シング技術のトータルについて、内外を含めた取り
本社で創設以来の歴史、主要事業等の説明を伺っ
組みが積極的に展開されており、この理念に基づい
た後、粉体工学研究所を見学した。社員の約60%が
た取り組みが、パウレックをトップレベルへと発展
技術者という会社であるだけに、あちこちで開発機
させ、それが維持されている原動力になっていると
器についての試験が行われ、データ解析についての
確信しながら会社を後にした。
活発な意見交換がなされていた。
開発中の多くの機器は、実験機による試験に基づ
いており、ハード・ソフトウエアの機能だけではな
く、コンタミネーション・環境・安全対策等までを
含めた試験が行われていた。また、新技術の開発に
は、過去に蓄積されたノウハウに加えて、実験機に
よって得られたデータ解析とsomething newの発見
に力点が置かれていた。
新しく開発された機器の一つとして、複合型転動
流動造粒機(写真2)を見学したところ、この機器に
代表されているが、基盤技術は過去の流動・撹拌造
粒技術であると思われるものの、実験機による試行
写真1 株式会社パウレックの社屋
錯誤の末に開発された万能の造粒機であると伺った。
長年にわたる不断なき試験と既成概念に捕らわれな
い創造力によって誕生したようで、これがパウレッ
クの技術開発の姿勢であり、伝統にもなっているよ
うであった。
また、粉体のプロセッシング機器には、粉じん爆
発の危険が伴うため、パウレックでは、安全・環境
対策にも、科学的、実用的な取り組みがなされてい
た。具体的には、爆発放散装置、緊急遮断装置、帯
電防止クロス等の開発を始め、その性能確認の試験
も行われていた。更に、機器の対策だけではなく、
安全文化の普及を目的に、ユーザに対して、技術勉
強会や機器の操作実習を長年にわたって開催されて
おり、それに準備された多くの資料を拝見した。ま
写真2 複合型転動流動造粒機
17
TIISニュース No.226
会員の声
◆ルールを明示し、守らせる
[有効だった千代田区禁煙条例]
株式会社 重松製作所
東京都千代田区は、2002年10月から、特定地域
取締役相談役 重松開三郎
(有楽町、神田駅、秋葉原等)の路上では喫煙を禁止
する罰則付きの条例を施行した。その結果、歩きた
[礼譲の国、日本 明治初期の日本人]
明治11年、東京帝国大学教授として来日し、大森
見受けられなくなった。千代田区長は、「マナーから
貝塚の発見など、日本の文化に大きく貢献した米国
ルールへ」という標語を掲げているが、これは日本
の博物学者、E.S.Morseは、その著書「日本その日そ
人のモラルが地に落ちたことを示すものである。
の日」の中で、日本人は下層階級であってもマナー
を心得ていると感心している。その一例は、花火見
物客を乗せた多数の船が大混雑に巻き込まれたとき
この条例が効果を上げた理由は、罰則を設け、監
視員を巡回させたことにあると思われる。
[叱らない管理者、いなくなった小言幸兵衛]
の話として、このようなときでも怒声を発する者が
十数年前から、管理職が部下を叱らないと言われ
無く、「ありがとう」「ごめんなさい」と優雅で温厚
るようになったが、その理由としては、学校教育で
な言葉だけが船頭たちから発せられたことに驚嘆し、
「叱るより褒める」が称揚されたことに加え、バブル
米国であったら必ず起こる罵詈雑言やけんか口論と
景気による人手不足で、「叱ると辞められる」と当時
比較し、日本人が米国人を「南蛮夷狄」と呼び来た
の管理者が恐れていたことが挙げられる。
ったのかが段々に分かってくると記している。
当時の日本人が、モラルが高く、礼儀作法に長じ、
先の大戦に敗れるまで、日本の社会には「小言幸
兵衛」といわれる壮年者が睨みを利かせていた。彼
遺失物に手を出さない等、醇風美俗を守っていたこ
らは、青少年の教育係を自認し、他人に迷惑をかけ
とは、他の外国人にも認められ、賞賛されている。
る者を容赦なくしかりとばした。筆者も中学時代、
[憂慮すべき現代の日本人気質]
最近、NHKTVに「日本人のモラル低下」が取り
自転車で右側通行をしていて幸兵衛に衝突し、平手
で殴られたことがある。当時の青少年は、成人にな
上げられた。他人が見ていないところでは、ルール
る前に「小言幸兵衛」の薫陶を受け、ルールを知り、
を無視する人の多いことが報道され、「他人には迷惑
マナーを心得てきた。
をかけない」という日本人の良俗の基本が崩壊しつ
つあるのではないかと危惧されていた。
[ルールの無視は事故につながる]
埼玉県下の市営プールで、小学児童が吸水口に吸
[明示し、守らせ、チェックする]
過去数十年、労働災害は減っては来ているが、災
害の大半は人間がらみであるから、防止の効果を上
げるためには、下記の徹底が欠かせないと思う。
い込まれて死亡するという痛ましい事故が起こった
1)災害防止のマニュアルを明示し、教育する。
が、その原因は、政府からの指示を無視し、指定さ
2)マニュアル通り仕事をさせ、マニュアル通りなさ
れた安全対策を取らなかったことにあった。
更に驚くべきことは、その後の調査で、安全指示
を守っていなかったプールが2千カ所を越えていたこ
18
ばこは激減し、道路上にたばこの吸い殻はほとんど
れているかチェックさせる。
3)マニュアルに反する者は処罰する。
最近の事故を見てみると、上記の何れをも徹底を
とが明らかになったことである。これは、現代の日
欠き、ほとんど実行されていないように思える。
本人がルール軽視の傾向にあることを示すもので、
日本には罰則の強化を嫌忌する人が少なくないが、
指示だけでは安全は保てないことの具体例である。
人命を救うためには「一罰百戒」は欠かせない。
TIISニュース No.226
協会からのお知らせ
◆酒井眞一当協会元理事・徳山勲男当協会監
されました。両氏の労働衛生並びに産業安全に対す
事が「厚生労働大臣表彰」において「功績
る長年の貢献と、安全衛生の推進向上への顕著な功
賞」の栄誉
績に対して贈られるものです。ここにご披露させて
いただくとともに、お慶び申し上げます。
◆JABより試験所認定を追加取得
酒井眞一氏
徳山勲男氏
当協会の元理事、酒井眞一氏(興研株式会社代表
取締役会長)と当協会の監事、日本保安用品協会理
事、徳山勲男氏(株式会社トーアボージン代表取締
役社長)が、
「平成18年度安全衛生厚生労働大臣表彰」
において、「功績賞」を受賞されました。この賞は労
働安全衛生活動において指導的立場にあり、安全衛
当協会は、平成18年4月28日付で、JIS Q 17025
生水準の向上と発展に多大な貢献をした個人に対し
(ISO/IEC17025)に適合する試験所として、財団法
て授与されるものです。両氏の受賞は、当協会にと
人日本適合性認定協会(JAB)からJIS規格の安全靴
りましても栄誉なことであり、ここにご披露申し上
及び安全帯の主要な試験について認定されています
げるとともに、心よりお祝い申し上げます。
が、平成18年5月26日付で、防爆構造電気機械器具に
つきましても、IEC規格に定める主要な試験につい
◆重松宣雄当協会理事・西郷 隆 晄当協会関
一
西支部運営委員に「緑十字賞」
て認定されました。
新たに認定された防爆構造電機機械器具は、「産業
安全機械器具」分野の「産業機械器具」に分類され
るもので、その試験規格及び試験の種類は次のとお
りです。
なお、試験(IEC)規格は最新版を使用します。
IEC60079-0 26.4.2
衝撃試験
26.5.1
温度試験
IEC60079-1 15.1
重松宣雄氏
15.2
一
西郷 隆
晄氏
IEC60079-11 10.1
当協会理事、重松宣雄株式会社重松製作所代表取
10.6
容器の圧力試験
火炎逸走防止性能試験
火花点火試験
耐電圧試験
締役社長と当協会関西支部運営委員で、スターライ
海外の認証取得を目指す際には、ISO/IEC17025に
ト工業株式会社代表取締役社長の西郷 隆 晄に、中央
基づく試験報告書を発行する当協会を、どうぞご利
労働災害防止協会の「平成18年度緑十字賞」が授与
用下さい。
一
19
TIISニュース No.226
◆(独)労働安全衛生総合研究所(旧産業安全研
究所)新刊出版物・論文複写サービスのご案内
〈印刷物販売〉
○ 技術指針、NIIS-TR-NO.39 (2006)
「工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆 2006)」
○ 技術指針、NIIS-TR-NO.40 (2006)
「工場電気設備防爆指針(国際規格に整合した技
術的基準対応2006)」
○ 安全資料、NIIS-SD-NO.22 (2006)
「移動式クレーンの安定設置に必要な地盤の支持
力要件」
○ 安全資料、NIIS-SD-NO.23 (2006)
「つり足場用つりチェーンの強度」
〈複写サービス〉
○ 研究報告、NIIS-RR-2005 (2006)
1.静電粉体塗装用塗料の着火性に関する研究(その1)
・・・・・・・・・・・・・・・・・崔 光石、山隈瑞樹、鄭 載喜
2.噴霧・噴出帯電の静電気危険性評価法の検討
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大澤 敦
3.破砕を伴う落石現象の物理モデル化に関する研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・伊藤和也、豊澤康男、日下部治
4.屋根工事における軒先からの墜落防止に関する研究
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日野泰道
5.RFIDを用いた広大空間における機械の再起動防止
に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・深谷 潔
6.着火性放電を抑制したノズル型除電気の除電特性
・・崔光石、山隈瑞樹、児玉勉、鈴木輝夫、最上智史
7.高強度アルミニウム合金重ね継手の疲労亀裂モニタ
リングとその疲労破壊特性
4.仮設足場に作用する風荷重の評価方法に関する検討
・・・・・・・・・・・・・・・日野泰道、ポンクムシンソンポル
5.仮設足場の新しい耐風補強手法に関する検討
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日野泰道、大幢勝利
6.施工誤差が補強剤の力学的性質に及ぼす影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高梨成次、大幢勝利
7.施工誤差が足場の力学的特性に及ぼす影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高梨成次、大幢勝利
8.足場の組立・解体時の風環境下での危険性に関する
実験的研究
・・・・・・・・・大幢勝利、日野泰道、高梨成次、佐藤昇
〇 特別研究報告、NIIS-SRR-NO.32 (2005)
「建設労働災害の発生原因としてのヒューマンエ
ラー防止に関する研究(最終報告)」
1.建設作業における不安全行動の発現とその防止対策
に関する職位による意識の相違
・・・・・・・・・・・・・・・・・庄司拓郎、江川義之、高木元也
2.建設作業現場における安全情報の伝達に関する研究
・・・・・・・・・・・・・・・・・江川義之、高木元也、中村隆宏
3.掘削機の小型危険体験シミュレータの開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・深谷 潔、中村宏隆
4.安全教育における擬似的な危険体験の効果と課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中村隆宏
〇 特別研究報告、NIIS-SRR-NO.33 (2005)
「人間・機械協調型作業システムの基礎的安全技
術に関する研究(中間報告)」
1.序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・池田博康、梅崎重夫
2.人間協調型ロボットの本質的安全設計手法と安全設
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・佐々木哲也、本田 尚
計指標の提案・・・・・・・・・・・・・・・・・池田博康、齋藤剛
8.新遠心模型実験装置
(NIIS-MarkⅡCentrifuge)
の開発
3.人間協調型ロボットの機械的刺激に対する人体痛覚
・・・・・・・・伊藤和也、玉手 聡、豊澤康男、堀井宣幸
耐性限界の測定・・・・・・・・・・・・・・・齋藤剛、池田博康
〇 特別研究報告、NIIS-SRR-NO.31 (2005)
「仮設構造物の耐風性に関するアセスメント手法
の開発」
1.序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大幢勝利
2.足場に作用する風荷重の実測調査
・・・・・・・大幢勝利、高梨成次、日野泰道、齋藤耕一
3.風洞実験による実測調査結果の推定誤差に関する検討
・・・・・・・日野泰道、佐藤昇、ポンクムシンソンポル、
20
大幢勝利、高梨成次
4.全方位視覚センサによる移動体存在領域検出手法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・濱島京子、呂健、石原浩二
5.オペレータのジェスチャ認識を利用した移動ロボッ
トとのコミュニケーション手段
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・呂健、姜偉、濱島京子
6.産業機械の労働災害分析・・・・・・梅崎重夫、清水尚憲
7.危険点近接作業の災害防止戦略に関する基礎的考察
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・梅崎重夫、清水尚憲
TIISニュース No.226
8.複数作業者が大規模生産ライン内で行う作業を対象
とした災害防止戦略の基礎的考察
普通預金口座〔口座番号 1851364〕
加入者名又は口座名義人:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・梅崎重夫、清水尚憲
社団法人 産業安全技術協会
問合せ先 (社)産業安全技術協会東京事務所
お申込・お問い合わせ先:
平山または荻原(TEL:03-3455-3957)
(社)産業安全技術協会 東京事務所
TEL:03-3455-3957, FAX:03-3455-3202
◆安全見学会のお知らせ
◆ハンガリー防爆機器検定機関の J.Hanko
所長の講演会が開催されました
今年も産業安全に関する新しい知識の習得と会員
ハンガリーの防爆機器検定機関の所長、Janos
相互の親睦を兼ねた安全見学会を、昨年同様、社団
Hanko 氏が、上海でのIECEx Scheme 年会の帰途、
法人日本保安用品協会と共催で次のように実施いた
日本に立ち寄り、当協会本部を来訪され、今後の両
します。
機関の協力関係について意見交換が行われました。
詳細は当協会ホームページ(http://www.ankyo.or.jp)
この機会を捉え、ハンガリーの防爆機器検定の事
でご案内しておりますのでご参照下さい。
情を聞く会を企画し、日本の防爆電気機器関係者に
日 時: 平成18年11月29日
も声をかけて、9月12日午後、港区の産業安全会館に
午前9時50分∼午後5時頃
おいて講演と意見交換会を開催いたしました。
見学場所: JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)
当日は約30名の参加があり、Hanko氏のハンガリ
千葉県千葉市中央区川崎町1番地 ーの防爆機器検定、ATEX欧州防爆指令、IECExス
TEL:043-262-2024
キーム、非防爆電気関連の爆発防止などに関する講
集合場所・集合時間:
演の後、参加者との間で質疑応答が活発に行われま
集合場所 産業安全会館玄関前
した。
東京都港区芝5-35-1
集合時間 午前9時50分
参 加 費: 1名につき3,000円(昼食代、消費税込)
募集人員: 当協会分24名(申込み先着順)
申込期限: 平成18年11月17日(金)
ただし、定員
に達した場合は、期限前でも申し込みを
締め切らせていただきます。
申込方法 所定の「安全見学会参加申込書(ホームペ
ージ参照)」に所要事項を記入して、郵便ま
たはFAXで下記までお申 し込み下さい。
講演中のHanko氏
(社) 産業安全技術協会東京事務所
〒108-0014 東京都港区芝5-35-1
産業安全会館6階(FAX:03-3455-3202)
なお、参加費の送金は、郵便振替または銀行振込と
◆産業安全技術館だより
当協会が運営に協力している産業安全技術館(東
京)及び大阪産業安全技術館では、次の企画展が開
し、下記の口座をご利用下さい(送金手数料は貴社に
催されます。
てご負担願います)。郵便振替の方には、参加票送付
1.企画展「過重な労働による健康障害を防ぐ―
の際「郵便振替用紙」を同封させていただきます。
郵便振替: 東京00150-6-18997
銀行振込: みずほ銀行 芝支店 過重労働対策・メンタルヘルス対策の充実に
向けてー」
最近、労働安全衛生法が改正され過重労働に対す
21
TIISニュース No.226
る国の施策が充実されました。そこで、過重労働及
◆大阪産業安全技術館だより
びメンタルヘルスの現状や対策について、事業場の
全国安全週間の行事の一環として、事業場におけ
安全衛生の担当者や働く人、さらには、働く人を家
る安全管理活動に資するための安全教育映画会、安
族に持つ方々に理解を深めていただき、過労死等防
全教育研究会を開催した。なお、いずれも㈱PRCの
止対策の取り組みの参考にしていただくために開催
多大なご支援があり、事業場からも多数が参加され
されるものです。
ました。
・展示等の内容
(1)安全教育映画会
①パネル展示:過重労働、メンタルヘルスの実態
6月19日、20日、21日、23日の各日に安全に関
と対策
するビデオ5本/1日の計20本を上映
②展示物:ストレス・疲労チェックシート等
(2)安全教育研究会
③体験コーナー:ストレス・疲労計測、ストレス
6月22日に大阪労働局安全課長のご講演と安全
解消体験等
ビデオ3本上映
④ビデオコーナー
⑤相談コーナー(東京10月17日、大阪11月15日)
ます
・開催期間
東京
:平成18年9月25日(月)∼10月25日(水)、
休館日 :月曜日(企画展開催期間のみ)、
祝祭日(9月25日は開催)
大阪
◆台湾の防爆検定が10月末よりスタートし
:11月1日(水)∼11月30日(木)
休館日 :土・日・祝祭日
2.企画展「職場のリスクアセスメント―安全・
安心職場はこう作るー」
台湾では、労働安全衛生法の第5条において、爆発
性ガスが存在する場所では災害の発生を防止するこ
と。第6条で、このような場所で使用する機械器具類
については、中央主管機関が適当な機関を指定し型
式検定の実施手続きを制定すること。また、安全衛
生規則の第109条では、防爆構造の電気機器を使用す
ることを旨とする法体系となっている。
最近、労働安全衛生法が改正され、事業場でリス
この状況のもと、防爆電気機器の検定制度の発足
クアセスメントの実施が義務付けられました。そこ
に向け準備が進んでおり、ここにきて、ようやく目
で、職場改善のためのリスクアセスメントを解かり
途が立ち、10月下旬より検定のための受付けを開始
やすく紹介し、事業場の安全衛生レベルの一層の向
し、今年末から正式に検定制度をスタートさせる旨、
上の参考にしていただくために開催されるものです。
行政院労工委員会(労働省に相談する)の担当者よ
・展示等の内容
り当協会へ連絡がありました。
①パネル展示:リスクアセスメントの意義と手法
及び実例紹介
なお、現在、台湾の適用規格はCNS3376シリーズ
であり、概ね、IEC60079シリーズによるものであま
②展示物:リスクアセスメントによる改善事例
す。今年9月末には、全ての審査を終了し、今年中に
③体験コーナー:リスク探しコーナー
新しいCNSとして発行される予定です。
④ビデオコーナー
・開催期間
東京
最後に、台湾での検定実施者は次のとおりです。
実施者 :台湾工業技術研究院環境安全衛生技術セン
:平成18年11月1日(水)∼11月30日(木)、
ター
休館日 :月曜日(企画展開催期間のみ)、祝祭日
担 当 :Dr. 頼 加勲
大阪
住 所 :Bldg. 64, 195 Sec4, Chung−Hsing Rd.
:平成19年1月15日(月)∼2月15日(木)
休館日 :土・日・祝祭日
22
Chutung, Hsinchu, Taiwan 310, R.O.C
TEL
:+886-3-5915019
FAX
:+886-3-5820068